基調判断が上方修正された6月の景気ウォッチャーと大きな黒字を記録した5月の経常収支
本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.4ポイント上昇の44.0となった一方で、先行き判断DIは+5.0ポイント上昇の45.7を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で過去最大の+3兆9683億円の黒字を計上しています。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
街角景気6月は0.4ポイント上昇、2カ月連続プラス 景気の見方を上方修正
内閣府が8日に発表した6月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは44.0となり、前月から0.4ポイント上昇した。2カ月連続のプラス。ウオッチャーの景気の見方は「中東情勢によるマインド面の下押しを中心に影響が残るものの、持ち直しの兆しがみられる」に上方修正した。
指数を構成する3部門では、家計動向関連が前月から0.3ポイント低下し43.5。一方、企業動向関連は1.9ポイント上昇し45.6、雇用関連は2.4ポイント上昇し43.9となった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から5.0ポイント上昇の45.7。3カ月連続のプラス。内閣府は先行きについて「中東情勢による不透明感緩和への期待がみられる」とした。
調査期間は6月25日から30日で、米国とイランが戦闘終結に向けた覚書に署名した後に行われた。
経常黒字、5月は3兆9683億円の黒字 16カ月連続
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、5月の経常収支は3兆9683億円の黒字となった。黒字は16カ月連続。黒字額は前年同月比19.5%増えたが、ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値4兆1213億円は下回った。
内訳をみると、海外投資の収益や配当金などの第1次所得収支は4兆2756億円の黒字で、黒字額が2.3%増えた。貿易収支は5040億円改善し、69億円の黒字に転換した。北米向けの自動車やアジア向けの半導体など電子部品がけん引する形で輸出が14.7%増えて、輸入額を上回った。
一方、サービス収支は1411億円悪化し、103億円の赤字に転落。訪日外国人旅行者(インバウンド)の減少などを背景に旅行収支の黒字幅が縮小した。
貿易・サービス収支は3628億円改善したものの、34億円の赤字にとどまった。
エコノミストは経常黒字は増加基調を続け、今年も過去最大の黒字を更新するのでは、と予想する向きが多い。もっとも、そうして稼いだ経常黒字は日本国内の投資や輸出拡大にはつながらないとみている。
「経常黒字のほとんどは米国をはじめとした海外への再投資に使われる。企業としては、稼いだドルを日本ではなく米国などインセンティブのある国で雇用や設備投資に使うことが最も合理的だ」と、みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介氏は述べる。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただ、景気ウォッチャーの記事は内閣府からの公表直後のファーストショットですので、その後、追加や修正が入っているかもしれません。続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では、米国とイスラエルのイラン攻撃に端を発する中東の武力紛争により大幅なマインド低下により、3月統計では前月から▲6.7ポイントと大きく低下して42.2となった後、4月統計でも▲1.4ポイント低下して40.8となった後、5月の休日が例年よりも多かったこともあって家計動向関連のうちの飲食関連が大きく上昇したことから、5月統計では+2.8ポイント上昇して43.6を記録し、本日公表の6月統計でもさらに+0.4ポイント上昇して、44.0を記録しています。加えて、本日公表の6月統計の先行き判断DIは前月から+5.0ポイントと大きく上昇しています。しかも、家計動向関連・企業動向関連・雇用関連の3カテゴリーがほぼそろって大きく上昇し、さらにさらにで、家計動向関連の中でもほぼすべての項目、また、企業動向関連でも製造業・非製造業とも大きな上昇を見せています。米国とイランの停戦合意が6月半ばでしたから、この中東における武力紛争の影響が和らいだ、ということなのだろうと私は考えています。というのも、引用した記事の最後のパラにもあるように、調査期間が6月25日から30日であり、6月17日の停戦合意文書署名の直後であったからです。でも、別に何かあるのかもしれません。なお、これも引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府は基調判断を上方修正しています。すなわち、中東情勢によるただし書きを別にすれば、現状判断に関しては、5月統計の時点では、「このところ持ち直しの動きに弱さがみられる。」でしたが、6月統計では「持ち直しの兆しがみられる。」と改定しています。先行きについても、5月統計では「中東情勢による不透明感がみられる。」でしたが、本日公表の6月統計では「中東情勢による不透明感緩和への期待がみられる。」としています。まあ、何と申しましょうかで、日本の国内のマインドは中東の武力紛争次第、ということなのだろうというのはよく理解できます。景気判断理由の概要については、内閣府の調査結果の中から、こういったマインドをよく表しているものを選ぶと、近畿地方の企業動向関連で、「中東情勢も少し落ち着き、資材が予定どおり入荷するようになったため、製造も予定どおりに進みつつある(食料品製造業)。」といった見方がありました。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+4兆円余りの黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じように+4兆円超の黒字の見込みでしたので、実績の+4兆円を少し下回った黒字はやや下振れした印象です。季節調整済み系列の統計でも、+3兆円余りの黒字を計上しています。昨年来のトランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支がかく乱されていたのが、元に戻りつつある、というのは通関統計でも確認されているところです。加えて、6月以降の今後の統計を見なければ正確なところは判りませんが、石油価格の動向については米国とイランの停戦合意で価格が落ち着くと見込まれますので、輸入が急増する事態はなさそうです。いずれにせよ、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても、日本の国際競争力が高いわけでもなく、ましてや特段めでたいわけでもない、と私は考えています。
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