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2025年10月 2日 (木)

今年の論文を書き上げる

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紀要論文 "How Tourism Promotes Economic Development: A Case of Cambodia" を書き上げて提出しておきました。60歳で公務員を定年退職して、郷里の関西に戻って立命館大学経済学部の教員に再就職し、年1本だけ夏休みに学術論文を書いています。今年の分が出来上がったわけです。Summaryは以下の通りです。

Summary
After the independence from France, the Khmer Rouge's radical collectivization policies fallen Cambodia's society and economy down into a deep turmoil. Ending the civil war, Cambodia has recovered peace by the Paris Peace Agreement and began economic growth. However, the current Cambodia's economic stage is not so high compared with other Asian countries. Since the Angkor Site was inscribed as World Heritage by UNESCO in 1992, Cambodia's tourism resources are attracting attention and expected to boost growth. This study explores Cambodia's history and current economic situation and reviews tourism-promoting policies of both Cambodia's government and international organizations such as the Asian Development Bank (ADB) and the World Bank from the perspective of development economics. And the paper attempts an empirical analysis to evaluate tourism in Cambodia. Conclusion of the study indicates: 1) Cambodia has been failing to utilize the tourism for poverty alleviation; 2) the leapfrogging development is not always recommendable; and 3) even considering the tourism as growth engine, among many types of the special interest tourism (SIT), the gambling and the prostitution/sex trafficking are not eligible as a tourism resource.

今夏の論文は為替にしようと思っていたのですが、いろいろと経緯があって、決してレベルの高くない観光経済学の論文を書く必要に迫られて、わずか2-3週間ほどで書き上げました。今さら、観光収入、特にインバウンドの観光収入が経済開発や成長に寄与していることは明らかですから、その関係を数量分析しても仕方ないので、ターゲットをカンボジアにしてアンコール遺跡群に着目した上で、私らしい結論を3点引き出しています。英語のサマリーにもありますが、以下の通りです。
1) Cambodia has been failing to utilize the tourism for poverty alleviation;
カンボジアは観光を貧困削減に利用できていない。
2) the leapfrogging development is not always recommendable;
1次産業中心から製造業の2次産業をすっ飛ばして、観光などの3次産業中心の経済に至るリープフロッグ型の経済開発は必ずしもお勧めできない。
3) even considering the tourism as growth engine, among many types of the special interest tourism (SIT), the gambling and the prostitution/sex trafficking are not eligible as a tourism resource.
観光が成長のエンジンとなるとしても、特別な目的に絞った旅行=SITのうちで、ギャンブルと売春/性売買については観光資源として適格ではない。

最後の点について、私の論文では、特別な目的に絞った旅行=SITすべてを否定しているわけではありません。例えば、大リーグ観戦などのスポーツ観戦ツアーや日本でも受け入れているスキーを楽しむスポーツ実行ツアー、健康診断や治療を目的とするメディカル・ツアー、美術館を巡るアート・ツアー、もちろん、大自然を満喫するナチュラルワンダー・ツアーなどなど、SITにもいろんな種類があります。そのSITの中で、ギャンブルと売春/性売買は観光資源として適格ではない、という結論を導いています。まあ、メディカル・ツアーの中でも途上国の貧困層からの臓器売買を促進しかねないようなものは、ほぼほぼギャンブルや売春/性売買とご同様なのですが、そこまでは詳細な議論を展開しているわけではありません。その意味でも、やや低レベルの論文であるという事実は自覚しています。
割合と短期で仕上がったのは、大いにAIを活用したからです。どのように活用したかというと、ネット検索に代替して主として参考文献のリストアップでした。例えば、「観光経済学の学術論文の中で、ギャンブルに対する否定的な結論を導いているものを5本リストアップする」とかで、ネット検索よりもずいぶんと的確にリストアップしてくれました。当然、ネットにあるそういった論文へのリンクも示してくれて、リストアップしてくれた論文をpdfで入手した上で、私の方でサマライズしています。AIにサマライズさせてそのままコピー&ペーストするのは、少しだけ気が引けました。そのうちに、AIがさらに進化すれば、私のやっているレベルの論文なんて、適当にプロンプトすれば、AIが何から何まで全部やってくれそうな気がします。それは、それで怖い未来かもしれません。

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