2026年10月13日 (火)

国際通貨基金「世界経済見通し」 IMF World Economic Outlook やいかに?

本日、バンコクで開催されているIMF・世銀総会において、「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。見通しのヘッドラインとなる世界経済の成長率は、今年2026年が+3.1%、来年2027年が+3.4%と、それぞれ見込まれています。まず、IMFのサイトから、成長率見通しの総括表を引用すると次の通りです。

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続いて、IMFのサイトから、第1章見通し編の概要を引用すると次の通りです。

Chapter 1: Global Prospects and Policies
The global economy is still resilient, but resilience is increasingly uneven and costly. Activity has held up despite the war in the Middle East, supported by use of buffers, private sector adaptation, and strong investment in artificial intelligence. Yet inflation is rising, the divide between economies benefiting from the technology upcycle or favorable terms of trade and those facing higher import bills and weaker demand is widening, and the margins of adjustment are thinning. Assuming the conflict does not escalate further and energy markets gradually normalize, global growth is projected to slow to 3.1 percent in 2026 before rising to 3.4 percent in 2027, while inflation rises to 4.7 percent before easing to 4.1 percent in 2027. Risks are tilted to the downside, including from fiscal vulnerabilities. Policymakers must rebuild fiscal space, preserve monetary and financial stability, lift potential growth, and deepen cooperation

中東戦争による経済的混乱にもかかわらず、バッファーの活用、民間セクターの適応、そして、人工知能(AI)への旺盛な投資に支えられた成長であると結論しています。結果として、繰返しになりますが、世界経済は2026年+3.1%成長に減速した後、2027年には+3.4%に再加速し、インフレ率は今年2026年に+4.7%まで高まった後、来年2027年には+4.1%に低下する、と見込んでいます。最初の成長率見通しの総括表に見られる通り、日本経済については今年2026年も来年2027年も+0.7%成長と予想されています。また、リポート p.40 Annex Table 1.1.2. Asian and Pacific Economies: Real GDP, Consumer Prices, Current Account Balance, and Unemployment のテーブルを見ると、日本の消費者物価指数(CPI)上昇率は、2026年+2.0%の後、2027年+2.6%と予想されています。世界経済についても、日本でも、来年は今年よりも成長率が高まる一方で、インフレ率が低下する、という結論です。

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目を国内に転じると、本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+6.8%の上昇となり、先月8月統計の+7.6%から上昇率が減速したものの、依然として高い伸びが続いています。

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2026年10月12日 (月)

ノーベル経済学賞

今年のノーベル経済学賞は、以下の2人に授与されます。

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Robert E. Hall
Born: 1943, Palo Alto, CA, USA
Stanford University, Stanford, CA, USAfor microeconomic foundations of macroeconomic stabilisation
Michael Woodford
Born: 1955, Chicopee, MA, USA
Columbia University, New York, NY, USA

広く報じられているように、マクロ経済の安定化に関するミクロ経済学的基礎に関する研究、上のテーブルにあるように、for microeconomic foundations of macroeconomic stabilisation の功績となっています。今年のノーベル経済学賞は割合と私の専門分野に近いので、少しくらいは解説を加えておきたいと思います。基となる情報は、ノーベル委員会によるプレスリリース Microfoundations deliver macro insights です。
1960年代までの「どマクロ」とすら別称(蔑称)されるようなケインズ経済学的なマクロ経済モデルは、物価や消費などのマクロ経済変数相互間の統計的な関係に依存していましたが、1970年代の石油危機に由来するインフレの高進から限界が明らかになりました。その後のニューケインジアン・モデルでは、マクロ経済相互の間の関係ではなく、家計や企業のマイクロな意思決定、場合によっては将来への期待を組み込んだミクロ経済学的な最適化行動に基礎を置くマクロ経済モデルが用いられるようになっています。両教授はこれら新しいミクロ経済学の基礎のあるを持つマクロ経済学、そのモデル化の発展に貢献しました。このモデルは、現在では、金融政策や財政政策が景気や物価に与える影響を分析するため、世界の中央銀行や政府で活用されているところです。

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人口減少と高齢化の地域間格差

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日本の人口減少と高齢化について地域間格差の観点から分析した "Living in a Ghost Town: The Geography of Depopulation and Aging" と題するワーキングペーパーが全米経済研究所(NBER)から明らかにされています。まず、ワーキングペーパーの引用情報は次の通りです。

続いて、NBERのサイトからABSTRACTを引用すると次の通りです。

ABSTRACT
How do depopulation and population aging evolve differently across regions within a country, and what are their implications for aggregate economic activity and regional inequality? Using spatially disaggregated data from Japan over the past several decades, we show that rural areas have experienced significantly faster depopulation and aging than urban areas, driven by low fertility and sustained out-migration of young cohorts. Regions undergoing these trends face declining local amenities and rising per-capita public service costs. To study the future evolution and economic consequences of these dynamics, we develop and calibrate a dynamic life-cycle spatial general equilibrium model. The model predicts widening geographic disparities in depopulation, aging, and economic activity in the coming centuries. While subsidies to declining regions can lower regional inequality, they come at the cost of lower aggregate efficiency and higher public service expenditures.

