さらに加速した10月の消費者物価指数(CPI)と米国向け輸出が減少を続ける貿易統計
本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、財務省から貿易統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。CPIについては、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+2.9%からやや加速して+3.0%を記録しています。日銀物価目標の+2%に比べてかなり大きなインフレが続いています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から42か月、すなわち、3年半続いています。ヘッドライン上昇率も3.0%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.1%と高止まりしています。また、貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+3.6%増の9兆7663億円に対して、輸入額も+0.7%増の9兆9981億円、差引き貿易収支は▲2318億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価指数、10月3.0%上昇 2カ月連続で伸び拡大
総務省が21日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合が112.1となり、前年同月と比べて3.0%上昇した。2カ月連続で上昇率が拡大した。伸び率が3%台になったのは7月以来3カ月ぶりだ。
生鮮食品を除く総合指数の上昇は50カ月連続となった。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.0%の上昇だった。
エネルギー価格は2.1%上昇し、2カ月連続のプラスだった。電気代は3.5%、都市ガス代は1.3%上昇した。政府による電気・ガス料金の補助の規模が前年実施した「酷暑乗り切り緊急支援」より小さかった反動を受けた。
生鮮食品を除く食料は7.2%上昇した。価格の上昇が続くものの、伸び率は3カ月連続で縮小した。コメ類の上昇率は40.2%だった。前年同月に比べた伸びの縮小が続き、生鮮食品を除く食料の上昇率を押し下げている。備蓄米は集計の対象外で、コシヒカリなど銘柄米の値動きを調べている。
原材料価格の高騰でチョコレートが36.9%上昇した。昨秋からの鳥インフルエンザの影響による供給不足で鶏卵も13.6%上昇し高い伸びが続く。
インバウンド(訪日外国人)の増加などによる需要拡大で宿泊料は8.5%上昇した。
10月の対米輸出3.1%減、自動車7.5%減 下落幅は縮小
財務省が21日発表した10月の貿易統計速報によると、米国向けの輸出額は1兆7540億円となり前年同月に比べて3.1%減った。減少は7カ月連続となる。減少率は5月から9月まで5カ月連続で10%を超えていたのと比べると、小幅にとどまった。
トランプ米政権の関税政策が影響し、自動車の対米輸出の落ち込みが続いている。
米国向けの自動車輸出額は7.5%減の4607億円で、台数ベースでは0.9%減の11万9028台となった。輸出額の落ち込み幅が10%を下回ったのは4月以来で6カ月ぶりとなる。
トランプ米政権が発動した自動車関税は、9月16日に27.5%から15%に引き下げられた。対米輸出を下押しする影響が薄れてきた可能性がある。
全世界に対しての輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2318億円の赤字だった。赤字は4カ月連続となる。
輸出額は3.6%増の9兆7663億円だった。欧州連合(EU)やアジア向けが伸びた。半導体などの電子部品や原動機がけん引した。
輸入は0.7%増の9兆9981億円だった。米国からの航空機関連が伸びた。
何といっても、消費者物価指数(CPI)は現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やや長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+3.0%ということでした。実績の+3.0%とジャストミートしたということのようです。また、エネルギー関連の価格については、引用した記事にもある通り、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」による補助は9月いっぱいで終了しましたが、今年は昨年に比べて反動が小さいようです。加えて、「燃料油価格定額引下げ措置」によるガソリンなどの価格の引下げについては、11月中旬から実施ですので、本日公表の10月統計には反映されていないようです。ということで、品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率である+3.0%に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、繰り返しになりますが、政府補助金などによりエネルギーの寄与度は前月9月統計からプラスに転じています。ヘッドラインCPI上昇率に対するエネルギーの寄与度は前月の9月統計の+0.17%に対して、10月は+0.16%となっています。したがって、いわゆる寄与度差は+0.01%しかありません。ヘッドライン上昇率で見て、9月統計から10月統計にかけて+0.1%ポイントの上昇率の加速があったわけですが、エネルギーの寄与は小さいといえます。CPI総合の前年同月比上昇率の+3.0%へのエネルギーの寄与も+0.16%にとどまっています。逆にいえば、エネルギーを除く物価が上昇している、と考えるべきです。例えば、生鮮食品を除く食料価格の上昇は引き続き大きく、前年同月比で+7.2%、寄与度で+1.74%に上ります。CPI総合の上昇率である+3.0%の半分以上が食料というわけです。特に、食料の中で上昇率が大きいのはコメであり、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.74%のうち、コシヒカリを除くうるち米だけで寄与度は+0.22%に達しています。引用した記事とは少し分類が異なりますが、上昇率は前年同月比で+39.6%ですから、一時のピークは超えた可能性がありますが、まだまだきわめて高い上昇率と考えるべきです。コメが値上げされれば、当然に、おにぎりやすしの価格も上がります。ただ、消費者物価の全体、というか平均として上昇率としてはまだ日銀の物価目標である+2%を超えているものの、物価上昇がピークアウトしつつある可能性もあります。
