2021年1月18日 (月)

内閣府による今週の指標「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」やいかに?

先週金曜日の1月15日に、内閣府から『今週の指標』として、「新型コロナウイルス感染症の影響による国内旅行消費の変化」が公表されています。まだ、年末年始の帰省旅行などのデータは含まれていませんが、昨年2020年4~6月期の緊急事態宣言の期間の分析もなされており、現在の首都圏や近畿圏などの緊急事態宣言に関する示唆を受け取る向きもいそうな気がします。いくつか、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、リポートから 国内旅行消費額 (目的別) を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期はもちろん、その後の夏休みを含む旅行のハイシーズンである7~9月期になっても旅行需要は低迷を継続しています。私は、緊急事態宣言が出た際には、解除されると元の生活が戻ってくるのかと期待しないでもなかったのですが、決して、緊急事態宣言前と同じ生活が戻ったわけではありません。旅行については大きく変容をしたわけであり、このあたりは、とても弁証法的な時間の進行だと感じています。

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続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、目的別の前年比 を引用しています。緊急事態宣言の2020年4~6月期と、その後の夏休みを含む7~9月期のそれぞれの前年同月比を比較しています。2020年4~6月期から7~9月期にかけて、いくぶんなりとも減少幅が縮小しているわけですが、ビジネス目的の「出張・業務」はそれほどの回復は見せていない一方で、「帰省・知人訪問等」、さらには「観光・レクリエーション」と娯楽度や自由度が高くなるほど、減少幅も小さければ、回復度合いも大きい、という結果が示されています。感染拡大という急所は大きく外したものの、旅行需要拡大の観点からは、GoToトラベルは評価される可能性があります。

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続いて、上のグラフは、リポートから国内旅行について、同一都道府県内への宿泊旅行の割合 を引用しています。パンデミック前の2019年は押し並べて20%を少し下回る水準で推移していましたが、2020年に入って大きく割合が上昇しているのが見て取れます。グラフは引用しませんが、これに伴って、宿泊数も減少を示し、1泊旅行の割合が増加しているようです。従って、マクロの旅行需要の減少とともに、旅行形態として「少人数化」、「短期化」、「近距離化」などが進んだ可能性が示唆されている、と結論しています。

繰り返しになりますが、夏休みを含む7~9月期には、緊急事態宣言も明けましたし、旅行の娯楽度や自由度やが高いほど旅行需要は回復した、とのGoToトラベルの一定の効果を示唆する分析結果ではありますが、感染拡大という社会的コストを無視した議論であるといわざるを得ません。感染症については外部経済があまりにも大きく、市場で観察される私的なベネフィット-コストだけではなく、スピルオーバーも含めた社会的なベネフィット-コストの分析が必要です。従って、この点は大きく外しています。

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2021年1月15日 (金)

2021年最初の「さくらリポート」に見る地方経済やいかに?

昨日、日銀支店長会議にて「さくらリポート」(2021年1月) が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもポストされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、北海道の景気判断は下方修正された一方で、北陸、四国、九州・沖縄で景気判断が引き上げられています。その他のブロックでは据え置かれています。このブログでは暫定的に昨年2020年5月、ないし、4~6月期を景気の底と認定していますが、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大はまだ終息していないように見える一方で、地域の景気は上向いているところが多くなっています。

 【2020年7月判断】前回との比較【2020年10月判断】
北海道新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあり、足もとでは持ち直しのペースが鈍化している
東北厳しい状態にあるが、持ち直しの動きがみられている厳しい状態にあるが、持ち直しの動きがみられている
北陸下げ止まっているものの、厳しい状態にある厳しい状態にあるが、持ち直しつつある
関東甲信越内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある引き続き厳しい状態にあるが、持ち直している。ただし、足もとではサービス消費を中心に感染症の再拡大の影響がみられている
東海厳しい状態が続く中でも、持ち直している厳しい状態が続く中でも、持ち直している
近畿新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状態にあるが、足もとでは、持ち直しの動きがみられる新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状態にあるが、全体として持ち直しの動きが続いている
中国新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続いているものの、持ち直しの動きがみられている新型コロナウイルス感染症の影響から、依然として厳しい状態にあるが、持ち直しの動きが続いている
四国新型コロナウイルス感染症の影響から、弱い動きが続いている新型コロナウイルス感染症の影響から一部に足踏み感もあるが、全体としては持ち直しの動きがみられている
九州・沖縄持ち直しの動きがみられるものの、厳しい状態にある厳しい状態にあるものの、持ち直しつつある

