景気変動と物価変動を抑えるコストはどれくらいか?
最近、全米経済調査会(NBER)から "How Costly Are Business Cycle Volatility and Inflation? A Vox Populi Approach" というワーキングペーパーが明らかにされています。マクロ経済政策のひとつの目標が、景気循環や物価上昇などの経済変動を抑制することにあります。でも、どこまでコストをかけるか、については議論が分かれるところです。この論文ではWTP=Willingness to Payをアンケート調査で把握することにより、こういったコストの目安を分析しようと試みています。まず、論文の引用情報は以下の通りです。
次に、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると以下の通りです。
ABSTRACTUsing surveys of households across thirteen countries, we study how much individuals would be willing to pay to eliminate business cycles. These direct estimates are much higher than traditional measures following Lucas (2003): on average, households would be prepared to sacrifice around 5-6% of their lifetime consumption to eliminate business cycle fluctuations. A similar result holds for inflation: to bring inflation to their desired rate, individuals would be willing to sacrifice around 5% of their consumption. Willingness to pay to eliminate business cycles and inflation is generally higher for those whose consumption is more pro-cyclical, those who are more uncertain about the economic outlook, and those who live in countries with greater historical volatility.
すなわち、調査の対象となった家計では生涯所得の5-6%くらいであれば、景気循環の変動を除去するために準備することができる、という結果です。私には信じられないくらい高額だという気がします。一応、ワーキングペーパーから Figure 3. Willingness to pay to eliminate business cycles を引用すると以下の通りです。
繰り返しになりますが、ややお高いという気はしますが、WTP=Willingness to Payですので、今持っていないものを入手するためのコストですから、通常はそれほど大きなバイアスはない可能性があります。逆に、今現在持っているものを手放すWTA=Willingness to Acceptで評価すれば、ツベルスキー-カーネマンによるプロスペクト理論が示すように、とてつもない高額になるバイアスがあると考えられます。例えば、Brynjolfsson らによる研究では、インターネットの検索機能を手放すためには2017年価格の米ドルで年間17,530ドルを受け取らないと割が合わない、という結果が示されています。いずれにせよ、とても興味深い結果であると私は受け止めています。
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