いずれも市場予想より上振れした11月の貿易統計と10月の機械受注
本日、財務省から11月の貿易統計が、また、内閣府から10月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+6.1%増の9兆7146億円に対して、輸入額は+1.3%増の9兆3924億円、差引き貿易収支は+3222億円の黒字を計上しています。また、機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から+7.0%増の9929億円と、2か月連続の増加を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
11月の対米輸出8.8%増、8カ月ぶり増加 関税影響和らぎ自動車が回復
財務省が17日発表した11月の貿易統計速報によると、米国向けの輸出額は1兆8168億円と、前年同月に比べ8.8%増えた。増加は8カ月ぶり。トランプ政権の関税政策の影響が和らぎ、落ち込んでいた自動車の輸出が回復した。
米国向けの自動車の輸出額は1.5%増の4996億円で、8カ月ぶりに前年同月を上回った。台数ベースでも12万2503台と、7.7%増えた。トランプ米政権は4月、自動車に25%の追加関税を発動した。既存の関税とあわせて乗用車は27.5%となっていたが、9月に計15%に引き下げた。下押し影響が薄れ、輸出はトランプ関税発動前の水準に戻りつつある。
米国からの輸入額は7.1%増の1兆771億円だった。原粗油やトウモロコシなどの輸入が増えた。対米貿易黒字は11.3%増の7397億円と、7カ月ぶりに増加した。
全世界に対しての輸出額は前年同月比6.1%増の9兆7146億円だった。輸入額は1.3%増の9兆3924億円だった。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3222億円の黒字だった。黒字は5カ月ぶり。
中国からの輸入は2.3%増の2兆4001億円だった。11月の大型セール「ブラックフライデー」によってパソコンの輸入が増えた。米アップルの最新機種「iPhone17」シリーズの購入が一服し、スマートフォンの輸入は減少した。
中国向けの輸出は2.4%減の1兆6222億円だった。半導体などの製造装置や、非鉄金属の輸出が減った。
欧州連合(EU)向けの輸出は19.6%増の9013億円だった。自動車や航空機のエンジン部品などが増加した。輸入は6.8%増の1兆318億円で、発電所用の原動機や医薬品が増えた。
10月の機械受注7.0%増、2カ月連続の増加 基調判断を上方修正
内閣府が17日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる船舶・電力を除く民需(季節調整済み)は前月比で7.0%増の9929億円だった。2カ月連続の増加となった。非製造業がけん引した。
基調判断は前月の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。2024年11月以来の上方修正となった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.4%減だった。月ごとのぶれをならした3カ月移動平均は3.5%増と5か月ぶりにプラスに転じた。
製造業は13.3%減の4465億円だった。化学工業が67.8%減、汎用・生産用機械が14.2%減と全体を押し下げた。いずれも前月からの反動減という。自動車・同付属品は9.1%増となった。
非製造業は28.8%増の5517億円だった。運輸・郵便業が47.9%増で全体を押し上げた。鉄道車両で大型案件の受注がありプラスに寄与した。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2000億円近いの貿易黒字が見込まれていたところ、実績の+3222億円の黒字は上振れした印象です。予測レンジの下限が+1800億円ほどでしたので、そのレンジを越えています。季節調整済みの系列でも、10月+740億円、11月+629億円と、2か月連続の黒字を記録しています。ただし、いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。日経新聞では引用した記事のほかに「米国向け自動車輸出が持ち直し 11月1.5%増、8か月ぶりプラス」と題して米国向け自動車輸出額が前年同月を上回ったことを報じていますが、それよりも、米国のトランプ新大統領の関税政策による世界貿易のかく乱によって資源配分の最適化が損なわれる可能性の方がよほど懸念されます。すなわち、引用した記事のタイトルのように、トランプ関税で日本の輸出が減少して貿易収支が赤字の方向に振れることではなく、貿易を含めた資源配分の最適化ができなくなってしまう点が問題と考えるべきです。
本日公表された11月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+7.0%増ながら、金額ベースで▲2.4%減となっています。石油価格が下落している商品市況を反映しています。さらに、エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで▲1.8%減となっています。特に、食料品のうちの穀物類は数量ベースで▲3.4%減、金額ベースでも▲2.2%減となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで▲0.3%減、金額ベースでも▲13.2%減を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が、米国向けは伸びている一方で、全世界向けには減少を示しており、数量ベースで▲5.1%減、金額ベースでも▲4.1%減となっています。自動車輸出における数量ベースと金額ベースの増減が全世界向けでは整合的になっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースでは+7.7%増を記録した一方で、金額ベースでは+1.5%増にとどまっており、引き続き、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で部分的なリトも関税を相殺するような価格設定により、販売台数の維持・拡大を図っていることを表していると考えるべきです。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。電気機器も金額ベースで+7.4%増、一般機械も+5.1%増とプラスの伸びを示しています。輸出だけは国別の前年同月比もついでに見ておくと、中国向け輸出が前年同月比で▲2.4%減となったにもかかわらず、中国も含めたアジア向けの地域全体では+4.5%増となっています。日中間のビミョーな外交的関係が何らかの影響を及ぼしている可能性は否定できません。他方で、米国向けは+8.8%増と回復を見せています。西欧向けも+23.6%増となっています。もっとも、米国経済にはまだ停滞色が残っており、先行き順調に我が国からの輸出が拡大するかどうかは不明、というべきです。

続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比▲2.4%減、レンジの上限でも+0.8%増でしたので、実績の+7.0%増は予想レンジ上限を超える大きな上振れでした。ですので、だと思うのですが、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と明確に1ノッチ上方修正しています。業種別に季節調整済みの前月比で見て、製造業が▲13.3%減の一方で、船舶・電力除く非製造業は+28.8%増となっています。引用した記事の最後にあるように、鉄道車両で大型案件の受注があり、運輸・郵便業が前月比+47.9%増を記録しています。
日銀短観などで示されたソフトデータの投資計画が着実な増加の方向を見込んでいる一方で、機械受注やGDPなどのハードデータで設備投資が増加していないという不整合があり、現時点ではまだ解消されているわけではないと私は考えています。人手不足は見込み得る範囲の近い将来にはまだ続くことが歩く予想されますし、DXやGXに向けた投資が盛り上がらないというのは、低迷する日本経済を象徴しているとはいえ、大きな懸念材料のひとつです。かつて、途上国では機械化が進まないのは人件費が安いからであるという議論が広く見受けられましたが、日本もそうなってしまうのでしょうか。設備投資の今後の伸びを期待したいところですが、先行きについては決して楽観はできません。特に、日銀が金利の追加引上げにご熱心で、明日から開催される金融政策決定会合で追加利上げがなされるのは確実と見られており、すでに実行されている利上げの影響がラグを伴って現れる可能性も含めて、為替への影響を別にしても、金利に敏感な設備投資には悪影響を及ぼすことは明らかです。トランプ関税は一段落したとしても、どう考えても、先行きについてリスクは下方に厚いと考えるべきです。
| 固定リンク


コメント