2020年2月19日 (水)

中華圏の春節で赤字が膨らんだ貿易統計と相変わらず低空飛行の続く機械受注!

本日、財務省から1月の貿易統計が、また、内閣府から昨年2019年12月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計では季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.6%減の5兆4305億円、輸入額も▲3.6%減の6兆7431億円、差引き貿易収支は▲1兆3126億円の赤字を計上しており、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲12.5%減の8248億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、1兆3126億円の赤字 3カ月連続赤字
財務省が19日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆3126億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆6819億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比2.6%減の5兆4305億円、輸入額は3.6%減の6兆7431億円だった。中国向け輸出額は6.4%減、輸入額は5.7%減だった。
19年12月の機械受注、前月比12.5%減 市場予想は8.8%減
内閣府が19日発表した2019年12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比12.5%減の8248億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は8.8%減だった。
うち製造業は4.3%増、非製造業は21.3%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は3.5%減だった。
内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
19年10▲12月期の四半期ベースでは前期比2.1%減だった。1▲3月期は前期比5.2%減の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

やや長くなりましたが、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で▲1兆7046億円の貿易赤字が予想されていましたので、▲1兆円超の貿易赤字とはいえ、まずまず、大きなサプライズをもたらしたわけではありません。ただ、上の輸出入のグラフ、特に下のパネルの季節調整済の系列でトレンドを見ると、明らかに輸出入ともに減少のトレンドにあります。特に、1月統計では中華圏の春節による工場停止などの供給サイドへの影響とともに、極めてわずかながら、新型コロナウィルスの影響が需要サイドに出始めていると考えるべきですし、2月統計にはさらに大きなインパクトがもたらされるのは当然です。中華圏の春節について考えると、各企業は当初は1月24~30日を春節期間として見越して1月中旬までに輸出を終えた影響が大きいと私は考えています。というのも、新型コロナウィルスが明らかになったのは1月末日の31日であり、より大きく本格的な影響が出るのは2月ということになります。さらに、当初は1月30日で終わるハズだった春節が、公式に2月2日まで休暇が延長され、さらに、日系企業を始めとする多くの大手企業は2月9日まで工場やオフィスを閉鎖したところも少なくないわけで、再開後も本格稼働に至っていない企業もあるのは当然です。中国への依存が大きい我が国の貿易は、輸出入ともに停滞を見せることが十分予想されます。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、世界経済とともに中国の景気も最悪期を脱し、これから上向きになろうかという矢先の新型コロナウィルスですので、繰り返しになりますが、ダイレクトに中国向けだけでなく、中国向け輸出比率の高いアジア諸国向けの輸出も、我が国では当然に欧米諸国などよりも割合が高く、輸出を通じた日本経済へのダメージは少なくないものと考えます。中国向けの直接の輸出だけでなく、加えて、サプライチェーンの中で中国の占めるポジションからして、部品供給の制約から貿易への影響を生じる可能性も無視できません。欧米向け輸出についても、OECD先行指数を見る限り最悪期を脱したと考えられますが、中国経済の変調に連動する部分もあり得ることから、今後の動向は不透明です。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。これも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲8.3%減でしたから、実績の▲12.5%減はレンジ加減に近く、やや大きなマイナスという印象です。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いています。12月統計でも明瞭に特徴が現れているように、製造業は新型コロナウィルスの影響を別にすれば、というか、まだ12月統計には影響が現れていませんので、下げ止まりの兆しあるものの、非製造業では緩やかな減少が続いています。また、コア機械受注を四半期でならしてみて、2019年10~12月期は前期比▲2.1%減となり2四半期連続の減少を記録しましたが、2020年1~3月期の見通しは▲5.2%減と、いっそうの減少が見込まれています。ただ、この1~3月期の見通しは、12月末時点の情報に基づいており、内閣府でも新型コロナウイルス感染症の影響はほぼ織り込まれていない、と見ているようですから、さらに下振れする可能性も十分あります。貿易と同じことで、産業や企業ごとの中国のサプライチェーンに占めるポジション次第では、よりダメージが大きくなることも覚悟せねばならないかもしれません。

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2020年2月18日 (火)

ダイヤモンド・オンライン「都道府県『生活満足度』ランキング」やいかに?