前回、昨年2020年10月時点でのリポートでは、四国ブロックを唯一の例外として、その他の地域はすべて景気判断が改善を示していましたが、さすがに、年末からの新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を受けて、地域経済の回復にもブレーキがかかった格好です。もともと、COVID-19の影響からの景気の回復は決してV字回復ではなく、かなりの時間を要すると考えられていましたので、大きなサプライズはありません。ただし、この「さくらリポート」は景気の総括判断だけではなく、需要などのコンポーネントとして、公共投資、設備投資、個人消費、住宅投資、生産、雇用・所得についても、同じように判断が示されていますが、設備投資、個人消費、住宅投資の3つのGDPコンポーネントについては全体的に弱い動きが続いている印象ですが、生産については持ち直しないし増加という方向が報告されており、輸出主導の形となっている可能性が示唆されている、と私は受け止めています。ただし、昨年末から日本だけでなく欧州などでもCOVID-19感染拡大防止のためのロックダウン措置が広がっており、輸出が景気拡大を牽引するかどうかは、かなり不確実性が高い、といわざるを得ません。

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2021年1月14日 (木)

2か月連続で増加を示す機械受注と大きな下落が続く企業物価指数(PPI)!!!

本日、内閣府から昨年2020年11月の機械受注が、また、日銀から昨年2020年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+1.5%増の8548億円と、まだまだ受注額は低水準ながら、2か月連続でプラスの伸びを記録しています。また、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲2.0%の下落を示しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

20年11月の機械受注、1.5%増 通信伸びる、基調判断を上方修正
内閣府が14日発表した2020年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は、前月比1.5%増の8548億円だった。2カ月連続の増加で、QUICKがまとめた民間予測の中央値(6.5%減)を上回った。内閣府は基調判断を「下げ止まっている」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。判断の上方修正は2カ月連続。
内訳を見ると、製造業の受注額は前月比2.4%減の3452億円だった。3カ月ぶりの減少で、17業種のうち6業種で増加、11業種で減少した。非鉄金属などで10月に大きく伸びた反動が出た。
非製造業は5.6%増の5109億円と、3カ月連続で増加した。通信業や建設業が伸びた。内閣府の担当者は「通信業では次世代通信規格の5G投資などで、ネットワーク関連機器を含む通信機が増加したと推測している」と話した。
受注総額は1.5%減、外需の受注額は5.9%増、官公需の受注額は0.4%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は11.3%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
20年12月の企業物価指数、前月比0.5%上昇 上昇は4カ月ぶり
日銀が14日発表した2020年12月の企業物価指数(15年平均=100)は100.3と、前月比で0.5%上昇した。前月比の上昇は4カ月ぶりで、石油製品を中心とした値上がりが寄与した。一方、前年同月比では2.0%下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。一部の国で新型コロナウイルスワクチンの接種が開始され、景気回復への期待が高まったことや、米国で原油在庫が減少したことから、11月から12月にかけて原油価格が上昇した。銅やアルミニウムの国際市況の値上がりも企業物価を押し上げた。
円ベースでの輸出物価は前年同月比1.3%下落、前月比では0.8%上昇した。円ベースでの輸入物価は前年同月比で9.8%下落、前月比では1.9%上昇した。
20年(暦年)の企業物価指数は100.3と、前年に比べて1.2%下落した。20年春の新型コロナ感染拡大で原油価格が一時、大幅に下落したことが響いた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前月比で▲6.5%減、レンジの上限でも+1.0%増でしたから、この上限を突き抜けて、ややサプライズとなりました。季節調整済み系列のの前月比で見て、製造業は前月10月統計の+11.4%増の反動もあって、直近で利用可能な11月統計では△2.4%減と減少を記録しましたが、船舶と電力を除くコア非製造業が10月統計の+13.8%像に続いて、11月も+5.6%増となっています。非製造業の中でも、通信業が+41.6%増と大きな伸びを示し、引用した記事にあるように、「次世代通信規格の5G投資などで、ネットワーク関連機器を含む通信機が増加した」のかもしれません。いずれにせよ、コア機械受注は10月の2ケタ増に続いて11月もわずかとはいえプラスを記録したことから、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「下げ止まっている」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正しています。コア機械受注が市場の事前コンセンサスを超えた伸びを示していることに加えて、機械受注の先行指標とされる外需も10月+20.7%増の大きな伸びに続いて、11月も+5.9%増と堅調に推移しており、こういった条件を踏まえての基調判断の修正なのですが、いかんせん、12月は日本国内でも、欧州をはじめとした海外でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックが拡大しているだけに、まったく疑問がないわけではありません。もちろん、数字だけを見れば、COVID-19パンデミック前の2019年10~12月期のコア機械受注は2兆5698億円で、月単位なら8566億円となりますから、11月統計の8548億円はほぼほぼパンデミック前の水準に回帰したといえますし、質的な面を考えても、中国ではCOVID-19がかなりの程度に終息したとか、イレギュラーな大型案件ではなく通信業の5G投資という将来を見据えた実需であるとか、それなりの根拠はないわけではありませんが、12月統計も見たい気がする私としては、やや拙速な判断である可能性は指摘しておきたいと思います。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、先の機械受注と同じく、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比が▲2.2%の下落でしたし、前月11月の実績△2.3%ほどの大きな下落ではありませんでしたので、実績の△2.0%はやや上振れはしましたが、一昨年2019年10月からの消費税率引上げ効果の剥落があるとはいえ、まだまだ日銀の物価目標とは整合的ではないといわざるをえません。加えて、引用した記事にあるように、4か月ぶりの前月比プラス、+0.5%を記録しましたが、そのほぼほぼ半分に当たる+0.25%はガソリンをはじめとする石油・石炭製品の寄与であり、残り半分の半分に当たる+0.11%は非鉄金属、特に国際商品市況に連動した銅地金などの寄与すから、それほど楽観的になれるハズもありません。