ざっくりいって、このワーキングペーパーでは、日本の人口減少と高齢化を地域間格差の観点から分析し、2065年までの将来予測に基づいて政策的含意を検討しています。現在までの実績データと将来推計を用いていますが、まず、実績として観察されたデータから、地方部では若年層の流出と出生数の減少によって、都市部よりも急速に人口減少と高齢化が進行してきたことが示されています。このケースでは、都市部として東京都が代理変数に選ばれていて、ぎゃくに、five oldest prefecture として、高知県、島根県、徳島県、鳥取県、そして、山形県が取られています。さらに、人口減少地域では小売店や医療機関などの生活関連サービスが縮小する一方、人口1人当たりの地方政府支出が増加してきた、と明らかにされています。
次に、人口移動、出生、死亡、地域の生産性や生活環境を組み込んだ動学的な空間一般均衡モデルを構築して、将来予想をシミュレーションしています。その結果、全国的な人口減少が続いても地域間格差は縮小せず、若年層の都市集中と出生地の偏りが相互に作用して、東京への人口集中と地方部の高齢化が長期的に進行する、との予測結果が示されます。最後に、東京から高齢化の進んだ地域への所得移転の経済効果を分析し、地域間格差を緩和できるものの、全国の1人当たり所得の低下や財政支出の増加を招く可能性が示唆されています。
すなわち、財政政策、というか、所得の移転による人口減少対策には、地域間の公平性と経済全体の効率性のトレードオフが存在するというのが、本論文の重要な結論となっています。

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2026年10月11日 (日)

ピーターソン国際経済研究所の世界経済見通し

先週火曜日の10月6日、米国のリベラル系シンクタンクであるピーターソン国際経済研究所(PIIE)において Global Economic Prospects: Fall 2026 と題する会合が開催され、来年2027年の経済見通しについて明らかにされています。まあ、何と申しましょうかで、明後日の10月13日になれば、バンコクの現地時間で9時に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」 World Economic Outlook が公表される運びとなっていますので、参考意見程度の扱いなのかもしれませんが、一応、簡単に見ておきたいと思います。

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ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のサイトから経済見通しのヘッドラインとなる2025-27年の実質GDP成長率見通しのグラフを引用すると上の通りです。グラフのタイトルは、AI boom and global retreatment of energy prices likely to support global growthinto next year despite higher interest rate と題されており、金利は引き上げられるものの、AIブームとエネルギー価格の反落により世界経済の堅調な(solid pace)成長がサポートされる、という結論です。世界経済の成長率は、2025年+3.5%から2026年+3.2%、そして、2027年+3.1%と徐々に減速するものの、景気後退に至るルートではない、と見込まれています。米国の成長率は、20276年+2.3%、2027年+2.2%と堅調であり、日本も2026年+1.0%、2027年+1.0%とほぼほぼ潜在成長率見合いとの予想です。

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2026年10月 9日 (金)

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook 分析編

今週に入って、週末からの世銀・IMF総会@バンコクを前に、「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook: Resilience under Strain, Urgent Choices の Analytical Chapters 分析編第2章と第3章がすでに公表されています。各章のタイトルは次の通りです。なお、どうでもいいことかもしれませんが、公表のタイミングは章の順ではなく、先に第3章が10月5日に、続いて、第2章が10月6日に、それぞれ公表されています。また、見通し編である第1章も含めたフルリポートは10月13日公表予定とされています。

Ch. 2
Navigating a Shock-Prone World: Lessons from Cost-of-Living Crises
Ch. 3
Intangible Yet Real: Spillovers from Corporate Income Taxation

