2017年4月21日 (金)

発足から3か月近くを経た米国トランプ政権に対する米国民の評価やいかに?

米国での政権交代から3か月近くが経過し、私がよく参照しているピュー・リサーチ・センターから Public Dissatisfaction With Washington Weighs on the GOP と題して、米国の政権、政党、議会に対する世論調査結果が今週月曜日の4月17日に明らかにされています。取りあえず、トランプ政権に対する評価について、歴代の政権と比較しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Early job approval ratings for recent presidents と題するグラフを引用しています。1981年に就任したレーガン元米国大統領から最近6人の米国大統領の就任直後の2月時点での支持率(Approve)と、その2-3か月後の4月ないし5月時点での評価を並べたグラフです。見れば明らかなんですが、現在のトランプ米国大統領は最近の歴代米国大統領に比較して就任直後の2月時点でもともとの評価が低かった上に、4月時点でもわずかに不支持(Disapprove)が減少しただけで、それほどの支持の拡大が見られません。しかも、不支持が支持を上回っており極めて異例な状態となっています。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Demographic differences in views of Trump's job performance と題するグラフを引用しています。性別、人種別、年齢別、学歴別などのトランプ米国政権の支持と不支持をプロットしています。これも見れば明らかで、従来からの傾向と変わらず、女性より男性の支持が高く、白人の支持が高く、大雑把に、年齢が高いほど、また、学歴が低いほど支持が高い、という結果が示されています。

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Partisan gap in Trump approval ratings much wider than for recent presidents と題するグラフを引用しています。現在のトランプ政権の特徴は2点あり、ひとつは支持率が39%と歴代米国政権よりかなり低いことです。もうひとつは与党共和党と野党民主党の間の支持の差が極めて大きく、米国が党派別に分断されかねない状況にある点です。他方、強力なリーダーシップが発揮しにくい状況ともいえますが、逆に、強力なリーダーシップを発揮して欲しくないと考える米国民も少なくなさそうだったりします。何ともビミョーなところです。

いうまでもなく、米国は我が日本の同盟国であるだけでなく、世界の政治経済に大きな影響を及ぼすわけですから、引き続き、現在のトランプ政権の動向が注目されます。

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2017年4月20日 (木)

貿易統計に見る輸出はいよいよ拡大局面に入ったか?

本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+12.0%増の7兆2290億円、輸入額は+15.8%増の6兆6143億円、差引き貿易収支は+6147億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易黒字、6年ぶり 16年度4兆円、震災後で初 3月輸出は12%増
財務省が20日発表した3月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出は前年同月比12.0%増の7兆2291億円で、リーマン・ショックのあった2008年9月以来の水準となった。中国向けの液晶デバイスなどがけん引し、アジア向けの輸出額が過去最高を記録した。2016年度の貿易収支は4兆69億円の黒字で、東日本大震災の前年にあたる2010年度以来、6年ぶりに黒字を確保した。
足元の輸出は好調だ。中国向けは、前年同月比16.4%増の1兆2995億円で、5カ月連続の増加。2月に春節(旧正月)休暇後の反動増があった分、減るだろうとの事前予想を覆し、過去2番目の水準になった。自動車部品や電気回路の機器などは4割増えた。中国向けに加えて、タイ向けの鉄鋼なども好調で、アジア全体では日本からの輸出額が過去最大となった。
輸出は米国・EU向けでも好調が続く。米国向けの輸出額は1兆3531億円と3.5%伸び、2カ月連続で増加した。日系企業の現地生産向け自動車部品や、原動機で2桁伸びた。EU向けはイタリアへの自動車輸出の伸びが寄与した。世界経済の追い風を受けて輸出に勢いがある。
一方、3月の輸入額は前年同月比15.8%増の6兆6144億円だった。原油市況が底入れし、サウジアラビアからの原油輸入額が増えた。オーストラリアからの石炭の輸入額が増えたことも影響した。輸出額から輸入額を引いた貿易収支は17.5%減の6147億円だった。2カ月連続の貿易黒字だが、好調な輸出を上回る輸入の伸びで、黒字額は縮小した。
財務省が同日発表した2016年度の貿易収支は4兆69億円の黒字で、東日本大震災以来、6年ぶりに黒字を確保した。東日本大震災以降は原子力発電所の停止で火力発電所向けの燃料輸入が増えていたが、原油相場の低迷と、16年度は対ドルで前年度比10%の円高になった影響で輸入額が減った。
16年度の輸出は3.5%減の71兆5247億円。米国やサウジアラビア向けの自動車、欧州向けの鉄鋼が減少した。輸入は10.2%減の67兆5179億円だった。マレーシアやカタールからの液化天然ガス(LNG)輸入額が減ったほか、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)からの原油輸入が減った。
16年度の対米の貿易黒字は6兆6294億円で、5年ぶりに減少した。大型車や鉄鋼などの輸出が減少した。トランプ政権は日本を多額の貿易赤字相手国の一つとみなす。日本から米国向けは、16年度通期で見ると自動車輸出が減り、足元ではトランプ大統領の意に沿う形で、現地生産向けの部品が伸びる構図だ。