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2021年1月13日 (水)

ダイヤモンド・オンラインによる「生活満足度」が高い都道府県ランキングやいかに?

本日、ダイヤモンド・オンラインにて「生活満足度」が高い都道府県ランキング2020【完全版】が明らかにされています。昨年2020年8月の「消滅しない」都道府県ランキング【2020完全版】、同じく9月の都道府県「幸福度」ランキング2020【完全版】、さらに、同じく10月の都道府県魅力度ランキング2020【47都道府県・完全版】、さらにさらにで、12月の住みたい都道府県ランキング2020【47都道府県・完全版】などなどに続くシリーズであり、いずれもダイヤモンドとブランド総合研究所の共同調査の結果だそうです。以下の通りです。

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こういったランキングでは、北陸3県が上位に来て、東北や九州の評価が低い、という結果をついつい想像しがちなのですが、沖縄県がトップに躍り出ています。統計的には、沖縄県は平均所得でほぼほぼ常に最下位な気がするのですが、その分、物価が安くて、収入に依存せずに得られる生活満足度が高い可能性が指摘されています。また、鳥取県が昨年のランクからジャンプアップしていますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染確認数が全国最少で、人口比でも最少クラスに抑えるなど、COVID-19感染対策に成功していることが要因として分析されています。私が住む京都府とか、近隣の大阪府などは、まあ、こんなもんなんでしょうね。でも、京都府や大阪府に比べて、兵庫県のランクが高くなっています。

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ということで、それほど強い関係はないながら、Aera dot. のサイトから感染者数の推移と主な出来事のグラフを引用すると上の通りです。引用元の記事のタイトルは「菅首相『年末年始は感染者減少』と致命的な読み違えも 無策が招いた感染拡大」となっています。何ら、ご参考まで。

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2021年1月12日 (火)

大きく低下した12月の景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支の先行きやいかに?

