2024年4月19日 (金)

24か月連続で日銀物価目標の+2%を上回った消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.6%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は24か月連続、すなわち、2年連続です。ヘッドライン上昇率は+2.7%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.9%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価3月2.6%上昇 2年連続で日銀目標の2%以上
総務省が19日発表した3月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.8となり、前年同月比で2.6%上昇した。伸び率は22年4月から2年連続で日銀の物価安定目標の2%以上となった。食料などの価格の高止まりが続く。
上昇率はQUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の2.6%上昇と同じだった。前年同月比での上昇は2年7カ月連続となる。伸びは2月の2.8%から縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.9%上がった。伸び率は7カ月連続で縮小した。生鮮食品を含む総合指数は2.7%上昇した。
3月の結果を品目別にみると電気代は1.0%低下した。2月のマイナス2.5%から下げ幅を縮めた。火力発電に使う液化天然ガス(LNG)価格などが上がっている。都市ガス代の下落幅も縮小した。ガソリンは4.3%上昇と、2月に引き続き4%台の伸びだった。
生鮮食品を除く食料は前年同月比4.6%上がった。原材料価格の上昇の影響により、せんべいが19.8%、レトルトカレーを示す調理カレーが18.8%それぞれ上がった。
生鮮食品を除く食料の上昇率は2月の5.3%からは縮んだ。23年に相次いだ値上げによる上昇分が一巡し、伸びは7カ月連続で縮小した。鶏卵は3.6%低下と、2年11カ月ぶりに前年同月と比べて下がった。
全体をモノとサービスに分けるとサービスは2.1%上昇した。上昇率は9カ月連続で2%以上だった。観光需要の回復が続く宿泊料は27.7%高まった。
同日公表した23年度平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年度比2.8%上昇した。上昇幅は政府の電気・ガス料金の抑制策の影響で22年度の3.0%から縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は23年度は3.9%上昇した。第2次石油危機の影響があった1981年度の4.0%以来42年ぶりの高い伸びとなる。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.6%ということでしたので、まさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、本日発表された3月統計では前年同月比で▲0.6%まで下落幅が縮小し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.04%まで小さくなっています。いうまでもなく、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が先月の2月に終了したことに起因します。統計局の試算によれば、電気代▲0.41%、都市ガス代▲0.08%、合計▲0.49%のヘッドライン上昇率に対する寄与があったことが明らかにされています。すでにガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は3月統計では+4.3%、ヘッドライン上昇率に対する寄与度が+0.09%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、イラクのイスラエル攻撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。
現在のインフレの主役である食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.23%あり、うち生鮮野菜が+0.13%、生鮮果物が+0.12%の寄与をそれぞれ示しています。生鮮食品を除く食料の寄与度が+1.09%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見るとせんべいなどの菓子類が+0.22%、調理カレーなどの調理食品が+0.18%、うるち米などの穀類が+0.14%、焼肉などの外食が+0.12%、鶏卵は下がったものの牛乳など上昇した乳卵類が+0.09%、などなどとなっています。サービスでは、宿泊料が前年同月比で+27.7%上昇し、寄与度も+0.25%に達しています。

先行き、足元の4月については、第1に、新年度を迎える区切りの月であることから値上げ予定が集中するとともに、第2に、足元で円安が進んでいることもあり、インフレ率が高まる可能性に注意が必要です。例えば、帝国データバンクから3月29日に明らかにされた「食品主要195社 価格改定動向調査」や4月19日の「上場主要外食100社 価格改定動向調査」などのリポートでも、そういった方向性が示唆されているように私は感じています。

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2024年4月18日 (木)

国際通貨基金「IMF世界経済見通し」見通し編を読む

一昨日、4月16日の日本時間の夜に国際通貨基金から「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook 見通し編が公表されています。すでに、Analytical Chapters 分析編は先週4月12日に取り上げていますので、見通し編についてもpdfの全文リポートなどからグラフを引用しつつ、ごく簡単に見ておきたいと思います。

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まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表 World Economic Outlook Growth Projections を引用すると上の通りです。こんかいの「世界経済見通し」の副題は Steady but Slow: Resilience amid Divergence となっていて、すなわち、着実な成長であるものの回復ペースは遅くて、回復のレジリエンス=強靭性はある一方で成長はまちまち、という特徴を持っているようです。上のテーブルで示されているように、世界経済の成長率は今年2024年+3.2%、来年2025年も+3.2%ですから着実な成長が見込まれています。一応、日本を見ておくと、今年2024年+0.9%、来年2025年+1.0%とほぼほぼ潜在成長率近傍の成長を予想しています。成長がレジリエントであるという意味は、景気後退に陥る確率が低くてソフトランディングの確率が増している、という意味です。

