1月の企業向けサービス価格指数(SPPI)は上昇率が+3.1%に加速
本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月2024年12月の+3.0%からわずかに拡大して+3.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも前月から△0.1%ポイント縮小の+3.0%の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、1月3.1%上昇 人件費転嫁続く
日銀が25日に発表した1月の企業向けサービス価格指数(速報値、2020年平均=100)は108.6と前年同月比で3.1%上昇した。伸び率は24年12月(3.0%上昇)から0.1ポイント拡大し、2カ月ぶりの水準となった。幅広い分野で人件費を価格に転嫁する動きが続いている。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。例えば貨物輸送代金や、IT(情報技術)サービス料などで構成される。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。今回、24年12月分の前年同月比上昇率は2.9%から3.0%に上方修正になった。
内訳をみると、宿泊サービスは16.8%上昇し24年12月(11.9%上昇)から伸び率が拡大した。1月末から春節(旧正月)が始まり、中国などアジア圏からの訪日客が増加したことが押し上げに寄与した。
外航貨物輸送は1.3%下落となり、24年12月(5.6%下落)からマイナス幅が縮小した。1月10日に米バイデン前政権下で発表されたロシア石油産業に対する経済制裁強化やトランプ政権の通商政策の不確実性を受け、外航タンカーの船舶確保を前倒しする動きがあった。それがスポット価格を押し上げた。ただ、燃料費の下落を背景に前年比でみると依然マイナス基調にある。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費率サービス)は3.3%上昇し、低人件費率サービスも3.0%上昇した。調査対象の146品目のうち、価格が上昇したのは112品目、下落は17品目、不変は17品目だった。
もっとも注目されている物価指標のひとつですから、どうしても長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、昨年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は1月統計で+4.2%に達しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2024年6月に+3.2%まで加速し、その後、2024年9月に+2.8%を記録した以外は、本日公表の2025年1月まで+3%以上の上昇率を続けています。+3%を下回ったわけです。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしていることは変わりありません。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近傍の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はなく、広く人件費などのコストが価格に転嫁されている印象です。でも、引用した記事なんかでは、日経新聞の「人件費の転嫁」を強調したい意図が透けて見えます。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて1月統計のヘッドライン上昇率+3.1%への寄与度で見ると、機械修理や宿泊サービスや土木建築サービスなどの諸サービスが+1.66%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは12月の+11.9%の上昇から1月には+16.8%になりましたが、前月比では▲7.0%の下落となっています。いずれにせよ、中華圏の春節に伴うインバウンド需要もあって引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送などの運輸・郵便が+0.55%、情報処理・提供サービスやソフトウェア開発やインターネット附随サービスといった情報通信が+0.31%、ほかに、不動産+0.24%、リース・レンタルも+0.17%などとなっています。
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