さらに上昇幅が拡大した11月の企業物価指数(PPI)と起業マインドの順調な回復を示す法人企業景気予測調査
本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+3.7%の上昇となり、9月統計の+3.1%、先月10月統計の+3.6%からさらに上昇が加速しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数11月3.7%上昇 コメ高騰続く
日銀が11日発表した11月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は124.3と前年同月比で3.7%上昇し、23年7月以来の高い伸び率となった。民間予測の中央値(3.4%上昇)より0.3ポイント高かった。コメの価格高騰によって全体が押し上げられた。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。今回、10月分の前年同月比上昇率は3.4%から3.6%に上方修正になった。
11月の内訳をみると、コメを含む農林水産物は前年同月比で31.0%上昇し、10月(28.1%上昇)から2.9ポイント伸び率が拡大した。一方、前月比では2.0%上昇と、10月(6.7%上昇)から伸び率が鈍化した。企業間取引では新米の流通によって「価格上昇のペースが9月、10月に比べてだいぶ落ち着いてきた」(日銀)という。
電力・都市ガス・水道は前年同月比で9.2%上昇した。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている再エネ賦課金が24年5月から引き上げられたことが前年同月比プラスに寄与した。
9月検針分から再開された電気・ガスの補助金の規模が縮小されたことにより前月比でも2.8%押し上げられた。補助金は11月検針分で一旦終了するが、25年2月検針分から再開される。
為替市場での円安進行により、円ベースで輸入物価指数は前月比で1.5%上昇した。11月の平均相場は1ドル=153.8円と10月(1ドル=149.6円)に比べ円安傾向にあった。一方で、原油価格の下落などを背景に前年同月比では1.2%下落した。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+3.4%、予測レンジの上限でも+3.6%と見込まれていましたので、実績の+3.7%はレンジ上限を超えて大きく上振れた印象です。国内物価の上昇幅が拡大したした要因は、引用した記事にもある通り、コメなどの農林水産物の価格上昇であり、11月の農林水産物は前年同月比で見て10月の+28.1%をさらに超えて11月は何と+31.0%の上昇を記録しています。ただ、先月10月は年度始まりの4月に次いで価格改定の多い月で、その流れを直近の11月統計でも引き継がれている点は見逃せません。また、引用した記事にもある通り、政府による電気・ガスの補助金は9月検針分から再開され、11月検針分でいったん終了しますが、来年2025年2月検針分から再開されます。これは物価押下げ要因となっていることはいうまでもありません。加えて、11月の為替は円安が進んだ点も物価押上げ要因と考えるべきです。先月10月から+3%近い円安が進んでいます。また、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2024年11月)を見ておくと、中国の原油需要の伸び悩みやOPECプラスによる供給増を背景に、「先行きを展望すると、原油価格は60ドル台半ばに向けて下落する見通し。」ということになっています。ただ、米国のトランプ次期政権の環境・エネルギー政策にも注目すべきであることはいうまでもありません。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず繰り返しになりますが、農林水産物は10月の+28.1%から11月は+31.0%と上昇幅を拡大しています。ただ、飲食料品の上昇率は10月の+1.9%から11月は+1.8%と比較的落ち着いた動きとなっています。他方で、電力・都市ガス・水道が10月の+5.9%から11月は+9.2%と上昇幅を加速させています。ほかに、銅市況の高騰などにより非鉄金属が+13.6%と2ケタ上昇を示しています。
また、本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は10~12月期は+5.7と3四半期連続のプラスを記録し、先行き来年2025年1~3月期には+3.9、4~6月期でも+2.6と、この統計のクセが現れて下降するものの、企業マインドは順調に回復を継続する見通しが示されています。法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。
大企業と中小企業の合計で見た全規模全産業の設備投資計画は、今年度2024年度に+10.3%増が見込まれています。産業別に設備投資計画を見ると、製造業では化学工業や非鉄金属製造業の寄与が大きく+11.5%増が、また、非製造業では運輸業、郵便業や電気・ガス・水道業の寄与が大きく+9.7%増が、それぞれ計画されています。それなりに期待していいのではないかと思いますが、まだ、機械受注の統計やGDPに明確に反映されるまで至っていませんので、私自身は計画倒れになる可能性もまだ残っているものと認識しています。
さて、明後日12月13日公表予定の12月調査の日銀短観やいかに?
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