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さらに詳しく、リポートから p.9 Figure 1.14. Growth Outlook: Broadly Stable を引用すると上の通りです。上のパネルから明らかなように、昨年2023年10月時点での見通しと比較して、先進国や新興国経済は明らかに上振れしていて、今回の見通しでは上方改定されているのが見て取れます。ただし、この先、何と2029年までの中期的な成長率見通しが示されていますが、サブサハラアフリカを別にすれば、成長率がゆっくりと鈍化すると見込まれています。この点は、分析編の Chapter 3: Slowdown in Global Medium-Term Growth: What Will It Take to Turn the Tide? で議論が展開されていて、この私のブログでも先週4月12日に取り上げたように、資源配分是正のための構造改革 Structural reforms reducing misallocation については+1%ポイントを超える成長促進効果があると試算していたり、AIの活用 AI adoption はかなり大きな効果が見込めるとの分析結果を示していたりします。ただ、繰り返して強調しておきますが、世界経済はレジリエントであり、景気後退に陥ることなくソフトランディングの可能性が高まっています。

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そのソフトランディングの可能性が高まっているという分析結果をサポートするのが上のグラフであり、リポートから p.13 Figure 1.15. Inflation Outlook: Falling を引用しています。これも前回2023年10月時点の「世界経済見通し」と比較していて、大雑把に予想のラインまたはややインフレ率が下振れしているのが見て取れます。おおむね、インフレ高進下での金融政策は成功していると考えるべきです。

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金融政策がインフレの抑制とソフトランディングに成功しつつある一方で、経済のレジリエンスの維持強化のための第1に優先すべき政策課題は Rebuilding Room for Budgetary Maneuver and Ensuring Debt Sustainability 予算運営のバッファーを再構築し、債務の持続可能性を確保することであると指摘しています。我が国財務省が裏から手を回しているのではないか、という気もしますが、まあ、一応、正統な志向であるように見えます。そして、その財政再建のために考慮すべき要因として選挙を上げています。上のグラフはリポートから p.21 Figure 1.24. Medium-Term Fiscal Adjustment を引用しています。隣国である韓国の選挙はすでに終わって与党が敗北しましたが、日本は今年2024年中には選挙がありませんから、まあ、有り体にいって、選挙のある国よりもしっかりと財政再建すべきである、という主張が透けて見えます。秋に大東呂選挙が控えている米国なんかはどうするんでしょうか?

最後の政策課題については、私は少し異見ありますが、少なくとも、世界経済は景気後退を回避してソフトランディングに向かっている点は国際通貨基金(IMF)でも確認できているようです。

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2024年4月17日 (水)

3か月ぶりに貿易黒字を計上した3月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+7.3%増の9兆4,696億円に対して、輸入額は▲4.9%減の9兆1,031億円、差引き貿易収支は+3,665億円の黒字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易赤字3年連続、23年度5.8兆円 資源高一服で縮小
財務省が17日発表した2023年度の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆8918億円の赤字だった。赤字は3年連続となる。原油など資源価格の高騰が一服したことなどから金額は73.3%減った。
輸出額は前年度比3.7%増の102兆8982億円で過去最高となった。23年通年でも100兆円を超えていたが、年度でも初めて大台に乗った。半導体不足の解消で供給制約が少なくなり、自動車の輸出額が17兆8771億円と30.2%伸びたことなどが押し上げた。
輸入額は10.3%減の108兆7901億円だった。原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入額が減った。これら鉱物性燃料の輸入額は26.4%減の26兆55億円となった。原油及び粗油の輸入量が8.6%減るなど、化石燃料は数量ベースでも輸入が減った。
財務省によると23年度の円の対ドル相場は平均で1ドル=143円79銭だった。22年度の135円05銭からさらに円安・ドル高に振れた。ロシアのウクライナ侵略による資源価格の世界的な高騰が一服した影響によって、円安が進む中でも全体の輸入額は3年ぶりに減少に転じた。
地域別に見ると、米国との貿易収支は9兆1356億円の黒字だった。自動車や建設用・鉱山用機械の輸出がけん引して黒字額は37.8%増えた。中国には5兆9287億円の貿易赤字、欧州連合(EU)向けは7219億円の赤字だった。
足元では23年度の平均を上回る154円台まで円安が進んでいる。イランがイスラエルに報復攻撃を加えるなど中東情勢は緊迫の度合いを増しており、今後原油価格に影響してくる可能性もある。貿易赤字が再び膨らむ懸念が残る。
同時に発表した3月の貿易収支は3664億円の黒字だった。黒字は3カ月ぶりとなる。自動車や半導体など電子部品の輸出が伸びた。