本日、内閣府から昨年2020年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲10.1ポイント低下の35.5を示した一方で、先行き判断DIは+0.6ポイント上昇の37.1を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆8784億円の黒字を計上しています。貿易収支が黒字となっており、米国や中国向けの自動車輸出などが回復している一方、輸入は原油を中心に前年同月から減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

20年12月の街角景気、現状判断指数は2カ月連続悪化
内閣府が12日発表した2020年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は35.5で、前の月に比べて10.1ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は37.1で、0.6ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。
内閣府は基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさが残る中で、持ち直しに弱さがみられる」から「新型コロナの影響により、このところ弱さがみられる」に変更した。
20年11月の経常収支、1兆8784億円の黒字 77カ月連続黒字
財務省が12日発表した2020年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8784億円の黒字だった。黒字は77カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆5500億円の黒字だった。
貿易収支は6161億円の黒字、第1次所得収支は1兆7244億円の黒字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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よく知られているように、消費者マインド指標としては、本日公表の景気ウォッチャーとともに消費者態度指数があり、どちらもこのブログで取り上げているところながら、消費者態度指数はダイレクトに消費者世帯のマインドを調査しているのに対して、景気ウォッチャーは消費者マインドを反映しそうな事業者の供給サイドの指標となっています。ということで、先行き判断DIがわずかながら上昇した一方で、現状判断DIは10月の54.5から11月には前月差▲8.9ポイント低下の45.6に落ちた後、さらに、12月統計では▲10.1ポイントの低下で35.5まで下げてしまいました。このため、引用した記事にある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」から「このところ弱さがみられる」に変更しています。いうまでもなく、悪化の大きな要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大であり、逆に、先行き判断DIは感染拡大が終息に向かうことを期待している可能性があると私は受け止めています。ですから、12月統計の現状判断DIを少し詳しく見ると、企業動向関連では、製造業・非製造業ともに前月差マイナスなのですが、非製造業のほうが大きな落ち込みを示していますし、家計動向関連では、飲食関連が▲20.5ポイント、サービス関連が▲19.9ポイントといずれも大きなマイナスを記録しています。先行きについては、繰り返しになりますが、先行き判断DIがわずかながらプラスを示しており、COVID-19終息期待があると想像されますが、もう、エコノミストの領域ではなさそうな気がしています。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、COVID-19の影響は経常収支でも最悪期を脱した可能性がある一方で、第3波による2番底の可能性も排除できない、と考えています。内外の景気動向の差に基づく貿易赤字が主因となって経常収支が落ち込んでいましたが、季節調整済みの系列で見る限り、貿易収支は7月統計から黒字に転じ、本日公表の11月統計でも貿易黒字が拡大しいています。ただし、輸出の増加というよりは、国内景気に下がっ連動した輸入の減少に起因している面が強いと私は受け止めています。いずれにせよ、欧州でCOVID-19第3波によりロックダウンに入っている国もあり、あらゆる経済指標の先行きはCOVID-19次第と考えざるを得ません。

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2021年1月 9日 (土)

再びコロナ禍で悪化に転じた2020年12月の米国雇用統計から何を読み取るべきか?

日本時間の昨夜、米国労働省から昨年2020年12月の米国雇用統計が公表されています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響から、非農業雇用者数は4月の大幅減の後、5月統計からはリバウンドしていましたが、感染拡大を受けて12月には▲140千人減を記録し減少に転じました。同じく、失業率も一気に悪化した4月からのリバウンドが続ていましたが、12月は前月と同じく横ばいの6.7%でした。いずれにせよ、COVID-19前の昨年2019年11~12月や今年2020年2月には失業率は3.5%だったわけですから、それらと比べるとまだ2倍近いの水準であることも確かです。いずれも季節調整済みの系列です。まず、やや長くなりますが、USA Today のサイトから統計を報じる記事を最初の11パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy loses 140,000 jobs in December as unemployment holds at 6.7% amid COVID-19 spikes
U.S. employers shed 140,000 jobs in December amid COVID-19 surges and new business constraints, closing out a dismal year with the first payroll losses since the pandemic upended the economy last spring.
Restaurants and bars hemorrhaged jobs, and the report kicks off a potentially brutal winter as the nation awaits wide distribution of a vaccine that should pave the way for brighter days.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, held steady at 6.7%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 50,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Leisure and hospitality, including bars and restaurants, drove last month's job losses, shedding 498,000 positions.
State and local governments, which are coping with massive pandemic-related revenue declines, lost about 50,000 jobs. Private education payrolls fell by 63,000. The losses more than offset surprisingly strong payroll advances in other sectors.
Professional and business services added 160 1000 jobs. Retail added 120,000 amid the holiday shopping season, much of it at warehouse clubs and supercenters. Construction, which is benefiting from the housing boom, added 51,000. And manufacturing, which has been churning out a steady stream of appliances and other goods for consumers stuck at home, added 38,000.
The disappointing showing overall was also partly softened by upward revisions of 135,000 to job gains in October and November.
Prior to December, job gains had slowed for five straight months since peaking at 4.8 million in June. The nation has recovered 12.3 million, or about 56%, of the 22.2 million jobs wiped out in the health crisis as restaurants, shops and other businesses shuttered by the outbreak were allowed to reopen, and the outlets brought back many furloughed workers.

