« 終盤にリリーフ陣が打たれて横浜に完敗 | トップページ | 延長11回高寺選手のタイムリーで横浜にサヨナラ勝ち »

2026年7月21日 (火)

金融政策の量的緩和による政府財政のサステイナビリティへの影響

政府財政のサステイナビリティが金融政策の量的緩和(QE)からどのような影響を受けるのか、について "Quantitative Easing and Government Debt Sustainability" と題するワーキングペーパーが全米経済研究所(NBER)から明らかにされています。まず、論文の引用情報をNBERのサイトから引用すると次の通りです。

続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
We show that quantitative easing (QE) worsens government debt sustainability. In our model, the government has a negative primary balance and downward-sloping debt demand that makes interest rates endogenous. The central bank has long-term capital and remits profits to the fiscal authority. QE depletes this capital stock, reducing future remittances and crisis-fighting reserves. Contrary to Sargent and Wallace (1981), where greater monetary accommodation lowers the steady-state debt level, we show that QE increases the steady-state level of debt and shifts the default boundary inward, thus heightening fragility and reducing debt sustainability. Moreover, while QE can keep interest rates low for extended periods, sustaining a QE-backed rate peg requires a growing central-bank footprint and accelerating capital depletion, until financing costs rise sharply. Under certain parameters, large-scale QE makes previously sustainable debt levels unsustainable, leading ultimately to sovereign default.

私が3年前に書いた紀要論文 "An Essay on Public Debt Sustainability: Why Japanese Government Does Not Go Bankrupt?" では、公的債務残高のサステイナビリティについてはドーマー方程式から、基礎的財政収支と成長率と金利の差、すなわち、動学的効率性から決まる、と結論しています。ものすごく単純にいえば、中央銀行が量的緩和(QE)政策を取って金利が低くなれば、公的債務残高のサステイナビリティは高まる、と考えていただけに、少しショックを受けました。この論文で重要と考えるグラフをpdfの論文から引用すると次の通りです。

photo

上のグラフは、ワーキングペーパーから Figure 4. Steady states before and after QE を引用しています。タイトル通りに、量的緩和(QE)の前後で公的債務残高のサステイナビリティが、理論モデルからどのように動くかを分析しています。上のパネルが量的緩和前で、下が量的緩和後です。見れば明らかなように、安定均衡(Stable Steady State)が右へ移動し、不安定均衡(Unstable Steady State)が左へ移動し、結果として、デフォルト境界(Default Boundary)が内側へ移動してしまっています。つまり、量的緩和は短期的には金利を押し下げるとしても、長期的には財政の安定領域を縮小させるという結論をもっとも直感的に示しています。

photo

続いて、上のグラフは、ワーキングペーパーから Figure 5. Economic dynamics after QE を引用しています。先の Figure 4. Steady states before and after QE が比較静学に基づいていましたが、この Figure 5. Economic dynamics after QE は動学的な経路が示されています。左上のパネル(a)から始めて、(a) 量的緩和の直後は金利を低く抑えることが可能であるものの、(b) 量的緩和のための金利ペッグを維持するには、中央銀行の資産毀損が生じ、(c) 中央銀行資本の枯渇を加速させ、(d) 最終的には資金調達コストの急激な上昇を招く、ということが示されています。

このワーキングペーパーは理論モデルに基づいて、延々と離散系の差分方程式を解くことによって得られた結論を示しており、実際のデータに基づく実証的な研究成果ではありません。ですので、前提として、政府が基礎的財政収支の赤字を続けるとか、量的緩和によりきわめて直接的に中央銀行が資本を毀損して政府からの出資拡大は行われないとか、いささか現実性に疑問ある前提が置かれていたりします。そして、ワーキングペーパー本体で48ページ、Appendixが69ページ、あわせて119ページあり、Appendixのうち、延々と数学的な証明(Proof)を展開しているAppendix Cが60ページほどあって、そもそも、私が完全にこのワーキングペーパーの趣旨を理解したというまでの自信もありません。でも、Sargent and Wallace (1981) "Some unpleasant monetarist arithmetic" とも真逆の結論を導いており、少しショッキングであったことは確かです。

|

« 終盤にリリーフ陣が打たれて横浜に完敗 | トップページ | 延長11回高寺選手のタイムリーで横浜にサヨナラ勝ち »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 終盤にリリーフ陣が打たれて横浜に完敗 | トップページ | 延長11回高寺選手のタイムリーで横浜にサヨナラ勝ち »