大企業製造業の業況判断が5期連続で改善した6月調査の日銀短観
本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から+5ポイント改善して+22、また、大企業非製造業でも+1ポイント改善の+37となりました。また、本年度2026年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+6.8%増に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業製造業の景況感、5四半期連続で改善 日銀6月短観
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感が5四半期連続で改善した。中東情勢の緊迫に伴うエネルギー価格の上昇が重荷となるなか、半導体など人工知能(AI)関連需要の増加が景気を支えている。
大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回3月調査から5ポイント改善しプラス22だった。約8年ぶりの高水準となった。大企業非製造業の業況判断DIは3月調査から1ポイント改善のプラス37となった。1991年8月以来となる約35年ぶりの高水準を記録した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。回答期間は5月28日~6月30日。対象企業の99%が回答した。6月11日までにおおむね7割の回答があった。米国とイランの停戦合意を織り込む動きは限定的という。
民間エコノミストの予測では大企業製造業、大企業非製造業ともに悪化を見込んでいた。
大企業製造業では半導体やデータセンターといったAI関連需要が堅調に推移し、幅広い業種の景況感の改善につながった。一部では資材などの調達を前倒しする動きもみられた。業種別にみると、非鉄金属が13ポイント改善のプラス36、生産用機械が10ポイント改善のプラス36、業務用機械が8ポイント改善のプラス23だった。
中東情勢の緊迫によるエネルギー上昇が重荷となる窯業・土石製品は14ポイント悪化のプラス11、金属製品が5ポイント悪化のプラス11、自動車が1ポイント悪化のプラス12となった。
大企業非製造業では、人件費などを販売価格に転嫁する動きや堅調なインバウンド(訪日外国人)需要が景況感の改善につながった。業種別でみると、宿泊・飲食サービスが12ポイント改善のプラス46、小売が7ポイント改善のプラス33だった。
一方、原材料や人件費の上昇による影響を受け、建設が3ポイント悪化のプラス52、不動産が3ポイント悪化のプラス52となった。
先行きの景況感は大企業製造業が5ポイント悪化のプラス17、非製造業が9ポイント悪化のプラス28を見込む。供給網の混乱に伴うコスト上昇や物価上昇による個人消費の鈍化、深刻な人手不足が懸念材料となる。
企業の事業計画の前提となる26年度の想定為替レートは全規模・全産業で1ドル=152円57銭だった。前回調査は26年度で150円10銭で、やや円安方向に修正された。輸出企業の収益改善につながる可能性がある。
いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事の4パラ目にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、大企業製造業・非製造業ともにが前回3月調査から▲1ポイント悪化すると予想されていました。本日公表された大企業製造業の景況判断DIの+22という実績は、市場の事前コンセンサスを大きく上回って、少なくとも私には大きなサプライズでした。ただ、先行きについては大企業・中堅企業・中小企業の規模を問わず、また、製造業・非製造業の産業を問わず、業況判断指数DIが悪化する見込みとなっています。日銀のサイトによれば、回収基準日は6月11日ということですので、米国とイランとの停戦署名の少しまえながら、米国とイスラエルによるイラン攻撃やその結果としての中東の武力紛争の先行き見通しが、かなり楽観的な方向に向かっていたのであろうと、私は想像しています。したがって、日銀はこういった強気の企業マインドを背景に、年内利上げを目指すのではないか、と私は想像しています。

続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学における生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感がほぼ払拭されました。特に、雇用人員については足元から目先では不足感がますます強まっている、ということになります。特に、雇用人員の過不足感については、グラフを見ても理解できる通り、大企業・中堅企業・中小企業ともコロナ禍前の人手不足感を上回っています。今春闘での賃上げが高水準だった背景でもあります。春闘賃上げ率を概観しても理解できる通り、ようやく、名目賃金が物価上昇以上に上昇して、実質賃金が安定的に上向くという段階に達しつつあるように見えます。ただし、いまだに、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではない可能性がある、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、生つ日に対しては雇用ほどの逼迫感がないという点もあわせて考えると、非正規雇用のような低スキル、したがって、低賃金労働者が不足しているだけであって、外国人を含めて低賃金労働の供給があれば、生産要素間で代替可能な設備はそれほど必要性高くない、ということの現れである可能性が十分あるのではないかと感じます。

続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、今回の3月調査は年度始まりの前の時点ですので、まだ年度計画を決めている企業が少ないためか、マイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。今年度2026年度の設備投資計画の推移は昨年度2025年度や一昨年度2024年に近い推移を示していることがグラフからうかがわれます。すなわち、今回の6月調査では全規模全産業で+7%増近いのプラスの伸びが計画されています。ただ、中東の武力紛争などについての先行き不透明感が大きく、この先、9月調査や12月調査などでこの6月調査よりも上積みされるかどうかは不明です。もっとも、AI活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)、カーボンニュートラルを目指したグリーントランスフォーメーション(GX)、さらに、グローバリゼーション=国際化などに対応した投資がいよいよ本格化しなければ、ますます日本経済が世界から取り残される、という段階が近づいているような気がして、設備投資の活性化を期待しています。

最後に、本日、内閣府から6月の消費者態度指数が公表されています。6月統計では、前月から+0.2ポイント上昇し33.8を記録しています。米国とイスラエルのイラン攻撃の影響で3月統計に示された消費者マインドが大きく落ち込んで、さらに、4月統計でも小幅に低下した後、5-6月統計ではごくわずかながら上昇を示しました。しかし、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。ただ、消費者態度指数を構成する4項目の意識指標はすべて横ばいないし上昇しています。すなわち、「暮らし向き」が+0.8ポイント上昇し32.0、「耐久消費財の買い時判断」が+0.2ポイント上昇し24.6、「雇用環境」が+0.1ポイント上昇し38.4、「収入の増え方」は前月と変わらず40.3となっています。日銀短観に示された企業マインドはかなり改善を示していますが、消費者マインドは中東における武力紛争で急落してから回復ペースが遅くなっています。
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