2019年11月15日 (金)

世界経済減速の影響を受けて年末ボーナスは減ってしまうのか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2019年年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.7万円
(▲0.8%)
68.4万円
(▲3.6%)
賞与支給総額は、同+0.9%の増加となる見込み。一人当たり支給額は減少するものの、支給労働者数の増加が下支え。
第一生命経済研(▲1.5%)n.a.冬のボーナスの悪化が見込まれることは、今後の個人消費にとって痛手だ。10月から始まった消費増税による負担増にボーナス減少という重荷が加わることで、消費への逆風はさらに強まる。消費増税に備えて様々な対策が実行に移されていることから、家計の実質的な増税負担額は14年と比較してかなり小さく、消費増税発の景気失速は避けられるとみられるが、リスクは明らかに下振れである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング38.8万円
(▲0.4%)
79.0万円
(▲1.3%)
ボーナスの支給総額は16.9兆円(前年比+1.5%)に増加する見通しである。一人当たり支給額は減少に転じるものの、ボーナスが支給される事業所で働く労働者数が大きく増加することが支給総額の増加に寄与しよう。冬のボーナスの支給労働者数は4,344万人(前年比+2.0%)に増加し、支給労働者割合も84.8%(前年差+0.1%ポイント)に上昇すると見込まれる。ボーナスの支給総額の増加は、消費増税後の落ち込みからの回復を期する今後の個人消費にとってプラス材料である。
みずほ総研38.2万円
(▲2.1%)
74.9万円
(▲2.7%)
懸念されるのは、こうした所得の伸び悩みにより、消費増税後の個人消費が下押しされることだ。消費増税後の落ち込みについては、政府の所得支援策などにより、一定程度抑制されるとみられるものの、所得環境は伸び悩みが続いており、消費の基調は力強さに欠ける展開が予想される。今冬のボーナス伸びの大幅鈍化は、ますます消費の基調を弱めることになりかねない。海外経済の減速や企業収益の弱含みが雇用・所得環境を通じて消費に波及していくリスクは継続しており、今後の消費動向は要注意だ。

ということで、こぞって1人当たりボーナス額が減少する一方で、ボーナス支給対象雇用者が増加することから、1人当たり額に支給対象者数を乗じたボーナス支給総額は増加すると予想しています。シンクタンクによっては、1人当たりの減額を受けて消費にマイナスとする見方がある一方で、支給総額がプラスなので消費を下支えするという意見もあります。先行き景気は世界経済の動向に左右される部分が大きいんですが、私自身の見方としては、かなり不透明感がある中で、恒常所得ではないボーナスは消費に回る比率、限界消費性向はそれほど大きくないことから、いずれにせよ、消費に大きな影響をもたらすほどのインパクトはなく、10月からの消費税率引上げによる下押し圧力の方が上回り、消費はさえない展開が続くと予想しています。景気失速ないし景気後退につながるかどうかは、消費よりも世界経済の動向、あるいは、それに起因する我が国の輸出動向に左右される部分が大きいとは思いますが、雇用から消費への波及ももちろん無視できません。景気局面はビミョーな段階に入ったと考えるべきです。
下の画像は、日本総研のリポートから賞与支給総額(前年比)を引用しています。

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2019年11月14日 (木)

