2026年5月 8日 (金)

景気の底堅さを示す4月の米国雇用統計

日本時間の今夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は、3月統計の+185千人増から4月統計では+115千人増となり、失業率は3月から横ばいの4.3%を記録しています。まず、CNNのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

The US economy added a better-than-expected total of 115,000 jobs in April
The US economy added a stronger-than-expected 115,000 jobs last month and the unemployment rate stayed at 4.3%, an indication of resilience at a time when war and high gas prices loom large.
April's employment gains mark an expected retreat from March, when a revised 185,000 jobs were created, boosted by factors such as the end of large labor strikes as well as favorable weather, according to Bureau of Labor Statistics data released Friday.
However, the job growth seen last month was much stronger than the 65,000 that economists had estimated. No change in the unemployment rate was anticipated.
It's the first month of back-to-back job gains in more than a year, as uncertainty and other factors have rattled the labor market. The monthly payroll numbers have been especially volatile through the first part of this year - in part due to weather, labor strikes and methodological changes.
When smoothing out that volatility, monthly job gains are running at a three-month average of 48,000.
While the war in the Middle East wasn't expected to negatively affect April's employment numbers, it still presents a risk: The health of the US labor market and the broader economy could be negatively affected if gas prices stay persistently high and cut into consumer spending, raise business costs, as well as trickle into higher prices for other goods and services.
Hiring decisions take a few months to come to fruition, and consumers have yet to significantly cut back because of high gas prices, but that could change if their earnings are eaten away by inflation.
In April, average hourly earnings rose 0.2% to put the annual rate of pay gains at 3.6%, landing it above inflation - for now.
The April Consumer Price Index, the most widely used inflation gauge, is expected to show that the annual rate of inflation accelerated to 3.9% from 3.3% in March, FactSet consensus estimates show.
Stock futures were higher after the data release. Dow futures were up 230 points, or 0.46%. S&P 500 futures 0.6%, and futures tied to the Nasdaq 100 were up 0.9%.

注目の経済指標ですので長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。その上、米国連邦政府のシャットダウンにより、2025年10月の失業率は公表されていません。よ~く見ると、下のパネルの失業率がその部分が欠損値になっているのが見て取れます。

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米国の雇用は非農業部門雇用者の増加については、引用した記事のタイトルにも現れているように、市場の事前コンセンサスを上回り、米国景気の底堅さを示す結果となりました。失業率も4%台前半から半ばを続けています。米国労働省の労働統計局(BLS)のヘッドラインではは "Payroll employment edges up by 115,000 in April; unemployment rate unchanged at 4.3%" と評価しています。グラフはお示ししませんが、平均時給は前年比+3.6%と市場の事前コンセンサスは下回りましたが、3月の+3.5%より上昇率は加速しています。3月の消費者物価指数のヘッドライン上昇率が+3.3%であったことも考え合わせると、雇用はまだ堅調でインフレ圧力も残っている、と考えるべきです。もちろん、中東情勢がきわめて不透明で、石油価格の上昇がさらに進むかもしれませんし、逆に、企業マインドが悪化して雇用の減少につながる可能性も残されています。
米国連邦準備制度理事会(FED)は2025年中に175ベーシスの利下げを実行していますが、4月28-29日の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利が据え置かれています。米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の緊迫化は、石油価格の上昇を通じて明らかにインフレ圧力を高める可能性が高い一方で、経済活動には下押し圧力をもたらすと考えられます。雇用と物価のデュアルマンデートを背負う米国連邦準備制度理事会(FED)は難しい金融政策の舵取りを担うことになります。

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3か月連続で実質賃金が上昇した3月の毎月勤労統計

本日、厚生労働省から3月の毎月勤労統計が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は31万7254円と前年同月比+2.7%増となり、消費者物価上昇率を上回ったため実質賃金は前年同月比で+1.0%増と、3か月連続のプラスを記録していますまず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから報道を引用すると以下の通りです。

3月の実質賃金1%増、3カ月連続プラス 減税・補助でエネ価格抑制
厚生労働省が8日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.0%増えた。プラスは3カ月連続。減税や補助金などによる政府のエネルギー価格の抑制策が効いた。
名目賃金を示す1人当たりの現金給与総額は31万7254円と2.7%増えた。基本給に当たる所定内給与が27万1313円と3.2%増えた。3%以上の伸び率が3カ月続くのは1992年10月以来となる。2025年の春季労使交渉による賃上げや最低賃金の引き上げが広がっている。
実質賃金の計算に使う3月の消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)の上昇率は1.6%だった。エネルギー価格が前年同月比5.7%下がり、指数を押し下げた。25年末にガソリン税の旧暫定税率が廃止され、26年1月には電気・ガス代の補助も再開されるなど政府の政策が物価を抑え込んでいる。
総実労働時間は132.7時間と横ばいだった。就業形態別では一般労働者が0.8%増の158.9時間、パートタイム労働者が2%減の76.9時間だった。
厚労省は25年3月分から実質賃金の算出に消費者物価の総合指数を使う新方式を導入した。新方式による3月の実質賃金は1.3%増と、従来方式よりも0.3ポイント高くなっている。

