2019年9月19日 (木)

日本政策投資銀行などによる「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果やいかに?

一昨日9月17日に日本政策投資銀行から「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果が明らかにされています。日本政策投資銀行のほか、日本経済研究所と同志社大学も推計に加わっており、スポーツ庁と経済産業省が監修しているようです。まず、日本政策投資銀行のサイトにアップされているリポート p.9 から 表2-1. スポーツ生産額とスポーツGDP 2014~2016年 (単位:億円) のテーブルを引用すると以下の通りです。

photo

ということで、上のテーブルを見れば一目瞭然ながら、日本版スポーツサテライトアカウントの推計として、スポーツGDPは2016年で7.6兆円に上り、前年から+1.9%の伸びを示し、我が国GDP総額の1.4%を占める、との結果となっています。引用はしないものの、上のテーブルのある p.9 の前のページにあるリポートの p.7 にやや詳しい推計フローチャートが示されていて、基本的に、SNA産業連関表におけるコモ6桁くらいの細品目別のシェアを用いて推計されているようですので、あくまでSNA統計の内数であって、統計に漏れが生じているわけではないようです。
このGDP総額に占める2%弱のスポーツGDP比率がどれくらいの大きさなのかの実感がわかないんですが、そこは配慮されていて、リポートの p.17 から欧州との国際比較が示されています。詳細なテーブルの引用はしませんが、日本のスポーツGDPとスポーツ産業雇用者数を欧州28か国と比較すると、まず、日本のスポーツGDPは額としてドイツに次いで欧州28か国中2番目の大きさになり、また、スポーツ産業雇用者数も、ドイツ・英国に次いで3番目の規模となります。他方で、スポーツGDPのGDP総額に占める比率、また、スポーツ産業雇用者数が国内総雇用者数に占める比率を見ると、日本のスポーツGDPは欧州28か国中でスウェーデンとイタリアの間の14~15番目と、ほぼほぼ欧州28か国の中間に位置し、日本のスポーツ産業雇用者数はラトビアとポルトガルの間の25~26番目に位置することになります。欧州との比較ながら、より少ない雇用者でより大きいGDPを産出しているわkですから、我が国スポーツ産業雇用者の生産性は欧州と比較してかなり高い、という結論が得られそうです。従来から、私は日本のサービス産業の生産性が低いとの通説は誤っており、かなりの程度に計測ミスがある可能性を指摘して来ましたが、ごく狭いカテゴリーながら、スポーツ産業雇用者では私の主張が当てはまるような気がします。

最後に、生産性も含めて、私がやや不安に感じているのは、スポーツ産業の定義にどこまで公営ギャンブルが含まれているかです。具体的には競馬や競輪などです。まさか、公営ギャンブルですらないパチンコは入っていないことと思いますが、スポーツなのか、ギャンブルなのか、リポートを読む限りでは、私には判然としない部分が残りました。ただ、「公営競技」に関する言及は確かにありますから、私の読解力が不足しているような気もします。

| | コメント (0)

2019年9月18日 (水)