3月の引越し先について、生まれ育った京都府南部を中心に考えているところですが、昨日2月17日付けのダイヤモンド・オンラインの記事で「都道府県『生活満足度』ランキング」が報告されていました。ダイヤモンド・オンラインのサイトから引用した以下のテーブルの通りです。

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昨年11月と12月にも、各種の都道府県ランキングが同じダイヤモンド・オンラインで明らかにされており、2019年11月19日に「都道府県『幸福度』ランキング」が、2019年12月25日に「住み続けたい都道府県ランキング」が、それぞれ掲載されています。前者の「幸福度」ランキングでは京都府は11位ながら、後者の住み続けたいランキングでは京都府は6位につけています。ほかに、余り経済とは関係ないながら、「地元民が自慢できる」とか、「魅力度」とか、「食事がおいしい」といった都道府県ランキングもダイヤモンド・オンラインで掲載されており、京都府はいずれもトップテンに入っているようです。

人生の終末期、とまでいかないとしても、定年退職後の第2の人生を送るに当たって、こういったランキングを見ていると、関西、特に京都に回帰するのがとても楽しみです。

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2020年2月17日 (月)

消費税率の引上げで大きなマイナス成長を記録した昨年2019年10-12月期のGDP統計1次QE!!!

本日、内閣府から昨年2019年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.6%、年率では▲6.3%と消費税率引上げ直後のため大きなマイナス成長でした。5四半期振りのマイナス成長です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期GDP、年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス
内閣府が17日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.6%減、年率換算では6.3%減だった。5四半期ぶりにマイナス成長に転じた。19年7~9月期は年率換算で0.5%増だった。消費増税前の駆け込み需要の反動減が響いたほか、大型台風や暖冬による消費の伸び悩みも重荷となり、年率でのマイナス幅は14年4~6月期(7.4%減)以来の大きさだった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比1.0%減で、年率では3.9%減だった。 生活実感に近い名目GDPは前期比1.2%減、年率では4.9%減だった。名目でも5四半期ぶりのマイナス成長となった。
実質GDPの内訳は、内需が2.1%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.5%分のプラスだった。
項目別にみると、個人消費が実質2.9%減と5四半期ぶりのマイナスとなった。10月からの消費増税を背景に購買意欲が鈍り、個人消費を押し下げた。
設備投資は3.7%減と3四半期ぶりのマイナスだった。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
住宅投資は2.7%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。公共投資は1.1%のプラスだった。
輸出は0.1%減だった。米中貿易摩擦のあおりを受けた世界経済の減速などを背景に2四半期連続でマイナスとなった。輸入は2.6%減と3四半期ぶりのマイナスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス1.3%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.7%のプラスだった。
同時に発表した19年通年のGDPは実質で前年比0.7%増、生活実感に近い名目で1.3%増だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/10-122019/1-32019/4-62019/7-92019/10-12
国内総生産GDP+0.5+0.6+0.5+0.1▲1.6
民間消費+0.4+0.0+0.6+0.5▲2.9
民間住宅+1.7+1.5▲0.2+1.2▲2.7
民間設備+4.3▲0.5+0.8+0.5▲3.7
民間在庫 *(▲0.0)(+0.2)(▲0.1)(▲0.2)(+0.1)
公的需要+0.3+0.1+1.7+0.8+0.4
内需寄与度 *(+1.0)(+0.2)(+0.8)(+0.4)(▲2.1)
外需寄与度 *(▲0.4)(+0.5)(▲0.3)(▲0.3)(+0.5)
輸出+1.6▲1.9+0.4▲0.7▲0.1
輸入+4.3▲4.3+2.0+0.7▲2.6
国内総所得 (GDI)+0.3+1.0+0.4+0.3▲1.5
国民総所得 (GNI)+0.5+0.8+0.5+0.2▲1.6
名目GDP+0.1+1.2+0.5+0.5▲1.2
雇用者報酬 (実質)+0.4+0.5+0.8▲0.4▲0.3
GDPデフレータ▲0.6+0.1+0.4+0.6+1.3
国内需要デフレータ+0.2+0.3+0.4+0.2+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された10チルダ12月期の最新データでは、前期比成長率が大きなマイナスを示し、内需の赤の消費と水色の設備投資などがマイナスの寄与を示している一方で、黒の外需(純輸出)がプラスの寄与となっているのが見て取れます。