いつもの通り、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルは名目及び実質の賃金上昇率の前年同月比であり、下は景気に敏感な製造業における所定外労働時間指数の推移です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、賃金については、3か月連続の前年同月比プラスというのは、そもそも、現金給与総額が前年同月比で+2.7%増となった上に、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が+1.6%にとどまったことに起因します。さらに、よりくわしく、賞与と3か月を超える通勤手当の変動の大きな部分を除いた「きまって支給する給与」と「所定内給与」を見ると、名目の現金給与指数で見て、「きまって支給する給与」が+3.0%増、「所定内給与」も+3.2%増となっています。逆に、賞与と3か月を超える通勤手当の合計である「特別に支払われた給与」が▲1.5%減と落ちています。最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+2%を下回っていますので、賃金上昇がようやくインフレを上回る状態になった、ということが出来ます。要するに、業績見合いのボーナスではなく、経済学的にいう恒常所得に近い概念の「きまって支給する給与」や「所定内給与」がようやくプラスになった、ということが出来ますので、この恒常所得の伸びは消費の増加に直結することが期待されます。
なお、理由は定かではありませんが、引用した記事の最後のパラにあるように、厚生労働省では実質賃金の算定に新しい方式を取り入れています。すなわち、従来は帰属家賃を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率で実質化していたところ、2025年3月から帰属家賃を除かないヘッドラインCPIの上昇率で実質化する系列も公表を始めています。私の方で厚生労働省の記者発表資料を見たところ、ヘッドラインCPIの上昇率のほうが低いようなので、実質賃金上昇率が高く出るような印象を受けました。まあ、グッドハートの法則(Goodhart's Law)でいうように、実質賃金が目標になると適切な目標ではなくなり、逆に、それを何らかの意味で飾るような傾向が出るのかもしれません。

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2026年5月 7日 (木)

ICE による不法移民取締りは米国生まれ労働者にメリットあったのか?

全米経済研究所(NBER)から "Labor Market Impacts of ICE Activity in Trump 2.0" と題するワーキングペーパーが明らかにされています。第2期目の米国トランプ政権で移民・税関捜査局=ICE: Immigration and Customs Enforcement による不法移民 undocumented immigrants 取締りが米国雇用にどのように影響を及ぼしたかを分析しています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、NBERのサイトから論文のABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
We provide the first causal, national empirical analysis of the labor market impacts of heightened immigration enforcement during the second Trump administration. Enforcement increased everywhere, but, we take advantage of the fact that the increases have been uneven across geographic areas to classify areas as treated or control and then implement an event study and difference-in-differences design. Areas that experienced particularly large increases in the number of arrests also experienced a decrease in work among likely undocumented immigrants who remain in the U.S., compared to areas with smaller increases in arrests. We find no evidence of positive spillover effects to U.S.-born workers and U.S.-born workers who work in immigrant-heavy sectors are harmed.

要するに、地域と業種での分析結果が明らかにされています。ICEによる逮捕者が多い地域で、米国生まれ労働者 U.S.-born workers へのポジな波及効果は見られなかった一方で、移民が多く働く業種 immigrant-heavy sectors でも、悪影響をこうむっている harmed ことが計量的な分析で明らかとなっています。ワーキングペーパーから米国生まれ労働者へのポジな影響がないとする Figure 7: Event Study Estimates on U.S.-Born Labor Market Outcomes in Likely Affected Sectors を引用すると次の通りです。

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結論 Conclusion として、ICEの大量逮捕は不法移民と米国生まれ労働者の補完性を失わせることにより、米国生まれ労働者の不利益となっている可能性 If anything these U.S.-born workers are harmed as a result, likely due to complementarities in production between the different jobs undocumented immigrants and U.S.-born workers typically take. を示唆しています。
最後に、日本について考えるたいと思います。繰返しになりますが、米国では、労働供給のサイドから不法移民が米国に入り込んできて米国生まれ労働者の職を奪う=代替する、という考えが本論文では否定されています。むしろ、不法移民と米国生まれ労働者は補完的であり、不法移民がいなくなれば、米国生まれ労働者に不利益になる、という結論です。日本では、外国人労働者は勝手に入り込んでくる不法移民ではなく、日本にある企業から需要された労働力です。ですから、直感的には米国よりも日本の方がより現地生まれ労働者との補完性が強いんではないか、と私は想像します。ですから、外国人労働者がいなくなれば、逆に、日本人労働者のデメリットが大きくなる可能性が高い、と考えるべきです。

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2026年4月30日 (木)