まず、分析編第2章では、現在のインフレについて、単なる物価上昇として捉えるのではなく、章タイトルにあるように生計費危機(Cost-of-Living Crises)として分析しています。すなわち、食料、エネルギー、交通、住宅関連費などの生活必需品が急激に値上がりする点を、通常のインフレとは区別して分析する。もちろん、主因は供給ショックに基づく世界的な商品価格上昇であり、したがって、必需品価格の上昇は実質賃金を低下させ、インフレ期待を押し上げることとなります。しかも、必需品への支出比率が高い低所得層ほどインフレによるダメージが大きく、2021~24年には低所得国を中心に貧困が従来のCPIベースの推計以上に拡大した、と分析しています。ですので、政策対応としては、直接的な価格規制はもとより、価格抑制のための生産者への補助金、あるいは、VATや物品税減税による価格抑制策よりも、脆弱な世帯を対象とした一時的な所得移転がもっとも費用対効果がいい、と結論しています。まさに、現在の高市内閣がこの真逆を行っていると考えるのは私だけではないと思います。

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続いて、上のグラフは、分析編第2章のリポートから Figure 2.4. Distributional Dynamics around Cost-of-Living Crises を引用しています。5分位別のインフレの影響を考えており、すべてのパネルで低所得層ほど高いインフレに直面し、貧困が悪化させられていることが示されています。特に、一番上のパネルでは、国際的に見て低所得国ほど影響が大きいことも同時に示されています。

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続いて、上のグラフは、分析編第2章のリポートから Figure 2.6. Macroeconomic Impact of Fiscal Policy Interventions during Cost-of-Living Crises を引用しています。政策対応の核心が見て取れます。すなわち、「価格を抑える」より「所得を補償する」方が政策目的に適しています。所得支援策は消費を下支えする一方、平均的にはインフレやインフレ期待を有意に押し上げることなく、財政収支への影響も統計的に有意ではありませんが、これに対して、価格抑制策は必需品インフレを低下させることは確かながら、消費への有意な効果はなく、財政収支を悪化させる、という結果が示されています。

さらに、第3章では企業分野の法人税引下げ競争、世界的な各国間での税率競争について分析しています。法人税競争は依然として存在し、近隣・類似国の法定税率が1%ポイント低下すると、自国税率も約0.4%ポイント低下するとの推計結果を示しています。ただし、2010年代のBEPSなどの租税回避対策以降、法定税率を引き下げる競争は弱まっていることも事実です。法人税率の国際差はFDI、利益移転、投資立地を通じて大きな国際的波及を生み、租税回避対策は利益移転への反応を弱める一方、企業の実物投資の税率感応度を高めている、と示唆しています。また、法人税減税は投資・イノベーションを促す一方、法人税減税を国債発行に頼れば、財政赤字の拡大から世界金利上昇と海外投資のクラウディングアウトを招く可能性がある点を強調しています。他方で、国債発行ではなく、公共投資を抑制して財源を確保すれば、長期的な生産性を損なう可能性があるとも指摘しています。そうではなく、強力な租税回避防止策を取ることによって、税ベースを守り成長を支えることができる、と示唆しています。したがって、法人税率引下げの競争ではなく、租税回避防止、投資誘因の適切な設計、財政余力の維持を組み合わせることが重要、と結論しています。

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続いて、上のグラフは、分析編第3章のリポートから Figure 3.15. Macroeconomic Effects of Tax Competition を引用しています。法人税競争の税収・利益移転・実質GDPへの総合的影響を、主要先進国・その他先進国・主要新興国等に分けて示しています。特に、先進国の法人税引下げ競争では、税収減と利益移転の縮小が生じる一方で、GDPへの効果は単純に減税が成長に直結するわけではないことを確認しています。

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続いて、上のグラフは、リポートの出現順とは逆になりますが、分析編第3章のリポートから Figure 3.6. Spillovers from Domestic Tax Cuts: Empirical Estimates を引用しています。もっとも重要な政策インプリケーションのひとつである、租税回避防止策の効果を示しています。新興国では法人税率を引き下げなくても、租税回避のコストを約10%高めれば、低税率国への利益移転が約10%減少し、法人税収は+0.3%ポイントほど増加し、さらに、実質GDPも+0.04%程度押し上げられる、との試算結果が示されています。

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最後に、目を国内に転じると、本日、総務省統計局から8月の家計調査が公表されています。ヘッドラインとなる2人以上世帯の消費支出の前年同月比は、実質▲3.1%の減少、名目も▲1.0%の減少となりました。上のグラフの下のパネルのピンクの実質消費の折れ線グラフを見ても明らかな通り、2010年年初に110~115くらいだった実質消費指数は、15年余りを経て直近では95~100くらいに落ち込んでいます。それだけ、国民生活が貧しくなっていることが読み取れます。

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2026年10月 8日 (木)

