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2025年6月 6日 (金)

緩やかな減速を見せる5月の米国雇用統計

日本時間の今夜、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は、3月統計の+147千人増から5月統計では+139千人増と小幅な減速を見せ、失業率は前月から横ばいの4.2%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事をコンパクトに4パラ引用だけすると以下の通りです。

May jobs report released: Employers added 139K jobs; unemployment held steady
U.S. payroll growth slowed modestly in May as employers added 139,000 jobs amid uncertainty about President Trump's sweeping import tariffs, federal government layoffs and immigration crackdown.
The unemployment rate held steady at 4.2%, the Labor Department said Friday.
Before the report’s release, economists surveyed by Bloomberg estimated 125,000 jobs were added last month.
Job gains for March and April were revised down by a combined 95,000, portraying a weaker labor market than believed in late winter and early spring. March's total was downgraded from 185,000 to 120,000 and April's from 177,000 to 147,000.

いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、3月の+120千人増から4月には147千人増にやや加速したものの、本日公表された5月統計では+139千人増に減速しました。加えて、前の3-4月の統計が下方修正されており、3月の伸びは+185千人増から+120千人増に、4月も+177千人増から+147千人増にそれぞれ改定されています。雇用統計の観点からは雇用の増加にはブレーキがかかり、トランプ政権の高関税政策とも相まって、景気後退懸念が現実化する可能性が出始めています。ただし、引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスは+125千人増でしたから、この市場予想からは上振れしていることになります。また、政府雇用は4月統計では+1千人増、5月統計ではとうとう△1千人減となっており、連邦政府職員の減少を反映して、公務員が減少しました。
すでに、広く報じられている通り、1~3月期米国GDPはマイナス成長を記録しています。基本的には、関税引上げを前にした輸入の急増が主因ですが、もしも、トランプ政権の関税引上げ政策が政権の目論見通りに実行されれば、消費者マインドが悪化して、年内に景気後退局面に入る可能性が高まると考えられます。ただし、他方で、関税分が価格に上乗せされればインフレが加速することから、米国金融政策当局である連邦準備制度理事会(FED)による金融政策の舵取りが難しくなっています。

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