緩やかに悪化しつつも底堅い3月の雇用統計と日銀「展望リポート」
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも3月の統計です。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.7%、有効求人倍率も前月から▲0.01ポイント低下して1.18倍と、それぞれ雇用は改善しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
25年度の有効求人倍率1.20倍、3年連続低下 失業率は2.6%
厚生労働省が28日発表した2025年度平均の有効求人倍率は1.20倍と、前年度から0.05ポイント下がった。低下は3年連続。省人化は進んだものの、賃上げ負担から求人を控える動きもあり、人手不足感は根強い。
総務省が同日発表した25年度平均の完全失業率は2.6%と前年度から0.1ポイント上昇した。上昇は5年ぶりとなる。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。25年度平均の有効求人数は4.1%減った。有効求職者数は0.7%減った。
卸売・小売業で新規求人数の減少幅が最も大きく、宿泊・飲食サービス業が続いた。厚労省の担当者は「人手不足を補うため機械化が目立った」と説明する。
「求人を出しても人が集まらず、採用できない状況は続いている」と人手不足感はなお強いとも指摘する。インフレや最低賃金の引き上げが重荷となり求人を控える動きもあるという。
3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍と、前月から0.01ポイント下がった。有効求人数は1.1%減り、有効求職者数は0.7%減った。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比2.6%減った。主要産業別では情報通信業が15.8%減り、卸売・小売業が6.5%減、宿泊・飲食サービス業が6.4%減だった。
3月の完全失業率(季節調整値)は2.7%で前月から0.1ポイント上がった。2カ月ぶりに上昇した。
3月統計が利用可能になり、年度計数に注目していることもあって、やや長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは次の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。

日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.6%、有効求人倍率は1.18倍が予想されていました。本日公表された実績で、失業率2.7%、有効求人倍率1.18倍はともに、市場の事前コンセンサスのジャストミートしました。ですので、統計こそじわじわと悪化を示していますが、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いと私は考えています。その最大の要因は人口減少に起因する人手不足です。引用した記事にもあるように、人手不足に対応した機械化が進んでいる一方で、採用できない状況は続いています。総務省統計局による労働力調査の季節調整していない原系列の前年同月との比較を見ても、自発的離職者(自己都合)は2月の+1万人増から3月は+5万人増に増加していますし、加えて、新たに求職して労働市場に参入した人は2月の+7万人から3月は+11万人増となっています。まだまだ、実質所得を増加させるには不十分とはいえ、昨年の最低賃金引上げや今春闘による賃上げによって就業意欲が高まる、という形で、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加し、就業者や雇用者も増加していて、その相対的な増え方の差で失業率が低下あるいは上昇している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。
ただ、雇用に関して1点だけ懸念されるのは、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東情勢、さらに、石油価格の上昇や石油供給の制約です。3月統計では女性の被正規雇用が前年同月に比べて▲21万人減少しています。上のグラフを見ても、景気の動きとシンクロする一致系列の有効求人倍率、あるいは、景気の先行指標である新規求人数などはピークアウトして緩やかな悪化局面に入っているように見えますし、遅効系列である失業率も緩やかな悪化局面入りしている可能性があります。ただし、従来の経験からして、景気後退局面での雇用の悪化はもっと急速なスピードで現れます。現在の統計を見る限り、景気後退局面での雇用悪化とは少し違っている可能性も十分あると私は受け止めています。
| 実質GDP | 消費者物価指数 (除く生鮮食品) | (参考) 消費者物価指数 (除く生鮮食品・エネルギー) | ||
| 2025年度 | +1.0 ~ +1.0 <+1.0> | +2.7 | +3.0 | |
| 1月時点の見通し | +0.8 ~ +0.9 <+0.9> | +2.7 ~ +2.8 <+2.7> | +2.9 ~ +3.1 <+3.0> | |
| 2026年度 | +0.4 ~ +0.7 <+0.5> | +2.8 ~ +3.0 <+2.8> | +2.5 ~ +2.7 <+2.6> | |
| 1月時点の見通し | +0.8 ~ +1.0 <+1.0> | +1.9 ~ +2.0 <+1.9> | +2.0 ~ +2.3 <+2.2> | |
| 2027年度 | +0.6 ~ +0.8 <+0.7> | +2.3 ~ +2.4 <+2.3> | +2.6 ~ +2.7 <+2.6> | |
| 1月時点の見通し | +0.8 ~ +1.0 <+0.8> | +1.9 ~ +2.2 <+2.0> | +2.0 ~ +2.3 <+2.1> | |
| 2028年度 | +0.7 ~ +0.8 <+0.8> | +2.0 ~ +2.2 <+2.0> | +2.1 ~ +2.4 <+2.2> |
昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合において、基本的見解部分の「展望リポート」が公表されています。そのp.10にある2025~2028年度の政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。1月時点での見通しと比較して、2026-27年度ともに、成長率見通しは引き下げられ、物価見通しは引き上げられています。しかも、生鮮食品を除いた消費者物価指数、いわゆるコアCPIの上昇率は2026-27年度とも日銀物価目標である+2%を上回る見通しとなっています。日銀が利上げに積極的になっている姿が垣間見えます。
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