今週の読書はいろいろ読んで計7冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、萩野覚・西村清彦・清水千弘『日本の経済社会統計』(有斐閣)では、個別の公的統計をリストアップして取り上げているだけではなく、GDP統計を中心に最新の付加価値貿易とか、あるいは、GDPのサテライト勘定としてデジタル経済の指標やグリーン経済の把握などの最新分野にも目を配っています。上武康亮・遠山祐太・若森直樹・渡辺安虎『実証ビジネス・エコノミクス』(日本評論社)は、商品の価格設定、新商品の導入、新規事業への参入など実践的なビジネス課題をミクロ経済学に基づいて評価するためのテキストであり、ミクロ経済学が専門外でもRのコードが理解できれば、順を追って実践的な学習が進められます。伊与原新『翠雨の人』(新潮社)は、50歳以下の女性科学者に贈られる猿橋賞にその名をとどめる猿橋勝子博士の伝記小説です。第5福竜丸が被爆したビキニ環礁での水爆実験に端を発して、いわゆる「死の灰」による大気汚染や海洋汚染の研究に三宅博士とともに取り組んだ研究成果が印象的です。宮島未奈『それいけ! 平安部』(小学館)では、県立菅原高校の入学式からストーリーが始まり、同じ1年5組になった平尾安衣加が牧原栞を誘って県立菅原高校に平安部を設立します。夏休みに京都で開催される平安蹴鞠選手権、そして、秋の菅原高校の文化祭がクライマックスとなります。ジェフリー・ディーヴァー & イザベラ・マルドナード『スパイダー・ゲーム』(文春文庫)では、米国の南カリフォルニアを舞台とし、連邦捜査官のカルメン・サンチェスと大学教授でセキュリティコンサルタントでカルメンの捜査に加わるジェイコブ・ヘロンが協力して、知能の高い秩序型の連続殺人犯を追い詰めます。石田祥『猫を処方いたします 5』(PHP文芸文庫)はシリーズ5巻目であり、保護猫センターのスタッフの梶原友弥が飼っているニケ、そして、芸妓のあび野が飼っていて行方不明になった千歳という2匹の猫がいますが、中京こころのびょういんのニケ先生と看護師の千歳さんの関係やいかに。いよいよ、クライマックスが近づきつつあるのでしょうか。福井健太[編]『横丁の名探偵』(創元推理文庫)は、「読者への挑戦」ものを中心に精選されたアンソロジーです。1960年代から70年代の短編ミステリで、現在のようなDNA鑑定などの科学的な操作方法は確立しておらず、それだけに論理的な謎解きが展開されます。時代背景とともに楽しむことが出来ます。
今年2026年の新刊書読書は先週までに17冊、今週の7冊を加えると合計で24冊となります。また、これらの新刊書読書のほかに、東野圭吾のガリレオのシリーズ『禁断の魔術』(文春文庫)も読んでいます。ただ、新刊書ではないので、本日のレビューには含めていません。これらの読書感想文については、できる限り、FacebookやX(昔のツイッタ)、あるいは、mixi、mixi2などでシェアしたいと予定しています。
まず、萩野覚・西村清彦・清水千弘『日本の経済社会統計』(有斐閣)を読みました。著者は順に、麗澤大学教授、東京大学名誉教授・政策研究大学院大学名誉教授、一橋大学教授となっています。少し前に、肥後雅博『経済統計への招待』(新世社)を取り上げてレビューしたのですが、それとはかなりカバレッジが異なっています。個別の公的統計をリストアップして取り上げているだけではなく、GDP統計を中心に最新の付加価値貿易とか、あるいは、GDPのサテライト勘定としてデジタル経済の指標やグリーン経済の把握などの最新分野にも目を配っています。詳細な目次は出版社のサイトにあります。ただし、かなり数多くの統計や統計把握上の考え方を網羅しようと試みているだけに、やや「広く浅く」という方向に流れているところは見られます。ですので、出版社から考え合わせると学術書であろうという気がするものの、決して小難しい内容になっているわけではなく、大学生レベルでも十分読みこなせると思います。歴史的、国際的な流れにも目が配られており、GDP統計であれば国連、国際収支(BOP)統計であれば国際通貨基金(IMF)、さらに、付加価値貿易指標であれば経済協力開発機構(OECD)などの国際機関との関係、さらに、統計が開始された歴史的経緯、それも国際的視野からの歴史も含めて、幅広い統計をカバーしている印象です。