2か月連続の減産となった3月の鉱工業生産(IIP)と商業販売統計

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。いずれも3月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.5%の減産、2か月連続の減産となります。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額もは、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.7%増の14兆3060億円を示し、季節調整済み指数も前月から+1.3%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産3月は0.5%低下、2カ月連続マイナス 化学減産響く
経済産業省が30日公表した3月の鉱工業生産指数速報は前月比0.5%低下で2カ月連続のマイナスとなった。ロイターの事前予測調査では1.1%上昇と予想されており、予想外に低下した。ナフサを原料とするポリエチレンなどを製造する化学工業の減産が響いた。
同省は化学工業の減産について、中東情勢の影響やナフサ分解炉などの定期修理が集中したことが要因と説明。どちらの影響が大きいかは不明としている。
<ポリエチレン約3割減産、化学は先行きも減産見込み>
基調判断は「総じてみれば、生産は一進一退で推移」とした。
企業の生産計画に基づく予測指数は4月が前月比2.1%上昇、5月は2.2%上昇となった。生産計画は上振れ傾向があるため、これを勘案した補正値は4月が前月比0.7%の低下となった。
業種別で押し下げに寄与したのは無機・有機化学(前月比8.6%減)のほか、汎用・業務用機械(4.3%減)、石油・石炭製品(7.7%減)など。ポリエチレンは29.8%の大幅減産となり、合成ゴムも13.8%減だった。ガソリンは7.3%、軽油が14.3%それぞれ減少した。
一方、航空機用発動機部品や半導体製造装置、電子回路基板などは前月比で増産だった。
化学工業の生産予測は4月が前月比1.9%減、5月は2.8%減。減産予測と中東情勢の関係は「分からない」と経産省は説明している。
同省は中東情勢を受けた燃料油の動向について追加資料を発表。3月の生産はジェット燃料が前月比0.7%減、灯油が13.8%減、重油は1.4%増だった。
3月小売業販売額は前年比+1.7%=経産省(ロイター予測: +0.8%)
経済産業省が30日に発表した3月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比1.7%増となった。ロイターの事前予測調査では0.8%増が予想されていた。
業種別の前年比は、自動車9.0%増、その他小売業5.2%増、医薬品・化粧品2.8%増、各種商品1.4%増、機械器具0.7%増、飲食料品0.4%増など。
業態別前年比は 百貨店2.2%増、スーパー1.3%増、コンビニ2.3%増、家電大型専門店4.4%増、ドラッグストア5.8%増、ホームセンター3.4%増。

やや長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。ただ、後の方の商業販売統計の記事は「この記事はこの後更新します。」とされていますが、1時半現在で更新されていません。このご、更新される可能性が十分あります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは次の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事の最初のパラにもありますが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、ともに、3月の鉱工業生産は+1.1%の増産が予想されていましたので、実績の▲1.1%の減産は下振れしたと考えるべきです。その主要な原因はナフサ由来の化学工業製品にあることが示唆されています。なお、ロイターの別の記事「ポリエチレンなどの国内在庫は1.8カ月分、3月生産8.6%減=経産省」では、「ポリエチレンやポリプロピレンといったナフサ由来の化学製品の在庫は国内需要の1.8カ月程度」という経済産業省の発表を報じています。また、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。一昨年2024年7月から1年半余り連続の据置きです。先行きについては記事にもある通り、製造工業生産予測指数を見ると、足下の4月は+2.1%の増産で、翌5月も+2.2%の増産となっていますが、指数の上振れ傾向を補正した試算値では4月は▲0.7%の減産とされています。ただし、私の直感ながら、米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発する中東情勢の混乱から先行きはまったく不透明としかいいようがありません。引用した記事のタイトルにもありますが、化学工業の減産が大きくなっています。経済産業省の解説サイトによれば、3月統計における生産は、減産方向に寄与したのはポリエチレンや合成ゴムなどの無機・有機化学工業が前月比▲8.6%減、寄与度▲0.35%、コンベヤや水管ボイラなどの汎用・業務用機械工業が前月比▲4.3%減、寄与度▲0.33%、ガソリンや軽油といった石油・石炭製品工業が前月比▲7.7%減、寄与度▲0.13%、となっており、逆に、増産方向に寄与したのは、航空機用発動機部品や船用ディーゼル機関などの輸送機械工業(除、自動車工業)が前月比+10.5%増で+0.29%の寄与度、などとなっています。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、見れば明らかな通り、2023年年央あたりで前年同月比の伸び率が+5%から+6%台でピークを付けた後、前年同月比はプラスであるもののプラス幅が縮小し、3月統計では+1.7%増を記録しています。季節調整済み指数の前月比も、+1.3%の上昇を記録しています。統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により機械的に判断して、本日公表の3月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.8%の上昇であることから、先月までの「一進一退」から明確に1ノッチ上方修正して「緩やかな上昇傾向」に改定しています。ただし、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、3月統計ではヘッドライン上昇率は+1.5%、生鮮食品を除く総合のコアCPI上昇率は+1.8%となっていますので、名目で計測した商業販売統計の3月統計は実質消費がプラスかマイナスかは微妙なところであると私は考えています。

最後に、ニュースなどで散発的に流れているナフサ由来のプラスチックなどの化学工業製品の不足が統計的に裏付けられたと私は受け止めています。もちろん、ナフサを経由せずとも燃料油の不足も報じられており、いずれも、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東情勢に起因するわけです。私なんぞはノホホンと能天気に、二酸化炭素排出の削減やプラごみの減少にもつながる、といった面を考えないでもないのですが、死活問題という企業や関係者も少なくないものと想像しているのも事実です。短期的には、こういった石油や石油製品の供給を確保する一方で、代替品の開発も進める必要を忘れてはなりません。最後の最後に、ゴールデンウィーク休暇が明ければ、政府も本格的に石油や石油製品の節約・消費抑制に乗り出すのではないか、といった見方が一部のSNSなどで現れ始めています。私の方では確認しようがありませんが、どこまでホントなんですかね。

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2026年4月29日 (水)

社会科学の学術論文の再現性は低いのか?

