« 運転免許更新のついでに琵琶湖岸を走る | トップページ | 輸出が振るわない貿易統計とまずまず堅調な機械受注 »

2025年8月19日 (火)

戦間期イタリアにおけるファシズムと不平等

経済史の学術誌に "Wars, Depression, and Fascism: Income Inequality in Italy, 1901-1950" と題する論文が掲載されています。イタリアにおけるファシズムが所得不平等に対する不満を背景に政権を取っておきながら、実は、ファシズム政権下で不平等はかえって拡大した、という主張です。pdfの論文本体もダウンロード可能です。まず、論文の引用情報は以下の通りです。

続いて、ジャーナルのサイトからAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
This paper presents yearly estimates of income inequality in Italy from 1901 to 1950. By constructing dynamic social tables, we comprehensively assess inequality across all elements of Italian society and compare Italy with other countries over the same period. In a context of declining inequality across Europe, interwar Italy reveals a trajectory at odds with consolidated narratives: a sharp increase of inequality during World War I, a reversal during 1918-1922, a renewed rise after the Fascist takeover, and new peaks during World War II. Our results allow us to identify sizeable short-term distributive shocks and discuss the political economy of fascist Italy, reinforcing a reinterpretation of interwar inequality trends in Europe and the regressive nature of fascist regimes.

続いて、論文から Fig. 7. Inequality in Europe, 1900-1950. を引用すると下の通りです。縦軸は不平等指標としてジニ係数を取っています。

photo

見れば判ると思いますが、英国以外の3国、すなわち、本論文でフォーカスしているイタリアはもちろん、ドイツもスペインもファシスト政権が成立した国です。そして、その3国に共通していることに、第1次世界大戦の終了、というか、戦間期に入って急速に不平等が解消されるのですが、その反動から再びイタリアとスペインでは1920年代から、ドイツでは1930年代から、それぞれ、ジニ係数で計測した所得不平等の度合いが高まります。そういった国民の格差拡大に対する不満の高まりも背景に、ほかの要因も相まってファアシスト政権が成立するのですが、少なくとも第2次世界大戦に枢軸国として参戦するドイツとイタリアではファシスト政権下で所得不平等は決して解消されていません

経済史から見出すべき歴史の教訓は、不平等だけが要因ではありませんが、そういった国民の不満を背景にしてポピュリスト政党が得票を伸ばして、あるいは、極右またはファシスト的な政権が成立したとしても、決して、不平等は解消されない可能性が示唆されている点です。引用したAbstractの最後のセンテンスでも "the regressive nature of fascist regimes"=ファシスト政権の逆進的な本質、という言葉が見えます。「新しい戦前」とすら考えられる時期の8月に、エコノミストとして、そして、ヒストリアンとして、ぜひとも考えておきたいポイントです。

|

« 運転免許更新のついでに琵琶湖岸を走る | トップページ | 輸出が振るわない貿易統計とまずまず堅調な機械受注 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 運転免許更新のついでに琵琶湖岸を走る | トップページ | 輸出が振るわない貿易統計とまずまず堅調な機械受注 »