加えて、GDP=SNA統計との関係で、従来の産業連関表(IO表)だけでなく、最新の供給使用表(SUT)も視野に入れて解説しています。繰返しになりますが、GDP=SNA統計を中心に据えつつ、サテライト勘定も含めて、マクロ経済全体を把握できる統計を解説しています。最後に、本書に関連して、私のGDP統計に対する考えを示しておきたいと思います。すなわち、GDP統計のもっとも重要なポイントは雇用とかなり強くリンクしているところだと私は考えています。典型的には経済学のオークン法則があります。それを別にしても、例えば、よく批判されるのがアンペイドな家事労働がGDPには含まれていない点ですが、2つの家計の主婦ないし主夫がお互い別家計の家事労働をして賃金を受け取れば、やっている実態はほとんど変わりないのにGDPが増加する、という批判です。ただ、両家計の主婦ないし主夫が別家計の家事労働をして賃金を得る場合、確かに、両家計の所得はキャンセルアウトされて実質的な影響を及ぼさないように見えますが、雇用は違います。所得は相殺されるとしても、両家計の主婦ないし主夫は明らかに労働市場に参入して雇用者となっていますので、雇用者がGDPの増加に従って増えている点は見逃すべきではありません。大規模にそういった動きがあれば、おそらく、GDPが増加するだけではなく、失業率を計算する際に分子の失業者が変わらない一方で、分母の労働力人口だけ大きくなりますので、失業率は低下するのだろうと考えるべきです。従って、政府の税収に変化が生じますし、社会保障負担も増加することは当然です。主婦ないし主夫が家事を相互に交換するとしても、決して、所得や何やが実質的に変わりないわけではないと考えるべきです。その意味で、アンペイドの家事労働とそれを家計で交換するのは同じではありません。それを把握できるGDP統計という指標、今もって十分な有効性があると私は考えています。オマケで、本書第2章の参考文献に、私が役所に勤務していたころの論文「シェアリング・エコノミーのGDP統計における捕捉の現状」をリストアップしていただいております。
次に、上武康亮・遠山祐太・若森直樹・渡辺安虎『日本評論社』(実証ビジネス・エコノミクス)を読みました。著者は順に、イェール大学経営大学院マーケティング学科教授、早稲田大学政治経済学部准教授、慶應義塾大学商学部教授、東京大学大学院経済学研究科および公共政策大学院教授、東京大学エコノミックコンサルティング取締役です。本書は、商品の価格設定、新商品の導入、新規事業への参入など実践的なビジネス課題をミクロ経済学に基づいて評価するためのテキストといえます。レベルとしては大学院修士課程くらいで、ミクロ経済学とゲーム理論のテキストを読了した上で、間接効用関数やベイジアン・ナッシュ均衡などの基礎的な概念理解できる水準、と明記しています。ただ、本書の主人公ともいうべき役回りをしているのは就職直後の若手であり、自動車会社などから発注を受けてコンサルティングを行っている、という設定です。ですので、少なくとも、私のようにミクロ経済学が専門外であってもRのコードが理解できるのであれば、順を追って実践的な学習は不可能ではないと思います。5部構成となっており、第Ⅰ部のイントロダクションでそもそもビジネス・エコノミクスとは何か、などについて解説した後、第Ⅱ部の需要の推定で価格付けについて議論しています。製品間の代替、さらには、旧来商品への需要減などのカニバライゼーションについても議論が展開されています。製品レベルだけではなく、企業合併のシミュレーションも示されています。第Ⅲ部の動学的なシングルエージェントの意思決定では、単に新車投入の際のマーケティングだけではなく、モデルチェンジなどに伴う動学的に新車への買替えなどを考慮するのですが、このあたりからマルコフ過程の考えやその確率的なシークエンスが導入されて、私の専門分野にやや近づきます。特に、確率的に状態空間表現したモデルを考えるのは、私のようなマクロエコノミストも馴染みあるところかもしれません。第Ⅳ部の静学ゲームの推定では市場参入について考えます。動学的な参入タイミングのお話ではなく静学的に参入するか、参入しないかです。企業ではなく病院のMRIの導入をトピックにしています。最後の第Ⅴ部では、ハンバーガーチェーンを例にして、ライバル企業の将来行動を考えた上での出店戦略の議論を展開しています。