3月のデータが利用可能になったため、どうしても年度計数に目が行きがちで長めの記事となっているものの、3月の貿易統計に関しても最近の足元での輸出の堅調ぶりを報じた内容となっており、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、メディアで注目の年度計数ですが、震災前の2010年度から数えて6年振りに年度で貿易収支が黒字を記録しています。震災後のここ数年は原子力発電所の停止で火力発電所向けの燃料輸入が増えていたわけですが、すでに底を打ったとはいえ原油相場が低迷を続けるとともに、2016年度は対ドルで前年度比10%の円高になった影響で輸入額が減った影響が大きいと私は受け止めています。他方、輸出は足元で中国や先進国も含めて世界経済の回復ないし拡大から回復基調を続けています。ただし、引用した記事にもある通り、なぜか、対米国の貿易黒字は6兆円余りと水準は高いものの、2016年度は黒字幅が縮小しているようです。自動車輸出の減少に伴う黒字縮小であり、シェールガスやオイルの影響ではないと考えられています。3月については、引用した記事の見方とは異なり、中華圏の春節の影響で大幅な黒字となった2月の反動は、少なくとも季節調整済みの系列には着実に出ており、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列では3月の輸出額は2月から減少しています。このため、季節調整済みの系列では、2月の貿易黒字+6090億円に比較して、3月は+1722億円と急減を示しています。春節効果で大きな変動の見られる原系列ではなく、季節調整済みの系列では輸出の減少と貿易黒字の縮小が3月に観察されることは忘れるべきではありません。ですから、2016年度の貿易黒字は、ある意味では、世界経済の回復ないし拡大と我が国経済の足踏みを需要面のバックグラウンドにしていたわけですが、季節調整済み系列で見た3月統計ではそうなっていない、という点はエコノミストとしては確認しておいていいと私は考えています。我が国経済も回復ないし拡大の方向にある可能性が高いと考えるべきです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。輸出額はハッキリと回復ないし拡大を示しており、その背景はOECD先行指数に見られる海外経済の回復による我が国輸出への需要拡大です。

なお、まだ1月ほど先のお話ですが、5月18日には1-3月期のGDP統計1次QEが内閣府から公表される予定となっており、貿易統計の結果から考え合わせると外需寄与度は輸出拡大により1次QEにはプラス寄与になることが見込まれるんではないかと私は考えています。

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2017年4月19日 (水)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」World Economic Outlook 第1章見通し編やいかに?

IMF世銀の4月総会を前に、日本時間の昨夜、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook の第1章見通し編が公表されています。

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まず、IMFのサイトから世界経済の成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。クリックすると、リポート第1章の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページ2ページだけを抽出したpdfファイルが別タブで開くようになっています。
世界経済の成長率見通しは、2017年+3.5%、2018年+3.6%と、2016年の実績である+3.1%からやや船長が加速し、また、昨年10月の「世界経済見通し」からもわずかに上方修正されています。日本の成長率見通しは、今年2017年が+1.2%と、昨年10月時点の+0.6%成長から大きく上方修正されていますが、これは過去にさかのぼった統計の見直し (a comprehensive revision of the national accounts) によるものであると明記されています。その後、2018年は+0.6%(昨年10月時点での見通しは+0.5%)成長と鈍化しますが、力強さを増すと予想される外需や東京オリンピック関連の民間投資の効果が考えられる一方で、財政面での下支えの剥落や輸入の回復により相殺されるためであると指摘しています。中長期的には労働の縮小が成長の重しとなるものの、1人当たり所得の伸び率は過去数年と同程度と見込んでいます。物価については、エネルギー価格の上昇、最近の円安、緩やかに高まる賃金圧力などによりインフレ率は高まると予想されるものの、インフレ期待が緩やかにしか高まらない中、2022年までの予測期間中の物価上昇率は日銀のインフレ目標を相当に下回って推移すると見込んでいます。

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最後に、リポートから Figure 1.20. Recession and Deflation Risks を引用すると上の通りです。先進国の中では、米国や欧州ユーロ圏よりも日本の景気後退確率とデフレ確率がグンと高い、との結果が示されています。アジア新興国がいずれもやたらと低い確率を叩き出しているのが印象的です。

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2017年4月18日 (火)

東洋経済オンラインによる「就職人気ランキング」やいかに?

