市場予想に反して貿易黒字を計上した2月の貿易統計
本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+4.2%増の9兆5716億円に対して、輸入額は+10.2%増の9兆5143億円、差引き貿易収支は+573億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
2月の貿易黒字572億円 対米輸出は3カ月連続マイナス
財務省が18日発表した2月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は572億円の黒字と、前年同月に比べて89.8%縮小した。黒字は2カ月ぶり。対米輸出が3カ月連続でマイナスとなった半面、アジア向けに半導体などの電子部品の輸出が伸びた。
輸出額は前年同月比4.2%増の9兆5715億円だった。増加は6カ月連続で、2月としては過去最大だった。アジア向けにICなどの半導体等電子部品や鉱物性燃料の輸出が増えた。
輸入額は10.2%増の9兆5143億円だった。原油などの原粗油の輸入額は4.2%減の7563億円だった。数量は16.4%増えた。ドル建ての平均価格が1バレルあたり65.7ドルと18.3%下がり、円建て価格も17.7%下がった。
米・イスラエルによるイランへの攻撃は2月28日に発生した。財務省の担当者は影響について「2月の貿易統計は事態の発生以前のものだ。今後の状況を注視していきたい」と話した。
国・地域別でみると、米国向けの輸出額は1兆7528億円と、前年同月に比べ8.0%減った。3カ月連続で減少した。
トランプ米政権の関税政策の影響で対米の自動車輸出は14.8%減の4706億円だった。輸出額を台数で割った平均単価は10.6%減の400万円と12カ月連続で減少した。
中国向けの輸出額は10.9%減の1兆3696億円だった。減少は3カ月ぶり。半導体等製造装置やプラスチックの輸出が減った。輸入は35.4%増の2兆3368億円だった。
中国の春節(旧正月)は前年が1月に始まったのに対し、今年は2月開始だった。連休期間は現地の物流や工場が止まり、日本からの輸出の動きが鈍るなど変動が大きくなりやすい。
アジア全体向けの輸出は2.8%増の5兆274億円だった。台湾向けの半導体関連の輸出が増えた。欧州連合(EU)向けの輸出額は14.0%増の9168億円だった。電気自動車(EV)や建設用機械の輸出が拡大した。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲5000億円を超える貿易赤字が見込まれていましたので、実績の+500億円をやや上回る黒字はやや上振れした印象です。ただ、予測レンジの上限が+2500億円でしたので、そのレンジ内ですし、このあたりの1-2月はよく判りません。というのは、毎年、1月や2月は中華圏の春節があり、今年2026年は2月17日から、昨年2025年は1月29日からでした。この旧暦に基づく春節が、日本をはじめとする近隣諸国の貿易をかく乱している気がします。引用した記事の最後から2パラめにあるように、「変動が大きくなりやすい」と指摘しているところです。また、季節調整済みの系列で見ると、貿易収支は1月の黒字から2月は赤字に戻っており、季節調整しても中華圏の春節の影響は除去しきれていない印象を私は持っています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、逆に、2月の貿易統計のように、市場塗装に反して黒字となったからめでたいわけでもない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ大統領の関税政策による世界貿易のかく乱に加えて、米国とイスラエルによるイラン攻撃により石油価格の動向が大きな問題と考えるべきです。先行きの見通しが不透明であれば、家計の消費というよりも、企業の設備投資活動が大きく抑制される可能性が否定できません。
本日公表された2月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油が数量ベースで+16.4%増ながら、金額ベースでは▲4.2%減となっています。米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響前の段階で、石油価格が低迷していた商品市況を反映しています。さらに、エネルギーよりも注目されている食料品は金額ベースで+7.9%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は数量ベースで+2.9%増ながら、商品市況の高騰により金額ベースでは+40.2%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数の数量ベースで+4.6%増、金額ベースでも+2.5%増となっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースでは▲4.7%減にとどまっている一方で、金額ベースでは▲14.8%減となっており、引き続き、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で部分的なりともトランプ関税を相殺するような価格設定により、販売台数の維持を図っている可能性があると考えられます。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。自動車を別にすれば、電気機器は金額ベースで+10.3%増となった一方、一般機械は▲2.3%減となっています。最後に、輸出入を通じて、電気機械、特にICをはじめとする半導体等電子部品が大きく増加しています。すなわち、いずれも季節調整していない原系列の前年同月比の金額ベースで見て、輸出では半導体等電子部品が+25.1%増、うちICは+32.3%増、輸入では半導体等電子部品が+35.0%増、うちICは+41.1%増となっています。私はそれほど詳しくないのですが、いわゆるシリコンサイクルが上向きになって、半導体部品取引が活発化している、ということなのだろうと受け止めています。
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