2か月連続で貿易赤字を計上した8月貿易統計の先行きやいかに?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲8.2%減の6兆1410億円、輸入額も▲12.0%減の6兆2773億円、差引き貿易収支は▲1363億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、2カ月連続赤字 中国向け輸出12%減
財務省が18日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1363億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。中国向けの半導体等製造装置や、米国向けの自動車輸出が落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比8.2%減の6兆1410億円だった。減少は9カ月連続。輸入額は12%減の6兆2773億円と、4カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は12.1%減の1兆2001億円と、6カ月連続で減少した。液晶デバイス製造用の半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析した。輸入額は8.5%減の1兆4168億円と、2カ月ぶりの減少。携帯電話などの輸入が減った。
対韓国の輸出額は9.4%減の4226億円と、10カ月連続の減少。食料品が前年同月比40.6%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が表れた可能性がある。
対米国の輸出額は4.4%減の1兆1904億円と11カ月ぶりに減少した。自動車や自動車部分品の輸出が減少した。財務省は「お盆期間に日本の工場が休みとなった影響など、季節的な要因が出た可能性がある」とみる。輸入額は9.2%減の7184億円。差し引きの貿易収支は4720億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は788億円の赤字だった。
8月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=107円21銭。前年同月に比べ3.7%の円高・ドル安に振れた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲3654億円の赤字とのことでしたので、実績はここまで大きな赤字とはなりませんでした。もちろん、米中間の貿易摩擦が世界経済に影を落としており、我が国輸出品への需要が減退しているとともに、引用した記事の最後のパラにあるように、為替が円高に振れていることから、貿易収支には黒字幅縮小ないし赤字拡大の効果をもたらします。加えて、何とも測り難いのが原油価格の動向です。サウジアラビアの石油設備へのまったく不可解な攻撃を受けて、ドバイ原油価格は急騰しました。もともと、私のようなエコノミストには国際商品市況における石油価格の動向は予測しがたいものがありましたが、サウジアラビア石油施設への攻撃なんてエコノミストのスコープ外もいいところです。少なくとも、攻撃なかりせばのケースに比べて石油価格が上昇することは明らかですから、我が国貿易赤字の拡大要因となります。加えて、8~9月は10月からの消費税率引き上げの駆け込み需要があるでしょうから、いくぶんなりとも輸入が増加することが予想されますから、これも貿易赤字拡大要因と考えるべきです。

photo

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、我が国輸出の動向は、先進国経済及びいくぶんなりとも中国経済の動向に依存しているわけですが、少なくとも、そろそろ中国経済は底入れの兆しが見え、我が国の輸出も底ばい模様ながら、私がいくつか拝見したシンクタンクなどのリポートの中で、そろそろ底入れが近いと示唆するものも見受けました。

繰り返しになりますが、まったく予想もしなかったサウジアラビアの石油施設への攻撃と前々から予定されていた消費税率引き上げのどちらも、9月の貿易赤字を拡大させる方向に働く可能性が高く、我が国輸出の需要要因である世界経済や輸出入品の価格に影響を与える為替とともに今後の動向が注目されます。

| | コメント (0)

2019年9月17日 (火)

インテージによる「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果やいかに?

ネット調査大手のインテージから、先週金曜日の9月13日付けで「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果が明らかにされています。今回の消費税率引き上げに際しての駆け込み需要は、私の実感としても前回と比べてかなり小さいと感じていたんですが、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)による調査結果では、一部のカテゴリーながら8月中旬には駆け込み需要が始まっていたことが明らかになっています。まず、インテージのサイトから日用消費財・雑貨品の購買金額前年比(19年vs.14年)のグラフを引用して結合させると以下の通りです。

photo

実は、たいへんお世話になっているニッセイ基礎研エコノミストの斎藤太郎さんが、昨日のNHKニュースで、「今回2019年の消費税率の引き上げに際しての駆け込み需要は前回の2014年より小さい。なぜなら、税率の引き上げ幅が小さい、食料・飲料などに軽減税率が適用される、自動車に対する自動車税の引き下げが同時に実施される、中小業者のキャッシュレス決済に対するポイント還元が実施される、などの理由によるわけで、ただし、2014年時点に比べて消費の基調がそもそも弱いので、税率引き上げ後の消費の弱さが長引く可能性があり、消費動向には注意が必要」といった趣旨の発言をされていました。私はまったくその通りだと思いましたが、インテージのパネルでは、やっぱり、というか、何というか、静かに日用品の駆け込み需要は始まっているようです。
中でも、上のグラフの一番下のパネルはお酒の駆け込み需要なんですが、実は、私もワインだけは少し買い込んでおこうかという気がしています。私はナイター観戦でビール、というか、正しくは発泡酒だか、第3のビールだか知りませんが、ビール系飲料をナイター観戦で飲む場合が多く、でも、今年の阪神タイガースの成績からして、もう日本シリーズはもちろん、クライマックス・シリーズにも出場のチャンスもないでしょうから、この季節にビールは必要なく、ワインを買い込む予定です。3年余りに渡って大使館勤務をしたチリのワインを長らく愛飲していたんですが、エコノミストらしくEPAで価格競争力を画期的に高めた欧州ワインにシフトしているところ、報道によれば、米国との貿易交渉で米国ワインの関税も画期的に引き下げられるようで、そのうちに、ナパ・バレーのカリフォルニア・ワインに切り替えるかもしれないものの、取りあえずは、スペイン産のワインを買い込もうと予定しています。