長くなってしまい、かつ、2023年度統計に圧倒的な重点が置かれていますが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、+3000億円を超える貿易黒字が見込まれていましたので、ほぼジャストミートしたといえます。3月の貿易収支は季節調整していない系列で見ると黒字でしたが、季節調整済みの系列で見るとまだ赤字が続いています。ただし注意すべき点は、1月と2月は中華圏の春節次第で我が国の貿易が大きな影響を受けるという事実であり、ひょっとしたら、3月までそういった撹乱要因が継続的に影響している可能性は否定できません。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。そして、私の知る限り、少なくないエコノミストは貿易赤字は縮小、ないし、黒字化に向かうと考えている可能性が十分あります。
3月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が伸び悩んでいます。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲4.5%減ながら、金額ベースでは+2.8%増となっています。数量ベースの減少以上に単価が上昇した結果、輸入額が増加しているわけです。しかし、LNGについては、数量ベースでは▲3.0%減、金額ベースでも▲9.5%減となっています。数量の低下とともに単価が下がっていることがうかがわれます。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では▲8.5%減、金額ベースでも▲22.0%減と大きく減少しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で見て、数量ベースの輸出台数は+14.9%増、金額ベースでも+22.0%増と大きく伸びています。前年同月との比較ですので、どこまでの寄与があるのか不明ながら、ダイハツの品質偽装に端を発する生産停止からの回復が寄与しているのかもしれません。自動車や輸送機械を別にすれば、金額ベースの前年同月比で見て、一般機械は+3.2%増と輸出を伸ばしている一方で、電気機器は▲2.9%減となっています。

最後に、貿易収支だけではなく、サービス収支や所得収支・金融収支なども含めた経常収支に関して財務省で「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」と題する財務官主催の懇談会が3月26日に第1回の会合を開催しています。その事務局提出資料に貿易・サービス収支について考えられる論点として、p.8に以下の3点が上げられています。所得収支・金融収支なども含めた論点が財務省の事務局資料にありますので、ご興味ある向きは原資料をご覧下さい。

  • 近年の貿易赤字傾向の背景としては、自動車に匹敵する黒字の担い手の不在、生産拠点の海外移転、基礎的資源の輸入依存などが挙げられる。
  • サービス収支については、好調なインバウンドを背景に旅行収支は改善する一方、デジタル分野や研究開発関連といった先進的な分野では赤字が拡大している。
  • こうした状況の背景や今後の見通しをどのように分析するか。我が国が、今後、財・サービス両分野で、収支構造を強靱化するとともに、国際競争力を維持・強化するためには、どのような施策が必要か。

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2024年4月16日 (火)

電気製品はいかに家庭や女性労働を変革したか?

全米経済研究所(NBER)から、電気製品がいかに家庭に変革をもたらしたかの歴史的概観を取りまとめたリポートが明らかにされています。主として、米国とドイツの例を取り上げていて、残念ながら、ほとんど日本に対する言及はありませんが、欧米先進国については米独以外にも何か国かレビューされています。まず、引用情報は以下の通りです。

pdfのリポートからグラフをいくつか引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポート p.3 から Figure 2. The decline in weekly hours spent on housework in the United States. を引用すると上の通りです。見ればわかると思いますが、1990年から2020年までの家事に費やされた労働時間の推移です。120年前には1週間で60時間近い家事労働を必要としていましたが、1975年には週当たり18時間まで減少しています。1990年以降はほぼ安定し、10時間余りとなっています。

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続いて、リポート p.4 から Figure 3. The diffusion (upper panel) and the time price (lower panel) of electrical appliances through the U.S. economy. を引用すると上の通りです。上のパネルが家庭における家電製品の普及率を、そして、下のパネルがそういった家電製品の購入に必要な労働時間を、それぞれプロットしています。先ほどの家事労働時間のグラフで明らかなように、1990年でほぼ安定していますので、普及率の方も1990年までをプロットしてあります。基本的な因果関係は下のパネルから上のパネルに向かっています。すなわち、耐久消費財であるこれら家電製品が大量生産されるに従って価格を低下させるとともに、賃金上昇も加わって、大いに家庭に普及し家事労働時間を短縮したわけです。