現状判断DIが5か月連続のプラスとなった9月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した8月の経常収支

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.6ポイント上昇の47.0となった一方で、先行き判断DIは▲0.9ポイント低下の47.4を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+4兆620億円の黒字を計上しています。まず、それぞれの統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

街角景気は9月は0.6ポイント上昇、秋物・大型連休が支え 住宅関連には金利上昇の影響も
内閣府が8日に発表した9月の景気ウオッチャー調査で現状判断DIは47.0となり、前月から0.6ポイント上昇した。5カ月連続のプラスとなった。秋物の衣料品販売や大型連休中の集客が支えになったとの声が出た一方、住宅関連からは金利上昇の影響が出始めているとの指摘もあった。
内閣府は、ウオッチャーの景気の見方を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
指数を構成する3部門では、家計動向関連が前月から1.3ポイント上昇し46.8となった。回答者からは「秋への移行が順調で、秋物が好調に推移している」(東北=衣料品専門店)、「大型連休のおかげで売り上げが非常に伸びた。また、連休が長かったため遠方からの客も多かった(甲信越=観光型旅館)といったコメントが寄せられた。
一方、住宅関連では「住宅ローン金利の上昇や、建築費、住宅価格の高止まりなどで、住宅取得に対する消費者の慎重な姿勢が強まっている(近畿=その他住宅[展示場])との声も聞かれた。
雇用関連は0.2ポイント上昇し49.0となった。一方、企業動向関連は47.1と、前月から1.1ポイント低下した。「資材価格や人件費の上昇が利益を圧迫してきている」(四国=建設業)という。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月から0.9ポイント低下の47.4。6カ月ぶりマイナスとなった。
回答者からは「金利の上昇や車両価格の値上がりなど買い控えになる要素がある」(北関東=乗用車販売店)、「各地での自然災害発生による旅行控えが起こると、今後の受注に悪影響を及ぼす」(沖縄=レンタカー)といった声が上がった。
内閣府は先行きについて「中東情勢による不透明感が残ることに加え、自然災害の影響に対する懸念もみられるが、持ち直しの動きが続くとみられる」とした。
経常黒字、8月は12%増の4兆620億円 海外直接投資益の黒字拡大
財務省が8日発表した8月の国際収支状況速報によると、経常収支は4兆0620億円の黒字だった。黒字額は前年同月から12%増え、ロイターが集計した民間調査機関の予測中央値3兆1946億円を大きく上回った。
内訳をみると、貿易収支は6877億円の赤字と、前年の黒字から赤字に転化した。原粗油等の輸入増が背景にある。
サービス収支は1158億円の赤字で、赤字幅は前年から1509億円縮小した。訪日外国人客数は減少したものの、堅調な訪日需要で旅行収支の黒字幅が拡大した。
第1次所得収支は5兆1332億円の黒字と、黒字額は前年比で21.6%増え、比較可能な1985年以降で過去最大を記録した。海外子会社からの配当金受け取りなど直接投資収益の黒字幅拡大が主因。為替でドル/円が前年比7.5%上昇、ユーロ/円が7.2%上昇と、円安が進行したことも第1次所得収支の大幅な黒字を支えた。
農中総合研究所の南武志・理事研究員は、円安は一服したものの、引き続き海外からの所得収支の黒字増加が原油高による貿易赤字を相殺していると分析。所得収支の黒字が国内に還流されずに海外の再投資に振り向けられる傾向にあることは「人口減少下の国内需給を見ると、ある意味仕方がない」とした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただ、景気ウォッチャーの記事は内閣府からの公表直後のファーストショットですので、その後、追加や修正が入っているかもしれません。続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では、米国とイスラエルのイラン攻撃に端を発する中東戦争により大幅なマインド低下により、4月統計で40.8と直近での底となった後、5月統計から一貫して上昇を続けており、本日公表の9月統計でも前月から+0.6ポイント上昇して、47.0を記録しています。ただし、先行き判断DIは前月から▲0.9ポイントの低下を示しており、先行きの慎重姿勢が見られます。また、現状判断DIでは家計動向関連が前月から+1.3ポイント上昇したものの、企業動向関連が▲1.1ポイント低下し、雇用関連はほぼ横ばいで前月から+0.2ポイント上昇しています。さらに、家計動向関連の中でも多くの項目が上昇しているのですが、住宅関連だけは大きく低下しています。また、企業動向関連でも製造業・非製造業とも低下を記録しています。家計動向関連は、8月の熊本地震や最近までの豪雨などの自然災害の影響を脱しつつあり、特に、9月のシルバーウィークの恩恵があった一方で、金利引上げないし先高感の悪影響もあったものと私は受け止めています。特に、家計動向関連のうちの住宅関連、また、企業動向関連については金利先高感のネガな影響を強く受けている可能性が高く、引用した記事にもあるように、自動車販売などのローンを利用するような高額消費についても先行きの金利上昇の影響が出る可能性が懸念されます。景気判断理由の概要については、内閣府のプレスリリースの中から、シルバー・ウィークに関するものを拾うと、「例年9月は秋の紅葉シーズンと夏休みの間で客の来訪が減る時期だが、今年は大型連休のお陰で売上が非常に伸びた。また、連休が長かったため遠方からの客も多かった (甲信越=観光型旅館)。」といった理由が上げられていました。逆に、企業動向関連では引き続きコスト上昇が重しとなっているようで、「資材価格や人件費の上昇が利益を圧迫してきている (四国=建設業)。」という見方があります。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事の通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスは+3兆円余りの黒字ということでしたし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じように+3兆円超の黒字の見込みでしたので、実績の+4兆円超の経常黒字はやや上振れした印象です。ただし、季節調整済み系列の統計では、上のグラフに示した通り、7月統計の+3兆円をやや下回る黒字に続いて、8月は+2.5兆円超の黒字を計上しています。季節調整済みの系列を見る限り、昨年来のトランプ関税によって貿易収支や貿易・サービス収支がかく乱されていたのが、元に戻りつつある、というのは通関統計でも確認されているところです。ただし、6月以降の統計の貿易収支を見る限り、大きな赤字を記録していることがグラフから読み取れます。引用した記事にあるように、中東戦争に起因する石油価格の高騰により貿易赤字が発生していますが、海外への投資に伴う利子や配当の収支を表す第1次所得収支の黒字により相殺されています。従来からこのブログで主張しているように、現状を見る限り、対外不均衡の問題が経常収支にせよ、貿易・サービス収支にせよ、たとえ赤字であっても特段悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても、日本の国際競争力が高いわけでもなく、ましてや特段めでたいわけでもない、と私は考えています。

