2019年5月17日 (金)

来週月曜日公表予定の1-3月期GDP統計1次QEはマイナス成長か?

豪華絢爛10連休のゴールデンウィーク前の先々週金曜日に公表された鉱工業生産指数(IIP)など、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の5月20日に1~3月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっており、すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。明示的に、先行きに言及しているのは、以下のテーブルの上から3機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研だけで、特に大和総研は需要項目別に長くなりそうなので、消費だけでストップしてしまったんですが、いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.1%
(▲0.2%)
先行きマイナス成長が続く公算は小さく、4~6月期には緩やかな景気回復基調に復する見込み。中国政府の景気刺激策の効果により中国経済は最悪期を脱しつつあることから、昨年夏場以降減少傾向にあるわが国の輸出は底入れする見込み。設備投資も、中国経済の失速懸念が後退するのに伴い、先送りしていた投資案件を実行に移す動きが顕在化する見通し。
大和総研▲0.1%
(▲0.5%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
まず、個人消費は一進一退が続きながらも緩やかに増加するとみている。人手不足を背景に名目賃金は緩やかに増加している。また、実質賃金も2018年11月以降原油価格が大きく下落したことで一時的に増加していた。しかし、今年に入り原油価格が再び上昇したことから、先行きは名目賃金上昇の効果が物価高により相殺されるだろう。また、賃金カーブのフラット化や残業抑制により名目賃金の上昇ペースが鈍る可能性にも注意が必要だ。
また、10月に予定されている消費増税に関しては、各種経済対策の実施により駆け込み需要・反動減はいくらか緩和される見込みである。ただし、施策の一つであるポイント還元策が、制度終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減を生じさせる点には留意しておく必要がある。また、増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できるような内容ではないことも留意しておくべきだ。
みずほ総研+0.4%
(+1.4%)
4~6月期以降については、輸出の伸び悩みが当面続く一方、内需の更なる低迷は回避される見通しだ。消費が底堅く推移するほか、設備投資の深刻な調整は避けられるとみている。
輸出は、景気対策による中国経済の持ち直しやIT需要の調整局面からの脱却時期が年後半以降になるとみており、当面伸び悩む見通しだ。
個人消費は、労働需給のひっ迫に伴う雇用者所得の堅調さが押し上げ要因となり、底堅く推移するだろう。消費増税前の駆け込み需要も、2014年度当時と比べ小幅ではあるが発生し、一時的だがプラス要因となろう。
設備投資は、高水準の企業収益や人手不足による合理化・省力化投資が下支えになり、深刻な調整局面入りは回避される見通しだ。
リスクはマインド面の更なる低迷だろう。足元続く原油価格の上昇が仮に続けば、低迷している消費マインドをさらに押し下げる可能性がある。また世界経済の更なる減速や貿易摩擦の激化は、輸出減退だけでなく、投資マインドの更なる悪化に繋がるおそれもある。内需のマインド低迷を引き起こす可能性があるこうした要因には、引き続き注視する必要がある。
ニッセイ基礎研▲0.0%
(▲0.2%)
実質GDPは2016年1-3月期から8四半期連続でプラス成長となった後、2018年1-3月期からはマイナス成長とプラス成長を繰り返している。2019年1-3月期のマイナス幅は2018年1-3月期、7-9月期よりも小さくなるとみられるが、2018年中のマイナス成長が大雪、台風、地震など天候不順や自然災害による影響が大きかったのに対し、2019年1-3月期は天候が比較的恵まれている中でのマイナス成長である。また、成長率のマイナス幅が小さい理由は国内需要の低迷を受けた輸入の落ち込みであり、内容的にも悪い。
日本経済は2018年に入ってから横ばい圏の推移が続いていたが、2018年度末にかけて実態として大きく悪化したと判断される。
第一生命経済研▲0.1%
(▲0.2%)
小幅マイナス成長が予想される1-3月期のGDPだが、今回は見た目以上に内容が悪くなりそうだ。輸出が大幅マイナスになることに加え、個人消費、設備投資も弱く、主要どころの需要項目が軒並み弱い結果になるとみられる。こうしたなかでも小幅なマイナス成長にとどまるとみられる理由は、輸入の減少に尽きる。輸入が前期比▲4.5%と、輸出以上に大きな落ち込みとなることでで、外需寄与度は前期比年率で+1.5%Ptも成長率を押し上げる見込みである。輸入の減少によって成長率は押し上げられるが、これは内需の弱さの反映という面もあるため、決して喜べるものではない。表面上の数字以上に足元の景気の弱さを示す内容になるだろう。
伊藤忠経済研+0.3%
(+1.2%)
輸出が大きく落ち込み、設備投資もマイナスに転じたが、個人消費が減速しつつも増勢を維持したことに加え、公共投資が大幅に増加し、成長を下支えした。前年同期比では10~12月期の+0.3%から1~3月期は+0.6%へ伸びを高めていることもあり、日本経済は緩やかながらも拡大基調を維持していると評価できよう。ただし、内閣府が試算する潜在成長率1.0%とさほど変わらない程度の成長にとどまり、物価上昇圧力を大きく高めるほどではない。依然としてデフレ脱却への道のりは遠い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.0%
(▲0.1%)
2019年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比-0.0% (年率換算-0.1%) と前期比で小幅ながらもマイナス成長となったと予想される。外需は3四半期ぶりにプラスに寄与するものの、個人消費や設備投資など国内需要が弱い。
三菱総研+0.4%
(+1.4%)
2四半期連続でのプラス成長を予測する。輸出は減少に転じたものの、内需が緩やかながらも増加したとみられる。

