対米輸出6か月連続減を記録した9月貿易統計
昨日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月+4.2%増の9兆4137億円に対して、輸入額も+3.3%増の9兆6483億円、差引き貿易収支は▲2346億円の赤字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
貿易収支、対米輸出が6カ月連続減 関税影響なお根強く
財務省が22日発表した貿易統計速報によると、9月の貿易収支は2346億円の赤字となった。赤字は3カ月連続。貿易収支のうち対米輸出は6カ月続けてマイナスとなり、米関税政策の影響が根強い現状を浮き彫りにした。
ロイターの予測中央値は222億円の黒字だった。公表された収支額は、予想に反して赤字となった。
貿易収支のうち、輸出は前年同月比4.2%増の9兆4137億円と、5カ月ぶりに増加した。半導体電子部品や鉱物性燃料、原料品の輸出がプラスに寄与した。
地域別では、対米輸出が前年同月比13.3%減の1兆6049億円だった。対米輸出のうち、自動車の輸出額は24.2%減と前月よりは減少幅が和らいだが、数量ベースでは引き続き14.2%減った。
輸出関税の引き下げを受けて「価格面での落ち込みが和らいでいるが、関税の悪影響は完全に払しょくできていない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との見方が出ている。
欧州連合(EU)やアジア向けの輸出額はプラスを維持した。中国向けもプラスに転じた。
一方、輸入は3.3%増の9兆6483億円で、3カ月ぶりに増加した。電算機類や通信機、航空機類が押し上げ要因となった。
同時に発表した2025年度上半期(4-9月)の貿易収支は1兆2238億円の赤字だった。
トランプ米政権は4月に自動車関税や貿易相手国に対する相互関税のうち一律10%の基本関税を発動。発動から半年間に当たる上半期に対米輸出額は10.2%減の9兆7115億円となり、9半期ぶりに減少。このうち自動車は22.7%減少した。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは小幅な貿易黒字が見込まれていたところ、実績の▲2000億円を超える赤字はややや上振れした印象です。予測レンジの下限が▲2614億円でしたので、このレンジ下限付近ということになります。季節調整済みの系列でも、9月統計では▲3000億円を超える赤字を記録しています。ただし、いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。すなわち、引用した記事のタイトルのように、トランプ関税で日本の輸出が減少したり、貿易収支が赤字の方向に振れることではなく、貿易を含めた資源配分の最適化ができなくなってしまう点が問題と考えるべきです。ただ、私のような考え方は、政府でも、経済界でも、メディアでも少数派なんだろうということは理解しているつもりです。ひょっとしたら、学界ですら少数派なのかもしれません。
本日公表された8月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+1.4%増ながら、金額ベースでは▲8.6%減と減少しています。石油価格が大きく下落している商品市況を反映しています。さらに、エネルギーを上回る注目を受けている食料品は金額ベースで+9.9%増となっていて、輸入総額の前年同月比伸び率が+3.3%ですので、輸入が増加している印象です。特に、食料品のうちの穀物類は数量ベースで+5.7%増、ただし、金額ベースでも+8.1%増となっています。コメの高値継続と何の関係があるのかは現時点では不明です。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで▲0.3%減ながら、金額ベースでは+4.8%増を記録しています。輸出に目を転ずると、トランプ関税で注目の自動車が数量ベースで+5.8%増となったものの、金額ベースでは▲0.6%減となっています。引用した記事にもあるように、自動車輸出のうちの米国向けは、数量ベースで▲14.2%減、金額ベースで▲24.2%減となっています。自動車輸出において数量ベース減を上回る金額ベース減は明らかに、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で関税の一部を相殺するような価格設定により、販売台数の減少を食い止めようとしていることを表していると考えるべきです。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。米国向け自動車関税は15%に引き下げられており、その差額の大きな部分をメーカーが負担させられている形です。電気機器は金額ベースで+12.6%増、一般機械も+3.5%増と落ち込んでいます。輸出だけは国別の前年同月比もついでに見ておくと、引用した記事にもあるように、米国向け輸出が前年同月比で▲13.3%減となった一方で、中国向け輸出が+5.8%増、中国も含めたアジア向けの地域全体では+9.2%増を記録しています。また、他方で、EU向けは+5.0%増となっています。
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