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2025年4月18日 (金)

まだまだ+3%台の上昇率が続く3月の消費者物価指数(CPI)

本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+3.0%からやや加速して+3.2%を記録しています。まだまだ+3%台のインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から36か月、すなわち、3年間続いています。ヘッドライン上昇率も+3.6%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.9%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

3月の消費者物価3.2%上昇 コメは伸び率92%で過去最大
総務省が18日発表した3月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が110.2となり、前年同月と比べて3.2%上昇した。2月の3.0%を上回り、2カ月ぶりに伸びが拡大した。電気・都市ガス代の上昇は鈍化したものの、コメなど食料高が続いている。
3%台の上昇率は4カ月連続で、上昇は43カ月連続となった。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.2%の上昇だった。
政府による電気・ガス代補助でエネルギー関連の伸びは抑制されている。一方で、コメ類は92.1%上がり、比較可能な1971年1月以降で最大の上げ幅となった。6カ月連続で過去最大幅を更新した。生産や運送のコスト上昇に加え、需給が逼迫している現状を映している。
物流費や人件費の上昇を受けて3月に価格改定があった外食のハンバーガーや、1月の鳥インフルエンザ発生の影響を受けた鶏卵なども物価を押し上げた。生鮮食品を除いた食料の上げ幅は6.2%に達した。2月の5.6%を上回った。
生鮮食品も含めた総合は3.6%上がった。2月の3.7%から伸びは縮小した。ブロッコリーやトマト、イチゴといった生鮮食品の価格が下落している。
エネルギー関連の全体の上昇率は6.6%となり、2月の6.9%から縮んだ。電気・ガス代への政府補助が効いている。上げ幅は電気代が8.7%、都市ガス代が2.0%と、いずれも2月から伸びが縮小した。
ガソリン代は6.0%上昇し、2月の5.8%から拡大した。価格高騰を抑える政府補助の目安を1月から小売価格で1リットルあたり185円程度に引き上げた影響が出ている。
2024年度の1年間で見ると、生鮮食品を除く総合は平均で108.7となり、前年度と比べて2.7%上昇した。上昇は4年連続。伸び率は23年度の2.8%からやや縮小した。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事には、2パラめに市場の事前コンセンサスは+3.2%とありますが、私の調べた範囲では、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.3%、ロイターの記事「全国コアCPI、3月は+3.2%に加速 米関税で下方リスクの声」では+3.2%ということでした。また、エネルギー関連の価格が抑制されているのは、政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による押下げ効果です。総務省統計局の公表資料によれば、ヘッドラインCPI上昇率への寄与度は▲0.33%、うち、電気代が▲0.28%、都市ガス代が▲0.05%との試算値が示されています。続いて、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、食料価格の上昇が引き続き大きくなっています。すなわち、先月2月統計では生鮮食品を除く食料の上昇率が前年同月比+5.6%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+1.35%であったのが、3月統計ではそれぞれ+6.2%、+1.49%と、一段と高い伸びと寄与度を示しています。他方で、エネルギー価格も上昇していますが、政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」により上昇幅は縮小しています。すなわち、エネルギー価格については2月統計で+6.9%の上昇率、寄与度+0.52%でしたが、本日公表の3月統計では上昇率+6.6%と高い伸びは続いますが、やや縮小していて、寄与度も+0.50%となっています。寄与度差は▲0.02%ポイントと、わずかながらマイナスを記録しました。特に、エネルギーの中で上昇率が大きいのは電気代であり、エネルギーの寄与度+0.50%のうち、実に電気代だけで寄与度は+0.29%に達しています。また、ガソリン価格も高騰を続けており、2月統計の+5.8%の上昇から、3月は+6.0%になりました。食料とエネルギー以外では、公正取引委員会のカルテル摘発もあった宿泊料が2月統計の上昇率+5.2%、寄与度+0.06%から、3月統計では上昇率+6.6%、寄与度+0.07%に加速しています。3月にはすでに中華圏の春節休暇が終了しているのですから、もしも、昨日の日経新聞記事「名門ホテルにカルテル恐れ、問題視された業界の情報交換」にあるようなカルテル行為で価格が上昇しているのだとすれば、公正取引委員会の厳正な措置が望まれるところです。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+6.2%、寄与度+1.49%に上ります。その食料の中で、コアCPIの外数ながら、生鮮野菜が上昇率+22.1%、寄与度+0.43%、生鮮果物も上昇率+10.2%、寄与度+0.11%と大きな価格上昇を示しています。特に、私がよく例として取り上げているキャベツは上昇率+111.6%と昨年同月から2倍超に跳ね上がっていて、寄与度もキャベツ単独で+0.12%もあったりします。ほかには、なんといっても注目はコメといえます。コシヒカリを除くうるち米が上昇率+92.5%ととてつもない価格高騰を示していて、寄与度も+0.34%あります。そもそも、スーパーなどの店頭で見かけなくなった気すらします。うるち米を含む穀類全体の寄与度は+0.58%に上ります。さすがに、農林水産省も備蓄米の放出にかじを切ったようですが、現時点で価格の安定は見られません。主食に加えて、チョコレートなどの菓子類も上昇率+6.9%、寄与度+0.18%を示しており、コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+4.6%、寄与度+0.17%、同様に外食も上昇率+3.6%、寄与度+0.17%と、それぞれ大きな価格高騰を見せています。ほかの食料でも、豚肉などの肉類が上昇率+5.1%、寄与度+0.13%、コーヒー豆などの飲料も上昇率+6.2%、寄与度0.11%、などなどと書き出せばキリがないほどです。何といっても、食料は国民生活に欠かせない基礎的な物資であり、価格の安定を目指す政策を望むとともに、価格上昇を上回る賃上げを目指した春闘の成果を期待しています。

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