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先週金曜日に取り上げた1次QE予想では、マイナス成長は確実なるも、季節調整済み系列で見た前期比年率で▲3~4%くらいのマイナス幅が予想されていましたが、実績はこれらの市場の事前コンセンサスを下回り、年率▲6%を超える大きなマイナス成長でした。もちろん、主として10月からの消費税率引上げの影響ですから、公的需要を別にすればほぼほぼ内需項目は大幅マイナスとなっています。インパクトをやや大きく見せるために、季節調整済みの系列の前期比年率で示せば、消費が▲11.1%、設備投資が▲14.1%、住宅投資が▲10.4%と主要な民間内需項目が軒並み2ケタ減を記録しています。逆に、外需、というか純輸出はプラスの寄与となっているんですが、これも輸出入とも減少しつつ、内需の減少に起因する輸入減の方が大きいための外需寄与プラスですので、ややトリッキーな要因が大きいと私は感じています。ただ、消費税率引上げだけではなく、全国紙夕刊の報道ではキチンと伝えていたようで、私は10月上旬の例の新幹線まで止めた台風19号の影響が大きかった、と考えています。根拠は2つあり、第1に、直前7~9月期の駆込み需要がそれほどでもなかったのに比較して、10~12月期の落ち込みが大き過ぎます。第2に、消費税にはニュートラルと見なせる設備投資まで大きな減少を見せている点です。おそらく、素直に駆込み需要の反動減が現れたのは住宅投資だけではないか、という気すらします。ということで、内外需枕を並べて全部マイナス寄与、というわけではないものの、内需のマイナスが大きい故の外需寄与度プラスです。ですから、この10~12月期のGDP統計はもはや「過去の数字」という受け止めのエコノミストも少なくないようで、むしろ、足元の1~3月期から先行きの見通しが重要となります。特に、足元1~3月期もマイナス成長ということになれば、テクニカルな景気後退シグナルと受け止める報道も出る可能性がありますし、あわせて、1~3月期も低空飛行であれば消費税率引上げの影響が大きかった、ということが事後的に確認される可能性があります。そうでなければ、台風19号の影響も無視できない、ということになりそうですし、加えて、2月が29日まである「うるう年効果」も注目されます。しかし、それにしても、何とも大きな不確定要素が新型コロナウィルスです。一般的に便利な用語の「想定外」とともに、エコノミストには「経済外要因」という業界特有のさらに便利な言い回しもあったりするんですが、少なくとも私には先行き不透明としかいいようがありません。いずれにせよ、こういう時こそ、政府支出が短期的に需要を下支えする必要があります。

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続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。雇用者報酬の伸び悩みが始まっているように見えます。10~12月期は消費税率引上げによりデフレータも上昇して実質所得はさらに停滞を見せたと考えるべきです。加えて、インバウンド消費も、さすがに、まだ新型コロナウィルスの影響は現れていないタイミングながら、韓国との関係悪化などを背景に、伸びが大きく減速しています。消費者マインドは少しずつ改善の兆しを見せていますが、まだ、賃金が増えて消費者マインドが上向くタイミングに達したとは考えられません。繰り返しになりますが、新型コロナウィルスの感染拡大とそれに伴う経済への影響次第ですが、目先の景気後退は避けられる可能性は十分あるものの、政府の対策が渋ければトンネルが長くなりそうな気もします。

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2020年2月14日 (金)

昨年2019年10-12月期の1次QE予想はマイナス成長確定か?