米国国防高等研究計画局(DARPA)のファンディングにより実施されていた SCORE=Systematizing Confidence in Open Research and Evidence の成果が一気に Nature 誌に明らかにされています。Nature 誌の論文の引用情報は以下の通りです。

判る人には判ると思いますが、最初が再現性=reproducibility、次が頑健性=robustness、最後が再現可能性=replicability、に関する論文です。最初の再現性=reproducibilityでは、同じデータと同じプログラムコードを用いて同じ結果が得られるかどうかを検証します。当然ながら、100%の再現性が求められますが、データやプログラムコードを公開していない論文も多く、再現性すら100%ではない結果が出ています。次の頑健性=robustnessでは、基本的に同じデータ、ただし月次データを四半期データに変換するなどはあるとしても、基本的に同じデータを用いた上で、期間をずらせたり、コントロール変数を代えたりしても、同じパラメータではないとしても、同じ符号のパラメータが得られたり、統計的有意性に大きな差がなかったりするかどうかを検証します。最後の再現可能性=replicabilityでは、2番目の頑健性=robustnessと逆に、データについて別の時点あるいは別の地域、例えば、米国のデータを日本のデータに置き換えたりする一方で、推計手法を同じにして検証するものです。最初の再現性=reproducibilityに関する論文からグラフを1点だけ引用します。Fig. 5: Reproducibility by field であり、社会科学の分野別に再現性=reproducibilityを示しています。

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見れば判ると思いますが、一番上の政治学や次の経済学などでは高い再現性=reproducibilityがある一方で、教育学については完全に再現された論文はなかったりします。ただし、グラフの引用などはしませんが、別の基準からの検証では、経済学が低位で教育学が良好な結果を残しているものもあったりします。そのあたりは私にも完全に理解できているわけではありません。3本の検証論文はすべて公開されているようですので、ご興味ある向きはご自身でお調べください。

再現性、頑健性、再現可能性の問題については、10年ほど前の2015年に、Science誌で "Estimating the reproducibility of psychological science" と題する論文が掲載され、心理学の再現性が低いと指摘していて、心理学だけでなく、多くの社会科学でも同様の問題はあります。同様に、行動科学でも世界的に広く認識されていましたので、今回、心理学や行動科学などに限定せず、社会科学すべての分野で世界的な検証が実施され結果が公表されたのは大きな意義があると私は受け止めています。ただし、日本では、社会科学というよりも、むしろ、例のSTAP細胞の事件(?)で医学や自然科学の分野でも注目されるようになった気がします。私も研究者の端くれですので、心しておきたいと思います。

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2026年4月28日 (火)

緩やかに悪化しつつも底堅い3月の雇用統計と日銀「展望リポート」

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも3月の統計です。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.7%、有効求人倍率も前月から▲0.01ポイント低下して1.18倍と、それぞれ雇用は改善しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

25年度の有効求人倍率1.20倍、3年連続低下 失業率は2.6%
厚生労働省が28日発表した2025年度平均の有効求人倍率は1.20倍と、前年度から0.05ポイント下がった。低下は3年連続。省人化は進んだものの、賃上げ負担から求人を控える動きもあり、人手不足感は根強い。
総務省が同日発表した25年度平均の完全失業率は2.6%と前年度から0.1ポイント上昇した。上昇は5年ぶりとなる。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。25年度平均の有効求人数は4.1%減った。有効求職者数は0.7%減った。
卸売・小売業で新規求人数の減少幅が最も大きく、宿泊・飲食サービス業が続いた。厚労省の担当者は「人手不足を補うため機械化が目立った」と説明する。
「求人を出しても人が集まらず、採用できない状況は続いている」と人手不足感はなお強いとも指摘する。インフレや最低賃金の引き上げが重荷となり求人を控える動きもあるという。
3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍と、前月から0.01ポイント下がった。有効求人数は1.1%減り、有効求職者数は0.7%減った。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比2.6%減った。主要産業別では情報通信業が15.8%減り、卸売・小売業が6.5%減、宿泊・飲食サービス業が6.4%減だった。
3月の完全失業率(季節調整値)は2.7%で前月から0.1ポイント上がった。2カ月ぶりに上昇した。

