2018年9月16日 (日)

最新刊のエコノミスト誌の Education spending の元統計やいかに?

最新号のエコノミスト誌に Education spending と題して、OECD諸国ではGDP比で平均的に5%くらい教育費に支出している "OECD countries spent an average of 5% of GDP on education in 2015." との書き出しで始まる記事があるんですが、なぜか、その記事に引用されたグラフには日本が含まれていません。
私のこのブログではOECDなどの国際機関のリポートを取り上げるのをひとつの特徴としており、私自身も国際派のエコノミストとしてそれなりに詳しくなくもないわけですから、9月11日に公表されたばかりの OECD Education at a Glance 2018 であろうと当たりをつけてリポートを確認すると、p.258 に Figure C2.1. Total expenditure on educational institutions as a percentage of GDP (2015) と題して以下のグラフがありました。

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エコノミスト誌のグラフは高等教育 Tertiary education への教育費支出だけなんですが、リポート p.258 にはトータルの教育費支出のGDP比があります。やっぱり、日本はOECD平均からはかなり見劣りがしています。引退世代への手厚い給付のために、現役世代や子供や家庭や教育への目配りが行き届いていないおそれがあるんではないかと私は危惧しています。

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2018年9月13日 (木)

大型案件受注で大きく伸びた機械受注と上昇幅がやや鈍化した企業物価!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+11.0%増の9,186億円を示し、他方、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+3.0%と前月と同じ上昇幅を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、7月11.0%増 製造業・非製造業とも伸びる
内閣府が13日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比11.0%増の9186億円だった。増加は3カ月ぶりで、伸び率は2016年1月以来の大きさだった。製造業、非製造業ともに受注額が伸びた。
7月の受注額は製造業が11.8%増の4268億円だった。増加は2カ月ぶり。17業種のうち12業種が増加した。化学工業やはん用・生産用機械などの受注が伸びた。
非製造業は10.9%増の4941億円。2カ月ぶりに増加した。通信業や運輸業・郵便業などの受注が伸びた。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は13.9%増だった。
官公需の受注額は前月比57.0%増の3587億円と比較可能な05年4月以降で2番目の高水準だった。防衛関連などで大型案件があった。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。7~9月期の「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整値)の見通しは前期比0.3%減となっている。
8月の企業物価、前年比3.0%上昇 原油高など背景、上昇傾向は一服
日銀が13日に発表した8月の国内企業物価指数(2015年=100)は101.7で前年同月比3.0%上昇した。指数が前年実績を上回るのは20カ月連続。春先から続く原油高による化学製品の価格上昇などが押し上げた。
前月比では横ばいだった。調査統計局によると「米中の貿易摩擦問題への警戒感や新興国経済への懸念から、銅などの資源価格が下落した」といい、指数の上昇傾向は一服しつつある。
円ベースの輸出物価は前年同月比で2.9%上昇、前月比では0.3%下落した。輸入物価は前年同月比で12.2%上昇。前月比では0.6%下落した。ともに前月比での下落は5カ月ぶり。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示し、消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは406品目、下落は263品目だった。上昇品目と下落品目の差は143で、7月の確報値の153から減った。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、コア機械受注については、前月統計が2ケタ減でしたので、ある程度の反発は予想されており、例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは中心値で前月比+5.5%増となっていて、レンジでも上限は+9.0%増でしたので、この上限を上回る大きな伸びとなっています。ただし、最近数か月はかなり荒っぽい動きを示しており、季節調整済のコア機械受注の前月比で見て、4月に+10.1%増の後、5月▲3.7%減と6月▲8.8%減で4月の大きなプラスは吹っ飛び、7月は▲11.0%増で5~6月のマイナスをカバーする、という2~3か月ごとに大きなプラスが出ては、その後は反動減もあってマイナスが続く、というとても細かい周期性があります。大型案件の受注が生じるという経済活動の実態を統計が表しているということなんでしょうが、それなら、毎月の統計にはせずに四半期で調査するという方法もアリなのかもしれません。取りあえず、7月の受注では、引用した記事にもある通り、防衛関連で大型案件の受注があった、ということのようですから、統計作成官庁である内閣府では基調判断は「持ち直しの動きに足踏み」で据え置いています。先月の統計発表時に同時に公表された7~9月期コア機械受注の見通しは前期比▲0.3%減ですが、マイナス見通しの四半期スタートの7月の結果としてはまずまず堅調な滑り出しと私は受け止めています。先行きについても、9月1日に公表された4~6月期の設備投資のような大きな増加は続かないと私は予想していますが、人手不足を背景に設備投資は引き続き緩やかな増加を示すものと期待しています。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、PPIのうち国際商品市況の影響を強く受ける石油・石炭製品が7月の前年同月比+26.2%上昇に続いて、8月も+25.3%の上昇と、引き続き国内物価上昇を牽引しています。石油価格ほどではありませんが、同様の素材関連として、化学製品+4.8%や鉄鋼+4.1%などの上昇もやや大きくなっています。私は中国の景気回復の足取りがそこまで、というか、国際商品市況における石油価格をここまで押し上げるだけの伸びを見せるとは思わなかったんですが、中国をはじめとする新興国の景気回復以外の要因で石油価格が上昇しているように思えてなりません。そして、我が国の物価は金融政策動向よりもエネルギー価格に敏感に反応しているようです。他方で、国内物価の前年同月比上昇率で見て、4月+2.0%の後、5月+2.6%、6月+2.8%、7月+3.0%に続いて8月も7月と同じ+3.0%ですから、企業物価の上昇率はやや鈍化しつつある、という見方もできるような気がします。