1月末の鉱工業生産指数(IIP)の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日2月17日に昨年2019年10~12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。消費税率の引上げ直後ですので、当然のように10~12月期はマイナス成長ながら、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、新型コロナウィルスに注目が集まっています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲1.0%
(▲3.9%)
2020年1~3月期を展望すると、消費増税や台風などによる一時的影響が剥落するにつれて、消費・生産活動は持ち直す見込み。堅調な所得環境、世界的なIT需要の回復など、内外景気のファンダメンタルズは上向き方向。もっとも、新型肺炎に伴う訪日中国人の大幅減少により、成長率は前期比ゼロ近くまで下振れる可能性。
大和総研▲0.9%
(▲3.5%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
個人消費は、消費増税前の駆け込み需要の反動減が緩和することで、2020年1-3月期は持ち直すとみられる。消費増税に伴う物価上昇による家計の購買力低下は消費の下押し要因となるものの、当面は各種経済対策の効果もあり底堅く推移すると考えられる。ただし、多くの経済対策は時限付きのものであるため、春以降は段階的に対策効果が剥落し、消費がいくらか抑制されることで一進一退での推移になるとみている。
住宅投資は、駆け込み需要の反動減による緩やかな減少が続いた後、横ばい圏で推移するとみている。消費増税に伴う各種住宅購入支援策が住宅投資を下支えする一方で、住宅価格が高水準にあることは住宅投資の下押し要因となるだろう。
設備投資は緩やかな増加を見込んでいる。人手不足に対応した合理化・省人化投資や、研究開発投資は拡大基調が続くとみている。また、2019年12月に策定された経済対策も ICT投資等の追い風となるだろう。ただし、世界経済の不透明性の増大が企業の設備投資を慎重化させる可能性にも細心の注意が必要だ。
公共投資については、前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018年12月閣議決定)や「安心と成長の未来を拓く総合経済対策経済対策」(2019年12月閣議決定)が押し上げ要因となる。ただし、公共投資は既に高水準にあり、建設業の人手不足や資材価格の高まりを踏まえると執行ペースを上げにくい状況にあることから、先行きは横ばい圏での推移が続くとみている。
輸出は、地域ごとに濃淡はあるものの、当面は足踏みが続くとみている。アジア向け輸出は半導体需要の回復を背景に緩やかな増加基調を維持する一方、米国、EU向けは足下の景気の減速を受け、横ばい圏での推移が続くだろう。足踏みの後は、世界経済の回復に伴い緩やかに持ち直すとみている。
なお、新型肺炎の影響には警戒が必要である。仮に中国人訪日客が100万人(10%)減少すると、波及効果を含めて、日本のGDPは2,500億円程度押し下げられる。このほか、中国の消費や生産活動が落ち込むことで日本の対中輸出が減少したり、中国に進出している日本企業のサプライチェーンが混乱したりすることも想定される。さらに、他国の経済活動が停滞することで中国向け以外の輸出が減少するといった間接的な影響にも注意が必要だ。
みずほ総研▲0.9%
(▲3.5%)
2020年の日本経済は、年前半にかけては弱い伸びに留まり、回復は年後半に入ってからになる見通しだ。年前半は世界経済が回復に至らないなか、自動車や資本財などを中心に輸出は伸び悩むとみている。輸出の回復が見込めない中では製造業の業況も持ち直すには至らず、雇用・所得は伸び悩み、個人消費の増税の反動減からの回復も弱いだろう。設備投資は、省力化ニーズなどからソフトウェア投資は堅調に推移するとみているが、足元の受注状況を見る限り、機械投資は横ばいとなるほか建設投資は弱含み、総じてみれば 横ばい圏になるだろう。
さらに足元急拡大しているコロナウィルスによる中国経済減速が、日本にも影響を及ぼす可能性が高まっている。中国からの訪日来客数低下や日系現地メーカーの生産調整にともなう企業収益の下押しなどの直接的な影響に留まらず、中国国内の消費低迷による消費財輸出の低下、現地での生産調整による中国向け部材輸出の下押しなど間接的な影響もでてくると考えられる。影響のインパクトや期間の不透明感が高いが、前回SARS(2003年)の経験を踏まえれば、正常化するには数か月程度かかる可能性が高い。日本経済の回復は、中国経済が正常化し、世界経済が持ち直していく年後半に入ってからになりそうだ。
ニッセイ基礎研▲1.1%
(▲4.4%)
2020年1-3月期は駆け込み需要の反動が和らぐことで民間消費、設備投資が持ち直すものの、欧米向けを中心に財の輸出が低迷することに加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中国からの訪日客が急減し、サービスの輸出も大きく落ち込むことが見込まれるため、ほぼゼロ成長にとどまることが予想される。
第一生命経済研▲1.1%
(▲4.5%)
2020年1-3月期はプラス成長になると予想するが、19年10-12月期の大幅な落ち込みからの戻りとしては鈍いものにとどまるだろう。個人消費は10-12月期の大幅減からの反動でプラスを見込むが、増税に伴う家計負担増の影響が残存することに加え、そもそもの所得の伸びが弱いことから、高い伸びにはならないとみられる。1-3月期の個人消費を前年比でみるとマイナス圏の推移となり、抑制された状態が続く見込みだ。加えて、前述の輸入・在庫要因も足を引っ張る可能性があるだろう。IT部門を中心として世界的に生産活動が上向きつつあることを背景として輸出は増加が見込まれるため、内需・外需総崩れという事態は回避されるが、20年1-3月期も景気には停滞感が残るとみられる。
また、リスク要因として懸念されるのは新型肺炎による悪影響。新型肺炎の議論ではインバウンド需要への悪影響が強調されることが多い。そのこと自体は否定しないが、さらに懸念されるのが中国経済への悪影響だ。移動の規制や外出の手控え等によるサービス消費の悪化に加え、工場の操業停止などが広がり生産活動が下押しされる懸念もある。少なくとも短期的には悪影響は避けられないだろう。中国は日本にとって米国と並んで最大の輸出相手先の一つであり、中国経済の悪化は日本の輸出抑制に直結する。また、中国経済のプレゼンスはかつてに比べて格段に高まっていることから、世界経済への下押し圧力も、SARS の時と比較して大きくなるだろう。世界経済の下押しを通じた日本経済への波及のルートも軽視すべきではない。また、仮に日本国内でも感染が広がるようであれば、外出の手控え等によって個人消費への悪影響が広がる可能性があり、内需の下押しが懸念される。消費増税後の個人消費は予想以上に悪化した。1-3月期以降にはその落ち込みからの持ち直しが期待されていたが、その期待が裏切られる可能性があるだろう。
伊藤忠総研▲0.9%
(▲3.7%)
2020年1~3月期は、米中摩擦の一時中断もあってプラス成長へ戻ると見込んでいたが、新型肺炎の影響により中国経済の停滞が不可避の状況となりつつあり、中国向け財・サービス輸出の大幅な落ち込みを主因に、2四半期連続のマイナス成長となる可能性が十分にあろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.9%
(▲3.7%)
2019年10~12月期の実質GDP成長率は、消費増税による個人消費の落ち込みを主因として前期比-0.9%(年率換算-3.7%)と5四半期ぶりにマイナス成長に転じたと予測される。
三菱総研▲0.8%
(▲3.0%)
2019年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲0.8%(年率▲3.0%)と、5四半期ぶりのマイナス成長を予測する。消費税増税後の反動減などから、内需が総じて減少したとみられる。