駆込み需要を考慮しても内需の底堅さを確認した7-9月期GDP統計1次QE!!!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.1%、年率では+0.2%と潜在成長率を下回ってゼロ近傍ながら、4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質0.2%成長、GDP7-9月年率 個人消費など堅調
内閣府が14日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.1%増、年率換算では0.2%増だった。4四半期連続のプラス成長となった。4~6月期は年率換算で1.8%増だった。消費増税前の駆け込み需要でプラス成長は維持したものの、冷夏の影響などが響き、小幅な伸びにとどまった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.2%増で、年率では0.8%増だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目でも4四半期連続のプラスとなった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.2%分のマイナスだった。
項目別にみると、個人消費が実質0.4%増と2四半期連続のプラスとなった。消費増税前の駆け込み需要の影響で支出が増え、個人消費を押し上げた。
設備投資は0.9%増と2四半期連続のプラス。省力化投資の積極化などが寄与した。民間在庫の寄与度は0.3%のマイナスだった。
住宅投資は1.4%増と5四半期連続のプラスと、増税前の駆け込み需要がみられた。公共投資は0.8%のプラスだった。
輸出は0.7%減だった。中国向けを中心にアジア向け輸出が弱かったうえ、世界経済減速などで伸び悩んだ。輸入は0.2%増と2四半期連続のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.6%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.2%のプラスだった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/7-92018/10-122019/1-32019/4-62019/7-9
国内総生産GDP▲0.5+0.4+0.5+0.4+0.1
民間消費▲0.1+0.3▲0.0+0.6+0.4
民間住宅+0.4+1.1+1.1+0.5+1.4
民間設備▲3.2+3.2▲0.4+0.7+0.9
民間在庫 *(+0.3)(▲0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.3)
公的需要▲0.4+0.4+0.3+1.4+0.6
内需寄与度 *(▲0.4)(+0.8)(+0.1)(+0.7)(+0.2)
外需寄与度 *(▲0.1)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.2)
輸出▲1.8+1.1▲2.0+0.5▲0.7
輸入▲1.2+3.8▲4.1+2.1+0.2
国内総所得 (GDI)▲0.8+0.3+1.0+0.3+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.9+0.4+0.8+0.4+0.1
名目GDP▲0.4+0.4+0.9+0.4+0.3
雇用者報酬 (実質)▲0.4+0.3+0.4+0.6▲0.0
GDPデフレータ▲0.4▲0.3+0.1+0.4+0.6
内需デフレータ+0.6+0.5+0.3+0.4+0.2

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらもプラスを示し、赤の消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナスの寄与となっているのが見て取れます。

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前回の4~6月期GDP統計1次QEでは、私は「ほぼゼロ成長ながら、マイナス成長」と予想して大きく外したんですが、今回の7~9月期1次QEでは一昨日のQE予想の折りに、「プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率」と予想していますので、まずまずの結果ではなかったかと自負しています。また、グラフを引用したニッセイ基礎研のリポートでは、前期比成長率+0.1%、前期比年率+0.2%と予想していましたので、まさに、ドンピシャでした。ということで、基本は、消費などで一定の駆込み需要があったものの、その需要増を供給増、というか、生産増で対応したのではなく、在庫の取り崩しで対応した結果であると私は受け止めています。加えて、世界経済の減速に起因する外需の停滞も成長率を下押ししていることは明らかです。ただ、7~9月期GDPでは、設備投資が前期比+0.9%増となっていますが、あくまで私の直感ながら、やや高い気がしなくもありません。法人企業統計を見ないと何ともいえませんが、先行き下方修正される可能性もあると考えています。ただ、全体として、駆込み需要が一定あることは否定できないものの、それを考慮しても内需の底堅さを確認できる統計だったと私は受け止めています。ですから、世界経済の今後の減速の程度にもよるものの、数兆円規模の財政サポートを含む経済対策が15か月予算として策定されるのであれば、10~12月期は消費税率引き上げによるマイナス成長がほぼほぼ確定しているものの、年明け1~3月期はプラス成長に回帰する可能性が高く、2四半期連続でのマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルを避けられるものと私は見込んでいます。唯一の懸念は、経済をけん引する主役の不在です。外需は世界経済の減速でむしろマイナス要因でしかなく、従って、輸出との相関高い設備投資も力強さに欠け、加えて、消費税率の引上げにもかかわらず、所得が年末ボーナスが渋いこともあって伸びず、家計部門でも消費や住宅が景気をけん引する姿とはほど遠いと考えるべきです。ですから、外需も民需も景気のけん引役としては期待できないとなれば、ここは政府の財政によるサポートが必要な場面であろうと私は考えています。

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続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。雇用者報酬の伸び悩みが始まっているように見えます。10~12月期は消費税率引上げにより実質所得はさらに停滞を見せると考えるべきです。加えて、インバウンド消費も韓国との関係悪化などを背景に、伸びが大きく減速しています。また、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、これに加えて、もしも経済対策による財政支出が先行き見通しの向上をもたらして、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えますが、いつになったら賃金が増えて消費者マインドが上向くんでしょうか。目先の景気後退は避けられる可能性高いものの、トンネルは長いかもしれません。

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2019年11月13日 (水)

企業物価(PPI)の国内物価上昇率は消費税率引上げでもマイナス!!!

