« 序盤から圧倒的に打ち負けてソフトバンクに大敗 | トップページ | 格の違いを見せつけられてソフトバンクに連敗 »

2026年6月10日 (水)

上昇率がさらに加速した5月の企業物価指数(PPI)

本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+6.3%の上昇となり、先月4月統計の+5.3%から上昇率がさらに加速しています。2023年3月以来の高い伸びとなりました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業物価指数6.3%上昇、3年ぶり高水準 原油高で値上げ品目拡大
日銀が10日発表した5月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は134.5と前年同月比で6.3%上昇した。伸び率は4月(5.3%)と、民間予想の中央値(5.5%)を上回り、23年3月以来3年2カ月ぶりの高水準となった。原油価格の高騰が幅広い製品に波及し始めている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
内訳を見ると、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇の影響が引き続き顕著だった。石油・石炭製品は13.8%上昇し、前月の5.3%から8.5ポイント拡大した。ガソリンや軽油に加え、エンジンオイルなどの潤滑油の価格も上がった。
化学製品はナフサの価格上昇を受けてポリエチレンやポリプロピレンなどに値上げの波及がみられ、伸び率が13.4%となった。前月の10.1%から3.3ポイント拡大した。日銀の担当者は「(供給網の)川中に相当する材まで価格の上昇が広がってきている」と指摘した。
非鉄金属は42.2%の上昇だった。中東情勢の悪化で製錬に必要な硫酸の供給が減り、銅の市況が上昇したほか、生産拠点が攻撃を受けたことでアルミニウム合金などの供給懸念も発生した。
電力・都市ガス・水道は前月がマイナス1.2%だったところ、プラス0.2%に転じた。政府の支援施策が終了したことが背景にある。飲食料品は原材料や資材の価格上昇を転嫁する動きが続く。今後については「包装資材の価格転嫁の動きもあると聞いている」(同)という。
円ベースで見た輸入物価指数は25.5%上昇し、伸び率は22年11月以来の高水準となった。日銀が公表している515品目のうち、価格が上昇したのは418品目、下落したのは82品目だった。15品目では価格が変わらなかった。

インフレ動向が注目される中で、長くなってしまいましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下のパネルは国内物価指数そのものを、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。なお、ちょっと見づらいかもしれませんが、下のパネルの指数水準が急にスティープになったのは先月の2026年3月からです。

photo

まず、企業物価のうちヘッドラインとなる国内物価上昇率は、引用した記事の最初のパラにあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+5.5%でした。また、ロイターの記事では、市場の事前コンセンサスは前月比で見ていて、予想の+0.5%に比べて実績が+0.9%であった旨を報じています。いずれにせよ、実績の上昇率はかなり上振れしているのですが、前年同月比で見て、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの予想レンジ上限は+7.7%でしたから、これを上回るほどではありませんでした。ヘッドラインとなる国内物価だけでなく、輸出物価は+20.6%、輸入物価も+25.5%の2ケタ上昇を示しています。市場の事前コンセンサスを上回る上昇率となった理由は、引用した記事にもあるように、米国とイスラエルによるイラン攻撃から引き起こされた中東での軍事衝突、それに伴う石油価格の上昇です。本日公表された企業物価指数の輸入物価のうちの円建ての原油価格は、それぞれ、4月+36.6%、5月+53.6%の上昇率を示しています。私はエネルギー動向に詳しくないので、日本総研「原油市場展望」(2026年5月)を参考として見ておくと、WTI原油先物価格の先行き見通しについては、中東の軍事衝突次第ということのようで、「イランでの軍事衝突が夏頃までに終結することを前提とする標準シナリオでは、原油価格は100ドル前後で当面高止まりした後、緩やかに下落する見通し。」としつつも、当然、夏ごろに終わる可能性が決して大きいわけではないことから、「ただし、米国とイランが戦闘を再開すれば、価格が150ドル程度まで急騰するリスクも。」と指摘しています。はい、本日のヘッドラインニュースを見る限り、ヘリの撃墜により戦闘が再開されるリスクが高まっているような印象を私は持っています。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率と下落率で少し詳しく見ると、まず、注目の石油・石炭製品は4月+5.3%でしたが、5月統計では+13.8%の上昇となっています。これに伴って、化学製品も4月の+10.1%から5月には+13.4%に跳ね上がっています。ナフサについては品薄感が強まっているという報道も見かけました。電力・都市ガス・水道は政府の電気・ガス料金負担軽減支援事業により4月▲1.2%、4月+0.2%と価格安定が続いています。加えて、農林水産物が4月+13.2%、5月も+10.1%と2ケタの高い上昇率を示しています。農林水産物の価格上昇に伴って、飲食料品の上昇率も4-5月はともに+4.1%と、高い上昇率となっています。非鉄金属は4月+37.9%、5月+42.2%と、きわめて高い上昇率が続いています。
最後に、繰返しになりますが、こういった物価上昇が石油価格の上昇からもたらされたものであることは、多くのエコノミストは理解していますが、おそらく、経済学の専門的な知識のないテレビコメンテータなどが主張する円安原因説は、多くのエコノミストは否定すると私は考えています。すなわち、専門用語ですが、為替の変化が国内の物価に影響する度合いを示すパススルーは日本円についてはかなり低くなっているのが多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスです。よく参照される計量的な分析を含む論文は以下の通りです。為替レートの変化から生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)へのパススルーは0.02と計測されています。したがって、▲1%ポイントのコア消費者物価の引下げをもたらそうとすれば、何と50%の円高が必要ということです。現在160円近傍の円ドルレートを購買力平価見合いの120円くらいにしても、おそらく、▲0.5%ポイントのコアCPI引下げにしかなりません。現時点で日銀物価目標の+2%を下回っているインフレを為替レートの変化でさらに下げようとすることが国民的コンセンサスを得られるかどうか、よく考える必要があります。

|

« 序盤から圧倒的に打ち負けてソフトバンクに大敗 | トップページ | 格の違いを見せつけられてソフトバンクに連敗 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 序盤から圧倒的に打ち負けてソフトバンクに大敗 | トップページ | 格の違いを見せつけられてソフトバンクに連敗 »