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2018年9月11日 (火)

4-6月期2次QEは設備投資を中心に1次QEから上方改定され年率+3.0%の高成長!

昨日は、和歌山で開催された経済統計学会の全国研究大会での学会発表のためフォローし切れなかったんですが、内閣府から4~6月期のGDP統計速報、いわゆる2次QEが公表されています。1次QEの前期比年率+1.9%成長から2次QEでは+3.0%成長に大きく上方改定されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期実質GDP、年率3.0%増に上方修正
内閣府が10日発表した2018年4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期比0.7%増、年率換算で3.0%増だった。速報値(年率1.9%増)から大幅な上方修正で、成長率が年率3%を超えるのは16年1~3月期以来の9四半期ぶりだ。民間企業の設備投資が速報段階から大幅に上振れした。
4~6月期の内外需の寄与度をみると内需が0.9%分の押し上げ寄与となり、内需主導の成長を示した。内需の前期比でみた伸び率は15年1~3月期以来の13四半期ぶりの大きさとなった。一方、外需は0.1%分の押し下げ寄与となった。
内需のうち民間企業の設備投資は実質で前期比3.1%増と、速報値の1.3%増から大きく上振れした。財務省が3日発表した4~6月期の法人企業統計で設備投資額の前年同期比伸び率は約11年ぶりの大きさとなった。運輸・郵便や電気、化学の設備投資が堅調だった。
GDPの6割を占める個人消費は0.7%増と速報値から横ばい。18年1~3月期の0.2%減からプラス成長に戻した。伸び率は17年4~6月期(0.8%増)以来となる1年ぶりの高い水準だ。自動車がけん引し、飲食サービスも小幅に上方修正に寄与した。
民間住宅は2.4%減と、速報値の2.7%減からマイナス幅が縮小した。不動産仲介手数料が上方改定となった。
民間在庫のGDPに対する寄与度は0.0%と速報値から横ばい。4~6月期は在庫の積み増しや取り崩しに対するGDPへの寄与度は軽微だった。
生活実感に近いとされる名目GDPの改定値は0.7%増、年率で2.8%増。名目ベースでも速報値の年率1.7%増から大幅な上方修正で、17年7~9月期(3.2%増)以来の高い水準だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/4-62017/7-92017/10-122018/1-32018/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.5+0.6+0.2▲0.2+0.5+0.7
民間消費+0.8▲0.7+0.3▲0.2+0.7+0.7
民間住宅+1.3▲1.4▲3.0▲2.5▲2.7▲2.4
民間設備+0.1+1.3+0.9+0.3+1.3+3.1
民間在庫 *(▲0.1)(+0.4)(+0.2)(▲0.2)(+0.0)(+0.0)
公的需要+1.4▲0.5▲0.1▲0.1+0.2+0.2
内需寄与度 *(+0.8)(+0.0)(+0.4)(▲0.3)(+0.6)(+0.9)
外需寄与度 *(▲0.3)(+0.6)(▲0.1)(+0.1)(▲0.1)(▲0.1)
輸出+0.2+2.1+2.1+0.6+0.2+0.2
輸入+1.9▲1.5+3.3+0.2+1.0+0.9
国内総所得 (GDI)+0.6+0.6+0.0▲0.5+0.4+0.7
国民総所得 (GNI)+0.5+0.8▲0.0▲0.7+0.7+1.0
名目GDP+0.8+0.8+0.3▲0.4+0.4+0.7
雇用者報酬+0.6+0.7▲0.2+1.2+1.9+1.8
GDPデフレータ▲0.3+0.1+0.1+0.5+0.1+0.1
内需デフレータ+0.4+0.5+0.6+0.9+0.5+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに回帰し、赤い消費と水色の設備投資がプラスで大きく寄与している一方で、黒の外需(純輸出)がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

