« 春闘の回答状況やいかに? | トップページ | 公平な炭素排出の国別残余量=Carbon Budgetはどれくらいか? »

2026年3月26日 (木)

まだ石油価格の影響が織り込まれていない2月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から2月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月1月からわずかに加速して+2.7%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率も同じくやや加速して+2.7%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、2月は前年比2.7%上昇 宿泊・外航貨物輸送など寄与
日銀が26日に公表した2月の企業向けサービス価格指数速報は、前年比2.7%上昇した。「宿泊サービス」や「外航航貨物輸送」などが押し上げに寄与し、伸び率が前月から0.1%ポイント拡大した。前月比は0.2%上昇だった。
「宿泊サービス」は前年比8.5%上昇し、伸びが前月の4.5%から加速した。中国人観光客の減少傾向は続いているものの、旧正月にともなうアジア各国の長期休暇シーズンが2月にずれ込んだことを受けてインバウンド需要が強まった。
「外航貨物物輸送」は前年比9.7%上昇し、伸び率が前月の1.4%から拡大した。このうち「外航タンカー」では、中東における地政学リスクの高まりで船舶確保を前倒す動きがみられた。
米国とイスラエルがイラン攻撃を開始したのは2月28日で、その後の事象は2月の数字には織り込まれていない。原油をはじめとする各種市況が上昇した影響は3月以降に反映される。
調査対象146品目のうち、上昇は116品目、下落は13品目。日銀の担当者は、中東情勢悪化の影響を含めた海運市況や国際商品市況の動向、各種コストの上昇分を価格転嫁する動きの持続性などを注視していくとしている。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比2.9%上昇と、伸び率は前月から0.2%ポイント下落した。約2年ぶりに3%を割り込んだが、小幅の減速にとどまっており、日銀は「基調の変化を示すものではない」と判断している。
一方、「低人件費率サービス」は同2.4%上昇で、​前月の同2.0%上昇から加速した。「宿泊サービス」や「外航貨物輸送」、「テ​レビ・ラジオ広告」などがそれぞれ押し上げに寄与した。

注目の物価指標だけに、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、1年ほど前の2025年2-3月には前年同月比で+4.3%の上昇を示していましたが、2025年6月に+3%を下回って+2.8%となった後、もっとも最近のデータが利用可能な今年2026年2月統計で+2.0%となるまで、緩やかに減速を続けています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)も、昨年2025年9月に+3.1%と直近のピークをつけた後、昨年2025年12月、今年2026年1月ともに+2.6%まで上昇率が縮小してきており、直近でデータが利用可能な2月統計でも+2.7%となっています。企業物価指数のうちの国内物価は、日銀物価目標の+2%まで減速しましたが、企業向けサービス価格指数(SPPI)はまだ+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数(PPI)や本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、減速しつつあるとはいえ+2%台半ばから後半の上昇率を見ると、デフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率・高人件費比率のサービス価格いずれも+2%台の上昇率を示しています。すなわち、人件費をはじめとして幅広くコストアップが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っているという意味は、企業サイドから見れば人件費以上の過剰な価格転嫁が行われている一方で、家計サイドから見れば国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。ですので、私の従来からの主張ですが、企業サイドの利潤を減少させることにより労働分配率を上昇させ、物価上昇を引き起こすことなく賃上げを実現することが可能です。法人企業統計を見ても、ここまで利益剰余金が積み上がっているんですから、3~5年くらいは物価上昇なしに賃上げが可能ではないか、と私は直感的に試算しています。名だたるエコノミストが誰もこの点を主張しないのは私にはとても不思議です。何か、マズいことがあって忖度が働いているのかもしれません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された2月統計のヘッドラインSPPI上昇率+2.7%への寄与度で見ると、土木建築サービスや建物サービスや宿泊サービスといった諸サービスが+1.22%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分近くを占めています。諸サービス以外では、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.50%、さらに、道路貨物輸送や鉄道旅客輸送や外航貨物輸送などの運輸・郵便が+0.44%、ほかに、不動産+0.21%、広告が+0.18%、リース・レンタルが+0.13%、金融・保険が+0.04%などとなっています。

最後に、引用した記事の4パラ目にあるように、この2月統計には2月28日からの米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響、特に、石油価格上昇の影響は織り込まれていません。さて、来月3月の物価統計はどうなりますことやら。

|

« 春闘の回答状況やいかに? | トップページ | 公平な炭素排出の国別残余量=Carbon Budgetはどれくらいか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 春闘の回答状況やいかに? | トップページ | 公平な炭素排出の国別残余量=Carbon Budgetはどれくらいか? »