ということで、ほぼほぼゼロ成長が予想されており、しかも、成長率の押し上げ要因が輸入の減少というわけで、かなり仕上がりの悪い姿が予想されています。ニッセイ基礎研のヘッドラインでも引用しておきましたが、2018年中もプラス・マイナスの成長率がジグザグに現れたんですが、これは地震や台風や豪雨などの経済外要因たる自然災害に起因していた面が強く、今年2019年1~3月期の成長率の大幅減速は、自律的、というか、経済の内生的な景気循環の局面変化であり、国内要因というよりは海外要因、すなわち、米中貿易摩擦などに起因する中国経済の減速が大きく影響しているとはいえ、世界経済全体が減速する中での我が国経済の成長鈍化と考えるべきです。かつての米国に次ぐの世界第2位の経済大国も、「中国がくしゃみをすれば風邪をひく」ようになったといえます。ですから、日本経済が、このまま、景気後退局面入りするかどうかも世界経済や中国経済の動向に依存します。米国のトランプ政権の強硬姿勢を見る限り、我が国経済が景気後退にすでに入っている、あるいは、これから短期間の間に景気後退局面に入る確率、は決して小さくないと私は受け止めています。
下のグラフは、実質GDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2019年5月16日 (木)

+1%超の上昇続く企業物価(PPI)の先行きやいかに?

本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.3%と前月の+0.9%から上昇率が拡大し、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、前年比1.2%増 米中貿易交渉の進展期待で
日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.8で前年同月比で1.2%上昇した。上昇は28カ月連続で、上昇率は3月の確報値の1.3%から縮小した。原油価格の上昇幅が昨年同時期と比べて小さかったため前年比の増加は小幅に縮小したが、米中貿易交渉の進展期待などから企業物価指数は上昇した。
前月比では3カ月連続のプラスで上昇率は前月と同じ0.3%だった。日銀の調査統計局は4月の物価指数上昇について、4月中旬までは米中貿易交渉の進展が期待されており、世界的な景気減速の懸念が和らいでいたとの見方を示した。
円ベースでの輸出物価は前年比で0.2%上昇し、前月比では0.4%上昇した。輸入物価は前年比で1.8%、前月比では0.5%それぞれ上昇した。

いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、基本的に、ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月の3月統計の+1.3%からほぼ横ばいの+1.2%となっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.1%の上昇でしたので、これとも大きな違いはありませんでした。同時に、国際商品市況における石油価格にも連動した動きと考えています。すなわち、輸入物価のうち、石油・石炭・天然ガスは円ベースの前年同月比で見て、3月の+7.3%の上昇から、4月統計では+6.4%にやや上昇幅を縮小させています。加えて、季節調整していない原系列ながら、国内物価の前月からの上昇幅+0.3%に対する寄与度で見て、ガソリンをはじめとする石油・石炭製品が+0.22%、エチレンなどの化学製品が+0.06%、などとなっており、エネルギー価格と中国をはじめとする新興国経済の減速懸念が和らいだ点を背景とした価格上昇の色彩が強いとの報道もうなずけると私は考えています。もっとも、十分な情報はありませんが、4月の新年度に入って価格改定が進んだ部分もあるんではないかと想像しています。企業物価(PPI)ではなく消費者物価(CPI)なんでしょうが、少なくとも、スーパーマーケットなどにおける商品を見ている限り、一部分ながら価格改定が進んでいるような印象を私は持っています。まあ、個人的な印象論です。ただし、ただしなんですが、引用した記事にもある通り、世界経済の減速懸念が4月時点で和らいでいたのは、あくまで米中貿易交渉の進展に対する期待でしたので、現時点では、この交渉進展は望み薄との見方もありますから、来月統計の際には逆の見方が支配的になっていても不思議ではありません。ですから、とても無責任な見方ながら、4月統計の+1%超えの国内物価上昇率は、世界経済要因か、新年度価格改定要因か、来月の統計でヒントが得られるのかもしれません。

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2019年5月15日 (水)

マクロミル調査による今夏のボーナスの使い道やいかに?

もうすでにかなり前のことのように思えてきますが、4月22日付けで「今夏のボーナスは増えるのか?」と題して、シンクタンク4機関のややビミョーな予想を取りまとめましたが、ゴ0ルデンウィークの10連休が終わって、マクロミル・ホノテから昨日5月14日付けで2019年夏のボーナス、支給見込みや使い道に関する調査結果が明らかにされています。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを4点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 2019年夏のボーナスが「支給される予定」は84%。昨年から4.9ポイント上昇
  • 夏ボーナスの見込み額は、平均466,326円。昨年より12,805円増加
  • 夏ボーナスの使い道は「預貯金」が7割でダントツ。その理由は「安心感を持つため」が最多
  • 夏のボーナスで奮発したいこと、1位は「旅行」。奮発したいと思わない人も3割

支給額などはシンクタンク予想と比べるべきではないような気もしますが、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは夏のボーナスの受給予定と予想金額を結合させています。いずれも最近3年間ですが、今年2019年は支給される予定が83.7%と、昨年より4.9%ポイント上昇しており、予想金額についても昨年より+12,805円増の平均466,326円に上っています。シンクタンク予想の民間企業平均は40万円に届きませんでしたので、大盤振舞いな気がするんですが、正社員対象の調査でもあって、かなりいい結果ということなのかもしれません。

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次に、夏のボーナスで奮発したいことのグラフは上の通りです。もっとも多かったのは旅行35%で、次いで、レジャー19%、趣味18%と続き、電化製品や洋服などを購入したいという人はどちらも15%以下という結果となっています。他方、奮発してやりたいことや買いたいものはない、という回答も34%に上っています。ただ、グラフはありませんが、夏のボーナスの使い道について複数回答でたずねると、1位は預貯金が70%でダントツとなっています。その理由は、まず、安心感を持つため47%、次いで、老後の生活費として45%などが多くなっています。定年退職して、私も判るようになった気がします。

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2019年5月14日 (火)