まったくどうでもいいことで、本質的な経済のお話とはなんお関係もないんですが、NHKニュースで拝見した斎藤さんがひどくやつれているように見かけて、びっくりしてしまいました。私よりラクに10歳くらいは年下のハズなんですが、そろそろ年齢的にくたびれる年ごろなのかもしれません。新しいチーフエコノミストにこき使われているのかもしれません。

| | コメント (0)

2019年9月13日 (金)

人手不足の解消で活用される人材やいかに?

人手不足が広がる中で、昨日9月12日に帝国データバンクから「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを5点引用数rと以下の通りです。

調査結果
  1. 従業員が「不足」している企業が半数超にのぼるなか、不足している部門・役割は、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)が最も高く、「営業部門の従業員」(47.7%)や「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)も高い
  2. 人手不足による影響は、「需要増加への対応が困難」が50.5%で半数を超えトップとなり、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)などが続いた
  3. 企業において多様な人材を活用することが注目されているなか、今後最も積極的に活用したい人材は「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」も27.9%と近い水準で続き、「外国人」は13.7%、「障害者」は1.1%となった
  4. 人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」が38.1%でトップとなった。特に「中小企業」で数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業などの時間外労働の削減」(35.0%)が続いた
  5. 企業が望む人手不足の解消に向けて社会全体が取り組むべきことは、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%でトップとなった。他方、「職種別採用の拡大」は9.9%、「オファー型採用の拡大」は4.8%となり、採用方法の多様化は1ケタ台にとどまった

調査結果の概要というよりも、そのままというカンジのまとまりのないサマリーなんですが、私なりの着目点は下のグラフの通り、活用したい人材です。結局、お上の政府のいうように、シニアと女性なんですかね。もっと若い世代を積極的に雇おうという気はないんでしょうか。また、上のサマリーの4点目で、人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」がトップに上げられていますが、ホントなんでしょうか。

photo

現時点では、人手不足で雇用の不安が小さくなっているような気もしますが、あくまで、雇用は生産の派生需要であり、政府の経済政策運営よろしく、また、ほかの要因もあって、現在は景気がいいので雇用は堅調ですが、世界経済の減速などから国内景気が後退局面に入れば、人手不足は急速に雇用過剰に転ずる可能性もあります。人手不足が景気を牽引しているわけではありません。その逆であって、景気が悪化すれば雇用の過剰感が出て失業率も上昇する恐れが十分あります。それが、資本主義的な景気循環というものです。マルクスやケインズが景気後退局面における悲惨な状態を問題視した理由がここにあります。

| | コメント (0)

2019年9月12日 (木)