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.4%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の10月統計まで5か月連続でマイナスが続いています。何と、消費税率が引き上げられたにもかかわらず、前年同月比でマイナスが続いているわけで、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲1.9%の下落と試算されています。9月は▲1.1%の下落でしたから、一段と下落幅を拡大していることになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業物価指数、前年比0.4%下落 薬価改定などで
日銀が13日発表した10月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.4%下落した。5カ月連続で下落した。前月比でみると1.1%上昇した。電力料金や薬価の改定などの制度的な価格の引き下げが全体を押し下げた。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.3%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年比10.5%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.7%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち、消費税を含むベースで前年から上昇したのは520品目、下落したのは213品目だった。上昇と下落の品目差は307と、9月の確報値(74品目)から233品目増えた。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で1.9%下落した。5カ月連続で前年を下回った。前月比でも0.4%下落した。2カ月ぶりに下落に転じた。
消費税を除くと上昇が328品目、下落が340品目で、品目差はマイナス12品目だった。下落品目数が上昇品目数を上回るのは2017年3月以来、2年7カ月ぶり。
10月は夏季電力料金の期間が終了したほか、薬価改定で医薬品の価格が引き下げられる影響があった。日銀の調査統計局は10月の企業物価の基調について「制度的な要因が中心で、消費増税の影響はみられない」としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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季節調整していないながら、国内物価指数の前月比は流石に消費税率引上げの影響もあって+1.1%の上昇を記録しており、寄与度で見て、輸送機械+0.26%、鉄鋼+0.12%、電気機器+0.11%などのプラス寄与が大きくなっています。国内物価指数の前年同月比では、相変わらず、石油・石炭製品が▲14.1%の下落と9月の▲11.9%から下げ幅が拡大しています。私が調べた範囲で、企業物価指数(PPI)のうちの輸入物価の円建て原油価格指数は、昨年2018年のピークが11月の142.5でしたから、このところ、今年2019年6月以降の100~110で11月も落ち着いた動きをするとすれば、次の11月統計でPPI輸入物価に現れる原油価格の前年同月比は底を打つ可能性が高いと考えられます。でも、サウジアラビアの石油施設への武力攻撃など、エコノミストには想像もできないような地政学的な何かが起こる可能性も排除できませんし、何よりも相場モノですので、先行きの価格動向は私の予想の範囲を超えています。また、国内物価指数で前年同月比の下落の大きい化学製品▲4.3%や非鉄金属▲4.5%などは、米中貿易摩擦の一方の当事者であり、ダメージが大きい方といわれている中国の景気動向に連動する部分が大きいと見なされているわけで、国際商品市況における石油価格とともに中国の景気動向にも物価が反応すると考えるべきです。ひょっとしたら、日銀金融政策よりもこういった対外要因の方が影響力大きいかもしれません。企業物価(PPI)の先行きについて考えると、少なくとも11月統計までは石油価格下落の影響が続くことは容易に想像できますし、加えて、中国をはじめとする世界経済の動向や国内景気も含めて、物価が上昇に転ずるタイミングを図るのは難しそうです。

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2019年11月12日 (火)

明後日公表の7-9月期GDP統計1次QEの予想やいかに?

