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2026年6月 1日 (月)

順調な企業活動を示す1-3月期の法人企業統計

本日、財務省から1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で見て、売上高は前年同期比+1.1%増の408兆6614億円、経常利益は+14.6%増の32兆6271億円に上っています。経常利益は6期連続のプラスです。さらに、設備投資は前年同期からほぼ横ばいの18兆8064億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると次の通りです。

1-3月法人企業、経常利益14.6%増 6四半期連続のプラス
財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業除く)の経常利益は前年同期比で14.6%増の32兆6271億円だった。6四半期連続のプラス。人工知能(AI)やデータセンター関連を中心に収益が伸びた。
法人企業統計は上場企業に限らず日本企業全体の動向を調べている。経常利益は遡れる1954年4~6月期以降の1~3月期での過去最大となった。
経常利益を業種別にみると、製造業は42.9%増と3四半期連続で増加した。1~3月期の伸び率は前期から加速した。情報通信機械や電気機械がけん引した。計測機器や光学機器などの業務用機械は落ち込んだ。
非製造業は1.4%増だった。旅客数や客単価が伸びて航空や鉄道といった運輸業・郵便業が50.5%増えた。資源価格の上昇による利益の拡大を受けて商社をはじめとする卸売業・小売業が6.7%伸びた。建設業と電気業は減益だった。
ソフトウエアを含む設備投資は18兆8064億円で前年同期と比べてほぼ横ばいだった。製造業は0.4%減、非製造業は0.3%増だった。季節調整済みの前期比では全産業で2.0%減少した。
売上高は全産業で408兆6614億円と前年同期比で1.1%増えた。四半期で最大となった。
財務省は「景気が緩やかに回復しているとの政府認識と齟齬(そご)がない」との見解を示した。「中東情勢や金融・資本市場の変動などを含め、今後も企業の動向を注視していく」と述べた

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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法人企業統計の結果について、基本的に、企業業績は好調を維持していると考えるべきです。ただし、法人企業統計の売上高や営業利益・経常利益などはすべて名目値で計測されていますので、物価上昇による水増しを含んでいる点は忘れるべきではありません。ですので、数量ベースの増産や設備投資増などにどこまで支えられているかは、現時点では明らかではありません。来週のGDP統計速報2次QEを待つ必要があります。他方で、その物価上昇も含めて、企業業績が昨今の株価に反映されているわけで、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東の地政学的リスクの顕在化の後の現在においても、東証平均株価は6万円を超えているわけです。ただし、所得の伸び悩みに起因する個人消費などと違って、企業業績は基本的に好調を維持しているものの、何といっても、中東の地政学的リスクが顕在化し、エネルギー価格がどうなるかに左右されると考えるべきです。先行きが不透明であることはいうまでもありません。先行きの景気への影響という点に関しては、中東情勢に伴うエネルギー価格とともに、石油関連製品の供給、さらに、トランプ関税の今後の動向も懸念されます。製造業、中でも波及効果の大きい自動車産業の動向が今後一段と悪化する可能性が高いと考えられます。景気動向に関しては自動車をはじめとする製造業に注目しつつ、設備投資動向に関しては人手不足による影響が大きい非製造業、中でも、比較的労働集約的な業種の動向が注目されます。いずれにせよ、最大の懸念材料は中東情勢とエネルギー価格、さらに、米国の関税率や通商政策だろうとお考えるべきです。いずれも、先行き不透明です。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は人件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍を経て労働分配率が大きく低下を示しています。もう少し長い目で見れば、デフレに入るあたりの1990年代後半からほぼ一貫して労働分配率が低下を続けています。そして、現在でも労働分配率の低下は続いています。いろんな仮定を置いていますので評価は単純ではありませんが、デフレに入ったあたりの1990年代後半の75%近い水準と比べて、最近時点では▲20%ポイント近く労働分配率が低下している、あるいは、コロナ禍の期間の65%ほどと比べても▲10%ポイントほど低下している、と考えるべきです。名目GDPが約600兆円として50-100兆円ほど労働者から企業に移転があった可能性が示唆されています。加えて、一昨年2024年や昨年2025年の春闘では人口減少下の人手不足により賃上げ圧力が高まった結果として、労働分配率が下げ止まった可能性が示唆されていましたが、統計を見る限り決してそうはなっていません。昨年今年と春闘ではあれだけの賃上げがありながら、まだ労働分配率は低下し続けている可能性が高いと考えるべきです。しかも高インフレが続いており、これでは消費は伸びません。中東情勢に起因してエネルギー価格が上昇すれば、さらに物価上昇に拍車が掛かる可能性も大いにあります。いずれにせよ、日本経済には大きなマイナス要因だと私は考えています。設備投資/キャッシュフロー比率も底ばいを続けています。DXやGXに対応した設備投資の本格的な増加が始まったことが期待される一方で、決して楽観的にはなれません。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金はまだまだ伸びが続いています。また、4枚めのパネルにあるように、直近統計で2020年くらいからは、人件費の伸びが高まっている可能性が見て取れますが、人件費以上に経常利益が伸びているのがグラフの傾きから明らかです。労働分配率の低下と整合的なデータであると考えるべきです。アベノミクスではトリクルダウンを想定していましたが、企業業績から勤労者の賃金へは滴り落ちてこなかった、というのがひとつの歴史的事実と考えるべきです。先行きについて逆に考えれば、現在のように、勤労者の賃金が上がらない中で、企業業績だけが伸びて株価が上昇する経済を転換することができれば、資本分配率を低下させて労働分配率が上昇することにより、諸外国と比べても高いインフレにならずに日本経済が成長するパスが実現できる可能性が生じており、それは中期的に望ましい、という私の考えは変わりありません。

最初のグラフに見られる通り、1~3月期の設備投資は季節調整済みの系列の前期比で見て、▲2.0%のマイナスでした。1~3月期GDP統計速報1次QEでは設備投資の伸びがプラスであったことから、これが下方修正され、GDP成長率としても下方修正されるであろうと私は受け止めています。詳細は日を改めて取り上げる予定です。

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