緩やかな増加基調の機械受注と大きく下落した企業物価(PPI)!!!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲6.6%減の8,969億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.9%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の8月統計まで3か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の機械受注、前月比6.6%減 前月の大型受注の反動減
内閣府が12日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比6.6%減の8969億円だった。減少は2カ月ぶり。市場予想の中央値(9.9%減)は上回った。内閣府は「6月に非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件があり、7月はその反動で減少した」と分析した。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「大型案件を除いたベースでみると、動きに変化はないと判断した」(内閣府)という。
7月の受注額は製造業が5.4%増の3841億円だった。増加は3カ月ぶり。その他製造業で「火水力原動機」や「その他産業機械」の受注が増えた。非製造業は15.6%減の5189億円だった。運輸業・郵便業で大型受注案件がなくなったことに加え、電力業なども受注が減少し、2カ月ぶりの減少となった。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.3%増だった。前月比でみた受注総額は0.1%増、官公需の受注は11%増、外需の受注額は6%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
8月の企業物価指数、前年比0.9%下落 16年12月以来の下落幅
日銀が12日発表した8月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.9と、前年同月比で0.9%下落した。下落は3カ月連続で、減少幅は2016年12月(1.2%下落)以来の大きさだった。米中貿易問題など海外情勢の不透明感を映した、原油や銅などの相場下落が影響した。
前月比では0.3%下落した。ガソリンなどの「石油・石炭製品」や銅地金など「非鉄金属」、エチレンなどの「化学製品」などが低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で5.7%下落と、4カ月連続のマイナスだった。前月比では1.2%下落した。輸入物価は前年比8.3%下落し、4カ月連続のマイナスだった。前月比では0.5%下落した。
日銀の調査統計局は「米中対立の懸念の高まりから、主に石油や銅などの市況性の高い製品が影響を受けた」と説明した。先行きについては「世界的な需要減少や物価の下落要因にならないか注視していく」とした。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲9.9%の減少を見込んでいましたので、レンジ内でもマイナス幅が小さい方ですので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。特に、引用した記事にもある通り、先月統計の非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件の反動ということであればなおさらです。先月公表の6月統計で前月比+13.9%増の後の▲6.6%減ですから、ならしてみれば増加基調に変化ないともいえます。もっとも、7月統計でも建設業が前月比+113.6%の増加を示しており、何らかの大型案件が特殊要因となっている可能性が想像されますが、私の方に情報はありません。増加業種別には、製造業でやや弱い動きが続いているものの、非製造業では人で不足を背景に合理化や省力化に向けた設備投資が見込まれることから、全体として先行きも横ばいないし緩やかな増加を見込んでます。ただ、コア機械受注の外数ながら先行指標と考えられている外需が7月には前月比で▲6.0%減を記録しており、米中間の貿易摩擦の激化や長期化とともに今後の懸念が残ります。

photo

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の8月統計まで3か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲0.8%の下落を見込んでいましたので、レンジ内の想定された動きということになります。季節調整していないながら、前月比▲0.3%の下落の大きな部分を占めるのはエネルギー関連項目であり、寄与度の大きい順に、石油・石炭製品▲0.13%、電力・都市ガス・水道▲0.04%で半分近くが説明できてしまいます。また、輸入物価のうちの石油・石炭・天然ガスも前年同月比で▲5.6%と大きな下落が続いており、国債商品市況の石油価格の下落の影響が見て取れます。加えて、輸出物価でも、化学製品が前年同月比で▲14.3%の下落、金属・同製品が▲6.8%の下落など、米中貿易摩擦とも関連して中国経済の手減速の影響と見られる品目での物価下落が見られます。

国内景気は明らかに景気循環の後半局面に入っており、10月から諸費税率が引き上げられることもあって、エコノミストの中にはやや神経質に指標を見ている向きもあるかもしれません。

| | コメント (0)

2019年9月11日 (水)

足元7-9月期のBSIがプラスを示した法人企業景気予測調査は駆け込み需要によるものか?

本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期▲1.7、4~6月期▲3.7と、2四半期連続でマイナスを付けた後、足元の7~9月期には+1.1とプラスに転じ、先行きの10~12月期▲0.4とふたたびマイナスに転じるものの、来年2020年1~3月期には+1.7と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感3期ぶりプラス 7-9月、家電など好調
の景況判断指数(BSI)はプラス1.1だった。プラスは3四半期ぶり。家電販売などが好調な非製造業がプラスに回復。製造業もスマートフォン関連需要の底打ち感などからマイナス幅が縮小した。10月の消費増税を前に景況感の悪化にいったん歯止めがかかった形だが、10▲12月期は再びマイナスの見通しで先行きは不透明だ。
BSIは前四半期と比べた景況判断で「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いた値。前回4▲6月期はマイナス3.7だった。今回の調査時点は8月15日。
大企業のうち製造業はマイナス0.2で4▲6月期のマイナス10.4からマイナス幅が縮んだ。米中貿易摩擦の影響で中国向けの非鉄金属や自動車などは依然さえなかったが、情報通信機器や電気機器がそれぞれ2桁のマイナスだったのが大幅に上向いてプラスになった。超高速の次世代無線規格「5G」や車載向け電子部品の需要が堅調といった声があった。
非製造業はクラウド化などのシステム需要が強いほか、テレビや白物家電の販売が好調でプラス1.8と、2四半期ぶりのプラス。消費増税前の駆け込みについて調査担当者は「白物家電は好調という声が聞かれるが、前回のような大きな需要はみられない」との見方を示した。
大企業全産業で10▲12月期はマイナス0.4と再びマイナスに転じる見込みだ。2020年1▲3月期はプラス1.7の見通しだが、増税後の景況感は不透明だ。

