2か月連続で下降した8月の景気動向指数
本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から+1.3ポイント上昇の107.4を示した一方で、CI一致指数は▲0.7ポイント下降の113.4を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから報道を引用すると以下の通りです。
景気指数、8月0.7ポイント低下 判断「下げ止まり」据え置き
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(速報値)は足元の経済状況を示す一致指数(2020年=100)が113.4と前月比で0.7ポイント低下した。低下は2カ月連続だった。
指数を基に機械的に決める基調判断は「下げ止まり」で据え置いた。下げ止まりの判断は16カ月連続となった。
指数を構成する指標のうち輸出数量指数が落ち込み、全体の指数を0.37ポイント押し下げた。米国やアジア向けの輸出が振るわなかった。
生産指数(鉱工業)も0.25ポイントの押し下げ要因となった。パソコンの生産が低迷した。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のサポート終了に伴う買い替え需要などを背景に生産活動は高めの水準で推移していたが、8月は一服した可能性がある。
商業販売額は小売り、卸売りともに全体の指数を押し下げた。前年の夏に台風や南海トラフ地震臨時情報の影響で備蓄用品の販売が伸びており、その反動がみられた。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

8月統計のCI一致指数は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前月から▲1.0ポイントの低下が見込まれていましたので、実績の▲0.7ポイントの下降はやや上振れた印象です。また、3か月後方移動平均は2か月連続の下降で前月から▲0.73ポイント下降し、7か月後方移動平均も前月から▲0.43ポイント下降し、これまた、2か月連続の下降となっています。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、5月統計から「下げ止まり」に下方修正されましたが、今月8月統計でも「下げ止まり」に据え置かれています。私は従来から、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはないと考えていて、それはそれで正しいと今でも考えていますが、米国経済に関する前提が怪しくなってきた印象で、米国経済が年内にリセッションに入る可能性はそれなりに高まってきており、日本経済も前後して景気後退に陥る可能性が十分あると考えています。理由は、ほかのエコノミストとたぶん同じでトランプ政権が乱発している関税政策です。米国経済において関税率引上げはインフレの加速と消費者心理の悪化の両面から消費を大きく押し下げる効果が強いと考えています。加えて、日本経済はすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありませんし、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかであり、引き続き、注視する必要があるのは当然です。
CI一致指数を構成する系列を前月差に対する寄与度に従って詳しく見ると、トランプ関税の影響をモロに受けている輸出数量指数が▲0.37ポイントの寄与ともっとも大きなマイナスであり、次いで、生産指数(鉱工業)も▲0.30ポイント、商業販売額(小売業)(前年同月比)が▲0.22ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)が▲0.19ポイントなどが下降の方向で寄与しています。逆に、上昇の方向の寄与は、耐久消費財出荷指数が+0.35ポイントのほかは、トレンド成分の営業利益(全企業)の+0.15ポイントくらいのものです。ついでに、前月差+1.3ポイントと上昇したCI先行指数の上昇要因も数字を上げておくと、消費者態度指数が+0.53ポイント、東証株価指数が+0.43ポイント、マネーストック(M2)(前年同月比)が+0.30ポイントなどとなっています。自民党総裁に高市衆議院議員が選出されてから株価は高値を続けており、この先も景気動向指数の先行指数を牽引するかもしれません。
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