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2025年8月29日 (金)

減産に転じた鉱工業生産指数(IIP)と伸びが鈍化する商業販売統計と底堅い雇用統計

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、さらに、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.6%の減産でした。2か月ぶりの減産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.3%増の13兆3350億円を示し、季節調整済み指数は前月から▲1.6%の低下となっています。雇用統計のヘッドラインは、失業率は前月から▲0.2%ポイント低下して2.3%、有効求人倍率は前月と同じ1.22倍を、それぞれ記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産7月は2カ月ぶり低下、予想下回る 自動車など下押し
経済産業省が29日公表した7月の鉱工業生産指数速報は前月比1.6%低下した。自動車や半導体製造装置の減産が響いた。2カ月ぶりのマイナスで、ロイターがまとめた民間予測の1.0%低下を下回った。
基調判断は「一進一退」で据え置いた。
<自動車は幅広く輸出向けが減産>
業種別で生産を最も下押ししたのは自動車工業で前月比6.7%の減産だった。経産省によると米国や中国、豪州、ドイツ、カナダ向けなど輸出用乗用車が幅広く減少したほか、ハンドルなどの自動車部品も減少した。半導体製造装置や化学機械などの生産用機械工業、コンベヤーやボイラー部品などの汎用・業務用機械工業も減産となった。半導体製造装置は中国向けが主に減少したという。
一方、ノートパソコンやロジック半導体などは伸びた。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のサポート終了に伴う買い替え需要が寄与した。
企業の生産計画にもとづく予測指数は8月が前月比2.8%上昇、9月が同0.3%低下だった。生産計画は上振れ傾向があるため、これを補正すると8月の生産予測は前月比1.7%低下と試算している。
生産計画について弱気な企業の割合が29.0%と強気企業の23.7%を上回っており、「先行きの不透明感から慎重さは根強い」(幹部)と経産省ではみているが、 「慎重さが米関税に起因するのか、他の要因なのか分からない」とも指摘している。
小売業販売7月は前年比0.3%増、プラス幅縮小 食品好調・自動車不振
経済産業省が29日に発表した7月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比0.3%増となった。前月の同1.9%増から伸びが縮小した。食料・医薬品が好調な一方、自動車や家電・燃料が低調だった。
前年比で指数をもっとも大きく押し上げたのは飲食料品小売業で前年比1.5%増加した。経産省では増加が数量要因か値上げ要因か特定できないとしている。
このほか医薬品・化粧品小売業も前年比3.9%減と大きく伸びた。ドラッグストアで備蓄米や日焼け止めなどの販売が増えたのが寄与した。猛暑の影響で織物・衣服も8.0%増となった。
一方、自動車小売業は前年比2.6%減、ガソリン補助金効果で燃料小売り業も同4.9%減だった。
業態別では、インバウンド客減少で百貨店の販売額が6.6%減と低迷したが、スーパーは4.9%増と好調を維持した。コンビニエンスストアも3.6%増加した。エアコン不振で家電大型専門店は4.8%減、ドラッグストアは5.7%増加だった。
完全失業率7月は2.3%に改善、5年7カ月ぶり低水準 有効求人倍率は横ばい
政府が29日発表した7月の雇用関連指標は、完全失業率が季節調整値で2.3%と、前月から0.2ポイント改善した。2019年12月(2.2%)以来5年7カ月ぶりの低水準。より良い条件を求めて離職していた人が就職したとみられている。有効求人倍率は1.22倍で、前月から横ばいとなった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.23倍が見込まれていた。
総務省によると、7月の就業者数は季節調整値で6831万人と、前月に比べて1万人減少。完全失業者数(同)は164万人で、前月から8万人減少した。
女性の正規の職員・従業員数(実数)は1362万人で、比較可能な2013年1月以降で過去最多。総務省の担当者は「売り手市場で雇用情勢は引き続き悪くない」との認識を示している。
<求人、求職ともにほぼ横ばい>
有効求人倍率に大きなトレンドの変化はみられず、有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.2%減少、有効求職者数(同)は0.0%減となった。厚労省の担当者は「引き続き1倍は上回っており、雇用情勢がものすごく悪くなっているわけではない」としている。
大和証券のエコノミスト、鈴木雄大郎氏は「米国の関税負担が日本企業の重荷となる状況は続き、インバウンド需要にも陰りがみられている。内外ともに需要が弱含む中、企業収益は下振れするリスクがある」と指摘。「求人数が一段と減少することで有効求人倍率は緩やかに低下していく可能性が高い」との見方を示している。