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最後に、リポート p.14 から Figure 13. Evolution of Female Labor-Force Participation rates in a set of countries. を引用すると上の通りです。NHKの朝ドラ「虎に翼」に見られる日本に限らず、先進各国では家事労働はご婦人によって大きな部分が担われていたわけで、その家事労働時間が短縮されると女性の労働参加率が上昇します。誠に残念ながら、日本はこのグラフに入っていませんが、おそらくは同じ傾向であったと推察されます。各国さまざまな経済社会の条件により結果は異なっていて、北米では今世紀に入って女性の労働参加率はむしろ反転・低下を始めているようですが、欧州に目を転じると、英国とドイツではまだ上昇を続けていて、フランスとスペインでは横ばいの安定した段階に達したのかもしれません。ただし、グラフの引用は省略していますが、同時にこのリポートでは Figure 14. Evolution of Marriage rates in a set of countries. を報告していて、婚姻率は低下しています。婚姻率の低下も女性の労働参加率上昇のひとつの要因になっている可能性は否定できません。

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2024年4月15日 (月)

大きく伸びた2月の機械受注統計をどう見るか?

本日、内閣府から2月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+7.7%増の8,868億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

2月の機械受注、前月比7.7%増  製造・非製造ともに伸び
内閣府が15日発表した2月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比7.7%増の8868億円だった。増加は2カ月ぶり。製造業、非製造業ともに発注が大きく伸びた。基調判断は「足元は弱含んでいる」で据え置いた。
製造業は9.4%増の3963億円と2カ月ぶりのプラスだった。17業種中14業種と幅広く前月比で増加した。「電気機械」や「情報通信機械」が特にプラスに寄与した。
ダイハツ工業は2023年12月に品質不正で生産や出荷を全面的に停止した。統計では「自動車・同付属品」からの受注は23年12月、24年1月とマイナスだったものの、2月は9.7%増と3カ月ぶりに増えた。
内閣府の担当者は自動車不正を巡る同統計への影響を聞かれ「生産や出荷ほどダイレクトに効いたかは分からない」と述べるにとどめた。製造業は1月に13.2%と大幅に減少しており、反動による増加との指摘もある。
非製造業は9.1%増の5059億円だった。2カ月連続でプラスを確保した。「通信業」や「建設業」、「農林漁業」からの発注が全体を押し上げた。
内閣府は全体の基調判断を「足元は弱含んでいる」とした。同判断は2カ月連続となる。「単月の動きが大きい指標だ」と指摘したうえで「基調が続くかは来月も見たい」と説明した。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+0.7%増でした。予想レンジの上限は+2.5%増でしたので、実績の+7.7%増はそれなりのサプライズであったと私は受け止めています。しかしながら、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足元は弱含んでいる」に据え置いています。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドで見れば、まだ、トレンドが反転したかどうかは判断ができない、というのは判る気がします。来月以降の統計を見てから基調判断を変更するかどうかを考える、という引用した記事の最後のパラもそういう趣旨だと思います。いずれにせよ、幅広い業種で増加が見られており、製造業と非製造業に分けて季節調整済みの系列の前月比を見ると、製造業が+9.4%、船舶と電力を除く非製造業も+9.1%増と、いずれも高い伸びを示しています。ただし、製造業については1月統計で前月比▲13.2%を記録していますので、このマイナスを穴埋めするには至っていません。また、受注水準としてはまだ何とか月次で8,000億円を上回っており決して低くはありませんし、足元の2024年1~3月期の受注見通しは+4.9%増の2兆6294億円と見込まれています。業種別に少し詳しく見ると、製造業ではパルプ・紙・紙加工品が前月比+129.0%を、非製造業では不動産業が+165.9%、鉱業・採石業・砂利採取業が+121.8%をそれぞれ示しています。
昨年来の謎であったのは、日銀短観などで示される設備投資計画のソフトデータとGDPやGDPの基礎となる法人企業統計、また、それらの先行指標である本日公表の機械受注などのハードデータとの乖離です。3月に公表された法人企業統計やそれを反映した2023年10~12月期のGDP統計2次QEなどを見ていると、この乖離が解消されつつある可能性を感じ始めていて、本日公表の2月の機械受注を見ても同様です。ですので、本格的にこの乖離が縮小する方向にあるのであれば、投資不足の現状にある我が国経済にはデフレ解消・脱却とともに望ましい方向であるといえます。