現状判断DIが上昇した4月の景気ウオッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.5ポイント上昇の45.3を記録した一方で、先行き判断DIも▲0.2ポイント低下の48.4となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆8479億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり改善 10連休に期待
内閣府が14日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は45.3と、前の月から0.5ポイント上昇(改善)した。改善は2カ月ぶり。10連休を控え、消費の増加に対する期待や生産を上乗せする動きが指数を押し上げた。内閣府は基調判断を「回復に弱さがみられる」に据え置いた。
企業動向関連は1.1ポイント上昇の46.0だった。調査時点では「米中貿易摩擦に対する懸念が和らいでいた」(内閣府)ことも心理を上向かせたとみられる。「連休に備えるための注文が例年以上に多い」(東北の食料品製造業)との声があった。家計動向関連は0.5ポイント上昇の44.7だった。「新元号に関連した商戦、10連休など消費が活発になるきっかけがあった」(北海道のスーパー)との声があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.4と、前の月から0.2ポイント低下した。雇用関連が2.5ポイント低下の47.4だった。「製造業中心に求人が減少している影響がある」(内閣府)という。企業動向関連も低下し、燃料価格などコストの増加を懸念する声が目立った。内閣府は先行きの基調判断について「海外情勢等に対する懸念がみられる」とした。
3月の経常収支、2兆8479億円の黒字 57カ月連続黒字
財務省が14日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆8479億円の黒字だった。黒字は57カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3兆515億円の黒字だった。
貿易収支は7001億円の黒字、第1次所得収支は2兆564億円の黒字だった。
同時に発表した2018年度の経常収支は19兆4144億円の黒字だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計の記事を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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4月の景気ウォッチャー全体としては、引用した記事にもある通り、足元から目先についてはゴールデンウィークの10連休に期待して現状判断DIは上向くも、さらに2~3か月先の動向については米中貿易摩擦などからやや不透明感が残って先行き判断DIは下向き、といったところでしょうか。ということで、4月の景気ウォッチャーの現状判断DIを前月差で少し詳しく見ると、3項目のコンポーネントのうち、第1の家計動向関連は住宅関連を除いておおむね前月から上向いており、家計全体で+0.5の上昇を示し、第2の企業動向関連でも製造業がけん引して+1.1の上向きとなっていますが、第3の雇用動向関連が▲0.6とマイナスを示しています。これは、先行き判断DIについても同じ傾向が見受けられ、雇用動向関連が前月差でもっとも大きなマイナスをつけています。世間一般では、雇用はまだまだ堅調であり、人手不足が続いていると考えられていますが、引用した記事と違って、私が景気判断理由集を見る限り、南関東の民間職業紹介機関から「一部の電機、部品メーカーから採用抑制の意向が出てきている。携帯電話の販売状況や米中貿易摩擦の影響が出ており、これまでの採用計画を抑える状況にある。」とか、東海の民間職業紹介機関からも「大手メーカーの一部で中途採用の求人がストップし始めている。」といった見方が出始めています。例の米中間の貿易摩擦に伴う両国の関税率引き上げについては、我が国の実体経済に対して製造業などに影響を及ぼすのはまだまだ先だろうと考えるべきなんですが、米中貿易摩擦が企業マインドを通じて、先行きの不透明感や悲観的な見通しから雇用にマイナスのインパクトを及ぼしているように見えます。消費者者マインドだけでなく、企業マインドも米中貿易摩擦で悪化する可能性がありますし、そうであれば、雇用よりも設備投資への影響も出る懸念があります。もちろん、貿易摩擦だけでなく、実体経済に関して、昨日公表された景気動向指数の「悪化」への基調判断修正も、消費者マインドだけでなく、企業マインドにも否定的な影響を及ぼすのは明らかです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。月次の季節調整済の系列で見て、安定的に1~2兆円の黒字を計上してます。2018年度の統計が利用可能となり、したがって、年度の経常収支が+19兆4144億円の黒字を記録しています。前年度から▲2兆7,605億円の黒字縮小となり、特に、貿易収支が2018年度は+7,068億円と▲3兆8,328億円の大幅な黒字縮小となっています。基本は、国際商品市況における石油価格の上昇ですから、この2018年度の貿易黒字縮小は我が国産業の国際競争力に起因するものではない、と私は受け止めています。また、2018年度経常黒字+14兆円余りの中で、第一次所得収支が+21兆652億円に上っており、さらにそのうちの約+20兆円ほどは直接投資の収益で、かつて大きかった証券投資の収益は+7兆円弱に過ぎません。いずれにせよ、海外投資による収益の黒字が、財サービスの輸出入に基づく貿易黒字よりもはるかに大きくなっています。

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2019年5月13日 (月)

