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2024年11月13日 (水)

過去最高を記録した10月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+3.4%の上昇となり、8月統計の+2.6%、先月9月統計の+3.1%からさらに上昇が加速しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価指数が過去最高、10月3.4%上昇 コメ高騰
日銀が13日発表した10月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は123.7と前年同月比で3.4%上昇した。23年8月(3.5%上昇)以来の高い伸び率となり、指数は2カ月連続で過去最高を更新した。民間予測の中央値(3.0%上昇)より0.4ポイント高かった。コメの価格が高騰しており、農林水産物の上昇率が26.0%と大幅な伸びとなったことが影響した。
10月は価格改定月であり、人件費などのコストを価格に転嫁する動きも後押しした。自動車用部品を含む輸送用機器などで大企業から中小・中堅企業へ、価格転嫁のすそ野が広がった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
為替市場での円安進行により、円ベースで輸入物価指数は前月比3.0%上昇と22年9月(5.3%上昇)以来の高い伸びとなった。一方で、原油価格の下落などを背景に前年同月比では2.2%下落した。
非鉄金属は14.6%上昇と9月(9.7%上昇)から伸び率が拡大した。月初に、中国の景気刺激策への期待から銅価格が上昇したことが影響した。
政府の政策も引き続き、企業物価指数に影響を与えた。電力・都市ガス・水道は5.6%上昇と9月(7.9%上昇)から伸び率が鈍化した。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている再エネ賦課金が24年5月から引き上げられたことが前年同月比プラスに寄与した。一方で、9月検針分から再開された電気・ガスの補助金が押し下げ要因となった。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+3.0%、予測レンジの上限でも+3.2%と見込まれていましたので、実績の+3.4%はレンジ上限を超えて大きく上振れた印象です。国内物価の上昇幅が拡大したした要因は、引用した記事にもある通り、コメなどの農林水産物の価格上昇であり、10月の農林水産物は何と+26.0%の上昇を記録しています。ただ、全般的に、統計の対象である10月は年度始まりの4月に次いで価格改定の多い月である点も見逃せません。また、今年2024年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が物価押上げ要因となっていて、例えば、東京電力のプレスリリースによれば、賦課金単価は1kwh当たり1.40円から3.49円に引き上げられています。逆に、政府による電気・ガスの補助金は9月検針分から再開されたことは物価押下げ要因となっており、11月検針分まで継続される予定です。加えて、10月の為替は円安が進んだ点も物価押上げ要因と考えるべきです。前月9月から4.3%の円安が進んでいます。また、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2024年10月)を見ておくと、「2024年9月のWTI原油先物価格は、上旬に60ドル台半ばに低下」した後、「中旬には、70ドル台前半に上昇」し、「先行きを展望すると、原油価格は70ドル台を中心に推移する見込み」ということになっていて、地政学的リスクに対する警戒に言及しています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず繰り返しになりますが、農林水産物は9月の+18.2%から10月は+26.0%と上昇幅を大きく拡大しています。したがって、飲食料品の上昇率も10月は+1.8%と高止まりしています。他方で、電力・都市ガス・水道が9月の+7.9%から10月は+5.6%と小幅に上昇幅を縮小させています。ほかに、銅市況の高騰により非鉄金属が+14.6%と2ケタ上昇を示しています。また、石油・石炭製品も9月の+1.5%から10月は+4.5%と上昇幅を拡大しています。

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