+2%台後半で高止まりする11月の企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率
本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月10月と同じ+2.7%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率も同じく+2.7%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、11月は前年比2.7%上昇 中国人観光客減少の影響も
日銀が24日に公表した11月の企業向けサービス価格指数速報は前年比で2.7%上昇した。外航貨物輸送が押し上げに寄与した一方、宿泊サービスなどが押し下げ方向に影響し、伸び率は前月から横ばいとなった。前月比では0.4%上昇した。
10月は前年比2.7%上昇、前月比0.6%上昇だった。
前年比の上昇は57カ月連続。内訳では「運輸・郵便」が前年比2.4%上昇し、前月の2.0%上昇を上回った。このうち、外航貨物輸送(除く外航タンカー)は鉄鉱石の荷動きが堅調に推移する中、燃料油価格が下落した前年同月の反動がみられた。外航タンカーは原油や液化天然ガス(LNG)などエネルギー関連の荷動きが活発だった。
一方、押し下げに影響したのが「諸サービス」。宿泊サービスが13.3%上昇と、伸び率が前月の18.1%を下回った。前月に見られた万博閉幕直前の駆け込み需要の反動のほか、中国政府による渡航自粛要請を受けた中国人観光客の減少を背景にインバウンド需要の増勢がやや鈍化した。
日銀の担当者は、中国政府の渡航自粛要請の影響が出てくるのは「11月というよりも12月以降になるのではないか」との見方を示している。
調査対象146品目のうち、上昇は115品目、下落は15品目で、その差は100品目。前月の92品目より多かった。
日銀の担当者は、企業向けサービス価格指数の観点から、コスト上昇を価格転嫁する動きの持続性、中国人観光客の減少が宿泊サービスなどに及ぼす影響、国際商品市況や海運市況の動向を注視していくと述べた。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比3.0%上昇と、前月の3.1%上昇を小幅に下回った。「低人件費率サービス」は同2.4%上昇で、伸び率は前月と変わらなかった。
注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、今年2025年6月統計で+2%台に減速し、6~11月の6か月連続で+2%台を記録しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてコンスタントに上昇を続けている一方で、今年2025年年央までは国内企業物価指数ほど上昇率が大きくなかったのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、PPI国内物価と同様に6~8月統計で3か月連続で+2%台後半となった後、9月統計で再び+3%に上昇率が加速した後、先月10月統計と本日公表の11月統計では+2.7%を記録しています。偶然でしょうが、11月統計では企業物価(PPI)のヘッドラインである国内物価指数上昇率と企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率が+2.7%と、同じ上昇率となっています。いずれも、日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数や(PPI)本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近い上昇率はデフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率のサービス価格であっても+2%超の上昇率を示しており、高人件費率のサービスでは+3%台の上昇率が続いています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っており、企業サイドから見れば人件費以上の過剰な価格転嫁が行われている一方で、家計サイドから見れば国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。ですので、私の従来からの主張ですが、企業サイドの利潤を減少させることにより、物価上昇を引き起こすことなく、賃上げを実現し労働分配率を上昇させることが可能です。法人企業統計を見ても、ここまで利益剰余金が積み上がっているんですから、3~5年くらいは物価上昇なしに賃上げが可能ではないか、と私は直感的に試算しています。エコノミストが誰もこの点を主張しないのは私にはとても不思議です。何か、マズいことがあって忖度が働いているのかもしれません。
最後に、もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された11月統計のヘッドラインSPPI上昇率+2.7%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや建物サービスといった諸サービスが+1.28%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分近くを占めています。加えて、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.61%、さらに、道路貨物輸や国内航空旅客輸送や旅行サービスなどの運輸・郵便が+0.40%、ほかに、不動産+0.22%、リース・レンタルが+0.11%、金融・保険が+0.03%などとなっています。引用した記事の5パラ目にあるように、中国からの渡航自粛の影響が出るのは12月統計以降となりそうです。
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