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2026年10月 7日 (水)

6か月ぶりに下降した8月の景気動向指数と8か月連続で実質賃金が増加した8月の毎月勤労統計

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。景気動向指数のヘッドラインとなるCI先行指数は前月から+0.4ポイント上昇の118.0、CI一致指数は6か月ぶり下降して▲1.9ポイント下降の118.7を記録しています。毎月勤労統計の方は、賃金指数について季節調整していない原系列で見て、名目の現金給与総額は311,364円と前年同月比+3.8%増となり、消費者物価上昇率を上回ったため実質賃金は前年同月比で+1.5%増と、8か月連続のプラスを記録しています。まず、各統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気動向指数8月は前月比1.9ポイント低下、6カ月ぶりマイナス
内閣府が7日に公表した景気動向指数速報(2020年=100)によると、足元の景況感を示す一致指数は前月比1.9ポイント低下し118.7となった。6カ月ぶりのマイナス。基調判断は「改善を示している」で据え置いた。
一致指数を構成する経済指標のうち、熊本地震や台風の影響による自動車やアルミ建材の減産により、鉱工業用生産財出荷指数や耐久消費財出荷指数、輸出数量指数などが悪化したことが響いた。
一方、先行指数は前月比0.4ポイント上昇の118.0と2カ月連続でプラスだった。12年7カ月ぶりの高水準となった。中小企業売り上げ見通しや消費者態度指数などが押し上げに寄与した。
8月実質賃金は前年比1.5%増、8カ月連続プラス=毎勤統計
厚生労働省が7日公表した8月の毎月勤労統計によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年比1.5%増加し、8カ月連続で対前年で伸びた。ただ伸び率は2カ月連続で鈍化した。消費者物価が2カ月連続で2.2%の伸びと高止まりしていることが要因。
厚労省によると、実質賃金の8カ月連続の伸びは2017年1月まで続いた12カ月連続の伸び以来の記録。
名目賃金に当たる現金給与総額は31万1364円で、前年比3.8%増加した。前月の4.3%増からは鈍化したものの、7カ月連続して3%超の伸び率が続くのは34年5カ月ぶり。
名目賃金のうち基本給に当たる所定内給与は同3.8%増の27万7861円と、前月と同水準の伸びを維持した。
毎月勤労統計で使う消費者物価指数(2020年基準=100)は、持家の帰属家賃を除く総合で実質化したもの。8月は前年比2.2%上昇し、7月と同水準の伸びだった。
実質賃金の伸びが継続しているのは、堅調な所定内給与と前年は3-4%台で上昇していた消費者物価が今年は1-2%台に鈍化してきたことが主因、と厚労省は分析する。賃金の基調に変化は見られないが引き続き実質賃金の動向を予断を持たずに注視する意向としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは次の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、CI一致指数が前月から▲2.0ポイントの低下と予想されていました。実績の一致指数▲1.9ポイントの下降はコンセンサスからやや下振れしました。繰返しになりますが、8月統計のCI一致指数は、6か月ぶりの下降となります。さらに、内閣府のプレスリリースによれば、CI一致指数は、3か月後方移動平均は前月から+0.13ポイントの上昇、8か月連続の上昇となり、加えて、7か月後方移動平均も前月から+0.10ポイント上昇し、これも8か月連続の上昇です。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「改善」で据え置かれています。先行きに関しては、私はいろいろと紆余曲折を経つつも、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そう簡単には日本経済が景気後退局面に入ることはない、と考えています。ただし、そもそも、米国経済でも日本経済でもまだまだインフレが高止まりしており、特に、日本銀行が金利引上げに前のめりになっていますし、日本ではすでに景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。ただ、米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東戦争は、私はそれほど情報を持っているわけではありませんが、一応の膠着状態でニュースも少ないようですので、日米ともソフトランディングの確率はそれほど低くないと考えるべきです。石油価格は指標となるWTI先物がバレル当たり90ドル前後で推移しています。東証の日経平均株価は7万円を超える高値圏で推移していますが、長期金利が3%超となっている中で、多くのエコノミストが円高を展望して待ち望んでいる金融引締めは景気を下押しすることが明らかです。日米同時リセッションの可能性がまったく否定されるわけではありません。
