7-9月期GDP統計速報2次QEは1次QEから大きな変更はない見込み
今週月曜日の法人企業統計をはじめとして必要な統計がほぼ出そろって、来週月曜日12月9日に、7~9月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である7~9月期ではなく、足元の10~12月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。しかしながら、2次QEは法人企業統計のリポートのオマケのような扱いも少なくなく、先行きについて明示的に言及しているのはみずほリサーチ&テクノロジーズと明治安田総研くらいのものでした。特に前者については長々と引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +0.2% (+0.9%) | n.a. |
日本総研 | +0.3% (+1.3%) | 7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が大幅上方改定、公共投資が小幅下方改定される見込み。この結果、成長率は前期比年率+1.3%(前期比+0.3%)と、1次QE(前期比年率+0.9%、前期比+0.2%)から上方改定されると予想。 |
大和総研 | +0.2% (+0.7%) | 2024年7-9月期GDP2次速報(QE)(12月9日公表予定)では実質GDP成長率が前期比年率+0.7%と、1次速報(同+0.9%)から小幅に下方修正されると予想する。主因は、9月の基礎統計の反映による公的固定資本形成の下方修正だ。他方、設備投資は7-9月期の法人企業統計の結果が反映されることで、伸び率は前期比▲0.1%へと小幅に上方修正されるとみている。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.2% (+0.6%) | 10~12月期は、既往の利上げの影響で緩やかな減速が見込まれる米国、ドイツの不振を中心に力強さを欠く欧州、不動産部門の調整長期化が予想される中国など海外経済の減速が外需の重石になる一方、高水準の企業収益が賃金や設備投資に回ることで、内需を中心に日本経済は回復基調で推移する見通しであり、現時点で年率+1%程度のプラス成長を予測している。 高水準の賃上げによる所定内給与への波及は一巡する一方、10~12月期は最低賃金や公務員給与の引上げに加え、高い伸びが見込まれる冬のボーナスが押し上げ要因になる(ボーナス算定基準となる所定内給与が堅調に増加することに加え、堅調な企業収益を受けてボーナスの支給月数も増加するとみられ、みずほリサーチ&テクノロジーズは冬の民間企業の一人当たりボーナス支給額について前年比+3.5%と予測している)。一方、消費者物価については政府による「酷暑乗り切り緊急支援」を受けて10~11月の電気代・ガス代の前年比上昇率が下押しされ、10~12月期の実質賃金前年比はプラス圏で推移すると予測している。実質賃金の回復を受けて、個人消費も増加基調で推移するだろう。ただし、定額減税や防災需要・米の買い占め等による一時的な押し上げ影響が徐々に剥落するとみられるほか、実質賃金前年比のプラス幅は小さく、これまで2年以上続いた実質賃金の低下に比して反発力は十分なものとは言えないことから、個人消費の伸びは7~9月期から大きく鈍化する可能性が高いとみている。実際、米類を中心とした食料品の価格上昇等を受けて10~11月の消費者態度指数は弱い動きとなっており、消費マインドの改善には足踏み感がみられる。 設備投資についても、前述したように2024年度の設備投資計画が堅調であることに加え、世界的な半導体市場の回復等が押し上げ要因になり、10~12月期は増加傾向が継続するだろう。10月の資本財総供給は7~9月期平均対比+8.1%、建設財総供給は同+3.6%の増加となっている。10~12月期の設備投資は好調な滑り出し中期的な観点からは、中国・アジアの人件費上昇に伴う生産拠点としてのコスト優位性の低下、米中対立の深刻化・地政学的リスクの高まり(経済安全保障への関心の高まり)を背景としたグローバル・サプライチェーンの見直し、さらには近年の円安進行等が国内投資シフトを後押ししている面もあると考えられる。内閣府「企業行動に関するアンケート調査」(上場企業が調査対象)をみると、今後3年間の設備投資見通しは全産業で年度平均+6.8%と1990年(同+7.9%)以来の高い伸びとなっている。また、日本政策投資銀行「2024年度設備投資計画調査」をみても、コロナ禍前対比で国内の生産拠点を強化する動きが継続していることが確認できる。精密機械や輸送用機械等を中心に広がりつつある国内生産拠点強化の動きが設備投資の持続的な押し上げ要因になろう。ただし、前述した建設業等の人手不足が下押し要因となることで強気な計画対比でみると低い伸びとなりそうだ。 一方、外需については景気の牽引役は当面期待しにくい。海外経済の減速が引き続き財輸出の逆風になるだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +0.3% (+1.2%) | 24年7-9月期GDP2次速報では、23年度の年次推計値が併せて公表され、四半期の計数は24年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定される。24年7-9月期の成長率は、法人企業統計を中心とした基礎統計の追加に加え、23年度の年次推計に伴う遡及改定の影響を受けるため、不確定要素が多いことを念頭に置いておく必要がある。 |
第一生命経済研 | +0.2% (+0.9%) | 実質GDPは2四半期連続のプラス成長で、前年比でもプラスに転じるなど、景気は持ち直していると言ってよい。ただ、そのペースはあくまで緩やかなものにとどまっており、回復感には乏しい状況である。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.2% (+0.7%) | 2024年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.2%(前期比年率換算+0.7%)と、1次速報値の前期比+0.2%(年率換算+0.9%)から大きな修正はない見込みである。このため、「景気は緩やかに持ち直している」との景気判断を修正する必要はないと考えている。 |
三菱総研 | +0.2% (+0.9%) | 2024年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.2%(年率+0.9%)と、1次速報値(同+0.2%(年率+0.9%))から不変と予測する。 |
明治安田総研 | +0.2% (+1.0%) | 先行きの日本経済は緩やかな回復基調を維持すると予想する。実質賃金が早期にプラス圏で安定するのは難しいとみるが、ガソリン補助金延長や、年明けからの電気・ガス料金の負担軽減策再開といった経済対策が個人消費の下支え要因になると予想する。設備投資は、機械受注など先行指標は弱い動きとなっているが、人手不足対応のデジタル関連投資や、サプライチェーンの見直しに伴う製造拠点の国内回帰の動きなどが追い風になると見込む。一方、輸出は、インバウンド需要が一定程度下支えとなるものの、中国景気の回復の鈍さが足枷となり、当面は冴えない推移が続くとみる。 |
見れば明らかな通り、1次速報の季節調整済み系列の前期比+0.2%、前期比年率+0.9%成長から大きな変更はないとの予想が多くなっています。従って、日本経済は緩やかな回復局面にある、という現状認識も変更する必要はないものと考えられます。ほぼ確実なのは法人企業統計の結果に従って設備投資がやや上方修正される点だけのようです。なお、来週の7~9月期のGDP統計が公表される際には、同時に、2023年度の年次推計値も公表され、四半期の計数は24年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定されることになります。いずれにせよ、2023年度の年次推計に伴う遡及改定があるために一定の不確定な要素が残るのは覚悟せねばなりません。
最後に、ニッセイ基礎研究所のリポートから 2024年7-9月期GDP2次速報の予測 のテーブルを引用すると以下の通りです。
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