基調判断が「悪化」に引き下げられた3月統計の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。今年に入って1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に下方修正されて注目が集まっていたところ、CI先行指数は前月差▲0.9ポイント下降して96.3を、CI一致指数も▲0.9ポイント下降して99.6を、それぞれ記録し、基調判断は「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気動向指数、判断「悪化」に 6年2カ月ぶり
内閣府は13日、3月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値を発表した。景気の現状を示す一致指数は99.6と前月より0.9ポイント下がった。指数の推移から機械的に決まる基調判断は下方修正され、2013年1月以来6年2カ月ぶりに「悪化」となった。この表現は景気が後退局面にある可能性が高いことを示す。
政府は5月中にまとめる月例経済報告で公式の景気認識を示す。これまで「回復」としてきた表現を修正するかどうかが焦点になる
一致指数が低下したのは、中国経済の減速で中国向けの輸出が落ち込んだ影響が大きい。特にアジア向けの半導体製造装置の出荷などが低迷した。
内閣府が指数に基づく機械的な景気判断を示すようになったのは08年4月以降。指数の動きに照らして「改善」などの基調判断を示す。近年は16年10月から18年8月まで23カ月連続で「改善」だった。18年9~12月は「足踏み」、19年1~2月は「下方への局面変化」となっていた。
過去に判断が「悪化」となった局面は08年6月~09年4月、12年10~13年1月の2回ある。いずれも専門家が事後的に判定した景気後退期と重なる期間が多い。
ただ一致指数以外にも景気の状況を示す指標はある。例えば雇用情勢は依然として堅調との見方が多い。内閣府の担当者は「政府としての正式な景気判断は月例経済報告で行う」と説明した。政府は参院選や消費増税を控える今後の政治日程も念頭に、慎重に経済情勢を見極める。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、3月のCI一致指数に基づく景気の基調判断は「悪化」に下方修正されています。内閣府の「CI の『基調判断』について」に従えば、先月までの「局面変化」は、「事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」と定義され、基準は「7ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。」とされています。他方で、「悪化」については、「景気後退の可能性が高いことを示す。」と定義され、基準としては「原則として3ヶ月以上連続して、3ヶ月後方移動平均が下降した場合。」に適用されることとされています。そもそも、景気判断は景気動向指数のCI一致指数だけで決まるのではなく、総合的に判断されるものですし、中でも、統計的には景気動向指数よりもヒストリカルDIの方が重視されます。
本日公表の3月統計では、投資財出荷指数(除輸送機械)、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)などのマイナス寄与が目立っています。引用した記事には雇用はまだ「堅調」との評価が見られますが、有効求人倍率がマイナス寄与しているのも事実です。また、単月統計ではあるものの、やっぱり、消費者向けの需要が弱い気もします。いずれにせよ、先週木曜日5月9日付けで消費者態度指数を取り上げた際にも言及しましたが、実体経済の景気動向指数とマインドが相乗効果をもって低下する可能性は否定できません。他方で、10月からの消費税率引き上げ前には何らかの規模での駆け込み需要が発生することも予想され、決してサステイナブルではないながらも、一時的な需要の高まりは発生します。やや景気動向は複雑になってきたようです。

最後に、私の方で簡単に取りまとめた「CIによる景気の基調判断」の基準のテーブルを以下に記しておきます。あくまで私自身のメモですので、正確には内閣府の資料をご参照ください。

基調判断定義基準
① 改善景気拡張の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が上昇した場合。
② 足踏み景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
③ 局面変化事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。7か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
④ 悪化景気後退の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降した場合。
⑤ 下げ止まり景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。

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2019年5月10日 (金)

大和総研による米国の対中国製品関税率25%への引き上げの影響試算やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の5月7日に大和総研から「『米中冷戦』再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。米中間の通商協議が決裂した際の政治力学的な解析と世界および日本経済への影響試算がなされています。前者の政治力学的な解析はやや専門外ですので、世界経済と日本経済への影響試算に限って、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、リポートから要約5点のうち世界経済・日本経済への影響試算に関する2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 【世界経済に与える影響の網羅的分析】米国の対中関税は、2,353億ドルの輸入品目に対して賦課される。追加関税総額は現行で305億ドルだが、25%へ引き上げられれば588億ドルとなる。なお、今回問題となる約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きい。大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、GDPの下押し効果は中国▲0.22%、米国▲0.28%、日本▲0.02%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。