先々週の政府統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、今週木曜日11月14日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、繰り返しになりますが、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということで、先行きについても多くのシンクタンクで言及があり、テーブルの上から順に、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研の5機関は明確に見通しを取り上げ、伊藤忠総研についても「輸出動向がカギ」で締めくくっています。これらの機関はやや長めに、ほかもそれなりに引用しています。ただし、大和総研については、引用した後にも、GDP需要項目別に住宅投資・設備投資・公共投資・輸出と続きがあるんですが、取りあえず、個人消費のパラで打ち止めとしてあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.7%)
10~12月期を展望すると、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風19号などの自然災害が消費と生産の重石となり、5四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。もっとも、良好な雇用・所得環境や高水準の企業収益を背景とした内需主導の景気回復基調は途切れておらず、マイナス成長は一時的にとどまると予想。
大和総研+0.2%
(+0.9%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
個人消費は、駆け込み需要の反動減が生じた後は、一進一退が続くとみている。個人消費の鍵を握る所得は、増加ペースの鈍化が見込まれるものの、消費増税時に実施されている各種経済対策が消費を下支えすることで、増税後の消費の腰折れは回避されるとみている。ただし、消費増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できないことから、消費はいくらか抑制されるだろう。また、先行きの消費のかく乱要因として、キャッシュレス決済時のポイント還元制度の終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減が生じ得ることなどが挙げられる。
みずほ総研+0.3%
(+1.3%)
今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減が下押しする投資の調整圧力が高まるほか、その後も弱い伸びに留まる見通しだ。
輸出は、IT関連需要の底打ちがプラス材料となるものの、世界経済の減速が続くことから、伸びは弱いとみている。設備投資は、省力化投資が下支えするものの、機械設備や建設投資における調整圧力の高まりが下押し要因になり、当面横ばい圏で推移するだろう。
個人消費は、力強さを欠く見通しだ。消費増税の反動減が見込まれることに加え、世界経済の先行き不透明感や企業収益の弱含みを背景に、所得が伸び悩むことが影響しよう。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.2%)
2019年10-12月期は、前回増税時に比べれば規模は小さいものの、駆け込み需要の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が大きく減少し、明確なマイナス成長になることが予想される。
第一生命経済研+0.3%
(+1.0%)
前回増税対比では抑制されたとはいえ、個人消費の駆け込み需要は一定程度生じたとみられる。この部分については 10-12月期に反動が出ることは必至である。加えて、増税による実質購買力の抑制による悪影響も懸念されるところだ。増税に備えて様々な対策が実行に移されたことから、14年と比較すれば悪影響は小さくなるだろうが、それでも一定の下押し圧力は受けざるを得ない。10-12月期の個人消費は大幅な減少が予想され、実質GDP成長率もはっきりとしたマイナスに転じるとみている。
伊藤忠総研+0.0%
(+0.2%)
7~9月期の実質GDP成長率は前期比+0.0%(年率+0.2%)、4四半期連続のプラス成長ながら概ね横ばいを予想。個人消費は消費増税前の駆け込み需要を悪天候の影響が相殺、公共投資や設備投資の増加も輸出の減少によって減殺された模様。潜在成長率を上回る成長を取り戻すかどうかは輸出動向がカギ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.1%
(+0.4%)
2019年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と4四半期連続でプラス成長を維持したと予想される。もっとも、消費増税前の駆け込み需要があったことを考慮すると、伸びは弱い。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2019年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、4四半期連続でのプラス成長を予測する。消費税増税前の駆け込み需要による押し上げ効果もあり、内需が堅調に拡大したとみられる。

ということで、+1%弱といわれている潜在成長率近傍を予想するシンクタンクが多いんですが、高いところで三菱総研の年率+1.9%成長、低いところでも伊藤忠総研の年率+0.2%となっていて、少なくともマイナス成長を見込むシンクタンクはありません。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、中央値で年率+0.8%成長、レンジでも+0.2~+1.9%となっています。基本的に、10月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が下支えしており、サステイナブルではないプラス成長ではありますが、ほぼ、私の実感とも合致しています。ただし、下方リスクは小さくなく、特に、悪い話ではないんですが、消費税率引上げ前の駆込み需要が、前回2014年4月時よりも小さく、しかも、大型消費の耐久消費財で小さかったわけですので、私の実感としては、プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率に仕上がっている可能性が高いと感じています。ただし、駆込み需要が大きかったとすれば、在庫調整が進んだ可能性もあります。これも悪い話ではありません。いずれにせよ、プラス成長というエコノミスト間のコンセンサスは当然なんですが、潜在成長率をやや下回る、と私は予想しています。
下の画像はコンポーネントの寄与度に分解したGDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

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2019年11月11日 (月)

3か月連続でマイナス続く機械受注と景気ウォッチャーと経常収支を読み解く!!!