私の感想としては、繰返しになりますが、それほどミクロ経済学に強くなくても、というか、通り一遍の理解があってデータ分析やR言語のコードが判れば、それなりの理解に達することが出来ます。サポート材料もネットで提供されていて、それなりに親切ともいえます。最後の最後に、私のように参考文献をじっくりとひも解くエコノミストから見て、このビジネス・エコノミクスの分野の基礎は1980年代には十分出来上がっていたように見えます。その後、コンピュータのハードとソフトが十分な発展を遂げて実用化が進んだわけで、分析対象とするモデルの理論的な基礎は1980年代に出来上がっていたように見受けました。おそらく、実業の世界ではそうで、1990年代以降はむしろマクロの金融などの理論モデルの発展があったのだろうという気がします。もっとも、それをいえば、私の専門分野であるマクロ経済学についてはケインズ卿の貢献により1930年代には理論的基礎ができていた、ということもいえそうです。
次に、伊与原新『翠雨の人』(新潮社)を読みました。著者は、理学博士の学位を持つ小説家であり、『宙わたる教室』がNHKドラマになって大きな注目を集めて、『藍を継ぐ海』で第172回直木賞を受賞しています。科学的な見識に裏打ちされた小説で人気を集めています。私も『宙わたる教室』や『藍を継ぐ海』などを読んでいます。本書は、50歳以下の女性科学者に贈られる猿橋賞にその名をとどめる猿橋勝子博士の伝記小説です。小説ですので、部分的にフィクションが混じっているかもしれませんが、重要な部分は事実に基づいているとされていますし、人名や学校名、機関名などは実名のようです。物語は猿橋博士の女学校のころから始まり、女学校を卒業してから一度生命保険会社に就職しながら、帝国女子理科専門学校に入学し、実習で当時の中央気象台の三宅泰雄博士と出会い、気象庁気象研究所の研究員として働き始めます。何といっても、第5福竜丸が被爆したビキニ環礁での水爆実験に端を発して、いわゆる「死の灰」による大気汚染や海洋汚染の研究に三宅博士とともに取り組んだ研究成果が有名です。当時副会長を務めていた平塚らいてうの勧めで女性国際民主連合の会合に出席したり、日本女性科学者の会の設立に加わったりといった核兵器に反対し民主的な科学の力を前面に押し出す活動にも焦点を当てられています。ただ、本書ではそのあたりはバランスに配慮し、ソ連の核実験からの放射能測定により左派から攻撃された点も言及されています。そして、続く本書のハイライトは、カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所のフォルサム博士と猿橋博士の放射能汚染の測定精度の相互検証です。そこで、猿橋博士の測定精度が上回って、核実験の汚染を小さく見せようとしていた米国の測定結果よりも10~50倍も高いセシウム濃度の測定結果を示していた三宅・猿橋の測定の信頼性を大いに高めた点を本書でも特筆大書しています。戦時中の暗い世相も、戦後の戦勝国である米国の傲慢さも、ともに科学の力で克服してきた猿橋博士の実像について判りやすい小説で示してくれています。なお、どうせもいいことながら、本書冒頭から最後の舞台回しに重要な役割を担っている奈良岡の生まれ故郷は関西の宇治だそうです。私と同じです。また、定年退職まで役所の研究機関で研究者をしていたのも私と同じです。同列に並べてしまうのは、きわめて心苦しいながら、いくつかの共通点を見出すことが出来たので、本書の読書に親しみを持てた気がします。
次に、宮島未奈『それいけ! 平安部』(小学館)を読みました。著者は、成瀬あかりのシリーズで有名な小説家です。『成瀬は天下を取りにいく』では2024年に本屋大賞も受賞しています。ですので、出版社の期待も大きいようで、本書の特設サイトが開設されています。人物相関図などはそちらを参照するのが吉かと思います。小説の舞台は京都から190キロ離れた県立菅原高校です。主人公は平尾安衣加であり、姓と名から冒頭1字ずつを取れば「平安」となります。おじいさんが書道教室をしています。この平尾安衣加が成瀬あかりのように観察対象となり、観察する主体で視点を提供する島崎みゆきの役回りを牧原栞が務めます。平安時代にモテた色白でのっぺりした顔だそうです。この県立菅原高校の入学式からストーリーが始まり、同じ1年5組になった平尾安衣加が牧原栞を誘って、県立菅原高校に平安部を設立しようとくわだて、中学のころはサッカー部で蹴鞠にアツくなる大日向大貴が平安部に入ります。