3月統計が利用可能になり、年度計数に注目していることもあって、やや長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは次の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.6%有効求人倍率は1.18倍が予想されていました。本日公表された実績で、失業率2.7%、有効求人倍率1.18倍はともに、市場の事前コンセンサスのジャストミートしました。ですので、統計こそじわじわと悪化を示していますが、雇用情勢は引き続き悪くなく、雇用は底堅いと私は考えています。その最大の要因は人口減少に起因する人手不足です。引用した記事にもあるように、人手不足に対応した機械化が進んでいる一方で、採用できない状況は続いています。総務省統計局による労働力調査の季節調整していない原系列の前年同月との比較を見ても、自発的離職者(自己都合)は2月の+1万人増から3月は+5万人増に増加していますし、加えて、新たに求職して労働市場に参入した人は2月の+7万人から3月は+11万人増となっています。まだまだ、実質所得を増加させるには不十分とはいえ、昨年の最低賃金引上げや今春闘による賃上げによって就業意欲が高まる、という形で、賃金上昇に伴って労働市場への参入が増加し、就業者や雇用者も増加していて、その相対的な増え方の差で失業率が低下あるいは上昇している、と考えるのが伝統的な経済学の見方であろうと思います。
ただ、雇用に関して1点だけ懸念されるのは、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東情勢、さらに、石油価格の上昇や石油供給の制約です。3月統計では女性の被正規雇用が前年同月に比べて▲21万人減少しています。上のグラフを見ても、景気の動きとシンクロする一致系列の有効求人倍率、あるいは、景気の先行指標である新規求人数などはピークアウトして緩やかな悪化局面に入っているように見えますし、遅効系列である失業率も緩やかな悪化局面入りしている可能性があります。ただし、従来の経験からして、景気後退局面での雇用の悪化はもっと急速なスピードで現れます。現在の統計を見る限り、景気後退局面での雇用悪化とは少し違っている可能性も十分あると私は受け止めています。

     
  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
(参考)
消費者物価指数
(除く生鮮食品・エネルギー)
 2025年度+1.0 ~ +1.0
<+1.0>
+2.7+3.0
 1月時点の見通し+0.8 ~ +0.9
<+0.9>
+2.7 ~ +2.8
<+2.7>
+2.9 ~ +3.1
<+3.0>
 2026年度+0.4 ~ +0.7
<+0.5>
+2.8 ~ +3.0
<+2.8>
+2.5 ~ +2.7
<+2.6>
 1月時点の見通し+0.8 ~ +1.0
<+1.0>
+1.9 ~ +2.0
<+1.9>
+2.0 ~ +2.3
<+2.2>
 2027年度+0.6 ~ +0.8
<+0.7>
+2.3 ~ +2.4
<+2.3>
+2.6 ~ +2.7
<+2.6>
 1月時点の見通し+0.8 ~ +1.0
<+0.8>
+1.9 ~ +2.2
<+2.0>
+2.0 ~ +2.3
<+2.1>
 2028年度+0.7 ~ +0.8
<+0.8>
+2.0 ~ +2.2
<+2.0>
+2.1 ~ +2.4
<+2.2>

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合において、基本的見解部分の「展望リポート」が公表されています。そのp.10にある2025~2028年度の政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。1月時点での見通しと比較して、2026-27年度ともに、成長率見通しは引き下げられ、物価見通しは引き上げられています。しかも、生鮮食品を除いた消費者物価指数、いわゆるコアCPIの上昇率は2026-27年度とも日銀物価目標である+2%を上回る見通しとなっています。日銀が利上げに積極的になっている姿が垣間見えます。

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2026年4月27日 (月)

大学生の楽単志向について考える

関西大学から紀要論文「学生の視点からみた学びのリアリティ -楽単志向と履修選択基準の分析-」が明らかにされています。タイトル通りの内容で、私も学生の楽単志向がより深く理解できた気がします。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、論文の要旨を引用すると次の通りです。

要旨
本研究では、学生の視点から「学びのリアリティ」を捉えるため、楽単志向と履修選択基準の分析を行った。楽単志向の学生は、高校時代の学習への興味・関心が低く、大学での成績や資質能力の獲得感も低いことが示された。楽単志向の背景要因を質的に分析したところ、卒業目的の重視、コスパ重視、リスク回避といった<学生側の要因>に加え、シラバスからの情報不足、厳しい教員態度、授業の質の問題といった<教員側の要因>、GPAを単一指標とする制度の弊害といった<制度面の要因>等が複雑に絡み合っていることが判明した。履修選択基準では、「学問的興味・好奇心」が最も多く挙げられる一方、多くの学生はまず「時間割の都合」を考慮し、その条件の中で興味のあるものを選択していることが示された。楽単志向の問題は、学生の意欲の欠如にのみ帰結できるものではなく、教育提供者が教育のあり方を抜本的に見直し、問題解決に向けて臨むことが肝要である。

見ての通りで、いくつかの研究テーマが示されています。大きく分けて、タイトル通りに、楽単志向と履修選択基準です。私は楽単志向の方に興味があります、そして、その楽単志向についても、ベネッセ教育総合研究所「第4回大学生の学習・生活実態調査」(2021年度)の1~4年生4,124名のデータを用いた数量データ分析と関西大学社会科学系学部の3-4年生40人とのディスカッションから得た質的データの分析です。まず、論文から 単位取得(履修)に関する選好 のグラフを引用すると次の通りです。