いつもながら、簡潔かつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元の7~9月期に+1.1を示しましたが、大企業の産業別内訳では、引用した記事にもある通り、製造業が前期4~6月期の▲10.4という大きなマイナスに対して、マイナス幅は大きく縮小したものの、7~9月期も依然としてマイナスながら、ほぼ横ばいの▲0.2を記録した一方で、非製造業は前期4~6月期ほぼ横ばいの▲0.4から7~9月期は+1.8とプラスに転じています。となっています。大企業製造業のうち、特にマイナス寄与の大きかった産業を詳しく見ると、非鉄金属製造業と自動車・同附属品製造業が上げられており、逆に、情報通信機械器具製造業と電気機械器具製造業がプラス寄与に転じています。やや複雑な様相ながら、米中間の貿易摩擦の深刻化による先行き不透明感が企業マインドに影を落としていることは間違いありません。他方、大企業非製造業でマイナス寄与が大きいのは卸売業と金融業、保険業が挙げられており、情報通信業と小売業はプラス寄与が大きくなっています。また、先行きの景況感について大企業全産業について見ると、10~12月期は消費税率引き上げが実施されますので、▲0.4と少し落ちはするものの、来年2020年1~3月期には+1.7に戻ると見込まれています。先日、短期経済見通しを取り上げた際にも指摘しましたが、マイナス成長は消費税率引き上げの10~12月期の1四半期で済み、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰するとの見方がかなり多かったわけですから、それと整合的な景気予想と私は受け止めています。BSI以外では設備投資計画(ソフトウェア投資額を含み、土地購入額を除くベース)だけ見ておくと、全規模全産業で前回調査の2019年度計画+9.0%増から、今回調査では+8.3%増にやや下方修正されました。でも、大きな基調的変化ではないものと私は考えています。製造業と非製造業の間には設備投資計画に大きな差はありません。

企業マインドについては、9月調査の日銀短観が10月1日に公表の予定となっています。米中間の貿易摩擦や世界経済の減速は企業マインドにどのように影響するんでしょうか。また、消費税率の引き上げの影響はどうなんでしょうか。注目したいと思います。

| | コメント (0)

2019年9月10日 (火)

厚生労働省による2017年「所得再分配調

先週金曜日9月6日に、厚生労働省から2017年実施の「所得再分配調査」の結果が公表されています。いつも注目されるのは格差の尺度のひとつであるジニ係数なんですが、3年前の調査と比べて大きな変化は観察されていません。

photo

上のグラフは再分配前後のジニ係数の推移をプロットしています。上のパネルは世帯ベースで世帯人員数を考慮していません。他方、下のパネルは世帯人員数を考慮に入れた等価所得ベースです。等価所得ベースは2002年調査以降しかデータがありませんが、大雑把な印象として、今世紀に入ってから、再分配前の当初所得の格差は拡大しているものの、社会保障や税制により格差は抑えられており、再分配後の所得格差についてはむしろ縮小している、ということになろうかと思います。世間一般の共通認識としては、何となくの印象として、2000年からの小泉政権の下で規制緩和などの新自由主義的な経済政策が進められた結果、特に、非正規雇用の比率が高まり、所得格差が拡大した、と受け止められているんではないかという気がしますが、前半の非正規雇用比率の増加は、その通りと考えられる一方で、後半の所得格差拡大については、この「所得再分配調査」の結果からは支持されません。私のひとつの解釈なんですが、格差拡大というよりは賃金や所得の伸び悩みが貧困層の増加につながった点を強調すべきではないか、と考えています。もちろん、実態上の貧困と印象上の格差拡大の背景には、高齢化の進展もひとつの要因として存在することは間違いありません。それとも、ウルトラCの解釈ですが、ジニ係数が格差指標として適当ではないとか、あるいは、この「所得再分配調査」が間違っている、という統計処理、あるいは、統計そのものの問題も可能性としてはゼロではないかもしれません。いずれにせよ、「所得再分配調査」の結果から、所得格差はここ20年でそれほど拡大していない、というファクトは読み取れるんではないでしょうか。

| | コメント (0)

2019年9月 9日 (月)

わずかに下方改定された4-6月期GDP統計速報2次QEと景気ウォッチャーと経常収支!

