+3%超の上昇率で高止まりする5月の企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月4月の+3.4%からわずかに縮小して+3.3%を記録しています。ただ、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率は前月から横ばいの+3.5%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。ロイターの記事は現時点でのものでホントのヘッドラインだけです。後ほどUPDATEされると思います。あしからず。
5月企業向けサービス価格、前年比3.3%上昇 前月比0.1%低下=日銀
日銀が25日に公表した5月の企業向けサービス価格指数速報は前年比で3.3%上昇する一方、前月比で0.1%低下した。4月は前年比3.4%上昇、前月比0.7%上昇(ともに改定値)だった。
注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、2024年12月の前年同月比上昇率から再び+4%台となり、2025年4月統計まで+4%超の上昇率が続いた後、5月統計で+3.2%に減速しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてコンスタントに上昇を続けている一方で、国内企業物価指数ほど上昇率が大きくないのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、今年2025年1月に+3.5%の直近での上昇率のピークを記録してから、本日公表の2025年5月まで徐々に上昇率を縮小させていますが、まだ+3%台の上昇率を続けています。2024年10月からカウントしても8か月連続の+3%台の上昇率です。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%超の上昇率はデフレに慣れきった国民や企業のマインドからすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が高いと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、高人件費比率のサービス価格であっても+3%近い上昇率を示しています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っており、国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて5月統計のヘッドラインSPPI上昇率+3.3%への寄与度で見ると、宿泊サービスや機械修理や土木建築サービスなどの諸サービスが+1.73%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは4月の+17.2%の上昇から5月には+16.5%にやや縮小したとはいえ、インバウンド需要もあって引き続き2ケタ上昇が続いています。加えて、情報処理・提供サービスやソフトウェア開発やアクセスチャージなどといった情報通信が+0.53%、さらに、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、昨年2024年10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送さらに、旅行サービスなどの運輸・郵便が+0.50%、ほかに、不動産+0.25%、リース・レンタルも+0.10%、広告も+0.10%などとなっています。
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