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見れば明らかに楽単志向が傾向的に増加している点が読み取れると思います。いくつかの分析結果を示していますが、まず、。分野系統では、「楽単志向」が最も多いのは医・薬・保健70.4%、次いで社会科学66.7%、逆に、「興味志向」がもっとも多いのは教育43.0%、次いで、人文科学41.8%となっています。医療系は卒業後に国家試験でのチェックを受けるわけですし、やや例外と論文では指摘し、まあ、私の所属する経済学部をはじめとする社会科学系で楽単志向が高くなっているわけです。はい、私も日々実感しています。また、高校時代の学習について分析結果を示しており、「楽単志向」の学生は、授業に対する関心・興味が低く、授業についていけないと感じたことが多い、と指摘しています。また、グループワークやディスカッションへの参加、予習・復習、自主的・計画的な学習、進路や将来に対する積極性についても低くなっているとし、高校時代の学習の及ぼす影響は小さくない、と結論しています。また、大学の学業成績については、当然ながら、「楽単志向」より「興味志向」の学生の方が成績は有意に高い、との分析結果を示しています。したがって、論文では「成績評価が適切になされている結果」と指摘しています。

最後に、私は「楽単志向」にせよ、何にせよ、「ラクをしたい」という人間本来の欲求は正しいと考えています。ラクしたいので技術革新が進み、例えば、産業革命につながった可能性は忘れるべきではありません。宗教的な修行ではないのですから、ひたすら苦痛に耐え忍ぶのは意味がありません。その意味で、楽単志向で授業選択をし、余ったエネルギーや時間で何をするかが重要なのだろうという気はします。まあ、ややこじつけなのは自覚しています。

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2026年4月24日 (金)

教育予算を削減し防衛費を増額する財政の方向は正しいか?

広く報じられている通り、昨日4月23日、財政制度等審議会財政制度分科会が開催され、その事務局提出資料1「人口減少社会の中での総合的な国力の強化 (財政各論I)」私立大学の数を2040年までに4割削減という方針を盛り込んでいます。私が読んだ毎日新聞の記事とそれをキャリーしているYahoo! ニュースは以下の通りです。まあ、内容は同じなのですが、ポータルサイトもついでにリンクを示しておきます。

記事が取材しているのは、事務局提出資料の p.34 右下の次のテーブルです。

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このテーブルの右側には<私立大学>と対比させる形で、<国公立大学>のテーブルもあり、大学数は▲1校減、学部定員は▲3.6万人減、となっています。もちろん、その根拠は「18歳人口の減少に対応する規模に適正化」ということになっています。明らかに暴論です。大学進学率の上昇をまったく見込んでいない、という前提です。大学進学率をさらに引き上げることにより、日本経済の生産性を向上し、国民の賃金を引き上げるという視点がまったく欠けているとしかいいようがありません。
実は、この事務局提出資料は4部構成から成っていて、上のテーブルは第3部の人材力・経済力の強化の中に置かれています。そして、これに続く第4部は防衛力の強化となっています。私は公務員を60歳で定年退職した後、私立大学に再就職しましたが、戦車を暴発させるような防衛産業に再就職した方がよかったとは思っていません。決して、思っていません。

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2か月連続で物価目標の+2%を下回った3月の消費者物価指数(CPI)と+3%を超えた企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計です。CPIでは生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月からさらに減速して+1.6%を記録しています。日銀物価目標の+2%を下回ったのは3年11か月ぶりだそうです。生鮮食品を含むヘッドライン上昇率は+1.3%まで減速している一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+2.5%となっています。また、SPPIではヘッドラインの前年同月比上昇率は前月1月からわずかに加速して+2.7%を記録しています。変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIの上昇率も同じくやや加速して+2.7%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

全国コアCPI、3月+1.8%で2%割れ続く ガソリンは下落率急縮小
総務省が24日に発表した3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は、前年比1.8%上昇した。伸び率は前月の1.6%から拡大したが、2カ月連続で2%を下回った。米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃で原油価格が高騰し、ガソリン価格の前年比下落率が大幅に縮小する一方で、生鮮食品を除く食料の伸び率鈍化が続き、コアCPIの伸びを抑えた。
コアCPIは、ロイターが集計した民間調査機関の予測中央値に一致した。
エネルギー価格は5.7%下落と、前月の9.1%下落から下落率が縮小した。ガソリンは5.4%下落とガソリン暫定率廃止の影響でマイナスの推移が続いたものの、下落率は前月の14.9%から大幅に縮小した。ガソリンの調査は3月11-13日に行われたため、同月19日に再開した政府補助金の影響はまだ出ていない。灯油は6.3%上昇で、前月の3.5%下落から上昇に転じた。
生鮮食品を除く食料は5.2%上昇と、伸び率は前月の5.7%を下回った。8カ月連続で伸び率が縮小した。コメ類は6.8%上昇と、前月の17.1%上昇を大きく下回った。
コア対象522品目のうち、上昇は381、下落は106、変わらずが35。上昇品目は前月の382を1つ下回った。
2025年度平均のコア指数は前年度比2.7%上昇。伸び率は24年度と変わらず、4年連続で2%を超えた。コメ類が48.9%上昇して過去最高を更新するなど、生鮮食品を除く食料は7.0%上昇した。
3月の総合指数は前年比1.5%上昇し、伸びは前月の1.3%から拡大。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は2.4%上昇し、伸びは前月の2.5%から縮小した。2024年12月以来の低い伸び。
企業向けサービス価格、3月は前年比3.1%上昇 中東緊迫「外航貨物輸送」伸び拡大
日銀が24日に公表した3月の企業向けサービス価格指数は前年比3.1%上昇となった。中東情勢の緊迫化で「外航貨物輸送」の価格が大きく上昇し、伸び率が前月から0.4%ポイント拡大した。前月比は1.2%上昇だった。
「外航貨物輸送」は前年比42.1%上昇と、伸び率が前月(9.7%)から大幅に拡大した。このうち「外航タンカー」は、米国とイランの軍事衝突でホルムズ海峡の航行が困難となり、供給が絞られたことで価格が上昇した。外航タンカー以外の外航貨物輸送も、中東情勢の影響で燃料油価格が上昇したことが影響した。
「宿泊サービス」は前年比10.5%上昇と、伸びが前月(8.5%)から加速した。中国政府による渡航自粛要請を受けた中国人観光客の減少傾向は続いているものの、それ以外の国からの観光客数が増勢を強めている。
調査対象146品目のうち、上昇は116品目、下落は13品目だった。
日銀の担当者は「外航貨物輸送」が大きく上昇した以外は「おおむね小動きだった」と指摘。引き続き中東情勢緊迫の影響を含めた海運市況や国際商品市況の動向、各種コストの上昇分を価格転嫁する動きの持続性などを注視していくとした。
生産額に占める人件費投入比率の違いで分類した指数では「高人件費率サービス」が前年比3.0%上昇と、伸び率は前月から0.1%ポイント上昇した。「低人件費率サービス」は同3.1%上昇で、前月から0.7%ポイント上昇した。