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.3%と、1次QEからわずかに下方改定されています。3四半期連続のプラス成長で、4~6月期は前期よりも成長が減速していますが、内需主導で潜在成長率水準をやや上回るまずまずの成長の姿と評価できます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期のGDP改定値、年率1.3%増に下方修正 設備投資下振れで
内閣府が9日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.3%増だった。速報値(前期比0.4%増、年率1.8%増)から下方修正された。企業の設備投資が速報段階から下振れしたことが影響した。
民間企業の設備投資は実質で前期比0.2%増(速報値は1.5%増)だった。2日発表の4~6月期の法人企業統計でソフトウエアを除く設備投資額(季節調整済み)が前期比でマイナスとなったことを反映した。米中貿易摩擦の影響もあり、半導体含む産業や輸送用機械産業など製造業の落ち込みが大きかった。GDPの1次速報では供給側の統計情報を基に企業の設備投資を推計するが、需要側の統計である法人企業統計の発表を受けて大幅に修正することとなった。
住宅投資も0.1%増と速報値(0.2%増)から小幅に下振れした。不動産仲介料が下方に寄与したという。
個人消費は0.6%増と速報値から変わらなかった。
一方、公共投資は1.8%増と速報値の1.0%増から大幅に上振れした。政府の消費支出も医療、介護費などに関する統計を反映し、1.2%増と速報段階(0.9%増)から上振れした。
内需の寄与度はプラス0.6%と速報段階のプラス0.7%から下振れした。輸出から輸入を差し引いた外需の寄与度はマイナス0.3%と速報段階と同じだった。民間在庫の寄与度はマイナス0.0%と速報段階のマイナス0.1から上方修正された。仕掛かり品在庫が寄与したという。
物価変動の影響を加味した、生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増(速報値は0.4%増)、年率は1.1%増(同1.7%増)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.4%と1次速報値から変わらなかった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/4-62018/7-92018/10-122019/1-32019/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.5▲0.5+0.4+0.5+0.4+0.3
民間消費+0.3▲0.1+0.4▲0.0+0.6+0.6
民間住宅▲1.8+0.8+1.3+0.8+0.2+0.1
民間設備+3.0▲2.8+3.0▲0.2+1.5+0.2
民間在庫 *(▲0.1)(+0.2)(+0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.0)
公的需要▲0.2▲0.1+0.4+0.2+0.9+1.3
内需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(+0.8)(+0.1)(+0.7)(+0.6)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.2)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.3)
輸出+0.8▲2.1+1.2▲2.0▲0.1▲0.0
輸入+0.8▲1.2+3.6▲4.3+1.6+1.7
国内総所得 (GDI)+0.3▲0.8+0.4+1.0+0.4+0.3
国民総所得 (GNI)+0.4▲0.6+0.5+0.7+0.5+0.4
名目GDP+0.2▲0.5+0.4+1.0+0.4+0.3
雇用者報酬+1.2▲0.4+0.3+0.3+0.7+0.7
GDPデフレータ▲0.1▲0.4▲0.3+0.1▲0.0+0.4
内需デフレータ+0.5+0.6+0.5+0.3+0.1+0.4