本日、内閣府から9月の機械受注と10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.9%減の8502億円を示しており、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲10.0ポイント低下の36.7を、先行き判断DIは逆に+6.8ポイント上昇の43.7を、それぞれ記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆6129億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の機械受注、2.9%減 基調判断は引き下げ
内閣府が11日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.9%減の8502億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.7%増)を下回り、3カ月連続の減少となった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」へと引き下げた。基調判断を引き下げるのは2018年12月分以来となる。19年4月分から「持ち直しの動き」としていた。
製造業の受注額は前月比5.2%減の3604億円だった。2カ月連続の減少で、17業種のうち7業種で減少した。「非鉄金属」や「石油製品・石炭製品」の分野で落ち込みが顕著だった。
半面、非製造業は2.6%増の4898億円と、3カ月ぶりの増加に転じた。「通信業」や「情報サービス業」などの増加が寄与した。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は5.1%増だった。受注総額は4.9%減、外需の受注額は7.3%減、官公需の受注は26.3%減だった。
7~9月期では前期比3.5%減と、2期ぶりに減少した。製造業は0.9%減、非製造業は7.3%減だった。10~12月期は前期比3.5%増の見通しで、製造業は2.8%増、非製造業は3.7%増を見込んでいる。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
10月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり悪化
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は36.7で、前の月に比べて10.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は43.7で、6.8ポイント上昇した。上昇は4カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。
内閣府は基調判断を「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。
経常収支、9月は1兆6129億円の黒字
財務省が11日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6129億円の黒字だった。黒字は63カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆6846億円の黒字だった。
貿易収支は11億円の黒字、第1次所得収支は1兆8054億円の黒字だった。
同時に発表した4~9月期の経常収支は10兆3382億円の黒字だった。貿易収支は241億円の赤字、第1次所得収支は11兆3079億円の黒字となった。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は+0.9%増であり、レンジでは▲9.5~+2.1%でしたから、予測の中央値は前月比プラスとはいえ、リスクを考慮したレンジは下方に広かった、と考えるべきで、もともとが単月の振れの激しい指標ですので、予想と符合が違っていたものの、市場には大きなサプライズはなかった、と私は受け止めています。特に、四半期データが利用可能となり、7~9月期の四半期ベースでは前期比▲3.5%減だった一方で、10~12月期は前期比+3.5%増の見通しとなっていますので、先行き見通しのバイアスをどこまで見込むのかにもよりますが、単純に考えると2019年後半の2四半期をならせばコア機械受注は横ばいということですので、米中貿易摩擦に起因して世界経済が大きく減速している中で、「こんなもん」という相場観ではないか、という気もします。加えて、3か月前の6月統計公表時の7~9月期の予想は▲6.1%減でしたから、この予想からすれば上振れ下、ということにもなります。ただ、3か月連続でのコア機械受注の前月比マイナスですので、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ下げて「持ち直しの動きに足踏み」としています。また、コア機械受注の外数ながら官公需を見ると、8月+36.8%増の反動の要素は考慮しても、9月▲45.2%減を記録しており、経済対策によるテコ入れがなされる予定とはいえ、消費税率引き上げ直前の公共事業の執行姿勢に疑問を持たざるを得ません。緊縮財政を転換することが必要です。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。現状判断DIは家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてがマイナスを示し、先行き判断DIはほぼ逆で家計動向関連、企業動向関連ともにプラスながら雇用関連だけがわずかにマイナス、ということになっています。消費税率引上げに起因する動きですので、現状判断DI/先行き判断DIとも家計動向関連のうちの小売り関連が飛び抜けて大きな動きを示しています。まあ、当然です。消費税率引上げ前後の動きとしては、前月の段階で駆込み需要があって現状判断DIが上昇する一方で、先行き判断DIが低下し、消費税率引上げの当月は反動減などから現状判断DIが低下する一方で、先行き判断DIが上昇する、という典型的な動きを示しました。2014年の3~4月とまったく同じでした。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「回復に弱い動き」で据え置かれています。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの8月の経常収支は最近ではやや大きな黒字なっており、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。経常収支の背景について見ると、国際商品市況における石油価格の動向にもかかわらず、貿易収支が赤字化しているのは、我が国の景気局面と我が国貿易相手国の景気局面に差が生じ始めた可能性を示唆していると私hは受け止めています。すなわち、我が国国内経済の減速はかなりの程度に実感されているところですが、輸出入の動向を見ると、世界経済の減速は我が国以上にもっと進んでいる可能性があると、私は受け止めています。その意味で、貿易収支の動向にも注視が必要かもしれません。

