+4%台に上昇率が加速した1月の企業物価指数(PPI)
本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+4.2%の上昇となり、昨年2024年10月統計の+3.7%、11月統計の+3.8%、12月統計の+3.9%から、今年2025年1月統計でも上昇率は加速しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、1月4.2%上昇 コメ高騰の影響続く
日銀が13日に発表した1月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は125.3と前年同月比で4.2%上昇し、24年12月(3.9%上昇)から伸び率が拡大した。民間予測の中央値よりも0.2ポイント高く、23年6月(4.5%上昇)以来の大きさとなった。コメを含む農林水産物の高騰が続いていることが影響した。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。今回、24年12月分の前年同月比上昇率は3.8%から3.9%に上方修正になった。
1月の内訳を見ると、農林水産物が前年同月比で36.2%上昇と24年12月(32.9%上昇)から伸び率が拡大した。コメの価格高騰の影響が続いている。背景には、肥料や輸送費、人件費などの諸コストを価格に転嫁する動きがある。鳥インフルエンザにより鶏卵の価格が上昇したことも押し上げに寄与した。
電力・都市ガス・水道は11.1%上昇し、高い伸び率が続いている。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている再エネ賦課金が24年5月から引き上げられたことが前年同月比プラスに寄与した。
輸入物価指数は円ベースで2.3%上昇し、24年8月以来の高い伸び率となった。原油市況や為替が円安方向に動いた影響により全体が押し上げられた。
企業物価指数は1年7カ月ぶりの上昇率となったが、背景は大きく異なる。23年前半ごろはウクライナ情勢の悪化などによる原油価格の高騰が主因だった。
インフレ動向が注目される中で、やや長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にあるように、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+4.0%、予測レンジの上限で+4.2%と見込まれていましたので、実績の+4.2%はレンジ上限は超えないもののギリギリで、かなり上振れた印象です。なお、ロイターの記事でも、ロイター調査による民間調査機関の予測中央値は+4.0%との結果が示されていました。国内物価の上昇幅が拡大したした要因は、引用した記事にもある通り、コメなどの農林水産物の価格上昇であり、農林水産物は前年同月比で見て昨年2024年12月の+32.9%をさらに超えて今年2025年1月は何と+36.2%の上昇を記録しています。もちろん、上のグラフにも見られるように、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年中には2ケタ上昇の月がありましたし、今さら+4%上昇で驚くエコノミストは少ないと思うのですが、引用した記事でも指摘しているように、2022年のインフレは石油などのエネルギー価格の上昇が主因であった一方で、昨年来の物価上昇はコメをはじめとする食料品の値上がりに起因していますから、企業間取引の価格とはいえ国民生活への影響も深刻度を増している可能性が高いと私は受け止めています。加えて、引用した記事にもある通り、2024年5月からの再生可能エネルギー発電促進賦課金が引き上げられ、あるいは、政府による「酷暑乗り切り緊急支援」による電気・ガスの補助金は11月検針分で終了し、などといった政府要因で物価を押し上げている点は見逃せません。ただ、電気・ガスの補助金は2月検針分から再開されます。また、為替相場では昨年2024年12月には一時的に円安がストップしたものの、今年2025年1月には再び円安が進んだ点も影響している可能性があります。すなわち、前月比で見て、2024年10月には+4.3%、11月にも+2.8%と対ドルで円安が進んだ後、12月はほぼ横ばいで▲0.1%となったものの、2025年1月には+1.8%の円安が進行しています。また、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2025年2月)を見ておくと、1月前半のWTI原油先物価格は米国寒波や英米の対ロシア制裁強化の影響から、一時、バレル80ドル台に上昇したものの、中東ガザの停戦合意やトランプ米国大統領のサウジへの増産要請などから1月後半には70ドル台前半に下落し、「先行き、原油価格は60ドル台半ばに向けて下落する見通し。」ということになっています。ただ、米国のトランプ次期政権の環境・エネルギー政策にも注目すべきであることはいうまでもありません。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず繰り返しになりますが、農林水産物は12月の+32.9%から1月は+36.2%と上昇幅を拡大しています。これに伴って、飲食料品の上昇率も12月の+2.2%から1月は+2.9%と上昇率が加速しています。電力・都市ガス・水道も12月の+12.7%から1月は+11.1%と2ケタ上昇のまま高止まりしています。ほかに、銅市況の高騰などにより非鉄金属も12月の+12.7%から1月には+14.3%とと2ケタ上昇が加速しています。
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