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2024年4月12日 (金)

国際通貨基金「IMF世界経済見通し」分析編を読む

今週、3日間に渡って五月雨式に国際通貨基金(IMF)から「IMF世界経済見通し」分析編 IMF World Economic Outlook Analytical Chapters が公表されています。第1章の見通し編は4月16日の公表予定です。すでに公表されている分析編は以下の第2-4章です。前年までは分析編は第2章と第3章の2章だけ、というパターンが多かった気もしますが、以下の通り、今回は分析編が金利上昇の影響、中期的な成長の鈍化、新興国市場からの波及効果、の3点に焦点が当てられています。

分析編だけで3章、各章20ページを超えますので、誠に簡略ながら、以下の IMF Staff Blog も参照しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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広く知られている通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックによる供給サイドの問題、あるいは、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、エネルギー価格や穀物などの食料価格などの値上がりにより世界経済は大きな物価上昇を生じ、先進国をはじめとして世界の中央銀行は金融引締め=利上げを行っています。長らくゼロ金利が続いた日本ですら、先月3月に日銀が異次元金融緩和を終了し、金融引締めを開始したことは広く報じられている通りです。ただ、これまた、広く認識されているように、米国では従来の金融引締めの高価が発揮されておらず、インフレの収束が遅れている一方で、景気悪化にも至らず、ソフトランディングのパスに乗っている可能性が取り沙汰されています。他方で、未公表ながら、第1章の見通し編で示されるように、金融引締めによる総需要抑制効果が大きく現れて成長率を鈍化させている国もあるようです。こういった金融政策の効果の違いがどういった要因により生じているかを第2章では分析しています。そして、結論としては、住宅投資を通じた景気効果にその差を求めています。すなわち、住宅ローン借入れに固定金利が占める比率が高いと金融政策の効果、金利引上げの効果が小さくなる、逆は逆、ということになります。まあ、誰が考えてもそうなのですが、それをIMFのスタッフが正面から取り組んだところに意義があるのかもしれません。ということで、上に引用したのは p.56 Figure 2.13. Changes in the Share of Fixed-Rate Mortgages です。もちろん、これだけではなく、家計の債務や供給制約も考慮されています。でもって、住宅ローンについて日本を例に考えると、もともと固定金利住宅ローン Fixed-Rate Mortgages の割合が低く、その上、2011:Q1から2022:Q4にかけて固定金利ローンの割合がさらに低下しているのが見て取れます。ですから、日本は政策金利に連動して変動する住宅論の比率が高くて金融引締めの効果が現れやすい、ということになるのですが、ホントですかね、と思うエコノミストは私だけでしょうか。それとも、日本はいつでも世界の例外なんでしょうか。

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続いて、第2章では中期的な成長の鈍化に直面して、生産性向上の重要性を分析しています。中期的に、IMFでは成長率が低下する予想を持っていて、COVID-19パンデミック前の2000~2019年の20年間の平均成長率に対して、2030年までに▲1%ポイントの成長率の低下の可能性があると試算しています。そして、その対策として、いくつかの政策とその政策効果、ほかに現在の経済の流れなどの試算結果を上げています。それが上のグラフであり、p.76 Figure 3.17. Impact of Various Factors on Global Medium-Term Growth を引用しています。政策効果については4つの政策をピンポイントで試算し、経済の今後の方向については3つの潮流をレンジで試算しています。見れば明らかなのですが、政策効果については、労働参加率上昇政策 Policies boosting LFPR、移民促進による先進国での労働供給拡大 Migration boost to AEs' labor supply、人材配置改善政策 Policies improving allocation of talent の3つについては、まあ、なんと申しましょうかで、効果はボチボチといえますが、資源配分是正のための構造改革 Structural reforms reducing misallocation については+1%ポイントを超える成長促進効果を見込んでいます。また、今後の経済の方向性として、公的債務の過重 Public debt overhang と世界経済の分断化 Fragmentation は成長率抑制に作用する一方で、AIの活用 AI adoption はかなり大きな効果が予想されています。AIの活用はもういうまでもありませんから、資源配分是正のための構造改革については、IMFでは商品・サービスの市場や労働市場の柔軟性を向上させ、貿易や投資の開放性を維持し、金融の深化を促す政策を想定しているようです。