昨日4月17日付けで、東洋経済オンラインにおいて、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所が行った「企業ブランド調査」を基に「就職人気ランキング」が明らかにされています。2018年3月卒業の大学生が対象ですから、我が家の上の倅より学年でひとつ上ということになりますので、私もそれなりに注目してしまいました。東洋経済オンラインのサイトから就職人気ランキングの1-50位を引用すると下の画像の通りです。働き方改革にあわせて、あれほどバッシングされた電通もランクインしています。

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従来から人気の銀行・証券・保険などの金融機関に加えて、1位となった全日空などの旅行・輸送会社、食品会社などが目立つ気がします。私が学生のころに憧れた商社もいくつか入っています。なお、文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の「企業ブランド調査」では、さらに詳細な情報が公開されています。ご参考まで。

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2017年4月17日 (月)

今夏のボーナスは増えるのか減るのか?

先週までに、例年のシンクタンク4社から夏季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想ですので、ベースがかなり違っています。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研36.6万円
(+0.4%)
64.7万円
(+2.6%)
今夏の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.4%と、夏季賞与としては2年連続のプラスとなる見込み。
背景には、2016年度下期の企業収益の底堅さ。製造業では、2016年11月以降の円安の進展、輸出の持ち直しにより、2016年度下期の収益が上振れ。非製造業でも、情報通信業などの増益を中心に、企業収益は高水準を維持する見込み。
第一生命経済研36.7万円
(+0.5%)
n.a.増加が予想されるとはいえ、伸び率自体は小幅なものにとどまる見込みである。加えて、春闘でのベースアップが昨年をやや下回る上昇率にとどまったとみられることからみて、所定内給与も伸びが鈍化する可能性がある。このように17年度も賃金の伸びが緩やかなものにとどまるなか、物価上昇率が今後高まっていくことで、実質賃金は減少する可能性があるだろう。個人消費は先行きも力強さに欠ける展開が予想される。17年度の景気は好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング36.8万円
(+0.9%)
64.2万円
(+1.9%)
2017年夏の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは2年連続で増加すると予測する。労働需給が引き締まる中、ボーナスを算定する上で基準とされることの多い基本給(所定内給与)が前年比で増加を続けていることに加え、足元で企業業績が改善していることもあり、一人あたり平均支給額は36万8,272円(前年比+0.9%)と増加しよう。特に製造業では、円安や内外需要の回復を背景に業績が改善しており、堅調に増加するだろう。
みずほ総研36.9万円
(+1.1%)
71.1万円
(+2.5%)
今夏の民間企業一人当たりボーナス支給額は前年比+1.1%と、前年から鈍化する見込みだ。他方で、人手不足対策としての正社員化や非正社員の待遇改善を背景に、ボーナスの支給対象者数は増加するだろう。正社員化の動きについては、2017年入り後にパートタイム比率が低下するなどの進展が見られる。非正社員についても、今春闘で処遇改善に取り組む企業が大幅に増加している。その結果、新たにボーナスが支給される対象者が増加し、民間の支給総額は前年比+4.5%と高めの伸びになると予想する。

ということで、今夏のボーナスは昨夏の伸び率は下回るものの緩やかに増加し、さらに、政府の働き方改革の後押しもあって、待遇改善が進んでボーナス支給体対象が拡大することなどから、1人当りの伸び以上にマクロの支給増額が増加すると見込まれています。国民生活の向上と安定のため、企業が内部留保をもっと上手に使うよう、私は願って止みません。
下のグラフは日本総研のリポートから、ボーナスの支給総額の推移を引用しています。

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2017年4月14日 (金)

2016年度上場企業の倒産はバブル期以来のゼロに!

