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2026年4月22日 (水)

石油輸入額がそれほど増加しなかった3月の貿易統計

本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+11.7%増の11兆0033億円に対して、輸入額は+10.9%増の10兆3363億円、差引き貿易収支は+6670億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

中東紛争、3月貿易統計では影響みられず 予想対比では黒字下振れ
財務省が22日発表した貿易統計速報によると、3月の貿易収支は6670億円の黒字となった。原油急騰の影響も懸念されたが、中東紛争に先立つ現地からの調達が進み、黒字を維持した。一方、原油の高止まりが続けば2026年度の赤字額が膨らむことも予想され、先行きは予断を許さない。
黒字は2カ月連続。同省によると、黒字額は20年12月(7083億円の黒字)以来、5年4カ月ぶりの水準だった。ロイターが集計した民間調査機関の調査では、中央値で1兆1063億円の黒字と予測されていた。公表された速報値は、予想対比では下振れした。
貿易収支のうち、輸出は、前年同月比11.7増の11兆0033億円だった。半導体電子部品や非鉄金属などの輸出が増えた。これに対し、輸入は10.9%増の10兆3363億円だった。
3月の原粗油輸入額は前年同月比7.3%減の7474億円と、14カ月続けて減少した。このうち、中東からの輸入額は7065億円と、前年同月から5.6%減った。ホルムズ海峡の封鎖に伴う影響は、3月統計ではみられなかった。
同時に発表された25年度の貿易収支は1兆7145億円と、小幅の赤字にとどまった。ただ、停戦協議の先行きは見通せず、再び市場が動揺する懸念は拭えない。
市場では「原油が1バレル=80ドル程度で高止まりすれば26年度の貿易赤字は5,6兆円程度に膨らみそうだ」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)とみられている。ホルムズ封鎖が長期化し、1バレル=100ドルを超える推移が続けば「赤字額は15兆円程度まで膨らむ可能性がある」(宮前氏)との声がある。
ロシアによるウクライナ侵攻で資源価格が高騰した22年度の貿易赤字は過去最大に膨らみ、赤字額は22兆0859億円だった。赤字が市場で意識されると円安に振れ、輸入物価はさらに膨らみやすい。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事の2パラ目にあるように、ロイターの集計では市場の事前コンセンサスは1兆1063億円の黒字でしたし、同様に、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも1兆円を超える貿易黒字が見込まれていましたので、実績の+6670億円という黒字はやや下振れした印象です。ただ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは予測レンジの上限が+5300億円ほどでしたので、そのレンジ内ですし、春節を終えたばかりの3月統計ですので、これくらいの誤差は大きくないと見なすエコノミストが多そうな気がします。また、季節調整済みの系列で見ると、貿易収支は1月黒字、2月赤字から3月は黒字を計上しており、季節調整しても中華圏の春節の影響は除去しきれていない印象を私は持っています。引用した記事では、石油価格が1バレル80ドルとか、100ドルとかに上昇すれば、日本の貿易収支が赤字化する、というトーンの論調ですが、いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観も楽観もする必要はない、逆に、3月の貿易統計のように、黒字となったからめでたいわけでもない、と考えています。固定為替相場制度を取っていた1950-60年代の高度成長期のように、「国際収支の天井」を意識した政策運営は、現在の変動為替制度の下ではまったく必要なく、比較優位に基づいた貿易が実行されればいいと考えています。それよりも、米国のトランプ大統領の関税政策による世界貿易のかく乱に加えて、米国とイスラエルによるイラン攻撃により石油価格の動向が大きな問題と考えるべきです。先行きの見通しが不透明であれば、家計の消費というよりも、企業の設備投資活動がある程度抑制される可能性が否定できません。
本日公表された3月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により主要品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油がキロリットルの数量ベースで+2.4%増ながら、金額ベースでは▲7.3%減となっています。米国とイスラエルによるイラン攻撃による石油価格上昇の影響はまだ見られません。さらに、エネルギーに次いで注目されている食料品は金額ベースで+11.3%増となっています。原料品のうちの非鉄金属鉱は重量ベースで▲2.2%減ながら、商品市況の高騰により金額ベースでは+13.9%増を記録しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器のうちの自動車が台数ベースで▲2.4%減、金額ベースでは+0.9%増となっています。ただし、米国向けの自動車輸出について、さらに詳しく見ると、数量ベースでは+2.3%増と伸びている一方で、金額ベースでは▲1.6%減となっており、引き続き、日本のメーカーあるいは輸出商社の方で部分的なりともトランプ関税を相殺するような価格設定により、販売台数の維持を図っている可能性があると考えられます。どこまでこういった関税負担がサステイナブルであるかは私には不明です。自動車を別にすれば、電気機器は金額ベースで+21.5%増、一般機械も+7.1%増となっています。最後に、引用した記事の3パラ目にもか着く言及されている通り、輸出入を通じて、電気機械、特にICをはじめとする半導体等電子部品が大きく増加しています。すなわち、いずれも季節調整していない原系列の前年同月比の金額ベースで見て、輸出では半導体等電子部品が+29.3%増、うちICは+30.7%増、輸入では半導体等電子部品が+1.6%増、うちICは+32.9%増となっています。私はそれほど詳しくないのですが、いわゆるシリコンサイクルが上向きになって、半導体部品取引が活発化している、ということなのだろうと受け止めています。

最後に、石油の品薄、供給不足や価格高騰に打撃を受けている企業も決して少なくないのは事実ですし、短期的にはその対策も重要である一方で、単純に現在の石油消費を維持・継続するのではなく、長期的に脱炭素の観点も含めて石油消費を抑制する方向も考慮されるべきではないか、と私は考えています。

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