« 今年の漢字は「熊」 | トップページ | 帝国データバンク「カレーライス物価指数」2025年10月 »

2025年12月15日 (月)

12月調査の日銀短観は大企業製造業の景況感が改善し追加利上げへ

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から+1ポイント改善して+15、他方、大企業非製造業は横ばい+34となりました。また、本年度2025年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+8.9%増と、9月調査の+8.4%増から上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、3四半期連続で改善 日銀12月短観
日銀が15日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の9月調査から1ポイント改善しプラス15だった。3四半期連続で改善した。DIは4年ぶりの高水準となった。
大企業非製造業の景況感は9月から横ばいのプラス34だった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。12月調査の回答期間は11月11日~12月12日で回答率は99%だった。11月26日までにおおむね7割の回答があったという。
民間エコノミストの予想では、大企業製造業、大企業非製造業ともに小幅改善を見込んでいた。
大企業製造業は関税政策をめぐる不確実性の低下や、半導体関連の需要増加が景況感の改善につながった。業種別にみると、石油・石炭製品が33ポイント改善のプラス33、化学が7ポイント改善のプラス22だった。関税によるコスト増が重荷となっている自動車は1ポイント悪化のプラス9となった。
大企業非製造業では、人件費などを販売価格に転嫁する動きがみられた。運輸・郵便は1ポイント改善のプラス27となった。
一方、物品賃貸は4ポイント悪化しプラス32、電気・ガスは4ポイント悪化のプラス12、宿泊・飲食サービスが1ポイント悪化のプラス25だった。仕入れコストの上昇や人手不足、物価高による節約意識の高まりが重荷となった。
先行きは、大企業非製造業が6ポイント悪化のプラス28を見込む。日中関係の悪化による中国からの訪日客の減少を懸念する声がある。大企業製造業は横ばいのプラス15で、関税による需要の落ち込みが引き続き懸念材料となっている。
企業の事業計画の前提となる2025年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=147円6銭だった。前回調査は145円68銭で、円安方向に修正された。
日銀は18~19日に開く金融政策決定会合で政策金利を現在の0.5%から0.75%に引き上げることを検討している。今回の短観はおおむね市場の事前予想通りの結果になり、利上げ判断を後押しする材料になりそうだ。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

先週、日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関しては、製造業・非製造業ともにおおむね横ばい圏内ながら、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは小幅に改善、との予想が緩やかなコンセンサスであったと私は考えています。例えば、私が見た範囲で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業製造業が前回9月調査から+1ポイント改善の+15と予想されていました。本日公表された大企業製造業の景況判断DIの+15という実績は、市場の事前コンセンサスに一致しましたし、横ばい圏内の動きという意味でも、動きの幅のマグニチュードでも大きなサプライズはありませんでした。ただ、大企業製造業の業況判断指数DIの改善幅が+2ではなく+1だった点、さらに、悪化すると見込まれていた大企業非製造業の業況判断指数DIが横ばいであった点を総合的に考える必要があります。何度か同じことを繰り返しましたが、米国との関税交渉が決着したので先行き不透明感が払拭されて、足元の業況判断指数DIは上向いた一方で、それにしても、米国の関税率が以前からは引き上げられているので、先行きの景況感は下向き、ということです。
業種別に少し詳しく足元12月調査の景況判断DIを見ると、基本的に引用した記事の通りながら、大企業製造業では、素材業種が+15と、前期から+3ポイント改善し、先行きも横ばいの+15を見込んでいる一方で、加工業種は+15から+16に改善幅が小さく、しかも、先行きは+14と悪化を見込んでいます。中でも、トランプ関税との関係で注目され、我が国リーディングインダストリーのひとつである自動車は前回調査から▲1ポイント悪化の+9、先行きは+1ポイント改善、と見込まれています。はん用機械が前期から+2ポイント改善して+27、電気機械も+1ポイント改善の+17、造船・重機等も+5ポイント改善して+41、といったところが加工業種で見られます。他方、素材業種では、鉄鋼が+3ポイント改善したとはいえ▲11、非鉄金属も▲12ポイント悪化の+4などとなっています。ただ、石油・石炭製品は+33ポイント改善の+33となってい、あす。景況感に関しては 鉱工業生産指数(IIP)や商業販売統計などを見る限り、概ねハードデータとソフトデータの整合性は十分あるような気がします。ただ、トランプ関税は決着したものの、国内景気や海外の地政学的要因などに起因して先行き不透明感は大きく、景況感についても、大企業製造業の横ばいを例外して、製造業・非製造業おしなべて大企業・中堅企業・中小企業ともに先行きは悪化すると予想されています。

photo

続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学における生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感がほぼ払拭されました。特に、雇用人員については足元から目先では不足感がますます強まっている、ということになります。グラフを見ても理解できる通り、大企業・中堅企業・中小企業ともコロナ禍前の人手不足感を上回っています。今春闘での賃上げが高水準だった背景でもあります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、名目賃金が物価上昇以上に上昇して、実質賃金が安定的に上向くという段階までの雇用人員の不足は生じているかどうかに疑問があり、その意味で、本格的な人手不足かどうか、賃金上昇を伴う人手不足なのかどうか、については、まだ、私は日銀ほどには確信を持てずにいます。すなわち、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではない可能性がある、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態として decent job も含めた意味で、どこまでホントに人手が不足しているのかは、私にはまだ謎です。実質賃金、すなわち、名目賃金が物価上昇に見合うほど上がらないために、そう思えて仕方がありません。特に、雇用については不足感が拡大する一方で、設備については不足感が大きくなる段階には達していません。要するに、繰り返しになりますが、低賃金労働者が不足しているだけであって、外国人を含めて低賃金労働の供給があれば、生産要素間で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れである可能性が十分あるのではないかと感じます。

photo

続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。規模別に見ると、大企業が9月調査の+12.5%増からわずかに上方修正されて+12.6%増、そして、中堅企業では前期と変わらず+5.6%増、中小企業では▲2.3%減からプラスに転じて+0.1%増と、人手不足を設備投資による資本ストック増で要素間代替を試みるような動きが観察されます。大企業に比べて規模の小さい企業での雇用増を図ることが厳しく、設備投資で代替させようとの動きと私は受け止めており、中小規模の企業が12月調査では前年から増加する計画に転じています。いずれにせよ、日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。今回の12月調査では全規模全産業で+8.9%増の高い伸びが計画されています。調査月を追って3月調査よりも上積みされています。デジタルトランスフォーメーション(DX)だけでなく、カーボンニュートラルを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)、さらに、グローバリゼーション=国際化などに対応した投資がいよいよ本格化しなければ、ますます日本経済が世界から取り残される、という段階が近づいているような気がして、設備投資の活性化を期待しています。ただ、GDPベースの設備投資やその先行指標である機械受注などのハードデータと日銀短観に示されたソフトデータの間でまだ不整合が残っているような気がします。計画倒れにならないことを願っています。

最後に、引用した記事の最後のパラにあるように、本日公表の日銀短観では業況判断DIだけでなく、雇用人員判断DIや生産・営業用設備判断DI、さらに、設備投資計画などから判断して、今週後半の日銀金融政策決定会合で25ベーシスの追加利上げがあるものと市場での観測が高まっています。たぶん、追加利上げが行われるんだろうと私も考えています。

|

« 今年の漢字は「熊」 | トップページ | 帝国データバンク「カレーライス物価指数」2025年10月 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 今年の漢字は「熊」 | トップページ | 帝国データバンク「カレーライス物価指数」2025年10月 »