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2025年10月 8日 (水)

5か月連続で改善した9月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した8月の経常収支

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.4ポイント上昇の47.1、先行き判断DIも+1.0ポイント上昇の48.5を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+3兆7758億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気、9月現状判断DIは5か月連続上昇 住宅など改善
内閣府が8日公表した景気ウオッチャー調査によると、街角の人々からヒヤリングした景気の現状判断指数(DI)は前月比0.4ポイント上昇の47.1となった。景気の良し悪しの境目とされる50は下回ったものの5カ月連続で改善した。基調判断は「持ち直しの動き」で据え置いた。
<住宅、小売り改善>
指数の前月比の内訳は、家計関連が0.3ポイント、雇用関連が2.6ポイント改善した一方、企業関連は0.5ポイント悪化した。
家計関連では、住宅が5.3ポイント改善した。「住宅着工数は微減で推移しているが、単価の上昇をカバーできる購入層が増えている」(南関東の住宅販売会社)などの指摘があった。
小売りも0.3ポイント、サービスは0.1ポイント改善した。「インバウンドはもちろん、日本人の観光客も購買意欲が出てきている」(北陸の商店街)、「コメは一定の供給量があり価格も上昇しているため売り上げの増加につながっている」(近畿のスーパー)とのコメントがあった。
一方、飲食関連は1.0ポイント悪化した。「来客数が激減、客がゼロの日もある」(東北のレストラン)などの声が出ている。
<米関税による実質値上げの影響>
企業関連では製造業が1.4ポイント悪化する一方で非製造業は0.4ポイント改善した。「本格的に関税による実質的な値上げの影響が出てきて、北米の半導体関連設備投資に陰りが見えてきた」(東海の一般機械器具製造業)との指摘がある一方、「大阪万博関連商材が飛ぶように売れている」(近畿のその他サービス)とのコメントもあった。
景気の先行きに対する判断DIも前月比1.0ポイント改善の48.5となった。家計では飲食、住宅関連が改善、サービス関連が悪化。企業は製造業、非製造業ともに改善した。
地域別の現状判断DIは、全国12地域中7地域で上昇。近畿が4.7ポイントともっとも大きく改善した。一方、東北が3.1ポイント悪化し、マイナス幅がもっとも大きかった。
経常収支8月は3兆7758億円の黒字、半年ぶり高水準 貿易収支が黒字転換
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、8月の経常収支は3兆7758億円の黒字と、過去最大の4兆0832億円を記録した2月以来半年ぶりの高水準だった。黒字は7カ月連続。
黒字幅は前月から拡大し、ロイターの事前予測(3兆5400億円)をやや上回った。一方、前年同月比では1903億円縮小。金融・保険や自動車製造の個別企業が昨年8月に大口配当を得ていた反動で、第一次所得収支の黒字が前年比で減少したことが理由。
ただ、8月の黒字額としては昨年に次ぎ過去2番目の大きさで「堅調」と財務省担当者は話した。
経常収支のうち、貿易・サービス収支は840億円の赤字となった一方、第一次所得収支は4兆2986億円の黒字だった。第二次所得収支は4388億円の赤字。
貿易収支は1059億円の黒字と、前年同月の赤字から黒字に転換。 自動車や鉄鋼、自動車部品の輸出が減少する一方、原粗油や医薬品、液化天然ガスなどの輸入も減少。輸入は輸出よりも大幅な減少となった。
貿易・サービス収支のうち、サービス収支は1899億円の赤字で前年比で赤字幅が拡大。ただ、インバウンド(訪日外国人)が8月は前年比16.9%増えて旅行収支の黒字は4195億円と、8月として過去最高を記録した。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では4月統計で前月から大きく▲2.5ポイント低下して42.6となった後、5月統計で反発して+1.8ポイント上昇の44.4、そして、本日公表の9月統計の47.1まで5か月連続で上昇を記録しています。先行き判断DIも同様に上昇を見せており、9月統計は前月から+1.0ポイント上昇の48.5となっています。先行き判断DIについても、現状判断DIとともに5か月連続の上昇です。本日公表の9月統計の季節調整済みの現状判断DIをより詳しく前月差で見ると、家計動向関連のうちの住宅関連が+5.3ポイント、小売関連が+0.3ポイント、サービス関連が+0.1ポイント、それぞれ上昇した一方で、飲食関連だけが▲1.0ポイント低下しています。飲食関連については基本的に夏休みの旅行シーズンが終了した影響が家計関連のマインドに出ていると私は考えています。別途、インバウンドも少し停滞気味という影響もあるかもしれません。企業関連では、非製造業が前月から+0.4ポイント上昇した一方で、製造業は▲1.4ポイントの低下を見せていますから、米国の通商政策の動向が尾を引いている可能性が十分あります。また、家計関連と企業関連とは別の雇用関連は前月から+2.6ポイントと、大幅に上昇しています。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を5月から「景気は、持ち直しの動きがみられる。」と上方修正していて、9月統計でも据え置かれています。ただし、国際面での米国の通商政策とともに、国内では価格上昇の懸念は大いに残っていて、今後の動向が懸念されるところです。景気判断理由の概要について、引用した記事にもいくつかありますが、内閣府の調査結果の中から、家計動向関連に着目すると、飲食関連では「最も大きい物価高の影響に加え、今夏は暑過ぎたので光熱費が増えたことや、夏休みで出掛けたりしてお金を使ったため、3か月前と比べて消費がやや控えめになっている。(南関東=一般レストラン)。」といった物価高の影響を上げた意見があったりしました。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事にもあるように、ロイターによる市場の事前コンセンサスは3兆5400億円の黒字でしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、ほぼほぼ同じ水準の見込みでしたので、実績の+3.8兆円近い黒字はやや上振れた印象です。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易・サービス収支が▲840億円の赤字ながら、サービスを除いた貿易収支は+1059億円の黒字を計上しています。ただし、私が注目している季節調整済みの系列に着目すると、2024年11-12月に2023年10月以来の黒字を計上した後、今年に入って、2025年1月から8月まで赤字に戻っています。ただ、直近でデータが利用可能な8月統計では速報段階ながら▲1419億円と小幅な赤字にとどまっています。さらに、引用した記事にもある通り、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ですので、経常収支にせよ、貿易収支・サービスにせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えています。ただ、米国の関税政策の影響でやたらと変動幅が大きくなるのは避けた方がいいのは事実です。

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