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2024年11月11日 (月)

インフレにより2か月連続で低下した10月の景気ウォッチャーと黒字が縮小した9月の経常収支

本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.3ポイント低下の47.5となった一方で、先行き判断DIも𥬡.4ポイント低下の48.3を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆7171億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気10月小幅低下、物価高で節約志向 判断は維持
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査は現状判断DIが47.5となり、前月から0.3ポイント低下した。2カ月連続マイナス。物価高が景況感を押し下げているが、前月からの低下が小幅だったことや構造的な変化がみられなかったことから、景気判断は「緩やかな回復基調が続いている」で据え置いた。
指数を構成する3部門では、企業動向関連DIが0.2ポイント、雇用関連が0.4ポイントそれぞれ上昇した一方、家計動向関連が0.6ポイント低下した。
企業動向関連の回答では「修学旅行生やインバウンドの増加傾向が続いており、10月はイベントも多いことから身の回りの消費は活発になっている」(沖縄=食料品製造業)など、インバウンドが支えになっているとの声が聞かれた。
家計動向関連では「米の値段が大きく上がり、様々な食品が値上がりとなっていくなか、客は購入点数や来店回数を減らすことで生活防衛を行っている」(九州=スーパー)、「今夏が猛暑でエアコンがよく売れたため、その反動が出てきている」(東海=家電量販店)など、物価上昇の影響や季節要因に関する指摘が出ていた。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から1.4ポイント低下の48.3と、2カ月連続で低下した。
回答者からは「依然として所得の増加を上回る物価上昇が続いていることから、客の購買力が相対的に低下している」(北海道=住宅販売会社)、「今後も客の節約志向は続くものと予想され、販売数量を維持することは厳しいとみられる」(中国=一般小売店[食品])など、顧客の節約志向や買い控えを懸念する声が上がっていた。
内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
大和証券のエコノミスト、鈴木雄大郎氏は「節約志向は根強いものの、今後は実質賃金の回復を背景にマインドは緩やかに回復に向かう」と指摘。個人消費も底打ちが期待されるが「リベンジ消費に一服感がみられる中では、大幅に増加する可能性は低い」との見方を示した。
調査期間は10月25日から31日。
経常収支9月は1兆7171億円の黒字、予測下回る 貿易赤字で
財務省が11日に公表した9月経常収支は1兆7171億円の黒字となり、2023年2月から続く連続経常黒字を20カ月に更新した。ただ黒字幅はロイター予測の3兆2628億円を大きく下回り、2023年3月以来の対前年黒字幅縮小を記録した。
財務省は、9月の経常黒字幅の縮小は輸入コスト増加に起因する貿易収支の赤字によるものとした。貿易収支は前年同月から6912億円悪化し3152億円の赤字となった。赤字は3カ月連続。経常黒字をけん引してきた第一次所得収支の黒字幅が縮小したことも効いた。第一次所得収支は前年同月から4660億円減の2兆7745億円の黒字となった。黒字の減少は3か月ぶり。
9月の第一次所得収支の黒字幅減少について財務省担当者は、7-8月に海外証券等投資の配当増が集中したことによるもので「期ずれによる一時的な動きではないか」としている。
経常収支は2023年1月に2兆0014億円の赤字を記録した後は、円安と食料品、エネルギー、資源価格の高騰などによる貿易赤字にも関わらず、海外への証券投資や直接投資からの収入に支えられ、黒字を続けている。

やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、直近では5月統計で45.7の底となった後、6月統計では47.0、8月統計では49.0に上昇したものの、9月統計では47.8、本日公表の10月統計でも47.5と2か月連続の低下となっています。基本的には、インフレによるマインドの低下、主として家計のマインド低下の影響が大きいと私は考えています。10月統計でも低下したのは家計動向関連だけで、企業動向関連と雇用関連は上昇しています。また、企業動向関連の産業別でも、消費をはじめとする内需への依存度の高い非製造業は前月差マイナスながら、いくぶんなりとも輸出の効果が見込める製造業は前月差プラスとなっています。ただし、依然として水準はそれほど低下したわけでもなく、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は、マインドが決して悪い状態にあるわけではない点には注意が必要です。10月統計ではサービス関連が上昇した以外、小売関連や飲食関連などは軒並み低下しています。しかし、企業動向関連では、輸出の恩恵ある製造業で上昇しています。また、雇用関連では前月差プラスが続いていて、翠寿は50を超えています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いている」で据え置いています。先行きについては、価格上昇の懸念は大いに残っているものの、賃上げの浸透や定額減税、あるいは、増額されるであろう年末ボーナスへの期待が見られると考えるべきです。また、内閣府の調査結果の中から、小売業界の見方に着目すると、「物価高騰により売上は前年比100%前後であったが、来客数もようやく前年並みに回復してきた(東北=コンビニ)。」とか、「米の値段が大きく上がり、様々な食品が値上がりとなっていくなか、客は購入点数や来店回数を減らすことで生活防衛を行っている(九州=スーパー)」といったものが目につきました。米の価格上昇や品薄はインパクト大きかった気がします。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事にもある通り、いずれも季節調整していない原系列の統計で、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+3兆円を上回る黒字でしたので、実績の+1兆7171億円はかなり下振れた印象です。また、季節調整済みの系列でも、前月8月統計の+3兆1,459億円から9月統計では+1兆2,717億円の黒字へと、▲2兆円近く経常黒字が大きく縮小しています。大雑把に丸めた数字で、第1次所得収支で▲1.6兆円、貿易・サービス収支で▲0.3兆円の黒字縮小要因といえます。ですので、引用した記事の「期ずれによる一時的な動き」かもしれません。もちろん、経常収支にせよ、貿易収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

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