エラく長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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米国の失業率については、4月統計で14.7%と一気に悪化した後、5月13.3%、6月11.1%そして、7月10.2%まで2ケタが続いた後、8月には8.4%と10%を割り込み、9月7.9%、10月には6.9%となりましたが、11月には改善幅がわずかに0.2%ポイントまで縮小して6.7%を記録した後、12月の失業率は前月から横ばいの6.7%のままでした。COVID-19パンデミック前の2020年1月には失業者数5,796千人、失業率3.5%に比べて、12月統計の10,736千人、6.7%は2倍近い水準といえます。加えて、非農業部門雇用者数の増加は12月統計では半年ぶりにストップし、前月差で見てマイナスに転じました。緩やかながら昨年2020年4~6月期を底に回帰が反転した兆しがあっただけに、COVID-19のパンデミック再拡大のために景気回復に大きくブレーキがかかった形です。もちろん、このCOVID-19の感染拡大は米国だけでなく、すでにいくつかの都市で再びロックダウンに入った欧州でも、あるいは、首都圏に続いて関西京阪神でも緊急事態宣言が出る見込みの日本でも同様です。

振り返って目を我が国に転じると、何度もこのブログで主張しているように、日本のGoToキャンペーンは、感染拡大の「急所」のひとつである人的接触が多いセクター、本来は、シャットダウンすべきセクターに、COVID-19による経済的ダメージが大きいという理由で、補助金をつけて消費者を向かわせて感染拡大を引き起こしてしまったわけです。一昨年2019年10月の景気後退局面での消費税率引上げとともに、政府の大きな失政であるといわざるを得ません。従って、何度でも繰り返しますが、一時的に経済を犠牲にしてでもCOVID-19の感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。

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2021年1月 8日 (金)

6か月振りに下降した2020年11月の景気動向指数から何が読み取れるか?

本日、内閣府から11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+2.3ポイント上昇の96.6を、また、CI一致指数も前月から▲0.3ポイント下降の89.1を、それぞれ記録しています。昨年2020年5月を底に上昇を続けてきたCI一致指数は6か月振りの下降なんですが、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「下げ止まり」に据え置かれています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年11月の景気一致指数、6カ月ぶり悪化 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した2020年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント低下の89.1となった。悪化は6カ月ぶり。「商業販売額(小売業)」や「耐久消費財出荷指数」などが伸び悩んだ。内閣府が一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、4カ月連続で「下げ止まり」となった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比2.3ポイント上昇の96.6と、18年12月以来の水準となった。「新規求人数(除学卒)」の持ち直しなどが指数を押し上げた。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比1.4ポイント低下の89.8だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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CI一致指数を個別系列の寄与度に従って少し詳しく見ておくと、マイナス寄与では 商業販売額(小売業)(前年同月比)が▲0.48ポイントともっとも大きなマイナスを示そており、次いで、 耐久消費財出荷指数が▲0.37ポイントとなっています。要するに、家計消費が振るわなかったわけです。他方、プラス寄与に目を転じると、輸出数量指数が+0.34ポイント、有効求人倍率(除学卒)が+0.25となっています。先月統計でも輸出数量指数はそこそこ大きなプラス寄与度を示していましたので、やっぱり、海外景気の外需に牽引される形での景気回復になりそうな気もします。もっとも、欧州では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより二度三度のロックダウンに入っている国も少なくないわけで、どれほどまでの海外経済のサステイナビリティなのかは現時点では不明です。いずれにせよ、国内でもCOVID-19の感染拡大による非常事態宣言ですので、CI先行指数が上昇したからといって景気の先行きが楽観視できるわけもありません。それなりのボリューム感も表現しているCIですが、一致指数はCOVID-19パンデミック前の2019年12月の水準が94.2、昨年2020年1月でも94.6です。この90台半ばの指数値は、実は、2019年10月の消費税率引上げにより、かなりの低下を見た後の統計なんですが、10~11月のCI一致指数でもまだ90を割っていて、12月は感染拡大が進んで11月統計よりも低下することが明らかですから、まだまだ景気回復には時間がかかると覚悟すべきです。上のグラフでは、私のこのブログのローカルルールで、2020年5月を景気の底に暫定的に同定していますが、場合によっては2番底をつける可能性も十分あります。それでも、ここは景気を犠牲にしてでも感染拡大を防止して、国民生活を守るのがむしろ景気回復への早道である、と私は考えています。

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2021年1月 7日 (木)

コロナ禍で毎月勤労統計に見る賃金は下げ続ける!!!