最後に、どうでもいいことながら、私は天皇制については退職した国家公務員、というか、日本国民として、かなり少数派に属する考えを持っていることは自覚していて、昨日の祝賀パレードには何の興味もありませんでした。そして、我が家で購読している朝日新聞の本日付け夕刊の「素粒子」で昨日のパレードの国旗についての疑問が呈されていて、誰が費用を負担しているかは詳しく知りませんが、我が家が青山に住んでいたころ、下の倅は東京都心でボーイスカウト活動に参加していたことから、正月一般参賀の折りには皇居に行って、日の丸配布の奉仕活動していた時期があり、当時の財団だか、社団だかの国旗協会から紅白まんじゅうをもらって帰っていました。私は下の倅に「万歳三唱には加わる必要はない」といい置いていた記憶があります。

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2019年11月 8日 (金)

「悪化」の基調判断が続く景気動向指数ながら、経済対策による財政出動に期待!

本日、内閣府から9月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+0.3ポイント上昇して92.2を、CI一致指数も+2.0ポイント上昇して101.0を、それぞれ記録し、前月に続いて「悪化」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の景気一致指数、2.0ポイント上昇 基調判断は「悪化」据え置き
内閣府が8日発表した9月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.0ポイント上昇の101.0と2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「悪化」で据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。自動車や医薬品などに消費増税前の駆け込み需要が膨らみ「商業販売額(小売業)」や「商業販売額(卸売業)」などが伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.3ポイント上昇の92.2となった。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比1.8ポイント低下の102.9だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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先行指数、一致指数とも2か月ぶりに前月差でプラスとなっています。一致指数の系列ごとに寄与度をみると、商業販売額(小売業)(前年同月比) +0.83、投資財出荷指数(除輸送機械) +0.75、商業販売額(卸売業)(前年同月比) +0.65、 などとなっており、前月差の+2.0ポイントはかなり大きいように見えるんですが、実は、商業販売統計に現れた消費税率引き上げ直前の駆け込み需要に起因する上振れが大きいと考えるべきです。9月当月の前月差がプラスであるにもかかわらず、基調判断が「悪化」に据え置かれているのは、後方7か月移動平均がマイナスを続けているためであり、来月のCI一致指数がもしも駆け込み需要に対する反動減の影響でマイナスを示せば、3か月連続での「悪化」ということになる可能性もあります。私自身は日経新聞のサイトを見ましたが、今朝の閣議で安倍総理大臣から3年振りの経済対策策定の指示が出されたと報じられています。「財政支出は5兆円規模」という報道もありますが、too little too late と評価されないような対策が必要です。2012年暮れに安倍内閣が発足して以来、当初の2012~13年度を別にすれば、経済運営は日銀の金融政策の比重が高く、財政政策は緊縮気味に運営されてきただけに、私は反緊縮の機運はかなり盛り上がっているように感じています。

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最後に、例の統計不正から長らく取り上げるのを差し控えていた厚生労働省の毎月勤労統計の9月速報が公表されています。統計のヘッドラインとなる名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.8%増の56万7151円となっています。グラフは上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間はいずれも景気後退期を示しています。下2枚の賃金のグラフで、昨年2018年12月から今年2019年1月にかけて大きな段差が生じているのは、例の統計不正によるものですが、久し振りに書いてみると、どうしようもなく所定外労働時間のグラフがヘンに見えるのは私だけでしょうか。

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2019年11月 7日 (木)

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートによる消費税率引き上げ前後の個人消費の動向やいかに?