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世界経済の主役の変化については、今までも何度も主張されてきた通り、第2次世界大戦直後の米国一強経済と違って、21世紀にはG20レベルの新興国の世界経済への影響力が強まるのは当然です。サイズの点ではいうに及ばず、サプライチェーンに占める新興国の重要性も、この章で波及効果の計測などが分析されています。上のグラフは p.96 Figure 4.9. Firm-Level Spillovers を引用しています。このグラフは、新興国の成長が加速した場合のショックが、サプライチェーンの原材料や部品などの供給サイドからのショックと製品などの供給先として考える需要サイドのショックに分けて試算しています。インドネシアとトルコを例外として、G20新興国のうち多くの国で成長が加速すれば、その国から原材料や部品、あるいは、製品の供給を受けている場合、当然、新興国内での成長加速により輸入できる数量が減少したり、あるいは、輸入価格が上昇したりして、サプライチェーン前方の輸入元からの負の供給ショックを受けます。他方で、輸出先としてサプライチェーンの後方リンケージを考えると、輸出が増加してプラスの需要ショックが生じます。これも当然といえば当然の結果であり、企業レベルでは新興国を輸出先としてサプライチェーンに組み入れるべき時代がやってきた、ということになります。

最後に繰り返しになりますが、「IMF世界経済見通し」の見通し編本編は4月16日の公表予定です。

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2024年4月11日 (木)

大学教員が労働組合を結成すると賃金は上がるか?

全米経済研究所(NBER)から、大学の教員が労働組合を結成すると賃金が上がるのか、雇用はどういった影響を受けるのか、という研究成果が明らかにされています。カナダの大学のデータを基にした分析です。まず、引用情報は以下の通りです。

次に、NBERのサイトから論文のAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
We study the effects of the unionization of faculty at Canadian universities from 1970-2022 using an event-study design. Using administrative data which covers the full universe of faculty salaries, we find strong evidence that unionization leads to both average salary gains and compression of the distribution of salaries. Our estimates indicate that salaries increase on average by 2 to over 5 percent over the first 6 years post unionization. These effects are driven largely by gains in the bottom half of the wage distribution with little evidence of any impact at the top end. Our evidence indicates that the wage effects are primarily concentrated in the first half of our sample period. We do not find any evidence of an impact on employment.

イベント・スタディという手法を使って、1970年から2022年までのカナダの大学のデータを用いた研究結果です。引用したAbstractにあるように、労働組合結成後の最初の6年間で給与は平均して2~5%超の増加 "salaries increase on average by 2 to over 5 percent over the first 6 years post unionization" を見せた一方で、雇用への影響を示す証拠は見つかっていない "We do not find any evidence of an impact on employment." と結論しています。カナダの大学という限定されたサンプルながら、労働組合を結成するとお給料が上昇し、しかも、お給料の安い下半分の賃金増加がもたらされて "largely by gains in the bottom half of the wage distribution" いて、雇用の減少は生じない、というわけです。下のグラフは、論文 p.24 Figure 1: Effect of Unionization on Salaries と p.27 Figure 4: Employment Effects of Unionization から引用していて、2つのグラフを私の方で結合しています。お給料 Salaries は統計的に有意に上振れしている一方で、雇用 Number of Workers はゼロと統計的に差はありません。

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もう10年以上も前に注目された Jordi Galí の "The Return of the Wage Phillips Curve," Journal of the European Economic Association 9(3) にも賃金の決定で労働組織率が考慮されていたと記憶していますが、労働組合は雇用を減ずることなく賃金アップに有効という結論は変わりない、と考えています。逆にいえば、生産性もさることながら、労働組合組織率の低下により賃金が停滞していた、という可能性も考えることが出来ます。

最後に、誠についでながら、イベンス・スタディの入門的な解説論文が昨年2023年に出ていますので、より深い学習や研究のご参考まで。

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2024年4月10日 (水)

