先行指数が大きく下降した4月の景気動向指数
本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から▲4.2ポイント下降の103.4を示し、CI一致指数も▲0.3ポイント下降の115.5を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから報道を引用すると以下の通りです。
景気一致指数 4月0.3ポイント低下、先行指数はコロナ禍以来の低下幅
内閣府が6日公表した4月の景気動向指数(速報値、2020年=100)によると、足元の景気を示す一致指数は前月比0.3ポイント低下の115.5と2カ月連続でマイナスとなった。先行指数は同4.2ポイント低下の103.4。3カ月連続のマイナスで、低下幅は新型コロナ感染が拡大した2020年4月以来の大きさだった。
一致指数から機械的に決める基調判断は、12カ月連続で「下げ止まりを示している」とした。
一致指数を構成する指標のうち、投資財出荷指数や輸出数量指数、生産指数などがマイナスに寄与した。フラットパネルや半導体製造装置の減少が響いた。輸出は欧州連合(EU)向けが悪化した。
先行指数は、トランプ関税の影響で消費者態度指数や日経商品指数、東証株価指数が悪化したのが響いた。新設住宅着工床面積も省エネ基準厳格化による駆け込み需要が3月に発生した反動で悪化した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

3月統計のCI一致指数は2か月連続の悪化となりました。3か月後方移動平均も2か月ぶりの前月比マイナスを記録した一方で、7か月後方移動平均は9か月連続の上昇で、4月統計では+0.16ポイント改善しています。しかし、統計作成官庁である内閣府では基調判断は、今月も「下げ止まり」で据え置いています。引用した記事にもある通り、昨年2024年5月に変更されてから12か月連続で同じ基調判断の据置きです。なお、細かい点ながら、上方や下方への局面変化は7か月後方移動平均という長めのラグを考慮した判断基準なのですが、改善からの足踏み、あるいは、悪化からの下げ止まりは3か月後方移動平均で判断されます。ただ、「局面変化」は当該月に景気の山や谷があったことを示すわけではなく、景気の山や谷が「それ以前の数か月にあった可能性が高い」ことを示しているに過ぎない、という点は注意が必要です。いずれにせよ、私は従来から、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはないと考えていて、それはそれで正しいと今でも変わりありませんが、米国経済に関する前提が崩れつつある印象で、米国経済が年内にリセッションに入る可能性はかなり高まってきており、日本経済も前後して景気後退に陥る可能性が十分あると考えています。理由は、ほかのエコノミストとたぶん同じでトランプ政権が乱発している関税政策です。関税率引上げによって、米国経済においてインフレの加速と消費者心理の悪化の両面から消費を大きく押し下げる効果が強いと考えています。加えて、日本経済はすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありませんし、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めの経済へ影響は明らかにネガであり、引き続き、注視する必要があるのは当然です。
CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、引用したロイターの記事にもあるように投資財出荷や輸出が下押ししており、投資財出荷指数(除輸送機械)が▲0.41ポイント、輸出数量指数が▲0.21ポイント、商業販売額(卸売業)(前年同月比)が▲0.18ポイント、生産指数(鉱工業)が▲0.16ポイントなどであり、他方、逆に前月差プラスとなったのは、鉱工業用生産財出荷指数が+0.27ポイント、耐久消費財出荷指数が+0.21ポイント、などでした。ついでに、引用した記事にありますので、前月差▲4.2ポイントと大きく下降したCI先行指数の下げ要因も数字を上げておくと、消費者態度指数が▲1.20ポイント、新設住宅着工床面積が▲1.08ポイント、日経商品指数(42種総合)が▲0.89ポイント、東証株価指数が▲0.63ポイントなどとなっています。
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