一昨日11月5日に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「消費税率引き上げ前後の個人消費の動向」と題するリポートが明らかにされており、前回214年の税率引き上げ時よりも駆け込み需要とその後の反動減が小幅にとどまったと報告しています。もちろん、pfdの全文リポートもアップされています。いくつかの論点があるとは思いますが、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートでは経済産業省の「商業販売統計」のデータを基に、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要について分析しており、上のグラフはリポートから 図表2.スーパー販売額の推移 を引用しています。単純に、増税前最終月とそれまでの直近1年間の販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模と見なすと、2014年の増税時は1280億円程度だったのに対し、2019年は935億円程度と約27%、345億円程度小さくなっており、同様に、百貨店でも約10%小さくなっています。スーパーでは百貨店よりも、駆け込み需要に一定の割合を占めるトイレットペーパーや洗剤などの日用品の購入が多いと思うんですが、むしろ、軽減材率の適用される食料品の効果が上回り、駆け込み需要の大きさはスーパーの方が百貨店よりも大きく縮小したのではないかと分析されています。また、自動車については9月の売り上げ増が大きかったんですが、増税直前まで駆け込み需要はほとんどみられず、このため、増税直前に需要が集中し、単月での大きな伸びにつながっただけであり、駆け込みの期間が短かった分、トータルで見れば今回の駆け込み需要は前回よりも小さかったと指摘しています。この駆け込み需要の期間が短かったという指摘は、一昨日11月5日に取り上げた日本総研のリポートと同じ結論と私は受け止めています。

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次に、増税後の反動減について見るため、リポートから 図表8. クレジットカード情報に基づく消費動向 (JCB消費NOW) を引用すると上のグラフの通りです。リポートでは、個人の消費支出額は9月上旬に前年比+4.6%、下旬に+11.9%と伸びを高めた後、10月上旬には▲6.7%と減少しているんですが、落ち込み幅は駆け込みの規模と比べても相応の水準であり、駆け込み以上に落ち込んでいる様子は見て取れないと結論しています。

他方、第一生命経済研のリポートのように、自動車と百貨店について分析した結果として、「基調が見極め難く、評価は持ち越し」と評価している例もあります。私が大学出向時などに研究者として統計的計量的な分析をしたのと違って、シンクタンクのリポートは速報性を重視して厳密な数量分析までは手が伸びていないわけで、まあ、速報性と正確性のトレードオフを考えれば、こんなもんか、という気もします。

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2019年11月 6日 (水)

リーマン・ショック時以来の2019年7-9月期の倒産増加率をどう見るか?

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上のグラフの引用元である東京商工リサーチによれば、今年2019年7~9月期のの倒産件数は2,182件で、前年同期比+8.1%増に上り、+13.4%増を記録したリーマン・ショック直後の2009年1~3月期以来の高い倒産増加率だったようです。
こういった倒産件数の増加の兆しは、東京商工リサーチが指摘している通り、すでに日銀「金融システムレポート」でも信用コストの増加として取り上げられており、その背景として、「金融システムレポート」(2019年10月)概要の p.22 から2点引用すると、①金融機関との取引履歴が比較的長い、一部の業況不芳先における経営再建の遅れ、②近年、金融機関が貸出増加に取り組んできたもとでの一部審査・管理の引き緩み、を上げています。
なお、現在では、景気動向指数に採用されていませんが、倒産件数は逆サイクルで景気先行指標と考えられています。その昔の1960年代には、当時の経済企画庁の景気動向指数のうちの先行指数に採用されていましたし、私の知る限りでやや記憶は不確かなんですが、兵庫県統計課が作成・提供している兵庫県域の景気動向指数の先行系列にも逆サイクルで倒産件数が採用されているんではないかと思います。ですから、もしも、あくまで、もしも、ですが、倒産がジワジワと増加を示しているのであれば、あるいは、あくまで、あるいは、なんですが、景気後退局面がジワジワと近づいているのかもしれません。

まったくどうでもいいことながら、日銀「金融システムレポート」を少しばかり読んでいて、長らくエコノミストの仕事をして来ていながら、定年退職したとはいえ、また、金融分野はそれほど詳しくないとはいえ、「業況不芳先」とか、「引き緩み」という用語は不勉強にして初めて見ました。もちろん、「引き締め」というのは使ったこともあるんですが、その逆が「引き緩み」とは知りませんでした。この先、エコノミスト的な職に復帰する際には、もっと本格的な勉強が必要かもしれません。

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2019年11月 5日 (火)

日本総研リポート「消費増税前の耐久財消費の動向」で分析された駆け込み需要やいかに?