何といっても、消費者物価指数(CPI)は現在もっとも注目されている経済指標のひとつですし、企業向けサービス価格指数(SPPI)も物価指標ですので、やや長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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引用した記事の2パラめにもある通り、コアCPI上昇率はロイターによる市場の事前コンセンサスに一致したようですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.7%ということでした。総務省統計局のプレスリリースによれば、ガソリンの暫定税率廃止及び政策による効果の寄与度が試算されており、ガソリンについては当月分で▲0.96%、ただし、前年剥落分が+0.49%あり、合わせて▲0.47%の寄与、同様に、電気代についても当月分で▲0.49%、ただし、前年剥落分が+0.27%あり、合わせて▲0.22%の寄与などの結果が示されています。品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率である+1.5%に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、エネルギーの寄与度は3月統計では、まだ、政府の政策効果もあってマイナスであり、前月の2月統計の▲0.71%に対して、2026年1月は▲0.45%となっています。したがって、いわゆる寄与度差は+0.26%に達していて、コアCPI上昇率が2月の+1.6%から3月の+1.8%に+0.2%ポイントへの拡大を超える割合を占めています。逆にいえば、エネルギーを除く物価には大きな変化はない、もしくは、やや物価上昇は減速している、と考えることもできます。例えば、生鮮食品を除く食料価格はコメを含む指標ですが、その上昇は引き続き大きいとはいえ、前年同月比で2月の+5.7%、寄与度で+1.39%から3月は+5.2%、寄与度+1.27%に減速しています。ですので、数字だけを見れば、ヘッドラインCPIの上昇率である+1.3%のほぼすべてが食料価格の上昇に起因するというわけです。引き続き、コメの価格上昇が継続しているものの、コメ以外に価格上昇している食料も少なくない点は見逃すべきではありません。すなわち、生鮮食品を除く食料の寄与度+1.27%のうち、コシヒカリを除くうるち米の寄与度は+0.10%を占めています。引用した記事の「コメ類は6.8%の上昇」とは少し分類が異なりますが、コシヒカリを除くうるち米の上昇率は前年同月比で+6.4%ですから、一時のピークは超えた可能性が大きいものの、まだまだ高い上昇率と考えるべきです。コメが値上げされれば、当然に、おにぎりやすしの価格も上がります。ただ、こういった食料価格の上昇がピークアウトしつつあり、米国とイスラエルによるイラン攻撃に伴う中東情勢、特にホルムズ海峡の封鎖に起因するエネルギー価格の動向に焦点が移りつつあるのも事実です。
まだ前年同月比でマイナスを続けているエネルギーではなく、食料の細かい内訳に注目すると、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見て、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+5.2%、寄与度+1.27%に上ります。その食料の中で、これも繰り返しになりますが、コシヒカリを除くうるち米が寄与度+0.10%あります。コメを上回る上昇となっている食料も多く、カカオショックとも呼ばれたチョコレートなどの菓子類は上昇率+8.2%、寄与度+0.22%に上っています。特に、その中でも、チョコレートは上昇率+24.0%、寄与度0.10%とうるち米に並ぶ寄与度を示しています。コメ値上がりの余波を受けた弁当などの調理食品が上昇率+5.2%、寄与度+0.20%に上っています。同様に、すしなどの外食も上昇率+3.9%、寄与度+0.18%を示しています。ほかの食料でもコーヒー豆などの飲料も上昇率+9.6%、寄与度0.17%となっており、コアCPIの外数ながら、ぶりなどの生鮮魚介が上昇率+7.3%、寄与度+0.10%、などなどと書き出せばキリがないほどです。食料とエネルギーはともに国民生活に欠かせない基礎的な財であり、実効ある物価対策とともに、価格上昇を上回る賃上げや最低賃金の大幅な引上げを期待しています。