ということで、各シンクタンクともマイナス成長は確定というカンジで、むしろ、焦点は足元の2020年1~3月期であり、ニッセイ基礎研のリポートにあるように、中国初の新型コロナウィルスの影響によりほぼゼロ成長にとどまる、というのが正直なところで、伊藤忠総研のリポートのように、私も従来は、米中間の貿易摩擦の一時的な中断により、消費税率引上げに伴うマイナス成長からのリバウンドでプラス成長に回帰すると見込んでいましたが、2四半期連続のマイナス成長による敵にカルナ景気後退シグナルという可能性も否定できません。私のようなエコノミストの理解を越えたところにあるような気もします。ただし、内外需そろって総崩れというわけではなく、新型コロナウィルスの影響は不明ながら、世界経済は持ち直しの動きを見せ始めており、我が国内需が不振で輸入が減少することもあって、外需はプラス寄与ではないかと見込まれます。でも、繰り返しになりますが、新型コロナウィルスの影響次第ですので、何とも先行き不透明であることに変わりありません。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年2月13日 (木)

1月の企業物価(PPI)上昇率は原油高が一時的に押し上げ!

本日、日銀から昨年1月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計ののヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.9%の上昇と、10月から消費税率が引き上げられた影響でプラスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比1.7%上昇 原油高が押し上げ
日銀が13日発表した1月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.5と、前年同月比で1.7%上昇した。上昇は3カ月連続で、上昇率は18年11月以来の高さとなった。米中貿易協議の進展や米イラン関係の緊迫を受けた原油価格の高騰が、押し上げに寄与した。もっとも新型肺炎への懸念から原油価格は足元で下落しており、物価上昇への影響も一時的となりそうだ。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で1.4%下落した。下落は9カ月連続。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年同月比0.7%下落し、前月比では0.7%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。19年10月の消費税率引き上げの影響を除くと、指数は前年同月比0.1%の上昇だった。増税の影響を除くベースでの前年同月比の上昇は8カ月ぶり。前月比では0.1%上昇した。
品目別に見ると石油・石炭製品や非鉄金属といった商品市況の影響を受けやすい品目の上昇が目立ち「企業の価格設定スタンスに基調的な変化はみられない」(日銀・調査統計局)という。日銀は「2月以降は新型肺炎への懸念を背景とした原油価格の下落が指数に相応の影響をもたらすとみられ、影響を注視していく」とした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、上のグラフのうちの上のパネルの国内物価の推移に示されているように、昨年2019年10月の消費税率引上げからジワジワと情報幅が拡大しています。ただ、これは、どちらかといえば、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の上昇を反映したものであり、季節調整していない原系列の指数ながら、国内物価のうち石油・石炭製品の前月比上昇率は+2.9%、前年同月比は+9.2%に達しています。この石油価格の上昇は1月早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害し、それを受けて、イランが報復措置を繰り出したことから、中東をめぐる地政学リスクの一時的な上昇に起因しており、足元では逆に中国の新型コロナウィルスの影響で石油価格は下落を強めています。私は石油価格については見識ないので、いつものように、マーケットに関するリポートを引用しておくと、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス」では「20年の予想レンジを1バレル=50~70ドルで維持」と見ており、日本総研のリポート「原油市場展望」では一進一退の展開で50ドル台後半を中心としたボックス圏での推移」を予想しています。相変わらず、日銀の金融政策よりも原油価格の方が我が国物価への影響力が強いようです。

