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2025年3月11日 (火)

昨年2024年10-12月期GDP統計速報2次QEは1次QEから下方修正も高い成長率を示す

本日、内閣府から2024年10~12月期GDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.6%増、年率換算で+2.2%増を記録しています。3四半期連続のプラス成長で、1次QEからはわずかに下方改定されています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+2.9%、国内需要デフレータも+2.4%に達し、2年8四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP改定値、2.2%増に下方修正 24年10-12月期
内閣府が11日発表した2024年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.6%増、年換算で2.2%増だった。2月発表の速報値(前期比0.7%増、年率2.8%増)から下方修正した。最新の経済指標を反映した結果、個人消費や在庫が下振れした。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値(前期比0.7%増、年率2.7%増)を小幅に下回った。2024年暦年では0.1%増と速報値から変わらなかった。
項目別にみると、GDPの過半を占める個人消費が速報値の前期比0.1%増から改定値で横ばいに下方修正となった。サービス関連の最新の統計を反映した結果、飲食や宿泊関連の需要が弱くなった。自動車も下押し要因となった。
設備投資は0.5%増から0.6%増に上方修正となった。昨年12月のソフトウエア投資が想定よりも上振れたという。
民間在庫の成長率への寄与度は速報値のマイナス0.2ポイントから、改定値でマイナス0.3ポイントへ下向きに見直した。原油などの在庫で取り崩しが発生した。
公共投資は0.3%減から0.7%減に下方修正した。公共工事が一巡したことが響いた。民間住宅は0.1%増から0.2%減とマイナスに転じた。リフォーム関連の需要が弱かったという。
輸出は1.1%増から1.0%増に修正した。海外需要の寄与度は変わらなかった。
赤沢亮正経済財政・再生相は11日の記者会見で、足元の経済状況について「春季労使交渉における高い賃上げなど、引き続き雇用・所得環境の改善で景気は緩やかな回復が続く」との認識を示した。「海外経済の下振れリスクや米国の政策動向、物価上昇による個人消費への影響には十分注意する必要がある」とした。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2023/10-122024/1-32024/4-62024/7-92024/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.0▲0.5+0.8+0.4+0.7+0.6
民間消費▲0.1▲0.5+0.8+0.7+0.1+0.0
民間住宅▲1.1▲2.7+1.4+0.5+0.1▲0.2
民間設備+1.9▲0.4+1.1▲0.1+0.5+0.6
民間在庫 *(▲0.0)(+0.2)(+0.0)(+0.1)(▲0.2)(▲0.3)
公的需要▲0.3▲0.3+1.8▲0.1+0.1+0.1
内需寄与度 *(+0.1)(▲0.3)(+1.1)(+0.5)(▲0.1)(▲0.2)
外需寄与度 *(▲0.1)(▲0.3)(▲0.3)(▲0.1)(+0.7)(+0.7)
輸出+2.9▲4.1+1.7+1.5+1.1+1.0
輸入+3.1▲2.8+3.0+2.0▲2.1▲2.1
国内総所得 (GDI)▲0.1▲0.5+1.1+0.4+0.8+0.7
国民総所得 (GNI)+0.1▲0.5+1.5+0.5+0.4+0.3
名目GDP+0.3▲0.0+2.2+0.7+1.3+1.1
雇用者報酬+0.1+0.3+0.9+0.4+1.5+1.4
GDPデフレータ+4.2+3.1+3.1+2.4+2.8+2.9
内需デフレータ+2.3+2.0+2.6+2.2+2.3+2.4

上のテーブルに加えて、需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2024年10~12月期のGDP統計速報2次QEの最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、黒の純輸出が大きなプラスの寄与度を、水色の設備投資が小幅なマイナスの寄与を、灰色の在庫がマイナス寄与を、それぞれ示しているのが見て取れます。

photo

繰り返しになりますが、先月2月17日に公表された1次QEでは季節調整済みの系列で前期比+0.7%、前期比年率で+2.8%の成長でしたが、本日の2次QEではそれぞれ+0.6%、+2.2%に下方修正されています。1次QEから大きな改定はなく、消費と住宅投資が小幅に下方修正された一方で、設備投資が上昇改定されています。小幅なマイナス寄与の内需に対して、外需のプラス寄与が大きく、合わせてGDP成長率としてはそこそこのプラス、という結果で変わりありませんでした。在庫のマイナス寄与幅が拡大していますが、成長率を押し下げた一方で在庫調整も進んでいるわけですので、決して悪い話ではありません。引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比年率で+2.7%のプラスでしたので、1次QEから下方修正という方向性は大きなサプライズなく受け止められているのではないかと思います。
先行きの景気に関して、3点ほど考えておきたいと思います。第1に、2024年10~12月期は外需主導の高成長でしたが、少なくとも、外需主導の成長はサステイナブルではありません。加えて、米国が関税引上げの乱発を始めていますし、米国経済は年内にリセッションに入る可能性が十分高まっていると考えるべきですから、外需主導の成長はさらに望み薄です。第2に、今年の春闘における賃上げが内需の大きな部分を占める消費を左右します。当然です。先週3月6日に、連合が2025春闘の要求集計を明らかにしています。これによれば、2025年春闘の賃上げ要求は19,244円+6.09%と、昨年要求を+0.24%ポイント上回り、しかも、300人未満の中小組合では17,667円+6.57%と、人手不足と物価上昇を背景に、昨年を+0.60%ポイント上回る要求を掲げています。もちろん、最終の結果は現時点では判りかねる部分がありますが、私なんかから見て、経営者サイドの意向も十分配慮した連合ですら、こういった高い水準の賃上げ要求を打ち出しているわけですし、消費が盛り上がれば投資も遅れてついてくる可能性が高く、今年の先行きの内需に期待が高まります。第3に、日本経済に影を落とす可能性があるのは中央発條藤岡工場での爆発事故に起因する自動車工業に対する供給制約です。私は第3報までのプレスリリースを中央発條のニュースサイトで見ていて、各種報道でもトヨタ、ダイハツ、スズキといった自動車メーカーが生産額する供給制約下にあると報じられています。技術的なことはサッパリ判りませんが、昨年も認証不正や台風などの影響による生産ライン停止があり、一定の経済的な影響をもたらしたことを記憶しています。現時点で情報が不十分ながら、先行きの懸念材料と私は考えています。

ただ、こういった諸条件を考え合わせたとしても、足元の1~3月期は何とかプラス成長を続ける可能性が高いと私は見ています。

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