いうまでもないことですが、3月末で2016年度が終了しており、この2016年度は上場企業の倒産が発生しなかったらしいです。東京商工リサーチと帝国データバンクの両社が以下のリポートで明らかにしています。

次に、年度別の上場企業の倒産件数と負債額のグラフを東京商工リサーチのサイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかですが、バブル経済末期の1990年度以来26年振りに上場企業の倒産が発生していません。直近で最後の上場企業の倒産を振り返ると、商船三井の持分法適用関連会社であった第一中央汽船が、2015年9月29日に東京地方裁判所に民事再生法適用を申請しています。2008年のリーマン・ショックの年には45社の上場企業が倒産しているわけですし、景気後退期における何らかの意味での不採算企業の整理は次なる景気拡大期の健全性を保証するといった清算主義的な考え方も過去にはないでもなかったんですが、まずは企業倒産は避けることが出来れば避けた方がいいというのは、多くの見方と一致するわけであり、エコノミストとしてもご同慶の至りといえます。

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2017年4月13日 (木)

東洋経済オンラインによる研究開発費の大きい企業ランキングやいかに?

今週は少しイノベーションに関する読書をしたりしているんですが、イノベーションとの関係で注目される研究開発(R&D)費について、4月7日に東洋経済オンラインにて研究開発費の大きい「トップ300社」のランキングが明らかにされています。

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東洋経済オンラインのサイトから研究開発費が大きい会社 (1-50位) を引用すると上の通りです。桁違いの1兆円を超える研究開発費を支出するトヨタ自動車をトップに、我が国製造業を代表する名だたる企業がランクインしています。ただし、50位までを見る限り、12位の日本電信電話(NTT)を別にすれば、自動車、電機・重機、化学・薬品がほとんどで、JR東海が45位、新日鐵住金が48位に入っているだけです。ただ、画像の引用はしませんが、51位以下を見ると、51位に食品のキリンホールディングスが、56位におもちゃやゲームソフトなどのバンダイナムコホールディングスが、入っていたりします。また、私の知らない企業もあるので判然とはしませんが、非製造業の代表、というわけでもないものの、楽天が215位に入っています。
もちろん、研究開発費が多ければいいというものでもなく、中には資金負担にあえいでいる企業も含まれているのかもしれませんが、なかなか興味深いランキングです。

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2017年4月12日 (水)

やや足踏み続く機械受注と順調に上昇率が加速する企業物価!

本日、内閣府から2月の機械受注が、また、日銀から3月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+1.5%増の8505億円を、企業物価(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.4%を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の機械受注1.5%増 製造業で大型案件、2カ月ぶり増加
内閣府が12日発表した2月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.5%増の8505億円だった。増加は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予想の中央値(3.7%増)は下回った。製造業で大型案件が増えた。非製造業でもその他非製造業などで大型案件が寄与した。ただ基調には大きな変化がないとして、判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。現状の判断は2016年9月から続いている。
製造業の受注額は6.0%増の3508億円と2カ月ぶりに伸びた。需要者の業種別では、パルプ・紙・紙加工品が前月比6.3倍だった。紙パルプ事業者の自家発電向けに、大型の火水力原動機を受注した。食品製造業も生産などの設備需要で76.6%伸びた。
非製造業の受注額は1.8%増の5166億円と3カ月連続で増えた。需要者の業種別では、原子力原動機の大型受注があったその他非製造業が69.0%増と大きく伸びた。卸売業・小売業が25.7%増となったほか、運輸業・郵便業は船舶受注の寄与で22.9%増えた。金融業・保険業の回復基調は続いたが、伸び率は11.8%と前月(57.3%)から鈍化した。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は5.6%増だった。
3月の企業物価指数、前年比1.4%上昇 前月比0.2%上昇
日銀が12日に発表した3月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.2で、前年同月比で1.4%上昇した。前年比での上昇は3カ月連続で、上昇率は前月(1.1%)から拡大した。消費増税の影響を除くと14年7月(1.5%)以来2年8カ月ぶりの大きさだ。前月比では0.2%の上昇だった。プラントの定期修理で供給が減った石油製品の上昇が目立ったほか、燃料費の増加で電力価格も上がった。
円ベースの輸出物価は前年比で3.7%上昇し、前月比では0.3%上げた。中国の需要増加を受けてパラキシレンなどの化学製品の価格が上がった。半導体需要の増加を背景にシリコンウエハも値上がりした。
輸入物価は前年比で12.5%上昇し、14年1月(12.7%)以来3年2カ月ぶりの大きさだった。前月比は1.0%上昇。国際市況の回復で原油やナフサの価格が上昇した。中国で電気自動車(EV)の生産が旺盛でリチウムイオン電池に使われるコバルト地金なども値上がりした。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している746品目のうち前年比で上昇したのは286品目、下落は386品目だった。上昇と下落の品目差は100品目で、2月の確報値(132品目)から縮小した。
日銀の調査統計局は「人材不足が人件費の上昇につながるなかで、価格の転嫁が進むか注目している」との見方を示した。

