成長率と物価上昇率が下方修正された日銀「展望リポート」の経済見通しとトランプ関税で大きく消費者マインドが低下した4月の消費者態度指数
昨日から本日5月1日にかけて開催されていた金融政策決定会合で政策金利を0.5%に据え置くと決定しました。また、同時に公表された「経済・物価情勢の展望 (展望リポート)」では、2025年度から27年度の経済見通しが明らかにされ、経済成長率については本年度2025年度+0.5%、来年度2026年度+0.7%を見込み、前回1月に示したリポートの見通しである2025年度+1.1%、2026年度+1.0%から下方修正しています。まず、「展望リポート」から2024~2027年度の政策委員の大勢見通しを引用すると以下の通りです。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、 です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。
実質GDP | 消費者物価指数 (除く生鮮食品) | (参考) 消費者物価指数 (除く生鮮食品・エネルギー) | ||
2024年度 | +0.7 ~ +0.7 <+0.7> | +2.7 | +2.3 | |
1月時点の見通し | +0.4 ~ +0.6 <+0.5> | +2.0 ~ +2.3 <+2.2> | +2.1 ~ +2.3 <+2.2> | |
2025年度 | +0.4 ~ +0.6 <+0.5> | +2.0 ~ +2.3 <+2.2> | +2.2 ~ +2.4 <+2.3> | |
1月時点の見通し | +0.9 ~ +1.1 <+1.1> | +2.2 ~ +2.6 <+2.4> | +2.0 ~ +2.3 <+2.1> | |
2026年度 | +0.6 ~ +0.8 <+0.7> | +1.6 ~ +1.8 <+1.7> | +1.7 ~ +2.0 <+1.8> | |
1月時点の見通し | +0.8 ~ +1.0 <+1.0> | +1.8 ~ +2.1 <+2.0> | +1.9 ~ +2.2 <+2.1> | |
2027年度 | +0.8 ~ +1.0 <+1.0> | +1.8 ~ +2.0 <+1.9> | +1.9 ~ +2.1 <+2.0> |
上のテーブルは、本日公表された「展望リポート」の基本的見解のp.9から引用しており、その次のp.10には政策委員の経済・物価見通しとリスク評価が掲載されていて、大雑把に見て、実質GDPも消費者物価指数(除く生鮮食品)も、どちらもリスクは下方に厚いと判断している政策委員が多い印象ですし、「展望リポート」でもp.7で「リスクバランスは、経済の見通しについては、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについても、2025 年度と 2026 年度は下振れリスクの方が大きい。」と明記しています。経済見通しについては「展望リポート」p.2で「先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。」と指摘し、物価についてもp.4で「消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。」としています。その上で、金融政策運営に関してはp.8で「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と、金利の追加引上げに前のめりの姿勢を崩していません。

「展望リポート」を離れると、本日、内閣府から4月の消費者態度指数が公表されています。4月統計では、前月から大きく▲2.9ポイント低下して31.2を記録しています。消費者態度指数を構成する4項目の指標がすべて前月差で低下しました。詳しく見ると、「暮らし向き」が▲3.6ポイント低下し27.3、「雇用環境」が▲3.5ポイント低下し35.7、「耐久消費財の買い時判断」が▲3.1ポイント低下し24.2、「収入の増え方」が▲1.3ポイント低下し37.5を示しています。統計作成官庁である内閣府では、1月統計で基調判断を「改善に足踏みがみられる」から「足踏みがみられる」に明確に1ノッチ下方修正した後、4月統計ではさらに「弱含んでいる」と、これまた明確に1ノッチ下方修正しています。なお、消費者態度指数の低下は5か月連続です。従来から主張しているように、いくぶんなりとも、消費者マインドは物価上昇=インフレに連動している部分があると考えるべきですが、本日公表の4月統計については、米国トランプ政権の関税政策についても大きく影響していると考えるべきです。
また、インフレに伴って注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が3月統計の55.3%から本日公表の4月統計ではとうとう60.0%に上昇する一方で、2%以上5%未満物価が上がるとの回答は31.2%から26.9%に低下し、物価上昇の見通しは高い方にシフトしています。そして、物価上昇を見込む割合は93.2%と9割を超える高い水準が続いています。
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