まず、リポートでは、米中間の通商協議が難航している可能性が高いと指摘しつつ、決裂の可能性が高く、さらに、米中冷戦は両国間における経済のみならず安全保障や軍事・外交面も含めた覇権争いが決着するまで解決しない、と指摘し、米国は軍事的優位性を維持する上で経済力をはじめとする総合的な国力の両国間の格差の維持を必要とすることから、減税と関税が大きな意味を持つ一方で、冷戦は消耗戦であり同盟諸国による中国包囲網を必要とする、と結論しています。このあたりは、専門外の私にはよく判りませんが、そうだという気もします。

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その上で、関税引き上げの影響試算の概要を上のグラフのように試算しています。その前提は、今回の約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きく、パブリック・コメントを受けて除外された品目では、化学製品や原料プラスチック製品などの金額が大きかったとし、他にはスマートウオッチなどの消費者家電、繊維、農産品などもリストの対象から外れている、と指摘し、他方で、中国の対米報復関税は、対象品目の輸入総額1,109億ドル、追加関税総額は165億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は14.9%と見込んでいます。そして、我が国に対する経済的影響としては、モデル上の試算は2次効果と代替効果が描写できない深刻な弱点を抱えている、と指摘しつつ、前者については、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の我が国からの対中輸出が顕著に減少するリスクがある一方で、後者については、逆に、「漁夫の利」があり得るとし、米中が関税を相互に賦課することで日本をはじめとする周辺関係国が相対的な価格競争力を向上させて代替生産が増加する可能性を指摘しています。

最後に、私の直感なんですが、このリポートでも欠けているのは、国内の企業や消費者のマインドを低下させる効果です。昨日公表された消費者態度指数でも消費者マインドは引き続き低下を続けていることが示され、米中間の貿易摩擦は企業や消費者の将来見通しを通じて内需の回復に水を差す可能性もあり得ることは忘れるべきではありません。

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2019年5月 9日 (木)

7か月連続で低下を続ける消費者態度指数はそろそろ下げ止まるか?

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が表されています。前月から▲0.1ポイント低下して40.4を示しています。これで、7か月連続の低下を記録したことになります。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「弱まっている」に据え置いています。まず、ロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月消費者態度指数は7カ月連続悪化、マインド「弱まっている」=内閣府
内閣府が9日発表した4月消費動向調査によると、消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から0.1ポイントの低下となり、40.4に落ち込んだ。低下は7カ月連続。構成する4項目のうち、「暮らし向き」「雇用環境」が改善、「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が低下した。
内閣府は消費者態度指数からみた消費者マインドの基調判断を「弱まっている」として据え置いた。
1年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が4カ月連続で増加。「低下する」、「変わらない」が減少した。

いつもの日経新聞ではないんですが、なかなか簡潔によく取りまとめられた記事だという気がしますが、続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントごとに詳しく前月差を見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.1ポイント低下し38.8、「収入の増え方」が▲0.1ポイント低下し40.5となった一方で、「雇用環境」が+0.7ポイント上昇し44.4、「暮らし向き」も+0.3ポイント上昇し38.0となりました。今年2019年に入って、1月や3月はコンポーネントの4指標すべてが前月差マイナスでしたし、2月も「雇用環境」を除く3指標がマイナスでしたから、4月統計では消費者態度指数が前月からの低下幅を▲0.1ポイントに縮小するとともに、半分の2指標がプラスを示していますので、7か月連続の低下はものすごく長いとはいえ、そろそろ下げ止まりの局面に入った可能性がうかがえます。ただ、実体経済の動向を示す景気動向指数が来週月曜日の5月13日に公表される予定となっており、景気の基調判断が現在の「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されてる可能性があると私は考えており、そうすると、一気にマインドの方もさらに悪化する可能性が否定できません。加えて、近くこのブログの記事でも詳しく取り上げようと考えているところですが、米中間の貿易摩擦がさらに激化し、明日の5月10日から中国の輸出品のうち約2,000億ドル相当分について関税率が10%から25%に引き上げられる予定となっていて、少なくとも、マインド的には悪影響を及ぼすことは明らかです。