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2020年2月12日 (水)

日本経済研究センターの景気後退確率を見て、やっぱり、リセッションは回避できるか?

普段は、それほど注目していない指標なんですが、日本経済研究センターの景気後退確率が一昨日の2月10日に明らかにされています。日本経済研究センターのサイトから引用した下のグラフの通りです。

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ということで、上のグラフを見れば明らかな通り、昨年2019年12月の景気後退確率は54.8%に低下しています。この景気後退確率計算の基礎となっているのは、内閣府が公表している景気動向指数のCI先行指数であり、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルにより試算していると私は認識しています。このCI先行指数が8か月ぶりに上昇に転じたことが、景気後退確率の低下に寄与しています。CI先行指数の上昇要因としては、新規求人数や日経商品指数、消費者態度などの改善となっています。景気後退確率は2018年5月以来、何と19か月ぶりに景気後退入りの目安となる赤いラインの67%水準を下回ったことになります。単純に、この景気後退確率の低下だけを考えると、我が国は景気後退を回避できそうな気がしますが、昨年2019年12月の時点では、中国の新型コロナウィルスによる景気停滞の影響がまだ現れていません。ですから、我が国がホントに景気後退を脱したのかどうかは、新型コロナウィルスを含めて、今しばらく様子を見る必要がありそうです。

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日本経済研究センターの景気後退確率を見て、やっぱり、リセッションは回避できるか?

普段は、それほど注目していない指標なんですが、日本経済研究センターの景気後退確率が一昨日の2月10日に明らかにされています。日本経済研究センターのサイトから引用した下のグラフの通りです。


 


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ということで、上のグラフを見れば明らかな通り、昨年2019年12月の景気後退確率は54.8%に低下しています。この景気後退確率計算の基礎となっているのは、内閣府が公表している景気動向指数のCI先行指数であり、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルにより試算していると私は認識しています。このCI先行指数が8か月ぶりに上昇に転じたことが、景気後退確率の低下に寄与しています。CI先行指数の上昇要因としては、新規求人数や日経商品指数、消費者態度などの改善となっています。景気後退確率は2018年5月以来、何と19か月ぶりに景気後退入りの目安となる赤いラインの67%水準を下回ったことになります。単純に、この景気後退確率の低下だけを考えると、我が国は景気後退を回避できそうな気がしますが、昨年2019年12月の時点では、中国の新型コロナウィルスによる景気停滞の影響がまだ現れていません。ですから、我が国がホントに景気後退を脱したのかどうかは、新型コロナウィルスを含めて、今しばらく様子を見る必要がありそうです。

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2020年2月11日 (火)

経済学で使う計量ソフトウェアの特徴やいかに?

2月も半ばになって、次の勤務先の私大への転職に向けて、アドミの各種書類作成とシラバスの作成に大忙しにしています。諸手続き関係では、いかんせん、まだ新しい住まいが決まっていないので、現住所は今の東京城北地区の現住所を記入して済ませていますが、写真も必要だったり、住民票も添付しなければならないなど、まあ、役所でよく知っている手続きの煩雑さというのは学校でも変わりないような気もします。事務作業はかなりありますが、公務員というのはこういった事務処理が専門分野みたいなものですから、せっせとこなしています。
授業のシラバスの方も着々と進めているんですが、経済学部の学生諸君への授業やゼミはともかく、なくはないものの、やや経験薄い大学院の授業の方で少し考えるところがあります。すなわち、経済学の場合、大学院教育でかなり特徴的なのは、学部のころよりも計量ソフトウェアによるプログラミングの比重が増す点です。それほど高いレベルを要求されなければ、私はひと通り近いこなせる自信はありますが、自分で使うのと院生諸君に教えるのとでは少し勝手が違うような気がします。ということで、ネット情報ながら、参考にしたのは、順不同で以下の2つのサイトです。