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続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、1年余り前の2025年2-3月には前年同月比で+4.3%の上昇を示していましたが、2025年6月に+3%を下回って+2.8%となった後、今年2026年2月に+2.1%を記録した後、もっとも最近のデータが利用可能な今年2026年3月統計で+2.6%にやや加速しています。同様に、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)も、昨年2025年9月に+3.1%と直近のピークをつけた後、今年2026年2月に+2.7%まで上昇率がトレンドとして縮小してきていましたが、直近でデータが利用可能な3月統計でも+3.1%となっています。どちらも、まだ+2%を大きく上回って高止まりしています。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、企業物価指数(PPI)や本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、減速しつつあるとはいえ+2%台半ばから後半の上昇率を見ると、デフレに慣れきった国民や企業の意識からすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が大きいと考えるべきです。しかも、3月統計では企業物価指数(PPI)も企業向けサービス価格指数(SPPI)もいずれも、中東情勢によるエネルギー価格の上昇や、その波及を受けた国際運輸の要因から上昇率を加速させています。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて本日公表された3月統計のヘッドラインSPPI上昇率+3.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや建物サービスといった諸サービスが+1.26%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の大きな部分を占めています。諸サービス以外では、中東情勢に起因するエネルギー価格上昇の波及を受けたと考えられる外航貨物輸送などをはじめとする運輸・郵便が+0.44%、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.50%、さらに、不動産+0.23%、リース・レンタルが+0.16%、広告が+0.14%、金融・保険が+0.05%などとなっています。
最後に、人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ると、低人件費比率・高人件費比率のサービス価格いずれも+3%以上の上昇率を示しています。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っているという意味は、企業サイドから見れば人件費以上の過剰な価格転嫁が行われている一方で、家計サイドから見れば国民生活が実質ベースで苦しくなっているのは事実と考えざるをえません。ですので、私の従来からの主張ですが、企業サイドの利潤を減少させることにより労働分配率を上昇させ、物価上昇を引き起こすことなく賃上げを実現することが可能です。法人企業統計を見ても、ここまで利益剰余金が積み上がっているんですから、3~5年くらいは物価上昇なしに賃上げが可能ではないか、と私は直感的に試算しています。名だたるエコノミストが誰もこの点を主張しないのは私にはとても不思議です。何か、マズいことがあって忖度が働いているのかもしれません。

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2026年4月23日 (木)

石油価格の上昇はどれくらい物価を押し上げるのか?

先週金曜日の4月17日、大和総研から「原油高の国内への波及経路と価格転嫁率を踏まえた消費者物価への影響」と題するリポートが明らかにされています。3月27日に公表された内閣府による「原油価格の変動が国内物価に与える影響」では、さすがにお役所らしく、試算結果の数字がそれほど明らかではありませんでしたが、この大和総研のリポートでは数字が明記されています。ということで、まず、長くなりますが、リポートから要約を2点引用すると次の通りです。

要約
  • 中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格の上昇は、エネルギー価格にとどまらず、「原油関連製品」への依存度が高い産業を通じて幅広い品目へと波及する。産業連関表を用いて投入構造を部門別に確認すると、「原油関連製品」への依存度は、石油関連製品に加えて、化学・鉄鋼・セメントなどの素材部門や、輸送部門・電力部門といった非製造業でも高い。
  • 原油・天然ガス・石炭価格が10%上昇した場合、消費者物価への影響は全面転嫁シナリオで+0.27%、部分転嫁シナリオ(エネルギー関連では全面転嫁、それ以外は50%転嫁)では+0.12%となる。足元のエネルギー価格動向を当てはめると約40%分の上昇に相当するが、この場合、消費者物価への影響は+0.49%~+1.08%となる見込みだ。ただし、政府が実施しているガソリン等への補助金により、物価への影響は+0.32%~+0.90%程度に抑えられるとみられる。

要約の1点目にあるように、石油価格の上昇はエネルギーだけでなく、幅広い品目の価格へ波及します。その上で、+10%の価格上昇がどのように物価に波及するかを、いくつかのシナリオに基づいて試算しています。そのグラフを引用すると次の通りです。

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なお、左右のグラフに共通する「一定程度の価格転嫁」とは、「原油等のコスト上昇による影響を直接受ける部門および料金制度4により転嫁が制度的に担保されている電気部門、ガス・熱供給部門については全面的に転嫁され、それ以外の部門は50%分が転嫁されると想定」しています。足元の価格上昇に近い+40%上昇の想定で試算した右のグラフが現実的な気がします。消費者物価への影響はおおよそ+1%ポイントということになります。これを大きいと考えるか、あるいは、それほどでもないと見るか、いろんな見方が分かれると思います。ただ、私の方から2点だけ指摘しておきたいと思います。第1に、ガソリン補助金のような対象を企業とする補助金ではなく、広く国民を対象にした給付のほうが望ましいと考えます。政府から補助金がもらえるのもいいのかもしれませんが、国民の選択をより重視し企業努力が報われるような制度設計が求められます。第2に、短期的にはエネルギー価格の上昇のショックを和らげるような対策はもちろん重要ですが、長期的には脱炭素やプラごみ削減の視点も必要であり、石油消費を抑制するような仕組みも併せて志向されるべきと考えます。

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