とても長くなったものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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引用した記事にも見られる通り、統計からだけでは読み取れないんですが、記者発表などの場でイレギュラーな大型受注が見られた旨の事実が明らかにされているようです。もしそうであれば、機械受注の2月統計での前月比プラスはサステイナブルではない可能性があり、統計作成官庁の内閣府で基調判断を「、持ち直しの動きに足踏み」で据え置いたのも理解できるところです。パルプ・紙・紙加工品の前月比+533.9%増、食品製造業の+76.6%増などが目立っています。コア機械受注の1-3月期見通しは前期比で+1.5%増だったんですが、3月統計で+10%が必要らしく、エコノミストの間では、この見通し達成は必ずしも可能性が高いとは考えられていません。ただ、先日取り上げた3月調査の日銀短観では、設備の不足感が強まっているとともに、設備投資計画が従来の日銀短観に比べて強気に出ていた点を考慮すれば、機械受注は設備投資の先行指標として先行き緩やかなに伸びるんではないかと期待しています。加えて、世界経済の回復とともに輸出が拡大する可能性が高い点も設備投資の増加をサポートするものと私は考えています。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、1月の国内物価前年同月比上昇率が久し振りにプラスに転じて+0.5%を記録したと思ったら、2月は早くも+1.1%、さらに、3月は+1.4%に達しています。何とも、エネルギー価格の大きな影響力の前に、旧来派の日銀理論家とは違う観点から、金融政策の無力さを感じてしまうのは私だけでしょうか。国内物価の品目別に見ると、石油・石炭製品をはじめ、非鉄金属、鉄鋼などの素材も大きな上昇率を示しています。しかし、電気機器や情報通信機器や輸送用機器といった我が国の主要輸出産業の製品群はまだ前年比で下落を続けており、国際商品市況における石油価格の上昇の波及はこの先も続くんだろうと私は考えています。ただし、上のグラフのうちの上のパネルでも、スロープは輸入物価、輸出物価、国内物価の順でスティープになっていますが、この傾きでこのまま長らくに渡って物価上昇が加速するわけもなく、国際商品市況における石油価格動向次第とはいえ、今年半ばくらいまでには傾きがフラットになる可能性が高いと理解しています。

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2017年4月11日 (火)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」分析編やいかに?

かねて予告されていた通り、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編が公表されています。まず、その章別タイトルは以下の通りです。

Chapter 2
Roads Less Traveled: Growth in Emerging Market and Developing Economies in a Complicated External Environment
Chapter 3
Understanding the Downward Trend in Labor Income Shares

ということで、第2章で新興国・途上国の経済発展の開発や経済発展について、第3章で労働分配率の低下と不平等の拡大について、それぞれ議論を展開しています。このブログのひとつの特徴はこういった国際機関のリポートを取り上げることですので、グラフを引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Outside forces と題するグラフを引用しています。グローバル化に伴う貿易の拡大や資本の流入は新興国・途上国の成長に大きくプラスの寄与を示してきましたが、それが反転する可能性を示しています。左から、輸出を牽引する需要、資本流入、商品の交易条件が示されており、それぞれ、成長の持続的加速を指示していた要因だったのが反転する可能性が示されています。左右の対称性は明示されていませんが、次のグラフと同じと仮定すれば、左側のセットが2003-16年の期間で、右側のセットが2017-22年だろうと思います。

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次に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Under pressure と題するグラフを引用しています。このグラフの左右のセットの期間は明示されており、左側のセットが2003-16年の期間で、右側のセットが2017-22年となっています。貿易相手国の成長率と資本フローと輸出国と非輸出国の商品の交易条件がプロットされており、外部からの需要、潤沢な資本流入、資源商品価格の上昇といった良好な外部環境がより複雑化する可能性が示されています。
以上、これら2つのグラフは第2章の関連であり、次のグラフからは第3章の議論に基づいています。