再び上昇幅が拡大した3月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で保合いとなり、上昇率は12か月連続で鈍化しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価、3月0.8%上昇 2カ月連続で伸び率拡大
日銀が10日発表した3月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は120.7と、前年同月比で0.8%上昇した。2月(0.7%上昇)から伸び率が0.1ポイント拡大し、2カ月連続で伸び率が拡大した。政府による電気・ガスの補助制度の一巡が寄与したほか、飲食料品などの幅広い分野で値上げも続いているとみられる。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。企業物価は前年同月比で37カ月連続の上昇で、3月の上昇率は民間予測の中央値(0.8%上昇)と同じだった。
輸入物価は円ベースで前年同月比1.4%上昇した。2月の0.2%上昇を上回り、23年3月(9.4%上昇)以来の水準となった。契約通貨ベースではマイナス6.9%だったが、24年3月の円の対ドル相場が1ドル=149円台と、23年3月(1ドル=133円台)より円安にふれたことが影響した。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+0.8%と見込まれていましたので、ジャストミートしました。これも引用した記事にある通り、国内物価指数は2か月連続で上昇率を高めています。すなわち、1月の前年同月比上昇率はその直前の12月と同じ+0.3%だったのですが、2月+0.7%、3月+0.8%となっています。上昇幅が拡大した背景には、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が一巡した影響もあると考えるべきです。輸入物価がジワリと再上昇を始めている背景として、引用した記事にもある円安は決して無視できないのですが、原油価格の上昇も考慮すべきです。すなわち、企業物価指数のうちの輸入物価の原油価格の円建ての前年同月比を見ると、2023年12月に+3.0%と再上昇に転じた後、1月+10.4%、2月+7.9%、3月+7.8%となっています。我が国では、金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしている可能性があります。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲19.1%と前月2月の▲21.5%の低下から下落幅を縮小させています。食料品の原料として重要な農林水産物+▲0.4%は2月の▲0.8%から同じく上昇幅が縮小していますし、飲食料品も+3.7%と高い伸びが続いています。ほかに、窯業・土石製品+9.8%、非鉄金属+5.7%、石油・石炭製品+5.3%、などといった費目で+5%以上の上昇率を示しています。そして、価格上昇がかなり幅広い費目に及んでおり、生産用機器と電気機器がともに+4.4%、繊維製品+4.1%、パルプ・紙・同製品+3.8%、はん用機器と事務用機器がともに+3.7%、などとなっています。ある意味で、企業間で順調な価格転嫁が進んでいると見ることも出来ます。その意味では、悲観する必要はまったくありません。

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2024年4月 9日 (火)

6か月連続で改善を示す3月の消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の消費者態度指数が公表されています。3月統計では、前月から+0.5ポイント上昇し39.5を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数3月は39.5、19年5月以来の高水準 物価上昇予想も増
内閣府が9日公表した消費動向調査によると、3月の消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は前月比0.5ポイント改善の39.5だった。指数は6カ月連続で上昇し、2019年5月以来の高水準となった。物価見通しでは、1年後は上昇するとの回答は合わせて92.4%で、3カ月連続で前月から増加した。
消費者態度指数を構成する4つの指標のうち「暮らし向き」は横ばいだったが、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」はそれぞれ上昇した。
内閣府は、消費者態度指数の基調判断を「改善している」で据え置いた。
1年後の物価の上昇率については、「5%以上」との回答の割合が2月の37.7%から40.8%に、「2%以上5%未満」が37.5%から38.3%にそれぞれ拡大した。一方、「2%未満」との回答は、16.3%から13.3%に減少した。

的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数は今後半年間の見通しについて質問するものであり、4項目の消費者意識指標から成っています。3月統計では、引用した記事にある通り、前月から横ばいの37.5だった「暮らし向き」を別にすれば、残りの3項目すべての指標において前月差で見て上昇しており、「耐久消費財の買い時判断」が+0.8ポイント上昇し34.0、「収入の増え方」が+0.7ポイント上昇し41.5、「雇用環境」も+0.7ポイント上昇し45.0となっています。消費者態度指数は、昨年2023年8~9月統計では2か月連続で低下していましたが、2023年10月統計から6か月連続の上昇を記録しています。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「改善している」と、先月から据え置いています。
引用した記事の最後のパラにあるように、高めの物価上昇率を見込む割合が高まっています。すなわち、今年2024年に入ってからの統計を見ると、+2%以上+5%未満の上昇を見込む割合は、1月36.1%、2月37.5%、3月38.3%と、じわじわと増加していますし、+5%以上の物価上昇を予想する割合は1月38.4%、2月37.7%に次いで3月は40.8%に達しました。日本経済研究センターのESPフォーキャストに示されたエコノミストの見方では、先行き、物価上昇率は縮小していくと見込まれているのですが、一般消費者のマインドは必ずしもそうなっていません。それにもかかわらず、6か月連続で消費者態度指数が改善している、というのもやや不思議な気がします。ただ、エコノミストの予想通りに物価上昇率が縮小していけば、消費者マインドもさらに改善に向かうことが期待されます。

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2024年4月 8日 (月)