一応、本日公表の統計のうち、CI一致指数の前月差▲1.9ポイント下降への寄与度を見ておくと、引用した記事にもあるように、鉱工業用生産財出荷指数が▲0.64ポイントともっとも大きく、次いで、耐久消費財出荷指数が▲0.44ポイント、輸出数量指数が▲0.35ポイント、生産指数(鉱工業)が▲0.32ポイント、などとなっています。出荷や生産がマイナスに寄与したのは、いくぶんなりとも、熊本地震の影響であろうと考えるべきです。CI先行指数については、中小企業売上げ見通しDI、消費者態度指数、日経商品指数(42種総合)などのプラス寄与が大きくなっています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上のパネルは、名目及び実質の賃金指数の前年同月比の推移であり、下は季節調整済みの所定外労働時間指数です。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。まず、賃金については、8か月連続で前年同月比で実質賃金がプラス、8月統計では+1.5%増というのは、引用した記事にもあるように、現金給与総額が前年同月比で+3.8%増となった上に、帰属家賃を除く消費者物価上昇率が+2.2%にとどまったためです。ただし、8月統計の速報ベースではなく確報ベースの実質賃金の前年同月比伸び率を見ると、6月統計の+2.2%から7月統計では+2.0%、そして、本日公表された速報ベースながら8月統計では+1.5%と、徐々に実質賃金の伸びが縮小してきています。最近時点での消費者物価指数(CPI)の前年同月比で見たインフレ率が+2%ほどですので、賃金上昇がようやくインフレを上回る状態になった、あるいは、逆から見て、政策的に名目の賃金上昇率を下回るインフレに抑制されているということが出来ます。要するに、政策的な物価抑制策がな死には、実質賃金がプラスにはならない、ということが出来ます。したがって、引用した記事にもあるように、名目賃金上昇率とともに物価抑制策が、実質賃金の伸び、ひいては、消費の増加のカギとなります。

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2026年10月 6日 (火)

韓国における食料廃棄税の効果やいかに?

"Does a Food Waste Tax Work? Evidence from Quasi-Experiments in South Korea" と題する学術論文を読みました。査読を経て、The Review of Economics and Statistics という経済学分野でインパクトファクターの高い学術誌への掲載が予定されています。まず、論文の引用情報は次の通りです。

続いて、論文のAbstractをジャーナルのサイトから引用すると次の通りです。

Abstract
Globally, one-third of food is discarded, generating lifecycle greenhouse gas emissions comparable to those from road transport. Further, waste management is among the largest municipal budget items worldwide. Exploiting plausibly exogenous unit-based food waste tax expansions in South Korea, I find that the tax substantially reduces food waste by discouraging excessive grocery purchases. Households sustain food intake despite buying less, but at the cost of additional time spent on meal production. Nonpecuniary motivations appear central to the policy’s e!ectiveness, and the tax is likely welfare-improving because more e"cient food use not only reduces externalities but also offsets time costs.