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上の画像はの参考サイトの上の方の経済学で使える統計ソフト6選から引用した 統計ソフトの見取り図 です。フツーのパソコンにプリインストールされている表計算ソフトの Excel は別にして、私は Eviews と Stata を候補に考えています。というのは、やっぱり、R はむずいからです。私自身は Excel のマクロを使って BASIC でプログラムが組めますので、それなりに使いこなせる方だと自負していますし、一応、R は統計局勤務時に研修で受講したりしたんですが、それでも R はむずい気がします。大学院生の手に余る気がしてなりません。私の方で十分に教えられない恐れもあります。従って、候補として残るのは、繰り返しになりますが、Eviews と Stata になります。私は過去の研究で、ストック・ワトソン型の確率的景気指数を求めるのに、状態空間モデルをカルマンフィルターで解くのに Eview を使ったことがあり、また、賃金センサスの個票を用いてミンサー型の賃金関数を推計するのに Stata も使ったこともあります。まあ、ほかに、マルコフ・レジーム・スイッチンゴ・モデルを使うのに RATS を使ったこともありますし、大昔には TSP を愛用していた時代もあります。でも、極めて大雑把な分類として、マクロの時系列データの分析には Eviews が適していて、マイクロな個票やパネル分析には Stata がいいんではないか、と考えています。さらに情報を収集して、また、着任後は院生諸君の希望も徴しつつ、いろいろと考えを巡らせたいと思います。

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2020年2月10日 (月)

新型コロナウィルスで大きく低下した景気ウォッチャーの先行きマインドと黒字基調の続く経常収支!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2019年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+2.2ポイント上昇の41.9を、先行き判断DIは▲3.0ポイント低下の41.8を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+5240億円の黒字を計上しています。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、先行き指数が2カ月連続で悪化 新型肺炎の影響懸念で
内閣府が10日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数(DI、季節調整済み)は41.8と前月から3.7ポイント低下し、2カ月連続で悪化した。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への懸念が、景気の先行きに対する警戒を強めている。
先行きについて分野別にみると、指数を構成する家計動向、企業動向、雇用がいずれも前の月から悪化した。特に観光業を含むサービス関連が大きく落ち込んだ。新型肺炎の影響で「インバウンドの減少に加え、感染を警戒して国内旅行も減る傾向が出始めている」(近畿の観光型旅館)といった声があった。このほか「間接的に、様々な経済的影響が出てくるとみられる」(北海道の家具製造業)、「国内外の生産活動への影響が懸念される」(東海の輸送業)、「観光関連の仕事が減少し、求人数も減少傾向と予測」(沖縄の求人情報誌製作会社)など、影響の広がりを警戒する声が相次いだ。
調査期間は1月25日から月末で、中国政府が同国の海外への団体旅行を禁止したほか、日本政府が新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法で定める「指定感染症」にする方針を閣議決定した時期に重なる。内閣府は先行きについて「新型コロナウイルス感染症の拡大などに対する懸念がみられる」とまとめた。
3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は41.9と前月から2.2ポイント上昇(改善)した。消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動が和らぎ、小売関連が大きく持ち直したことなどが寄与し、3カ月連続で改善した。もっとも暖冬や新型肺炎に伴う消費の落ち込みを懸念する声も多く、内閣府は現状の見方を「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。
経常収支5240億円の黒字 19年12月、66カ月連続黒字
財務省が10日発表した2019年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5240億円の黒字だった。黒字は66カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4646億円の黒字だった。
貿易収支は1207億円の黒字、第1次所得収支は4001億円の黒字だった。
同時に発表した2019年の経常収支は20兆597億円の黒字だった。

かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーの季節調整済みの現状判断DIを前月差で見ると、昨年2019年10月の消費税率の引上げでドンと▲10ポイント近く低下した後、11月から今年2020年1月まで3か月連続でジワジワと回復を示してます。基本は家計動向関連の上昇に見合ったものと私は受け止めており、特に、家計動向関連の中でも小売関連が上昇に寄与している印象です。他方で、企業動向関連では10月の落ち込み幅が家計動向関連ほどではなかったのもありますが、その後の回復は思わしくありません。新型コロナウィルスを別にすれば、現在の世界経済の停滞が反映されているものと考えるべきです。ただ、人手不足がクローズアップされて長いながら、最近時点では雇用動向関連が低下を続けている点は気がかりです。景気ウォッチャーですから、それぞれの業界の供給サイドのマインドを反映しており、雇用と家計のそれぞれの動向が直接にリンクするわけではありませんが、雇用に関して派遣会社などのマインドは当然に家計の雇用改善へのブレーキを反映する場合があります。先日取り上げた三菱総研のリポートでも、先行き我が国経済が景気後退を回避でるとすれば、人手不足に起因する雇用の堅調さがひとつのキーポイントになることは間違いありません。逆にいえば、雇用が悪化し始めると景気後退に陥る可能性が高まります。さらに、先行き判断DIに織り込まれ始めている新型コロナウィルスによる肺炎の拡大も大きな懸念材料です。いくつかのリポートを先週の段階でピックアップして紹介しましたが、まったく私には先行きが見通せません。私の先行き不透明感ほどひどくはないのかもしれませんが、企業でも同じように先行き不安を抱えるところは少なくないものと想像しています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの12月統計でも黒字を記録しており、引用した記事の通り、季節調整していない原系列の統計では2014年7月に黒字に転換して以来、また、季節調整済みの系列ではさらに早くて2014年4月の黒字転換以来、5年半に渡って経常収支は黒字を継続しています。重要なコンポーネントのひとつである貿易収支は国際商品市況の石油価格の変動に応じて赤字になったり黒字になったりしている一方で、安定的な海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。本日公表の12月経常収支についても同様といえます。加えて、実績の+5000億円強の黒字に対するに、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+5000億円弱の黒字の予想でしたので、サプライズもありませんでした。ただ、貿易収支については、この先、世界経済のいっそうの停滞により輸出にマイナスの影響がある一方で、中国発の新型コロナウィルスによる肺炎の拡大により国際商品市況において石油価格が下落していて輸入額が減少する可能性もあり、どちらのインパクトが大きいか、によると考えられます。

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2020年2月 8日 (土)

米国雇用統計は人手不足でも雇用者が前月から+225千人増加!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+225千人増と人手不足にもかかわらず、まだ伸びを示し、失業率は先月から0.1%ポイント悪化したものの、それでも3.6%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、超コンパクトに Bloomberg のサイトから記事を最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

U.S. Jobs Top Estimates With 225,000 Gain, Wages Accelerate
U.S. employers ramped up hiring in January and wage gains rebounded, providing fresh evidence of a durable jobs market that backs the Federal Reserve's decision to stop cutting interest rates and hands President Donald Trump an early election-year boost.
Payrolls increased by 225,000 after an upwardly revised 147,000 gain in December, according to a Labor Department data Friday that topped all estimates of economists. The jobless rate edged up to 3.6%, still near a half-century low, while average hourly earnings climbed 3.1% from a year earlier.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、大きな影響は見られないと私は受け止めていますが、今回の2020年1月統計から雇用者のベンチマークがアップデートされています。それにしても、+225千人増という数字は、先月12月の+147千人増や昨年2019年の月平均+175千人増を大きく上回っていますし、Bloombergによる市場の事前コンセンサスの+165千人増もはるかに超えています。米国雇用がこれだけ堅調な背景には、米中間の貿易摩擦の休戦で米国の企業家心理が向上している点が上げられます。例えば、米国サプライチェーン・マネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数(PMI)は1月に50.9まで上昇し、半年ぶりに50を超えています。ただ、金融政策の方向感覚がやや不透明です。下のグラフに見られるように、賃金上昇は落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、まだ+3%台をキープしていますし、雇用は堅調ですから引締めの方向を示唆する可能性があります。他方で、中国の新型コロナウィルスというとんでもない特殊要因から、いったんは2020年中は利下げストップといわれながら、この中国発の先行き景気不安から、FED内でも利下げの必要性をめぐる議論が高まりそうです。私なんぞから見ると、やや方向感のない金融政策動向になりつつある気がしないでもありません。

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ということで、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、1月も前年同月比で+3.1%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、+3%を超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。

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