2024年12月の毎月勤労統計に見る賃金の伸びやいかに?
本日、厚生労働省から2024年12月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、久しぶりに取り上げておきたいと思います。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で+4.8%増の61万9580円、消費者物価指数(CPI)上昇率が+4.2%でしたので、実質賃金は+0.6%増となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から▲3.8%減となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
実質賃金12月0.6%増、賞与増が寄与 24年通年は0.2%減
厚生労働省が5日発表した2024年12月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から0.6%増えた。プラスとなるのは2カ月連続だ。冬のボーナス支給額が増加したことが寄与した。
名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は61万9580円だった。伸び率は4.8%で、実質賃金の計算に用いる消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)の上昇率(4.2%)を上回った。名目賃金のうちボーナスを含む「特別に支払われた給与」が6.8%増の33万3918円とけん引した。
ボーナスの影響を除いた賃金は物価上昇の勢いに追いついていない。基本給や残業代を含む「きまって支給する給与」でみると、実質で1.5%下がった。厚労省の担当者は「3%を超える物価上昇率は(適切な水準よりも)やや高い」との見方を示した。
就業形態別では、正社員などフルタイムで働く一般労働者の現金給与総額は4.9%増の83万8606円だった。アルバイトなどパートタイム労働者の1時間あたり所定内給与は4.9%多い1380円となった。
厚労省が同日発表した2024年の実質賃金は、前年から0.2%減少した。マイナスとなるのは3年連続。ボーナスの支給がない月は実質賃金のマイナスが続き、通年でみると賃金の上昇が物価高に追いつかなかった。
1人あたりの現金給与総額は、2.9%増の34万8182円だった。伸び率は1991年以来、33年ぶりの大きさだ。きまって支給する給与は2%増の28万1990円。特別に支払われた給与は6万6192円で、伸び率は比較可能な2001年以降で最も高い6.9%に達した。
物価とともに賃金は注目の指標ですので、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルは現金給与指数と実質賃金指数のそれぞれの前年同月比、下は景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

毎月勤労統計については、広く報じられた通り、不正事案として統計の信頼性に疑問を生じたことから、しばらく私の方では放置して注目の対象から外していましたが、一昨年2023年春闘に続いて、昨年2024年も大幅な賃上げがあったと考えられることから、賃金や労働時間に着目した毎月勤労統計を再び取り上げることにしました。なお、統計不正の最終的な報告については統計委員会から「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書」などが出ています。
ということで、昨年の春闘の結果などを受けて、現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で4月+1.6%増、5月+2.0%増から、6月+4.5%増、7月+3.6%増と跳ね上がって、11月も+3.9%増、そして、本日公表された12月も+4.8%増となっています。ただし、12月現金給与指数の大きな上昇には好業績を背景としたボーナス分が寄与しており、今後の動向には留意が必要と考えるべきです。ボーナスの統計については、追って公表されると考えています。ですので、決まって支給する給与ベースで見ると、4月+1.6%増、5月+2.0%増、6月+2.1%増、7月+2.2%増、の後、少しすっ飛ばして、11月+2.5%増、12月+2.5%増と緩やかに上昇率を加速させているのが理解できます。ただ、足元で消費者物価指数(CPI)のヘッドライン上昇率が11月+2.9%、12月+3.6%ですので、インフレには到底及びません。ただ、日銀が物価目標の+2%を達成できれば、ボーナスや諸手当などを含めない「決まって支給する給与」のベースでも、何とか実質的な賃金がインフレを上回ることができる数字だという点は理解しておくべきです。加えて、ボーナスなどを加味すると、長らく前年同月比マイナスだった実質賃金の上昇率は11月+0.5%増、12月+0.6%増を記録しています。いずれにせよ、ボーナス要因が剥落する今年2025年1月以降の統計を慎重に見極めたいと思います。最後に、所定外労働時間指数、すなわち、残業についても、上のグラフに見られる通り、ジワジワと減少を示しています。景気拡大局面が後半に入っていることを実感させられるグラフかもしれません。
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