要するに、ざっくりいって、韓国で2005年以降段階的に導入・拡大された食品廃棄物の従量制課税が、家計の食品廃棄行動に与えた影響を検証し、とてもポジな結果を導いています。すなわち、自治体、住宅タイプ、導入時期の違いを利用した準実験的な差の差(DiD)分析の結果、課税により家計の食品廃棄量は年間21%(49kg)、食料品購入量は5.5%(41kg)減少した、と推計しています。他方、家庭内での食事量・栄養摂取量はほぼ維持されています。したがって、食品廃棄が減ったのは購入を減らしたからであり、購入を減らしても食生活の水準は低下しておらず、家計は食品の購入とともに、保存・調理・食事計画などに費やす時間を増やして廃棄を抑制しており、追加的な時間コストは年間約175ドルと推計されています。食料品購入費の節約約169ドルがこれをほぼ相殺しており、著者は外部不経済の削減も含め、制度が福祉改善につながる可能性を示唆している、と結論しています。

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以上の結論を明確に示しているのが Figure 2: The E!ect of the Unit Tax on Food Waste and Purchases となります。論文から引用すると上の通りです。左のパネルでは、自治体における課税対象世帯比率の増加幅と、1世帯当たり食品廃棄量の変化をプロットしています。課税対象比率が大きく上昇した自治体ほど、食品廃棄量が大きく減少するという負の相関関係が明瞭に示されます。一方、右のパネルはイベントスタディで、課税導入前の係数はほぼゼロであり、食品廃棄物風斧導入後に食品購入量が▲5%ほど低下して、その効果が持続していることが示されています。ですので、課税により食べる量を減らすのではなく、買過ぎを抑制し、保存・調理・食事計画を工夫することによって、食品廃棄を減らしているという点です。食品廃棄量21%減に対して食料購入量は5.5%減にとどまっているのが特徴的といえます。ですので、家庭内での食料消費・栄養摂取は維持されています。

とても参考になる分析結果だと私は受け止めています。韓国の食料自給率は、Sustainable Japan のサイトの記事「【韓国】政府、2027年までに食料自給率を55.5%へ。食料安全保障強化計画策定」によれば、約40%強らしいのですが、日本は40%を下回っています。日本はすでに賃金水準などで韓国を下回っていることは広く知られていますが、こういった日本より進んだ韓国の例を参考に、日本でもフードロスを削減し、食料自給率を上げる試みを進めるべきではないか、と私は考えています。

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2026年10月 5日 (月)

小幅に低下した9月の消費者態度指数

本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。9月統計では、前月から▲0.1ポイント低下し35.4を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数9月は前月比0.1ポイント低下、1年後の物価上昇見通し拡大
内閣府が5日公表した9月の消費動向調査によると、足元の景況感を示す消費者態度指数は前月比0.1ポイント低下の35.4となり、5ヶ月ぶりにマイナスに転じた。基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
消費者態度指数を構成する4指標のうち、「収入の増え方」と「雇用環境」は改善したものの、「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」の悪化幅が大きかった。
1年後の物価見通しは、上昇するとの回答比率が90.6と前月比1.6ポイント拡大し、2ヶ月ぶりに90%を超えた。1年後の物価が2%以上上昇するとの回答比率が前月比で増えた。コメ以外の食料品の価格上昇が影響した可能性は推察できると内閣府ではみている。
2022年のウクライナ侵略以降の物価上昇により、物価上昇見通しの上昇と「暮らし向き」判断などへの影響が推察されるが、内閣府では、9月の消費者態度指数への物価の影響は明確に判断できないとしている。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数を構成する4項目の指標について前月差で詳しく見ると、「暮らし向き」が▲0.3ポイント低下し33.8、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.2ポイント低下して27.3、とこの2項目は低下した一方で、「収入の増え方」が+0.1ポイント上昇し40.5、「雇用環境」も+0.1ポイント上昇して40.0と、消費者態度指数を構成する4コンポーネントが低下2項目、上昇2項目に分かれました。消費者態度指数としては▲0.1ポイントの小幅な低下であり、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いています。先々月の7月統計で上方修正してから、8-9月は据置きとなっています。私が従来から主張しているように、いくぶんなりとも、消費者マインドは物価上昇=インフレに連動している部分があります。総務省統計局による消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除くコアCPI上昇率は、政府によるガソリン暫定税率の廃止や政策効果もあって、今年2026年4-5月には+1.4%まで減速していますが、7月統計では+1.8%、8月も+1.7%と、日銀の物価目標+2%を下回っているとはいえ、やや加速を示しています。インフレとデフレに関する消費行動は、1970年代前半の狂乱物価の時期は異常な例としても、1990年代後半にデフレに陥る前であれば、インフレになれば価格が引き上げられる前に購入するという消費者行動だったのですが、バブル経済崩壊後の長い長い景気低迷期とさらにデフレを経て、物価上昇による価格の先高観から消費が進むよりは、実質所得の減少が目立って実感されるようになったのか、消費者が買い控えをする行動が目につくように変化したのかもしれません。この当たりの物価と消費の分析は、もう少しデータがそろえば必要となります。
また、消費者態度指数以上に注目を集めている1年後の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が、直近のピークだった今年2026年4月統計の58.1%から最新の今年2026年8月統計では46.1%に低下していましたが、本日公表の9月統計では47.6%の小幅に上昇しています。他方で、引用した記事にもあるように、物価上昇との回答が今年2026年8月には89.0%ととうとう90%を下回ったのですが、9月統計では90.6%と上昇しています。これも、消費者物価指数(CPI)の動向に併せた適合的な期待形成ではないかと私は受け止めています。