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo

ということで、1~3月期GDP統計2次QEは先月の1次QEから大きな変化はありませんでした。法人企業統計などの1次統計の追加と反映を受けて、民間設備投資が下方修正されたのが大きく、それに連れて成長率も下振れしました。ですから、1次QE公表時の景気判断から大きな修正はないものと私は考えますが、ただ、今年2019年に入って1~3月期、4~6月期と2四半期続けて、ややトリッキーな成長が続いていることも確かです。というのは、1~3月期については、内需が振るわない中で、内需の低迷に起因して輸入が減少するという形で外需がプラス寄与しての高成長という予想外の形でしたし、本日2次QEが公表された4~6月期については、消費が成長をけん引して、それだけを見れば望ましい経済の姿といえるんですが、実は、平成から令和への改元に伴うゴールデンウィーク10連休が消費の底上げにかなりの程度寄与していると考えるべきです。そうそう10連休を設定するのはサステイナブルな政策ではありませんし、その上、厚生労働省の毎月勤労統計が信頼性欠く中で統計的な裏付けが難しいものの、賃金、というか、所得の向上なくお休みで消費が増えても、その後の反動が予想されますし、特に、現在のタイミングでは10月1日からの消費税率引き上げが消費減速につながる可能性が十分ありますから、足元の7~9月期はまだしも、目先の10~12月期からの景気が万全とはいいがたく、何ともいえない漠たるものながら懸念があることは確かです。国内的には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要は大きくない実感あるものの、他方で海外経済に目を転じると、米中間の貿易摩擦そのものの影響は決して大きくないにしても、これに起因する世界経済の減速は無視できない影響を及ぼすでしょうし、いずれにせよ、10月以降の景気動向は決して楽観できない、と考えるべきです。ハードな経済の動向に加えて、ソフトなマインドの問題もあります。後に取り上げるように、供給サイドの景気ウォッチャー8月統計の結果は冴えないものでしたし、需要サイドの消費者態度指数も下降を続けています。この上、来月10月に入って景気動向指数の基調判断が「悪化」に下方修正されたりすると、さらにマインドが冷え込む恐れもなしとしません。

photo

最後にGDP統計を離れると、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から前月差1.6ポイント上昇の42.8を記録した一方で、先行き判断DIは▲4.6ポイント低下の39.7となっています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆9999億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーで、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。下は経常収支で、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。これも、色分けは凡例の通りとなっています。

| | コメント (0)

2019年9月 7日 (土)

堅調ながら減速しつつある米国雇用統計やいかに?

日本時間の先夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+130千人増と貿易摩擦などでやや伸びは鈍ったものの、まずまず堅調な推移を見せた一方で、失業率は先月と同じ3.7%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 130,000 jobs in August, giving Fed another reason to cut rates
Hiring slowed in August as employers added 130,000 jobs, further stoking recession fears and strengthening the Federal Reserve's argument for another cut in interest rates this month.
The unemployment rate was unchanged at 3.7%, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 160,000 job gains.
Further dimming the latest employment snapshot: Payroll gains for and June and July combined were revised down by a total 20,000.
The increase raised concerns of a recession while the unemployment rate was unchanged from 3.7 percent in July.
The Labor Department has tended to undercount August job totals in its initial estimate and then revise the number higher the following months, says economist Jim O'Sullivan of High Frequency Economics. That pattern increased the risk of a disappointing jobs report Friday. But the payroll total was inflated by the federal government's addition of 25,000 temporary workers for the 2020 census. Without those gains, the August number would have been even weaker.
More broadly, payroll growth has slowed to an average monthly pace of 165,000 this year from 223,000 in 2018, though last year's figures are expected to be revised down substantially based on a recent preliminary estimate. A low unemployment rate has made it harder for employers to find qualified workers.
Also, the economy has slowed from its brisk pace last year because of the fading impact of Republican-led tax cuts and spending increases, President Trump's trade war with China and sluggish economies in other nations. The trade fight has also dampened business confidence and investment and hurt manufacturers.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo

何ともビミョーな結果だと私は受け止めています。非農業部門雇用者の前月差での+130千人増は、Broomberg による市場の事前コンセンサスである+150千人増を下回りましたが、決して悪くない数字ですし、景気の遅行指標とはいえ、失業率も3.7%と、およそ半世紀以来の低い水準にありますから、米国雇用は堅調と私は考えています。でも、景気の一致指標である非農業部門雇用者の伸びは、市場の事前コンセンサスを下回るとともに、このところやや縮小気味であることも確かです。その要因は、米国から仕かけたとはいえ、米中間の貿易摩擦による世界経済の減速ですから、その意味で、米国連邦準備制度理事会(FED)は7月に利下げに踏み切って、米国はほぼ10年半振りに金融緩和局面に入ったわけですが、来年の米国大統領選挙を前にホワイトハウスからの金融緩和圧力は継続していますし、現在のトランプ米国大統領に任命されたパウエルFED議長も苦しい判断かという気はします。特に、米国トランプ政権が重視しているメインストリームの製造業では、今年2019年に入って1~8月の就業者の増加幅が月平均+6千人にとどまっており、2018年平均の+20千人増を上回るペースから大幅にスローダウンしています。加えて、日本では企業部門が国内景気を牽引するんですが、米国では家計消費が景気を引っ張るわけで、小売部門の雇用は注目されるところですが、7か月連続で就業者数が減少しています。もちろん、ネット販売がトレンド的に増加していることから、小売業で構造的に雇用が増加しなくなっているのも事実ではありますが、世界経済の減速とどこまでシンクロしているかは不明なものの、米国経済の懸念材料であることは確かです。

photo

雇用の最大化という景気動向とともに、物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、8月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、1年に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、金融緩和に転じたりして物価の方は大丈夫なんだろうか、という心配もあるにはあるものの、基本的に、左派エコノミストである私は金融緩和には賛成だったりします。

| | コメント (0)

2019年9月 6日 (金)

景気動向指数は7月統計の戻りが小さく来月公表の8月統計で再び「悪化」に基調判断が下方修正される可能性も!!!

本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から横ばいで93.6を、CI一致指数は+0.3ポイント上昇して99.8を、それぞれ記録し、基調判断は「下げ止まり」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、0.3ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」で据え置き
内閣府が6日発表した7月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント上昇の99.8と2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。車載用蓄電池など自動車関連の生産が伸びたことで「生産指数(鉱工業)」「鉱工業用生産財出荷指数」が堅調だった。半導体製造装置や掘削用機械を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比横ばいの93.6だった。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.2ポイント上昇の104.8と4カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

従来から、このブログでも指摘している通り、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が極めて高いんですが、本日公表の7月統計でもその通りでした。すなわち、6月のCI一致指数は前月から▲2.9ポイントの下降でドカンと落ちた後、7月の戻りはわずかに+0.3ポイントの上昇にとどまり限定的でした。それでも、有効求人倍率(除学卒)と商業販売額(小売業)(前年同月比)が下降に寄与した以外、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)といった幅広いコンポーネントがプラスに寄与しています。「下げ止まり」に据え置かれ、メディアで注目の基調判断なんですが、「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「下げ止まり」と「悪化」の違いは3か月後方移動平均と前月差でかなり機械的に決められており、「原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」の2つの条件で「悪化」が定義されています。先月の6月統計の3か月後方移動平均は▲0.50の下降、7月統計でも▲0.60の下降ですから、すでに2か月連続での下降となっており、繰り返しになりますが、先ほど「ドカン」と表現した6月統計の前月差▲2.9ポイントの落ち方に比べて、その後の7月統計の戻りが+0.3ポイントと小さく、さらに来月の8月統計で前月差がマイナスだと、またまた基調判断が「悪化」に下方修正される可能性があります。そうすると、来月の景気動向指数の公表日は10月7日であり、消費税率引き上げ直後のタイミングも相まって、メディアが基調判断の「悪化」を大きく取り上げる、ということにもなりかねません。まあ、エコノミストの中には、どこまで本質的な意味があるか疑問に受け止める向きがあるかもしれませんが、私自身はそれなりに象徴的な意味があり、マインドへの影響が小さいながらも無視できない可能性がある、と考えています。

実は、このブログでは先週8月30日付けで7月統計の鉱工業生産指数(IIP)ほかを取り上げており、製造工業生産予測指数について先行き見通しの予測誤差の加工を行った補正値で8月は▲0.7%の減産と試算されていたりします。もしも、これが正しいと仮定すれば、景気動向指数の基調判断はふたたび「悪化」に下方修正される可能性が高いと考えられます。いずれにせよ、月末公表の鉱工業生産指数(IIP)8月統計を注視したいと思います。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