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2025年1月14日 (火)

2か月連続で上昇した2024年12月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した11月の経常収支

本日、内閣府から昨年2024年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.3ポイント低下の47.5となった一方で、先行き判断DIも𥬡.4ポイント低下の48.3を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆3525億円の大きな黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気12月は0.5ポイント上昇、旅行関連や季節商品が押し上げ
内閣府が14日に発表した12月の景気ウオッチャー調査は現状判断DIが49.9と、前月から0.5ポイント上昇した。インバウンドなどの観光関連が引き続き好調で、冬物衣料や暖房器具など季節商品も押し上げに寄与した。エネルギー価格の上昇などへの懸念もあり、先行きは小幅な低下が見込まれている。
現状判断DIは2カ月連続でプラスとなったが、指数の水準は必ずしも高くなく、大きな基調は変わっていない。内閣府は景気判断を「緩やかな回復基調が続いている」で据え置いた。
指数を構成する3部門では、家計動向関連と企業動向関連DIが0.6ポイント上昇した一方、雇用関連が0.2ポイント低下した。回答者からは「駅などの交通拠点の店舗では売り上げが前年を大きく上回っている」(東海=コンビニ)、「ボーナス支給時期を契機に販売量が増加」(四国=家電量販店)といった声が出ていた。
一方、食品や生活必需品の値上がりが消費者の節約志向や商品選別を促しているもようだ。「ミニトマト、キャベツ、それ以外も全体的に今までにないような価格高騰で一般の客は手が出ない状況」(北関東=青果店)との報告もあった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から0.6ポイント低下の48.8と、2カ月ぶりに低下した。ガソリンや燃料油の値上げ、円安による物価上昇の加速などに懸念が出ている。
先行きでは、米国の大統領交代について「政策や関税の見直しによる影響を考えると景気はやや悪くなる」(中国=一般機械器具製造業)との見方があった。「物価高騰による消費減やインフルエンザなどの感染症による予約キャンセルが増加しており、売上減が見込まれる」(九州=一般レストラン)との声も聞かれた。
内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
調査期間は12月25日から31日。
経常収支11月は3.3兆円の黒字、3カ月ぶり高水準 貿易黒字転換で
財務省が14日発表した国際収支状況速報によると、11月の経常収支は3兆3525億円の黒字で3カ月ぶりの高水準となった。貿易収支が黒字に転換したほか、第一次所得収支の黒字幅が拡大した。
貿易・サービス収支は3366億円の黒字、うち貿易収支は979億円で5カ月ぶりの黒字となった。半導体等製造装置や非鉄金属の輸出が増加した一方、原粗油や半導体等電子部品の減少で輸入が落ち込んだ。サービス収支は、訪日客増加に伴う旅行収支の黒字拡大により黒字幅が広がった。
第一次所得収支は3兆4373億円の黒字、直接投資収益の黒字幅が拡大した。為替の円安も、海外収益を円換算する際の押し上げに寄与した。第二次所得収支は4214億円の赤字だった。
エコノミストからは、今後の財輸出を懸念する声が出ている。野村証券のエコノミスト、伊藤勇輝氏は「旅行収支の回復は財輸出・サービス収支の黒字化の要因だがペースは鈍い。先行きも、日本の対米輸出はトランプ次期米大統領が表明している関税の影響を受けると、財輸出全体の回復を抑える。中国の内需刺激策が日本の対中輸出につながるのかも不透明だ」と指摘する。
ただ、経常収支は今後も第一次所得収支に支えられ黒字基調を保つとの見方が大勢。伊藤氏は「第一次収支が今後とも日本の海外での『稼ぐ力』になってくると思う。経常収支全体でみると黒字基調が続き、赤字に転じることはないだろう」とみている。
経常収支は2023年1月に2兆0014億円の赤字を記録した後は、円安と食料品、エネルギー、資源価格の高騰などによる貿易赤字にもかかわらず、海外への証券投資や直接投資からの収入に支えられ黒字が続いている

やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、直近では昨年2024年10月統計で47.5となった後、11月統計では49.4、本日公表の12月統計でも49.9と2か月連続の上昇となっています。基本的には、家計動向関連、企業動向関連ともに前月から現状判断DIが+0.6ポイント上昇しています。ただし、家計動向関連のうち飲食関連が前月から▲4.0ポイントと大きく低下しています。先行き判断DIでも家計動向関連のうちの飲食関連は▲3.6ポイントの低下を示しています。基本的には、物価高の影響と私は受け止めています。特に、飲食業ではコメ価格の高騰が大きな影響を及ぼしていると考えるべきです。加えて、食料品価格の値上がりも激しく、例えば、どこかの報道で見かけましたが、キャベツ1玉500円といわれてしまうと、飲食関連はコストアップに苦しみます。また、企業動向関連については、現状判断DI、先行き判断DIともに製造業は前月差マイナスで、逆に、非製造業は前月差プラスとなっています。ただ、現状判断DIの水準は49.9と高くなっている点も見逃すべきではありません。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は、マインドが決して悪い状態にあるわけではない点には注意が必要です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いている」で据え置いています。先行きについては、価格上昇の懸念は大いに残っているものの、賃上げの浸透や定額減税、あるいは、年末ボーナス増額の効果がいかに実感されるかが焦点となりそうです。また、内閣府の調査結果の中から、家計動向関連のうちの飲食関連の見方に着目すると、「給料はなかなか上がらず、上がったとしても物価高で、ますます外食機会は減るとみている(北関東=一般レストラン)。」や「物価高騰による消費減やインフルエンザなどの感染症による予約キャンセルが増加しており、売上減が見込まれる(九州=一般レストラン)。」といったものが目につきました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易・サービス収支が3366億円の黒字を計上したようですが、私が確認したところ、季節調整済みの系列ではまだ赤字が続いています。ただ、1月統計や2月統計は中華圏の春節の時期次第で貿易・サービス収支が大きく振れますので、その点は注意が必要です。私が調べた範囲で、今年の春節は2月29日から2月4日までの8日間となっています。これまた、引用した記事にもある通り、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。ですので、経常収支にせよ、貿易収支・サービスにせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

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