« 総務省統計局「統計で見る都道府県のすがた 2025」 | トップページ | 今週の読書は不確実性に関する経済書のほか小説ばかりで計6冊 »

2025年2月28日 (金)

3か月連続の減産となった鉱工業生産指数(IIP)と物価上昇見合いの増加を示す商業販売統計

本日は月末の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも1月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.1%の減産でした。3か月連続の減産となります。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.9%増の13兆6230億円を示し、季節調整済み指数は前月から+0.5%の上昇を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産1月は前月比1.1%低下、3カ月連続マイナス
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数速報は前月比1.1%低下と、3カ月連続のマイナスとなった。ロイターがまとめた事前予測は1.2%低下。
12月(確報値)の0.2%低下より大幅なマイナスだった。
業種別では、半導体製造装置が19.4%減少するなど、生産用機械のマイナス寄与が最も大きかった。スマートフォンで使うモス型メモリを含む電子部品・デバイスも5.4%減少し、下押し要因となった。
半面、自動車や鉄鋼・非鉄金属、化学は増産となった。
全15業種のうち9業種が低下、6業種が上昇。経済産業省は生産の基調判断を「一進一退」に据え置いた。
企業の生産計画から算出する予測指数は2月が前月比5.0%上昇、3月が同2.0%低下となった。
小売業販売額1月は前年比3.9%増、燃料・医薬伸びる=経産省
経済産業省が28日に発表した1月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比3.9%増の13兆6230億円だった。ロイターの事前予測調査では4.0%増が予想されていた。 ガソリン価格上昇が押し上げたとみられるほか、ドラッグストアなどの販売増加が寄与した。
業種別の前年比はガソリンスタンドなどの燃料小売が8.7%増、ネット通販など無店舗小売が8.0%増、自動車が5.9%増、医薬品・化粧品が4.9%増、家電などの機械器具が2.8%増、織物・衣服が1.0%増、飲食料品が0.9%増だった。
業態別の前年比は、ドラッグストアが6.2%増と大きく伸びた。調剤医薬品、化粧品、食品のいずれも伸びた。このほか、家電大型専門店が5.0%増、百貨店が4.4%増、スーパーが4.1%増、コンビニエンスストアが4.1%増、ホームセンターが0.6%増だった。

2つの統計から取りましたので、やや長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲1.2%の減産、また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく▲1.2%の減産が予想されていましたので、実績である▲1.1%と大きな差はなく、2か月ぶりの減産ですが、特段のサプライズはありません。統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の2月は補正なしで+5.0%の増産、3月は▲2.0%の減産なのですが、上方バイアスを除去した補正後では、2月の生産は+2.3%の減産と試算されています。1-2月の生産は中華圏の春節によるかく乱効果が無視できず、季節調整でこのかく乱要因が除去しきれていない印象を私は持っています。経済産業省の解説サイトによれば、1月統計における生産は、生産低下方向に寄与した産業として、生産用機械工業が前月比▲12.3%の減産で▲1.12%の寄与度を示したほか、電子部品・デバイス工業が▲5.4%の減産で▲0.32%の寄与度、電機・情報通信機械工業が△3.1%の減産で△0.27%の寄与度、などとなっています。他方で、生産上昇方向に寄与したのは、自動車工業が+6.9%の増産で+0.88%の寄与度、鉄鋼・非鉄金属工業が+2.3%の増産で+0.14%の寄与度、化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)が2.7%の増産で+0.12%の寄与度、
広く報じられている通り、米国ではトランプ政権発足に伴って関税引上げを連発していて、輸出にいく分なりとも依存する我が国の生産の先行きは極めて不透明です。表明されている25%の米国関税の引上げが自動車工業などに及ぼす影響については、注視する必要があります。

photo

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、伸び率はまだプラスを維持しているものの、やや伸びに鈍化が見られます。季節調整済みの系列では停滞感が明らかとなっていて、昨年2024年9月△2.2%の減少、10月も△0.2%の後、11月こそ+1.9%と増加を示しましたが、12月統計では再び▲0.8%減、本日公表の今年2025年1月統計では+0.5%の伸びにとどまりました。引用した記事にある通り、ロイターでは季節調整していない原系列の小売業販売を前年同月比でみた伸びを+4.0%の市場の事前コンセンサスとしていましたので、実績の+3.9%増はほぼコンセンサス通りです。統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断していて、本日公表の1月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.5%の上昇となりましたので、今月も「一進一退」で据え置かれています。昨年2024年9月の段階で「上方傾向」から「一進一退」と明確に1ノッチ下方修正した後、据置きを続けています。なぜか、鉱工業生産と同じ表現となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、1月統計ではヘッドライン上昇率が+4.0%となっていますので、小売業販売額の1月統計の前年同月比+3.9%の増加は、インフレ率との関係はビミョーであり、実質消費はプラスか、マイナスか、きわどいところといえます。すなわち、小売業販売額の伸びはほぼほぼ物価上昇見合いと考えるべきです。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。

|

« 総務省統計局「統計で見る都道府県のすがた 2025」 | トップページ | 今週の読書は不確実性に関する経済書のほか小説ばかりで計6冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 総務省統計局「統計で見る都道府県のすがた 2025」 | トップページ | 今週の読書は不確実性に関する経済書のほか小説ばかりで計6冊 »