最後に、繰り返しになりますが、このブログでは昨年2018年7月24日付けで大和総研のリポートを引用して、米中間の貿易摩擦の経済的な影響をに着目しましたが、その続きで、日を改めて、同じ大和総研の新しいリポートを取り上げる予定です。米中貿易摩擦の行方は、企業や消費者のマインドにも、それなりのインパクトを持つんではないかと私は考えています。

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2019年5月 8日 (水)

ダイヤモンド・オンラインによる「『睡眠不足が多い』職業ランキング」やいかに?

昨日5月7日付けのダイヤモンド・オンラインの日本全国ストレスランキングにて「『睡眠不足が多い』職業ランキング【完全版】」が明らかにされています。1位は男性で「畜産」、女性で「ガソリンスタンドスタッフ」が上げられています。以下のテーブルの通りです。

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私も定年退職前から、ついつい寝不足に陥りがちな生活を送っていたんですが、年齢的に体力が逆についていかず、しっかり寝ないと起きている間の活動レベルが大きく鈍るような高齢者になってしまった気がします。それはそれで哀しいことかもしれません。

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2019年5月 7日 (火)

ダイヤモンド・オンライン記事に見る日本企業の役員報酬やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、4月25日付けでダイヤモンド・オンラインにて「役員なら年収は億を狙える! 1億円プレーヤーが最も多い企業とは?」と題する記事を見かけました。我が国で1億円以上の役員報酬を受け取っている主な経営者は以下のテーブルの通りだそうです。私が35年間勤め上げた公務員では考えられないんでしょうね。何ら、ご参考まで。

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2019年5月 3日 (金)

米国雇用統計は堅調で失業率は50年振りの低水準も利上げは停止?!

本日、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+263千人増と大きな回復を示し、失業率もさらに低下して同じ3.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を手短に4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 263,000 jobs in April, unemployment falls to 3.6%, new 50-year low
Hiring was strong for the second straight month in April and unemployment fell to a new 50-year low, easing concerns that a slowing global and U.S. economy could dampen hiring.
Employers added a booming 263,000 jobs, the Labor Department said Friday. The unemployment rate fell from 3.8% to 3.6%, lowest since December 1969, but that was because nearly 500,000 Americans left the labor force, which includes people working and looking for jobs.
Economists had estimated that 190,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Another positive: Job gains for February and March were revised up by a modest 16,000. February's total was upgraded from 33,000 to 56,000 and March's was revised down from 196,000 to 189,000.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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失業率の3.6%なんですが、先月からさらに0.2%ポイント改善し、ほぼ半世紀振りの低水準まで低下しています。非農業部門雇用者の伸びも、2月に寒波などの天候要因で大きく鈍化しましたが、早くも4月には+263千人増ですから、反動による増加といった要因もあるかもしれません。いずれにせよ、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスは+190千人増くらいでしたので、これを大きく上回っています。産業別には、ヘルスケアや接客業などサービス分野の雇用が伸びています。製造業の雇用も伸びていますが、4月は+4千人にとどまりました。ADPも4月は+275千人増でしたから、米国の雇用は極めて堅調と考えるべきです。ただ、米国経済が拡大している中で、トランプ政権からの強い圧力もあって、連邦準備制度理事会(FED)は前回の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを一時停止した上で、今年2019年いっぱいは利上げを見送る可能性を強く示唆しています。このところ、物価上昇率が+2%を上回るようになっていることから、まさか、トランプ政権の圧力に屈して、政策金利を1%まで低下させるとは私は考えていませんし、利上げを停止したところで、世界経済が減速する中で米国経済だけが加熱に向かうとも思われませんが、いずれにせよ、今後の米国の金融政策動向にも注目しています。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高めています。すなわち、4月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月から+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているんですが、利上げを停止して大丈夫なんでしょうか?

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