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2025年6月11日 (水)

+3.2%に上昇率が鈍化した5月の国内企業物価指数をどう見るか?

本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+3.2%の上昇となり、4月統計の+4.1%から上昇率がやや縮小したものの、依然として高い伸びが続いています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価指数、5月3.2%上昇 コメ価格高騰響く
日銀が11日発表した5月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は126.3と前年同月比で3.2%上昇した。コメ価格高騰の影響は引き続きみられたが、4月(4.1%上昇)から伸び率は鈍化した。3%台となるのは24年11月以来、6カ月ぶり。民間予測の中央値(3.5%上昇)を0.3ポイント下回った。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。4月分の前年同月比上昇率は発表当初4.0%だったが、遡及修正で4.1%に変更された。
5月分の内訳をみると、コメ価格や鳥インフルエンザの感染拡大による鶏卵価格の上昇を受け、農林水産物は前年同月比42.8%上昇した。4月(43.5%上昇)から若干鈍化した。精米単独でみると82.3%上昇し、4月(81%上昇)から伸び率が拡大した。日銀によると、備蓄米の放出による影響は指数に含まれていない。
石油・石炭製品は前年同月比0.6%上昇と4月(6.3%上昇)から大幅に鈍化した。原油価格の下落を受けたためで、全体の伸び率の押し下げにもつながった。電力・都市ガス・水道は政府による電気ガス料金の補助金の終了や再エネ賦課金の引き上げが影響し、6.5%上昇した。
輸出物価指数の円ベースは前年同月比で6.4%下落と4月(4.3%下落)から下落幅が拡大した。トランプ政権の関税措置を見越した動きが影響したとみられる。日銀によれば、一部の企業が現地の子会社と自動車などの輸送用機器の販売価格を調整したという。
日銀が公表している515品目のうち、価格が上昇したのは364品目、下落したのは130品目だった。

インフレ動向が注目される中で、やや長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

引用した記事にはありませんが、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.5%でしたし、ロイターでも同じく市場の事前こセンサスは+3.5%でしたので、実績の+3.2%はやや下振れした印象です。ただ、これでも日銀物価目標の+2%を大きく上回っていることが事実であり、高止まりしている要因は、引用した記事にもある通り、コメなどの農林水産物です。引用した記事にもある通り、農林水産物は前年同月比で見て4月+43.5%の後、本日公表の5月統計では+42.8%と、猛烈な上昇を見せています。軽く想像される通り、コメなどは生活必需品の食料のひとつであって、企業間取引の価格とはいえ当然に小売価格にも波及するわけですから、国民生活への影響も深刻度を増している可能性が高いと私は受け止めています。ただし、為替相場では2月から4月まで3か月連続で円高が進んだ後、5月もわずかに円安を記録したとはいえ、+0.2%の円安ですので、一定、物価を抑制する方向での変化であると考えるべきです。また、私自身が詳しくないので、エネルギー価格の参考として、日本総研「原油市場展望」(2025年6月)を見ておくと、「当面の原油価格は50ドル台半ばに向けて下落する見通し」と指摘しています。円ベースの輸入物価指数の前年同月比は、今年に入って、4月▲7.3%、5月△10.3%と下落しており、国内物価の上昇は国内要因による物価上昇であることは明らかです。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、まず繰り返しになりますが、農林水産物は4月の+43.5%から5月は+42.8%と高止まりしています。これに伴って、飲食料品の上昇率も4月の+4.0%から5月は+4.2%と加速しています。電力・都市ガス・水道は4月の+10.1%から、5月は+6.5%と上昇率を縮小させていますが、依然として高い上昇率が続いています。

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