先週金曜日11月1日に日本総研から「消費増税前の耐久財消費の動向」と題するリポートが明らかにされており、今回10月1日からの消費税率引き上げに伴う駆け込み需要は前回2014年4月増税時の半分との試算結果を示しています。

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上のグラフは、pdfのリポートから 耐久財の駆け込み消費額(試算値) を引用しています。前回の耐久消費財の駆け込み需要が1兆1900億円あったのに対して、今回は6200億円と、ほぼ半分にとどまったと推計しています。前回増税時と比べ、家電は6割程度、自動車は4割弱と、国内家計最終消費支出の0.2%程度と小さく、当然、この先の反動減による落ち込みも軽微にとどまるとリポートでは指摘しています。加えて、リポートでは、主要耐久財の買い替えサイクルの観点からも、消費低迷の長期化は避けられるとの判断を示しています。すなわち、自動車では2012年のエコカー補助金や前回増税前の駆け込み購入分が近く平均使用期間を超えるほか、白物家電やテレビなどの家電製品でも、10年前の家電エコポイント制度による購入分が買い替え時期を迎えつつあり、これらの買い替え需要が今後数年間かけて発生することから、消費下支えがなされる見込みとの分析です。

私は各種統計から、9月単月の駆け込み需要はかなりの大きさに上った気がして、少しびっくりしたんですが、この日本総研のリポートによれば、確かに9月の駆け込み需要はそれなりの規模があった一方で、今回は駆け込み需要が短期間で終わったと指摘しています。そうなのかもしれません。

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2019年11月 2日 (土)

米国雇用統計や金融政策動向に見るGMストの影響やいかに?

日本時間の昨夜、米国労働省から10月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+128千人増とまずまずの伸びを示した一方で、失業率は先月から0.1%ポイント上昇して3.6%という低い水準にあります。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の6パラを引用すると以下の通りです。

Economy added solid 128,000 jobs in October despite GM strike and loss of census workers
U.S. hiring was surprisingly solid last month as employers added 128,000 jobs despite a General Motors strike that held down overall payrolls and the loss of 20,000 temporary census workers. The showing highlights a healthy economy that eases recession concerns.
Economists surveyed by Bloomberg expected 85,000 job gains.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, rose from a 50-year low of 3.5% to 3.6%, the Labor Department said Friday. That's because a strong increase in employment was offset by an even bigger rise in the labor force, which includes Americans working and looking for jobs.
Even more encouraging: Job gains for August and September were revised up by 95,000. August’s additions were bumped from 168,000 to 219,000 and September’s from 136,000 180,000.
The six-week GM strike reduced employment by 42,000, Labor said. That’s a blip that’s likely to boost November payrolls since striking workers will be back on the job, Morgan Stanley said before the report was released.
And the number of workers preparing for the 2020 census fell by 20,000.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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今月の雇用統計のひとつのマイナス要因に、GMのストライキが上げられます。10月下旬に終息したと報じられたものの、米国労働省の CES Strike Report によれば、9月16日から▲46千人の雇用者減とカウントされているようです。もちろん、GM本体だけでなく、自動車産業はすそ野の広いのがひとつの特徴ですから、ある程度の乗数的なプロセスを持ってレイオフなどが発生している可能性もあり、▲50千人を超える雇用減になっていた可能性も十分あります。加えて、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスで+85千人の予想だった非農業部門雇用者数の増加幅が+128千人と、まずまず堅調な伸びを示したことから、貿易戦争の逆風下でも雇用は底堅さを保っており、米国連邦準備理事会(FED)の利下げ停止をサポートしそうな統計であると私は受け止めています。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用がやや減速を示し、賃金上昇率も労働市場の動向に合わせるように鈍化し、10月は前年同月比で+2.9%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して以来、久し振りに+3%を割り込みました。でも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、雇用に現れた景気動向から利下げが模索されるのも、左派エコノミストを自称する私から見れば、ハト派的な金融政策は大いに結構と考えています。

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