本日公表の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と雇用統計はすべて過去の数字
本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも2月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲2.1%の減産、3か月ぶりの減産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額も、季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.2%減の12兆1550億円を示し、季節調整済み指数も前月から▲2.0%の低下となっています。雇用統計については、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.6%、有効求人倍率も前月から+0.01ポイント上昇して1.19倍と、それぞれ雇用は改善しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産2月は2.1%低下、3カ月ぶりマイナス 中東の影響不透明
経済産業省が31日公表した2月の鉱工業生産指数速報(2020年=100)は、前月比2.1%低下し3カ月ぶりのマイナスとなった。1月の自動車生産が、統計処理上の理由で上振れたのが主な要因。基調判断は「一進一退」で据え置いた。中東情勢の緊迫化による生産計画への影響は現時点で不透明という。
企業の生産計画に基づく予測指数は3月が前月比3.8%上昇、4月が同3.3%上昇だった。
調査時期は3月上旬のため、中東情勢がどの程度織り込まれているか「幅をもってみる必要があり」、ナフサ減産可能性の影響などは「予断をもって判断できない」と経産省はみている。
2月の生産を押し下げたのは自動車や金属製品、電子部品・デバイスなど。
自動車は1月実績が上振れた分、2月は前月比3.6%の減産で指数全体を0.49%ポイントを押し下げた。
その他、減産が目立ったのは産業用アルミニウム製品(同39.4%減)、大型液晶パネル(25.6%減)など。小型液晶パネルも18.7%の減産だが「理由は不明」(経産省)という。
一方、増産となった鉄鋼・非鉄は前月比2.3%増、化学工業は1.3%増だった。
小売販売2月は0.2%減、2カ月ぶりマイナス ガソリン値下げで
経済産業省が31日公表した2月の商業動態統計速報によると、小売販売額は前年比0.2%減少し、2カ月ぶりのマイナスとなった。食品などの値上げをガソリン価格の低下が相殺した格好だ。
業種別では、ガソリン暫定税率廃止の影響で燃料が前年比14.1%減となったほか、無店舗小売が4.2%減、織物・衣服も3.1%減少した。冬物衣料の不振が響いた。
一方、自動車は軽自動車販売の好調で前年比3.8%増だった。飲食料品は同0.8%増、ドラッグストアの食品販売を含む医薬品・化粧品も3.7%増だった。
業態別ではドラッグストアの販売額が前年比5.6%増。菓子類やコーヒーなど食品販売が好調だった。コンビニも同2.2%増。チキン新商品やコーヒー値上げなどが押し上げた。百貨店は同1.6%増。中国人客が減少する一方、他の国・地域からの旅行客販売は堅調という。
2月の完全失業率は2.6%に改善、自発的離職が減少 有効求人倍率1.19倍に上昇
政府が31日に発表した2月の雇用関連指標は、完全失業率が2.6%で、前月から0.1ポイント改善した。「自発的な離職(自己都合)」などが減少したことが主因。改善は7カ月ぶり。一方、有効求人倍率(季節調整値)は1.19倍で、前月に比べて0.01ポイント上昇した。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.7%、有効求人倍率は1.18倍が見込まれていた。
総務省によると、2月の就業者数は季節調整値で6827万人と、前月に比べて10万人増加。完全失業者数(同)は185万人で、前月から6万人減少した。総務省の担当者は「より良い条件を求めていったん離職した人たちが就職したとみられる。供給側からみると雇用情勢は悪くない」と述べた。
厚生労働省によると、2月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.2%減少した。産業別では「卸売業、小売業」や「宿泊業、飲食サービス業」、「医療、福祉」などの減少が大きい。
有効求職者数(同)は0.5%減少した。物価高を背景により良い条件への転職を希望する動きや、生活費を補う目的で求職活動を始める高齢者がみられるという。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たりに企業から何件の求人があるかを示す。厚労省の担当者は「引き続き求人が求職を上回っており、景気が悪化して求人が減ってきているとはみていない」と述べた。
複数の統計をまとめて取り上げましたので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲2.0%の減産が予想されていましたので、実績の▲2.1%の減産はほぼ予想通りといえます。統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。一昨年2024年7月から1年半ほど連続の据置きです。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の3月は+3.8%の増産で、翌4月も+3.3%の増産となっています。ただし、引用した記事の3パラめにあるように米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の混乱から先行きはまったく不透明としかいいようがありません。引用した記事の4パラめにも、「2月の生産を押し下げたのは自動車や金属製品、電子部品・デバイスなど」とありますが、経済産業省の解説サイトによれば、2月統計における生産は、減産方向に寄与したのは小型トラックや自動車用エンジンなどの自動車工業が前月比▲3.6%減、寄与度▲0.49%、逆に、増産方向に寄与したのは、通信用ケーブル光ファイバ製品や電気銅などの鉄鋼・非鉄金属工業が前月比+2.3%増で+0.13%の寄与度、などとなっています。

続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、2023年年央あたりで前年同月比の伸び率が+5%から+6%台でピークを付けた後、前年同月比はプラスであるもののプラス幅が縮小し、2月統計では▲0.2%減を記録しています。季節調整済み指数の前月比も、2月には▲2.0%減を記録しています。ただし、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の2月統計までの3か月後方移動平均の前月比が0.0%の横ばいであることから、先月までの「一進一退」で据え置いています。また、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、2月統計ではヘッドライン上昇率は+1.3%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率は+1.6%となっていますので、名目で計測した商業販売統計の2月統計は実質消費がプラスかマイナスかは微妙なところであると私は考えています。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.7%、有効求人倍率は1.18倍が予想されていました。本日公表された実績で、失業率2.6%、有効求人倍率1.19倍はともに、市場の事前コンセンサスより上振れしました。ですので、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いと私は考えています。引用した記事にもあるように、よりよい就業条件を求めていったん離職した労働者が年度末を前に就職したと考えられます。実質所得を増加させるには不十分とはいえ、春闘から続く賃上げによって就業意欲が高まる、という形で、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加し、就業者や雇用者も増加していて、その相対的な増え方の差で失業率が低下あるいは上昇している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。例えば、季節調整していない原系列の統計で見て、2月統計では就業者が+11万人増加している一方で、完全失業者も+15万人増加しています。
ただし、一応、例月の通りに統計をレビューしたとはいえ、これらの2月統計はあくまで「過去の数字」です。米国とイスラエルによるイラン攻撃から先行きはまったく不透明です。下のグラフは国際通貨基金による 昨日3月30日付けのIMF Blog "How the War in the Middle East Is Affecting Energy, Trade, and Finance" から引用しています。誰がどう見ても、ホルムズ海峡を通過するタンカーが激減していることは明らかです。繰返しになりますが、先行きはまったく不透明です。
| 固定リンク


コメント