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続いて、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Labor is losing out 題するグラフを引用しています。先進国と新興国・途上国に分けて労働分配率がプロットされています。賃金上昇率が生産性の伸びを下回る中で、労働分配率が低下を続けているのが見て取れます。そして、この労働分配率の低下が不平等をもたらしているとIMFでは分析しています。

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次に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Inequality rising と題するグラフを引用しています。縦軸にジニ係数、横軸に労働分配率を取った散布図で相関関係を見たところ、決定係数は極めて低いものの、負の相関がみられます。経済学では、通常、関数形が y=f(x) であることから、横軸の変数が原因となってが縦軸の変数の結果を決める、ということが暗黙の裡に前提されており、我が国でも観察される事実ですが、低調な賃上げが労働分配率を低下させ、さらに不平等の拡大につながった、という議論を展開しています。


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最後に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Driving forces を引用しています。ここでは、根源的な原因とされた労働分配率の低下の要因を探っています。すなわち、積上げ棒グラフで示されている通り、先進国ではブルーの技術動向が労働分配率低下の半分を説明する最大の要因となっており、他方、新興国・途上国では臙脂色の金融統合が大きな割合を占めています。ただし、新興国と途上国では黄色のグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への組込みは逆方向に作用しているのが見て取れます。これらの結果、先進国ではルーティーンに基づく (routine-biased) 中程度の熟練労働 (middle-skilled labor) が新興国・途上国に流出し空洞化 (hollowing out) する可能性を強調しています。

また、IMFと世銀とWTOの3機関共同で、Making Trade an Engine of Growth for All と題するリポートが明らかにされています。私はまだ Executive Summary しか読んでいませんが、"The role of trade in the global economy is at a critical juncture." で書き始められ、昨年2016年9月の米国大統領選挙前に開催された杭州でのG20会合において、広く通商や交易の利益に関する支持が表明されたことをリマインドし、米国トランプ政権などの内向きで貿易制限的な通商政策を強く牽制する内容となっています。このリポートも注目かもしれません。加えて、4月17日からの週は米国の首都ワシントンにてIMF世銀の各種の会議が開催され、おそらく、来週には「世界経済見通し」の第1章見通し編が明らかにされることと私は予想しています。また、公表次第、日を改めて取り上げたいと思います。

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2017年4月10日 (月)