いくつかの統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事には、ロイターによる事前予測調査として▲1.0%の減産が示されていますが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、▲1.3%の減産が予想されていました。いずれにせよ、実績である▲1.6%減は市場予想から下振れした印象です。ただし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ下限が▲2.3%でしたので、大きなサプライズというわけではありませんでした。ですので、だからかどうかは不明ながら、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。昨年2024年7月から13か月連続で据え置かれています。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の8月は補正なしで+2.8%の増産、ただし、翌9月は▲0.3%の減産となっています。上方バイアスを除去した補正後では、8月の生産は▲1.7%の減産と試算されています。
経済産業省の解説サイトによれば、7月統計における生産は、減産方向に寄与したのが、自動車工業が前月比▲6.7%減で▲0.87%の寄与度、生産用機械工業が▲6.2%減で▲0.55%の寄与度、汎用・業務用機械工業が▲4.5%減で▲0.34%の寄与度、などとなっています。他方、増産方向に寄与したのは、電気・情報通信機械工業が前月比+1.8%増で+0.15%の寄与度、化学工業(除く、無機・有機化学工業・医薬品)が+3.2%増で+0.14%の寄与度、電子部品・デバイス工業が+2.4%増で+0.14%の寄与度、などとなっています。次に取り上げる商業販売統計とともに、引用した記事にあるように、Windows10のサポート終了に伴う増産が目立っている印象です。先行きで反動があるんでしょうね。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、伸び率はまだギリギリで+0.3%増とプラスを維持しているものの、伸びが大きく鈍化している上に、季節調整済みの系列では停滞感が明らかとなっていて、本日公表の7月統計では早期の梅雨終了や猛暑による気候の効果があると考えられるものの、▲1.6%減のマイナスとなりました。引用した記事にある通り、伸びているのは飲食料品小売業であり、引用した記事では「経産省では増加が数量要因か値上げ要因か特定できない」と報じているものの、実感として価格高騰の影響を感じます。統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断していて、本日公表の7月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.5%の低下となりましたので、先々月の5月統計で下方修正した「一進一退」のまま据え置いています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、7月統計ではヘッドライン上昇率が+3.1%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率でも同じく+3.1%となっていますので、小売業販売額の7月統計の前年同月比+0.3%の増加は、明らかにインフレ率を下回っており、実質消費はマイナスの可能性が高いと考えるべきです。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮しておかねばなりません。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にあるように、ロイターによる事前予測調査では、失業率が前月から横ばいの2.5%、有効求人倍率は前月から0.01ポイント改善して1.23と予想されていましたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、失業率が2.3%有効求人倍率は1.22倍でした。本日公表された実績で、失業率2.3%、有効求人倍率1.22倍に比べても、大きなサプライズはなかった印象です。ただし、いずれも予想のレンジ内ですから、人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率・有効求人倍率ともに雇用の底堅さを示す水準が続いているように見えます。私の印象も引用した記事の厚生労働省のコメント通りです。他方で、もちろん、そろそろ景気回復局面は後半期に入っている可能性が高いと考えるべきですし、その意味で、いっそうの雇用改善は難しいのかもしれません。ただし、春闘賃上げ率に見られるように、労働条件の改善は不十分とはいえ一定程度は進んできており、求職者の就職が進む一方で、職場にとどまる雇用者の増加も見られると聞き及んでおり、いつまでも雇用の改善が続くわけではないながら、一気に悪化する従来の景気後退局面とは異なるように見えます。

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最後に、本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。8月統計では、2か月ぶりの改善を示し前月から+1.2ポイント上昇して34.9を記録しています。また、消費者態度指数を構成する4項目の指標について前月差で詳しく見ると、「雇用環境」が+1.7ポイント上昇して39.3、「暮らし向き」が+1.3ポイント上昇し32.7、「収入の増え方」も+0.9ポイント上昇して39.4、「耐久消費財の買い時判断」が+0.6ポイント上昇して28.0と、4項目すべてが上昇しました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を6月統計で上方修正された「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。さらに、物価上昇に伴って注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が49.8%を占める一方で、2%以上5%未満物価が上がるとの回答も34.0%に上っており、これらも含めた物価上昇を見込む割合は93.4%と高い水準が続いています。ただし、5%以上上昇するとの回答比率は前月の51.3%から49.8%に下がっています。今日は、総務省統計局から東京都区部の消費者物価指数(CPI)も公表されており、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率が+2.5%と落ち着き始めていますので、インフレ期待の今後の動向も注目です。

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