« 日ハムにまったく歯が立たず連敗 | トップページ | 今年の交流戦はいきなりの3連敗で始まる »

2026年5月28日 (木)

円安の弊害は物価ではない

一昨日の5月26日、明治安田総研から「円安が海外への所得流出に拍車」と題するリポートが明らかにされています。まず、リポートからポイントを3点引用すると次の通りです。

ポイント
  • 4月末以降の財務省の数次にわたる為替介入後も、円売り圧力が収まらない状況が続いている。足元のドル・円相場は159円/㌦近辺まで戻しており、いつまた大型介入が入ってもおかしくない水準
  • 円安は、輸出増等を通じてGDPを押し上げるが、交易条件の悪化を通じ、所得面から見た概念であるGDIを押し下げる。国民の豊かさの実感により近いのはGDPよりもGDI
  • 円安問題の本質は、円安進行時に国内所得が増えにくい産業構造であり、政府としては、エネルギーの自給力強化、戦略分野への国内投資支援等を通じた産業構造改革を進めていく必要

1点目と3点目はともかく、私から見て重要なのは2点目です。円安は輸出を通じて企業収益などへの寄与が大きい一方で、交易条件を悪化させることにより、所得の海外流出を招きます。要するに、円安は企業のためには好都合である一方で、家計には決して好ましいわけではない、と私は考えています。リポートから (図表3) 為替相場の変化のGDP、GDIへの影響 と (図表4) 為替相場の変化の輸出と個人消費への影響 を引用すると次の通りです。

photo

為替が物価に影響を及ぼすという意味でのパススルーは限定的、という点については、以下のいくつかの学術論文から得られる結論です。

最初の論文は、1980年代から21世紀初頭にかけて為替のパススルーが弱まっている、という概括的な論文です。2番目の論文は、中央銀行がインフレ目標を持っている場合、為替のパススルーは弱くなる、と結論しています。まあ、当然に、為替の変動を物価目標に合わせて相殺するような金融政策が取られるのですから、当たり前ともいえます。3番目の論文は、為替だけでなく商品価格も含めて、低インフレ-低インフレ期待の日本では、輸入コストのパススルーが長期的に低下していることを示しています。4番目の論文は、日本では為替変動の原因によってパススルーが異なり、一般的な円安ショックでは消費者物価への波及は限定的である、と結論しています。最後の論文は、日銀によるものであり、為替だけでなく、広く輸入価格、さらには、賃金などのコストが消費者物価にどのように転嫁されるかを検証していて、通常の範囲ではパススルーはかなり弱く、一定の閾値(threshold)を超えない限り、物価への転嫁が大きくない可能性を示唆しています。広く一般からダウンロードできると思いますので、Panel 2: Nonlinear Pass-through でキンクするパススルーカーブを見れば印象的だと思います。
ですので、私の方で定量的な分析をしたわけではありませんが、現在の物価上昇率を抑えるためには、かなり強烈な円高、たぶん、25-30%くらいの円高が必要になる気がします。そこまでの円高は逆に企業へのダメージが大きくなりすぎる可能性すらあります。加えて、私は為替レートを政策変数として物価に割り当てるのは疑問だと考えています。むしろ、明治安田総研のリポートのように所得を考慮する方がまだ望ましい可能性があります。要するに、私が為替について考える結論は2点あり、第1に、物価安定のために円安を目指すのは経済政策として間違っている可能性が高い、と考えるべきであり、第2に、それでも円高を目指す理由は、国内所得の海外流出を防いで、企業ではなく家計の利益を考慮すべきであるため、ということになります。アベノミクスが失敗したのは、トリクルダウンが生じなかったからであり、企業優遇の円安から、物価安定ではなく、家計重視の円高に政策をシフトすべきであろうと私は考えています。

|

« 日ハムにまったく歯が立たず連敗 | トップページ | 今年の交流戦はいきなりの3連敗で始まる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 日ハムにまったく歯が立たず連敗 | トップページ | 今年の交流戦はいきなりの3連敗で始まる »