本日、厚生労働省から昨年2020年11月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲1.1%減少の27万9095円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+0.6%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

11月の実質賃金、前年同月比1.1%減 賞与の減少響く
厚生労働省が7日発表した2020年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.1%減少した。実質賃金の減少は9カ月連続。新型コロナウイルス感染症の影響による企業業績の悪化などを背景に賞与が減少した。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は27万9095円で前年同月比2.2%減った。減少は8カ月連続。内訳をみると、賞与など特別に支払われた給与は22.9%減少し、減少幅は19年2月以来1年9カ月ぶりの大きさとなった。厚労省の担当者は、新型コロナの影響で「企業は賞与を減額したり、支払いを遅らせたりしたようだ」と説明した。
残業代など所定外給与は10.3%減で減少は15カ月連続となった。一方、基本給にあたる所定内給与は0.1%増の24万5779円と微増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.2%増の1205円だった。パートタイム労働者の比率は前年同月から0.10ポイント低い31.62%で、低下は10カ月連続。新型コロナの影響でパートタイムの新規採用者数が減ったり、契約の更新を見送ったりした可能性が高い。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に認定しています。

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景気との連動性高い所定外労働時間は、わずかな差で1ト月違いながら、私がこのブログ向けに暫定的に仮置した2020年5月の景気の谷にほぼ整合的な形で反転しているのが、上のグラフから見て取れます。季節調整済みの系列で見て、11月の所定外労働時間は前月からわずかに+0.6%の伸びとなっており、雇用が生産の派生需要であることから、鉱工業生産指数(IIP)が横ばいだったのに対応していると考えるべきです。賃金もおおむね2020年5月で下げ止まったところなのですが、2020年11月には再び下げ幅を拡大しています。引用した記事にある通り、いわゆるボーナスに相当する特別に支払われた給与の減少が響いているようです。季節調整していない原系列の統計で見て、▲22.9%減となっています。逆に、きまって支給する給与は▲0.7%減まで下げ幅を縮小させています。ただ、よくよく考えると、ボーナスは11月よりも12月の給与により大きなインパクトがあると考えるべきであり、の12月統計ではさらに賃金の下げ幅が大きくなると覚悟すべきです。統計がそもそもガタガタな上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のショックで給与統計は下げ続けており、国民生活はひどいことになっています。

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2021年1月 6日 (水)

大きく落ちた12月の消費者態度指数から政策の方向を考える!!!

本日、内閣府から昨年2020年12月の消費者態度指数が公表されています。季節調整済みの系列で見て、前月から▲1.9ポイント低下して31.8と、4か月振りに前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を前月までの「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」から下方修正し、「足踏みがみられる」としています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

20年12月の消費者態度指数、4カ月ぶり低下 判断も下方修正
内閣府が6日発表した2020年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.9ポイント低下の31.8となった。前月を下回るのは4カ月ぶり。内閣府は消費者心理についての基調判断を「足踏みがみられる」と4カ月ぶりに下方修正した。20年11月は「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」としていた。
新型コロナウイルスの感染再拡大などが消費者心理を冷え込ませ、指数を構成する「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4指標はいずれも前の月から低下した。4指標がすべて低下するのは20年4月以来8カ月ぶりとなる。
日ごろよく購入する物の1年後の物価見通し(2人以上の世帯が対象)では「上昇する」と答えた割合が65.9%(原数値)と前の月を2.5ポイント下回った。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。今回発表分の調査基準日は20年12月15日で、調査は全国8400世帯が対象。有効回答数は7415世帯、回答率は88.3%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