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2026年10月 2日 (金)

引き続き底堅いものの先行き注視する必要ありそうな8月の雇用統計

月初ながら閣議日である本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも8月の統計です。失業率は前月からわずかに上昇して2.5%、有効求人倍率は前月から横ばいの1.18倍を記録しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月の有効求人倍率1.18倍、前月から横ばい 失業率は2.5%に上昇
厚生労働省が2日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍と前月から横ばいだった。デジタルトランスフォーメーション(DX)による省人化やスポットワークの活用が進んで新規求人が減った。
総務省が同日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は2.5%と前月から0.1ポイント上がった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。有効求人数、有効求職者数ともに前月比0.7%増えた。厚労省の担当者は「短い日数や時間など柔軟な働き方を希望する高齢者や子育て中の人が増えている」と話す。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.4%減った。減少は2カ月連続。
主要産業別では宿泊・飲食サービス業が11.1%減と最も減少率が大きかった。卸売・小売業で10.2%減、生活関連サービス・娯楽業で5.7%減と続いた。

いずれも的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは次の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの統計であり影を付けた部分は景気後退期を示しています。通常、失業率が景気に対して遅行指標、有効求人倍率が一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率が先行指標と考えられています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率が2.4%、有効求人倍率は1.18倍と見込まれていました。なお、ロイターの記事でもまったく同じ事前予測調査の結果が示されています。ですので、本日公表された実績で、失業率2.5%はやや市場の事前コンセンサスから下振れし、有効求人倍率1.18倍は一致しました。ただ、それほど大きな乖離ではありませんでした。ですので、雇用統計を見る限り、雇用情勢は引き続き悪くなく底堅いと私は考えています。特に、失業率は小幅に上昇しましたが、総務省統計局のプレスリリースによれば、季節調整済みの系列では失業者が+10万人増加しているのですが、季節調整していない原系列の統計で見て、就業者が前年同月と比べて+14万人増加している一方で、失業者は▲2万人減少しています。まあ、どちらを見るかはビミョーなところながら、それほど雇用が悪化しているという実感はなさそうな気がします。
ただし、ひとつだけ気がかりなのは、引用した記事にもあるように、雇用の先行指標と見なされている新規求人が減少している点です。厚生労働省のプレスリリースでは引用した記事と同じように、「8月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると3.4%減となりました。」と発表していますし、上のグラフの下のパネルは季節調整済みの系列をプロットしていますが、やはり、前月7月の80.0万人から8月統計では78.7万人に▲1.5%減少しています。日経新聞の記事「8月新規求人3.4%減 最低賃金引き上げ前、企業に採用控えの動き」では、10月1日から順次適用が始まる最低賃金の引上げに際して、「賃上げ原資に限りがある中小企業を中心に求人控えが進む懸念がある」と指摘しています。厚生労働省のプレスリリースを見ると、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、8月統計で新規求人数が2ケタの減少を示しているのは、宿泊業・飲食サービス業の▲11.1%と卸売業・小売業の▲10.2%となっています。この2業種については、先月7月統計公表時にも指摘したように、無人レジとか配膳ロボットなどにより省力化の進んでいる業種であり、必ずしも日経新聞が指摘するような最低賃金引上げによるマイナスの影響だとは考えられませんが、雇用については、景気拡大の後半局面でもあり注視する必要がありそうです。

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