ここまでが1年生で、2年生も2人誘います。高身長かつメチャメチャなイケメンで物理部から移籍してきた光吉光太郎は、書道教室に通っていた縁で平尾安衣加の幼馴染みです。百人一首部の幽霊部員だった明石すみれも加わります。牧原栞だけが菅原市の隣町の森富町から鉄道で通っていますが、ほかの4人は菅原市民であり、自転車通学もいます。顧問は平尾安衣加と牧原栞の1年5組の担任で数学教師の藤原早紀子先生であり、平安時代にゆかりのある姓なのはいうまでもありません。まず、冒頭で部活動として成立する要件として5人を集め、平尾安衣加の家で書道体験をしたりした後、夏休みに京都で開催される平安蹴鞠選手権に遠征し、そして、秋の菅原高校の文化祭での活動がクライマックスとなります。高校生を主人公とするさわやかな青春小説であり、いくつかピンチはありますが、お約束でくぐり抜けます。悪い人物や意地悪な仕打ちはほぼほぼなく、適度に天然なキャラの登場人物もいますし、とても読みやすい良い小説です。
次に、ジェフリー・ディーヴァー & イザベラ・マルドナード『スパイダー・ゲーム』(文春文庫)を読みました。著者は、ともに米国の小説家です。おそらく、ディーヴァーは世界中を見渡しても、もっとも売れているミステリ作家の1人だと思います。マルドナードは警察において20年超のキャリアを積んだ小説家だそうです。ただ、私はマルドナードの小説は読んだことがないと思います。本書の英語の原題は表紙画像にも見えるように Fatal Instruction であり、2024年の出版です。小説の舞台は米国の南カリフォルニアであり、主人公はFBIから国土安全保障捜査局の連邦捜査官に移籍したカルメン・サンチェスと大学教授でセキュリティコンサルタントでカルメンの捜査に協力するジェイコブ・ヘロンです。ヘロンは特にサイバー犯罪の専門家です。侵入専門家ということになっていて、この場合、どうも、侵入=intrusionなのですが、物理的に部屋に押し入るとかではなく、サイバー空間上でサーバーやほかのコンピュータに侵入する、という意味での「侵入」です。ジェフリー・ディーヴァーは今まで私が愛読していた中では、物的証拠を重視する四肢麻痺の捜査官リンカーン・ライム、供述の場で嘘を見抜く専門家キャサリン・ダンス、賞金稼ぎのコルター・ショウなど、いろんなシリーズで主人公を生み出してきました。本書では、たぶん、ヘロン教授が新たな主人公になってシリーズが始まるんだろうと受け止めています。サンチェス捜査官はリンカーン・ライムに対するアメリア・サックス刑事のような役回りではないかという気がします。本書では南カリフォルニアのアチコチで、一見無関係に見える事件が発生します。しかし、いわば倒叙ミステリの技法によりストーリーが進んで、犯人には手首にクモのタトゥーがあり、冒頭の登場人物一覧では氏名が明らかにされています。本書では、最初から知能の高い秩序型の連続殺人犯、ということになっています。もちろん、ディーヴァーが共著者として名を連ねているわけですから、スンナリと終わるはずもなく、最後に大きなどんでん返しを期待する読者も多いことと思います。事件解決後のラストで、国土安全保障省に新部門が創設されることになり、捜査官はカルメン、アシスタントというか、コンサルタントにヘロンの2人でチームを組む活動がこれからも続くようです。最後の最後に、私はこのレビューで意識的に本書にある「カーメン」ではなく、「カルメン」と表記しています。本書の中身からも明らかなように、カルメン・サンチェスは一家そろってのラテン人、たぶん、メキシコのルーツであり、スペイン語が母語に近くて、ヘロンに対してスペイン語の罵詈雑言を浴びせたりします。ですので、英語表記の「カーメン」よりは、「カルメン」の方がしっくりくるんではないでしょうか。でもたぶん、邦訳者さんと出版社ではこのまま押し通すんでしょうね。最後の最後に、600ページ超のボリュームながら、上下に分冊せずに1冊で出版したのは出版社の英断だと思います。