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先月11月統計の際にも明記しましたが、消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントのうち、特に「雇用環境」が指数の前月差で▲2.9ポイントの低下と大きく悪化しているのが懸念されます。11月統計では「雇用環境」だけが前月差マイナスで、ほかの3指標はプラスを示していましたが、12月統計では、「雇用環境」のほかの3指標もすべてマイナスに転じています。すなわち、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.9ポイント、「暮らし向き」が▲1.8ポイント、「収入の増え方」が▲0.7ポイントです。中でも、消費のための原資を稼ぎ出す「雇用環境」がもっとも前月差で大きなマイナスですから、消費が増えようはずがありません。当然、この消費者態度指数の大きな低下、すなわち、消費者マインドの悪化の背景には新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック拡大があるわけで、経済の回復のためにもまずCOVID-19パンデミックの終息に向かう取組みが必要とされるところです。COVID-19によるダメージが大きいという理由で、GoToトラベルやGoToイートのように人的接触が多いセクターへ補助金を出して人的接触を増加させるなんぞというのは真逆の政策です。繰り返しになりますが、宿泊や外食などの人的接触の多いセクターにGoToで消費者を向かわせるのではなく、そのセクターの労働者の所得を保証する政策が必要です。今の内閣は、まったくこの点が理解されていないので怖いです。

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2021年1月 5日 (火)

緊急事態宣言に伴う経済損失に見るブルシットな市場価格への無批判な信仰!!!

昨日、グレーバー教授の著書『ブルシット・ジョブ』を引いた東洋経済オンラインの記事を取り上げた際にも、社会的なスピルオーバー効果とか、宇沢教授のようなシャドープライス試算とかを無視した市場価格だけによる資源配分は大きく歪められている可能性を指摘しましたが、今週末にも予想される首都圏での緊急事態宣言の経済損失について、いくつかのシンクタンクが試算結果を取りまとめています。本日午後の時点で私が知る限り以下の通りです。

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上のグラフは大和総研のリポートから、緊急事態宣言1カ月間の消費抑制額 を引用しています。どちらのリポートも数ページでコンパクトなもので、私はしっかりと目を通したつもりですが、誠に残念というか、何というか、緊急事態宣言を見送って新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックが拡大した際との機会費用との比較、あるいは、緊急事態宣言による感染拡大防止のスピルオーバー効果などへの言及は一切なしでした。経済学的には、おそらく、緊急事態宣言を見送った場合と発令した場合の限界計算をする必要があるのですが、前者の緊急事態宣言なしのケースを単純な静学的期待、すなわち、現状が継続するとしか考えていないように見受けられ、COVID-19の感染拡大による経済損失はほぼほぼゼロと仮定しているように私には見えます。何と申しましょうかで、少しくらいは、このままCOVID-19の感染拡大を緊急事態宣言見送りで放置した場合の経済損失にも言及するくらいの知恵はなかったんでしょうか。私は個人的に、東京オリンピック・パラリンピックが中止になる確率は決して無視できないと考えていますが、やっぱり、強行開催した際のCOVID-19の感染拡大による経済損失と比較考量するという思考はできないんでしょうね。まあ、極端に難易度は上がりますが、せめて一言言及するくらいの節度は欲しいものです。ちなみに、私がジャカルタのころにバリ島爆弾テロの経済損失を試算したペーパー "Preliminary Estimation of Impact of Bali Tragedy on Indonesian Economy" では、爆弾テロがなかった場合のベースラインをARIMAモデルと状態空間モデルで試算した上で爆弾テロのインパクトを産業連関表にて推計しています。まあ、数式をゴチャゴチャと展開した20ページあまりの学術論文とシンクタンクの数ページのリポートとの差は考慮すべきなんでしょうが、例えば、COVID-19感染拡大防止のスピルオーバー効果について「考慮していない」と言及するのはそう難しくないでしょうし、もう少しベースラインをきちんと明示したり、といった押さえるべきポイントは押さえて欲しい気がします。

経済学で限界革命により古典派経済学から新古典派が誕生したのは19世紀後半の1870年代です。すなわち、英国のジェヴォンズ、オーストリアのメンガー、スイスのワルラスの3人が、ほぼ同時かつ独立に限界効用理論を基礎にした経済学の体系を樹立したとされていて、約150年前の出来事なのですが、我が国シンクタンクの現状はまだこういった新古典派の成果は取り入れておらず、英国古典派的な経済学が幅を利かせているのかもしれません。

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