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2025年8月26日 (火)

10か月ぶりに+2%台の上昇率まで鈍化した7月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月6月の+3.2%から、7月は+2.9%と10か月ぶりの+2%台を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率は前月から鈍化しつつも+3.0%の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

7月の企業向けサービス価格2.9%上昇 10カ月ぶり2%台
日銀が26日に発表した7月の企業向けサービス価格指数(速報値、2020年平均=100)は111.0となり、前年同月と比べて2.9%上昇した。伸び率は前月(3.2%上昇)を下回り、2024年9月以来10カ月ぶりの2%台となった。前年に実施した値上げの影響が一部にみられるものの、人件費の上昇をサービス価格に反映する動きは続いている。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。例えば貨物輸送代金やソフトウエアの開発料金などで構成される。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
日銀は今回の発表で5月分の前年同月比上昇率を3.4%から3.5%に遡及修正した。
7月分の内訳をみると、諸サービスは前年同月比で3.3%上昇し、伸び率は6月から0.8ポイント下落した。なかでも機械修理は前年同月比で1.1%上昇と、6月から5.1ポイント鈍化した。前年に実施した値上げ改定の反動とみられ、諸サービス全体の伸び率を押し下げた。
宿泊サービスは前年同月比で5.4%上昇し、伸び率は6月から2.1ポイント下落した。大阪・関西万博の開催に伴うインバウンド(訪日外国人)需要があるものの、増加ペースがやや鈍化したため、伸び率は縮小した。
不動産も前年同月比で2.2%上昇と、伸び率は6月から0.3ポイント下落した。インバウンド需要の勢いが落ち込み、ホテル賃貸などの賃料が下落した影響を受けたもようだ。
情報通信は前年同月比で2.9%上昇し、伸び率は6月から横ばいだった。特にソフトウエア開発は前年同月比3.2%上昇と、6月から0.4ポイント拡大した。人件費などを転嫁する動きが継続している。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費サービス)は3.7%上昇した。6月から横ばいとなっており、引き続き高い伸び率となっている。
調査対象の146品目のうち、価格が上昇したのは111品目、下落したのは19品目だった。16品目では価格が変わらなかった。

注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、今年2025年4月統計まで+4%超の上昇率が続いた後、5月統計で+3.3%に減速し、6月統計でさらに+2.9%に、7月統計でも+2.6%へと急速に上昇幅を縮小させています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてコンスタントに上昇を続けている一方で、今年2025年年央までは国内企業物価指数ほど上昇率が大きくなかったのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、今年2025年3-5月に3か月連続で+3.5%の上昇率のピークを記録してから、先月6月統計で+3.2%、さらに、本日公表の2025年7月統計では、引用した記事にもあるように、+2.9%と10か月ぶりに+2%まで減速しています。しかし、まだまだ、日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近い上昇率はデフレに慣れきった国民や企業のマインドからすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率のサービス価格であっても+2%近い上昇率を示しており、高人件費率のサービスでは+3%台後半の上昇率となっています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っており、国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された7月統計のヘッドラインSPPI上昇率+2.9%への寄与度で見ると、土木建築サービスやその他の技術サービスや建物サービスといった諸サービスが+1.29%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分近くを占めています。ただし、諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、機械修理は6月統計の+6.2%から7月には+1.1%に鈍化し、宿泊サービスも6月の+7.5%の上昇から7月には+5.4%に縮小しています。加えて、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやアクセスチャージなどといった情報通信が+0.63%、さらに、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、昨年2024年10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送、さらに、国内航空旅客輸送などの運輸・郵便が+0.51%、ほかに、不動産+0.20%、リース・レンタルも+0.12%、金融・保険が+0.07%、広告も+0.09%などとなっています。

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