下げ続ける景気ウォッチャーと大きな黒字となった経常収支と日銀「さくらリポート」

本日、内閣府から3月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2月の経常収支が、それぞれ公表されています。、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見て、現状判断DIは前月比▲1.2ポイント低下の47.4を、また、先行き判断DIは前月比▲2.5ポイント低下の48.1を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で2兆8136億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の街角景気、現状判断指数は3カ月連続悪化 人手不足で懸念
内閣府が10日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前の月に比べ1.2ポイント低下の47.4だった。悪化は3カ月連続。飲食関連を中心に、家計動向が悪化した。人手不足で人材確保の困難さや機会損失への懸念が強まったという。
部門別にみると、家計動向、企業動向、雇用がいずれも低下した。このうち、家計動向は1.1ポイント悪化し、飲食関連の3.2ポイント低下や、住宅関連の4.8ポイント低下が目立った。企業動向は非製造業の悪化が響き、1.7ポイント低下した。雇用は0.5ポイント低下の53.4と小幅な悪化にとどまり、好不況の節目となる50を上回って底堅く推移した。
街角では家計動向のうち、飲食関連で「給与を高めに提示しても全く面接に来ない」(沖縄の居酒屋)との声があり、人手不足が機会損失を招いているとの見方が強まった。住宅関連では「購入に要する時間が長くなっている」(北海道の住宅販売会社)という。企業動向では、燃料価格の上昇に加え「大手運送会社も値上げしており、今後物流経費は増える」(九州の運送業)との指摘があった。
2-3カ月後を占う先行き判断指数は、前の月から2.5ポイント低下の48.1だった。低下は2カ月ぶり。企業動向など3部門すべてが低下した。家計動向では飲食を中心に、労働需給の逼迫を理由とする懸念が続く見通し。雇用は「求職者が集まらない状況が続いており、企業へのマッチングに苦労している」(沖縄の人材派遣会社)との声が聞かれた。
内閣府は現状の基調判断は「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」との慎重な表現を維持した。先行きについては「受注等への期待」が続いているとした一方で「人手不足やコストの上昇に対する懸念もある」との判断を付け加えた。海外情勢への懸念は特に目立たなかったという。
2月の経常収支、過去最大の黒字 対アジア輸出増加
財務省が10日発表した2月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆8136億円の黒字となり、前年同月から18.2%増えた。黒字額は2月として過去最大となった。中国の春節(旧正月)後の中国・アジア向けの輸出が増加し、貿易収支の黒字幅が拡大したことが影響した。
経常黒字は32カ月連続。これまで2月として最大だった2007年(2兆5003億円)を上回った。
貿易収支は1兆768億円の黒字で、前年同月の2.7倍。旧正月期間はアジア向けの輸出が落ち込む傾向がある。17年は1月に旧正月の影響が出たため2月は反動増となり、輸出額が12.2%増の6兆3339億円となった。輸入額は0.3%増の5兆2570億円だった。
サービス収支は639億円の赤字(前年同月は1630億円の黒字)となった。企業の研究開発やマーケティングなどで支払いが増えたほか、旅行収支の黒字幅が縮小した。アジアや欧州方面への出国者が増えた一方、訪日外国人観光客数の伸びが限定的だった。
企業の海外子会社から受け取った配当金などを含む第1次所得収支の黒字額は1.9%減の1兆9751億円となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーは大きく分けて家計関連、企業関連、雇用関連の3つのコンポーネントがあり、さらに、家計と企業にはもっと細かいコンポーネントもあリます。その内訳の中で、3月の現状判断DIに関しては家計の方が企業よりも落ち込みの幅が大きく、逆に、先行き判断DIは家計の方が大きくなっています。現状判断DIに着目すると、家計関連の中では住宅関連が前月差でもっとも大きな低下を見せ、続いて飲食関連でした。企業関連では製造業よりも非製造業の低下の方が大きい結果を示しています。また、先行き判断DIに着目すると、家計関連のうちで飲食関連がもっとも大きく落ちています。家計部門からの需要とともに、供給サイドではエネルギーや食品価格の上昇と人手不足のダブルパンチが効いている可能性があると私は受け止めています。ただ、判断の理由集では客足や販売数量の伸び悩みが多く見られた印象です。なお、上のグラフを単体で見ると、かなり下げて来ているように見えますが、この統計としてはまだまだ水準がかなり高く、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府の基調判断はただし書き付きながら、「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」に据え置いています。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。2月の経常収支が大きな黒字となったのは、1にも2にも中華圏の春節の影響です。通常、春節期間中は我が国からの輸出にマイナスの影響が出て、春節が終わるとその反動が見られるんですが、今年の場合は春節が1月で経常黒字が落ち込み、その反動増が2月に見られた、ということのようです。ですから、1-2月をならして見れば、それほど大きな経常黒字という感じでもありません。同時に、中国経済がかなりの程度に回復を示しつつあるのも、我が国の経常収支、中でも輸出の伸びからインプリシットに観察される事実だと考えています。

 2017年1月判断前回との比較2017年4月判断
北海道緩やかに回復している緩やかに回復している
東北緩やかな回復基調を続けている緩やかな回復基調を続けている
北陸回復を続けている緩やかに拡大している
関東甲信越緩やかな回復基調を続けている緩やかな回復基調を続けている
東海緩やかに拡大している緩やかに拡大している
近畿緩やかに回復している緩やかに回復している
中国緩やかに回復している緩やかに回復している
四国緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
九州・沖縄緩やかに回復している緩やかに回復している

次に、本日、日銀から「さくらリポート」が公表されています。上のテーブルの通りですが、前回と比較すると北陸で総括判断を引き上げています。背景として、生産が海外向けの電子部品・デバイスや半導体製造装置を中心に増加していることや、個人消費が着実に持ち直していることなどが上げられています。残りの8地域では総括判断に変更はありません。

最後の最後に、本日の厚生労働省の社会保障審議会人口部会において、国立社会保障・人口問題研究所から「将来推計人口」が公表されています。推計の前提となる合計特殊出生率は最近の出生率実績上昇等を踏まえて、前回推計の1.35(2060年)から1.44(2065年)に上昇修正したことから、人口減少のペースが緩やかになる見通しとなっています。もっとも、総人口は2015年国勢調査の1億2709万人から2065年には8,808万人へ減少すると推計され、従って、老年人口割合=高齢化率も2015年の26.6%から2065年には38.4%へと上昇し、ペースが鈍化するとはいえ、少子高齢化の傾向は変わりありません。

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