多くのエコノミストが注目している食料の細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+7.2%、寄与度+1.74%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が大きく値上がりしていて、寄与度も+0.22%あります。新米が出回り始めたとはいえ、銘柄米はまだまだ高止まりしています。消費者物価指数(CPI)は継続性を重視して、品目指定で価格を調べているので、引用した記事にあるように、安価な備蓄米などはCPIには組み入れられていません。うるち米を含む穀類全体の上昇率は+16.8%、寄与度は+0.43%に上ります。コメ価格の推移は下のグラフの通りです。主食のコメに加えて、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類も上昇率+12.2%、寄与度+0.33%に上っています。特に、その中でも、チョコレートは上昇率+50.9%、寄与度0.19%に達しています。コメ値上がりの余波を受けたおにぎりなどの調理食品が上昇率+6.5%、寄与度+0.25%、調理食品の中でもおにぎりが上昇率+16.4%、寄与度0.03%に上っています。同様に、すしなどの外食も上昇率+4.3%、寄与度+0.20%を示しています。ほかの食料でも、ブラジルの天候不良による需給逼迫のため、コーヒー豆などの飲料も上昇率+8.7%、寄与度0.15%、乳卵類も上昇率+7.8%、寄与度+0.11%、鶏肉などの肉類が上昇率+3.7%、寄与度+0.10%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料はエネルギーとともに国民生活に欠かせない基礎的な財であり、実効ある物価対策とともに、価格上昇を上回る賃上げや最低賃金の大幅な引上げを期待しています。

続いて、貿易統計のグラフは上の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲3000億円ほどの貿易赤字が見込まれていたところ、実績の▲2318億円の赤字はやや上振れした印象です。予測レンジ内でしたので、大きなサプライズはありませんでした。季節調整済みの系列でも、10月はわずかに▲40億円ほどの赤字にとどまっています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。すなわち、引用した記事のタイトルのようにトランプ関税で日本の輸出が減少して貿易収支が赤字の方向に振れることではなく、貿易を含めた資源配分の最適化ができなくなってしまう点が問題と考えるべきです。
本日公表された10月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで▲4.3%減ながら、金額ベースで▲9.1%減となっています。石油価格が低迷している商品市況を反映しています。さらに、エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで+7.0%増となっていて、輸入総額の前年同月比伸び率+0.7%増を上回って推移しています。ただ、食料品のうちの穀物類は数量ベースで▲1.7%減、ただし、金額ベースでは+0.8%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで▲35.5%の大幅減、金額ベースでも▲3.1%減を記録しています。なぜか食料品ではなく原料品に分類されている大豆は、重量ベースで+37.3%増、金額ベースでも+29.6%像を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が引用した記事でも注目されていますが、世界全体では金額ベースで+0.4%増となったものの、米国向けは▲7.5%減となっています。米国向け自動車輸出における数量ベースは、わずかに▲0.9%減なのですが、金額ベースでは▲7.5%減となっているのは、明らかに、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で関税を相殺するような価格設定により、販売台数の維持・拡大を図っていることを表していると考えるべきです。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。電気機器は金額ベースで+5.8%増、一般機械も+2.3%増とプラスの伸びを示しています。輸出だけは国別の前年同月比もついでに見ておくと、中国向け輸出が前年同月比で+2.1%増、中国も含めたアジア向けの地域全体では+4.2%増を記録しています。他方で、引用した記事の冒頭にもある通り、米国向けは▲3.1%減と回復がままなりません。ただ、西欧向けは+8.8%増となっています。いうまでもありませんが、今後の輸出については、米国との関税率が決着していますので、緩やかに回復することが期待されます。

目を米国に転じると、政府予算が成立せずに政府機関がシャットダウンし、統計発表が延期されていたのですが、ようやく、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は、7月統計の+79千人増から8月統計では+22千人増と市場予想を下回り、失業率は7月の4.2%から+0.1%ポイント上昇して4.3%を記録しています。いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。
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