小幅なマインド低下を示す3月の景気ウォッチャーと黒字が続く2月の経常収支

本日、内閣府から3月の景気ウォッチャーが、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.5ポイント低下の49.8となった一方で、先行き判断DIは▲1.8ポイント低下の51.2を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+2兆6442億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトなどから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、3月は1.5ポイント低下 先行きは金利上昇への懸念も
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断DIは前月から1.5ポイント低下し49.8となった。景気判断の表現は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。また、能登半島地震の影響もみられる」と据え置いた。日銀が大規模緩和の修正を行ってから初めての調査となり、先行きについては金利の上昇による住宅や自動車の販売への影響を不安視する声が聞かれた。
指数を構成する3項目では、家計動向関連DIが前月から1.5ポイント低下の49.4、企業動向関連DIが2.0ポイント低下の50.0となった一方、雇用関連DIは0.3ポイント上昇して52.5となった。観光やインバウンドなど人出の増加、新生活の需要などがプラス要因として意識される一方、物価高による買い控えや天候不順の影響が下押し要因になったという。
地域別では全国12地域中5地域でDIは上昇、7地域で低下。能登半島地震が発生した北陸地域は1.6ポイント上昇した。
経常黒字2月2.6兆円 車輸出伸び、訪日客押し上げ
財務省が8日発表した2月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆6442億円の黒字となった。自動車輸出が伸びて貿易赤字が縮んだほか、訪日客の増加が旅行収支の黒字を押し上げた。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、旅行収支を含むサービス収支、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支などで構成する。
黒字は13カ月連続。黒字幅は前年同月から20.2%拡大した。
貿易収支は2809億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から52.1%縮んだ。輸入額が1.4%増の8兆3780億円、輸出額は5.5%増えて8兆971億円となった。
半導体の供給制約が緩和し、自動車や関連部品の輸出が増えた。輸出額は自動車が19.8%増、自動車の部品が22.6%増と伸びたほか、プラスチックが14%増えた。地域別では北米への輸出が19.3%、アジアが2.3%伸びた。
輸入額は商品別に見ると、衣類・同付属品が27.6%増、電算機類が27.8%増だった。資源価格の低下で石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入額は減った。
サービス収支は556億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から75.2%縮小した。訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支の黒字が2倍超の4171億円となり、サービス収支の赤字を圧縮した。
旅行収支は2月として過去最大の黒字幅だった。2024年は春節(旧正月)が2月にあり、日本を訪れる観光客が増えた。日本政府観光局(JNTO)によると、訪日客数は同月として過去最多の278万8000人となった。
第1次所得収支は3兆3069億円の黒字だった。黒字幅は4.2%縮んだ。海外子会社からの配当金など直接投資収益が減った。海外の金利上昇で債券利子の受け取りは増えた。
季節調整値で見た経常収支は1兆3686億円の黒字で前月から50.2%減少した。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、昨年2023年年末11~12月から50を超える水準が続いて、今年2024年に入っても1月統計52.5、2月統計53.0と50を超えていましたが、3月統計で▲1.5ポイント低下して49.8を記録しています。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は決して低くない点には注意が必要です。3月統計では家計動向関連・企業動向関連ともに低下しています。企業動向関連では、非製造業が前月から▲1.2ポイントの低下にとどまった一方で、製造業は▲3.1ポイントの低下と低下幅が大きくなっています。これには、本格化し始めたインバウンド消費がいくぶんなりとも寄与しているのではないか、と考えられます。したがって、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」で据え置いています。また、内閣府のリポート「景気の現状に対する判断理由等」の中には、日銀による金利引上げに言及するものがいくつかありました。自動車販売や住宅について、金利先高観から足元での販売が伸びている、という見方がある一方で、引用した記事にもあるように、ハッキリと懸念する見方も少なくありません。前者の見方の金利先高観があるので足元で販売が増加しているというのは、決してサステイナブルではないのですが、そこは、マインドです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字は+兆円を超え、レンジの下限でも+2兆円超えでしたので、実績の+2兆6442億円はレンジ内ながらやや下振れした印象です。他方で、今年2024年は中華圏の春節が2月でしたので訪日観光客も多く、引用した記事にもあるように、278万8000人に上って旅行収支は2月として過去最大の黒字幅を記録しています。いずれにせよ、2022年2月に勃発したウクライナ戦争後の資源価格の上昇により一時的に経常赤字を記録したことがありましたが、季節調整済みの系列で見れば、2022年年末の11-12月ころから経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っています。もちろん、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

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