次に、石田祥『猫を処方いたします 5』(PHP文芸文庫)を読みました。著者は、小説家であり、このシリーズ第1巻『猫を処方いたします』は第11回京都本大賞を受賞しています。本書はタイトルから明らかなように、シリーズ第5巻となります。京都市中京区麩屋町通上ル六角通西入ル富小路通下ル蛸薬師通東入ルという住所で、京都中心部の路地にある怪しげなクリニック「中京こころのびょういん」には、今日も飄々としてノリが軽いニケ先生とクールで強面のところもある看護師の千歳さんがいて、やって来る患者さんに猫を処方しています。本書も4話の短編からなる短編集であり、あらすじは順に、「第一話」では、平山世奈が急な海外出張の入ったバリキャリの姉である斎藤弥生に代わって、中京こころのびょういんへ猫を返しに来ますが、猫が1日分「飲み残って」いるからと、ニケ先生にもう一度同じ猫を預かるよう強引にいわれてしまいます。「第二話」では、一般形ケアハウス勤務で30歳過ぎの冨川真澄が、将来のためになることを何かしなければと、焦って不安になってしまい、中京こころのびょういんにやって来ますが、ニケ先生から「猫を聞く」ようにいわれます。「第三話」では、中京こころのびょういんの隣室をオフィスにする日本健康第一安全協会の社長にして唯一の社員である椎名彬が視点を提供します。彼の別れた元妻が保護猫センターのスタッフの寺田円花であることが明らかになり、小学生の娘の百寧の悩みを椎名彬が聞きます。「第四話」では、芸妓のあび野が視点を提供します。同僚の芸者の菊花や後輩のゆり葉と置屋のこま野でおしゃべりしたりしますが、冒頭で梶原友弥からのメールが紹介されます。梶原友弥とあび野は同じ出生の猫でつながっています。すなわち、梶原友弥がニケを飼っていて、あび野は千歳を飼っていましたが、今は行方不明です。衝撃のラストが待っています。取りあえず、ネタバレにならない範囲だと思いますが、この第5巻ではまだ物語は終わりません。ただ、「第三話」や「第四話」から、終盤が近づいてきたのではないか、ということは、感受性が鈍くて鈍感な私でも読み取ることができました。
次に、福井健太[編]『横丁の名探偵』(創元推理文庫)を読みました。著者は、書評家であり、ワセダミステリクラブのご出身です。本書は、昨年、創元推理文庫から出版されたアンソロジーの第2弾であり、「読者への挑戦」ものを中心に精選されています。同じ編者による『新・黄色い部屋』が第1弾となり、シリーズは全3巻を予定しているようで、次回は2月末に同じ編者により『以外な犯人』の出版が予定されています。本書は7話の短編を収録しています。以下、収録短編ごとにあらすじは、まず、仁木悦子「横丁の名探偵」では、落語のように八っつぁんとご隠居さんの会話から始まります。長屋の一角で掛軸の盗難事件が起こり、ご隠居さんが犯人の言動から真相を突き止めます。続いて、石沢英太郎「アリバイ不成立」では、マイホームブームの中で悪徳不動産詐欺師が殺害されます。何人かの被疑者には犯行時刻のアリバイが主張されますが、結局、成立しないアリバイばかりの中、意外な犯人が浮かび上がります。続いて、巽昌章「埋もれた悪意」では、恩人の息子を探すためにテレビ放送で呼びかけた依頼に2人が名乗りを上げますが、赤ん坊を取り上げて肉体的な特徴を把握するという産婆が殺されてしまいます。続いて、泡坂妻夫「ダイヤル7」では、元刑事の回想から始まり、暴力団の抗争から一方の組長が殺害され、その時に起こった地震から真相が解明されます。続いて、岡嶋二人「聖バレンタインデーの殺人」では、菓子教室のバレンタインイベントでチョコレートの交換会が開かれ、毒入りのチョコを受け取った被害者が死亡します。限られた時間と場所、関係者の証言から、巧妙なトリックが明らかになります。続いて、中西智明「ひとりじゃ死ねない」では、高校の料理クラブで自殺者が出た後、OBとOGたちの間に不審な出来事が続き、過去の確執や思い出が絡み合う中、事件の真相が明らかにされます。最後に、今邑彩「時鐘館の殺人」では、新人ミステリ作家である「私」が、自作の犯人当て短篇を本筋の物語に織り込む異色作です。登場人物の言動や館の構造などがヒントとなり、一度は解決編が示されるのですが、読者からも挑戦状が寄せられる多重解決ミステリとなっています。最後に、私はさかのぼって同じ編者による『新・黄色い部屋』を読みたいと思いますし、次に出る予定の『以外な犯人』も読みたいと思います。少なくとも本書は、1960年代から70年代のミステリで、現在のようなDNA鑑定などの科学的な操作方法は確立しておらず、それだけに論理的な謎解きが展開されます。しかも、その時代背景とともに楽しむことが出来ます。



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