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テーブルとグラフを見れば明らかなんですが、1次QEから2次QEへの変更の大きなポイントは設備投資です。法人企業統計に沿った上方改定といえます。その他の需要項目に関しては、住宅津市がややマイナス幅を縮小改定されたものの、大きね変更はなく、この設備投資の情報改定が内需寄与度を押し上げて高成長をもたらしたといえます。ただ、足元の7~9月期についてはプラス成長を維持することすら危うい、と大きのエコノミストは見込んでいるようです。すなわち、景気局面そのものがかなり成熟化しているという自律的な要因のほかに、猛暑は別としても、豪雨や台風に北海道地震といった災害がこの期間に目白押しで、マインドの悪化や外出の手控えから消費需要を押し下げたり、あるいは、生産や物流などの供給面からの影響も含め、景気にはマイナス材料となった可能性が高いと私は受け止めています。その意味で、4~6月期GDPの高成長は過去の数字かもしれません。加えて、さらに先行きの成長についても、米中間の貿易戦争に代表されるような通商摩擦がリスクとして上げられます。

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上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。内需主導の成長を裏付けているのは設備投資とともに消費なわけですが、上のグラフに見られる通り、その背景には順調な増加を続ける雇用者報酬があります。インバウンド消費も順調な拡大を続けているものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大局面は終了に向かっている印象ですし、国内労働市場の人手不足に伴う正規雇用の増加や賃金上昇により、雇用者報酬が順調に伸びを示しています。人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加圧力となっており、内需主導の成長をバックアップしていると考えるべきです。

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最後に、昨日は4~6月期GDP統計2次QEだけでなく、景気ウォッチャーと経常収支も公表されていますが、景気ウォッチャーのグラフだけ上にお示ししておきます。いずれも季節調整済の系列で見て、現状判断DIは前月差+2.1ポイント上昇の48.7を、先行き判断DIは前月差+2.4ポイント上昇の51.4を、それぞれ示しています。

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2018年9月10日 (月)

経済統計学会でシェアリング・エコノミーに関して学会発表をする!

昨日夕刻に東京を発ち和歌山に向かい、今日午前中の経済統計学会全国研究大会にて「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」に関する学会発表をしてきました。このテーマでの学会発表は6月の日本経済学会に続いて2回目です。注目いただいているのは有り難い限りですが、今回の学会は役所の研究所の同僚と大挙して押し寄せて、計5セッションを連続で独占したりしました。まあ、そういう時もあります。今日の午後には和歌山を出て、先ほど帰宅しました。
私は京都出身で、京都駅から南に近鉄で10駅ほどのところに、大学生活まで過ごした両親の実家がありましたので、京都から先は、特に大阪を越えると長旅に感じます。新幹線で京都から新大阪まで十数分、さらに和歌山まで特急で1時間ほどなんですが、長く感じました。年齢的に疲れやすいのかもしれません。日経BP社から出版されているロバート J. ゴードン教授の『アメリカ経済 成長の終焉』上下巻各500ページ余りを持って行きましたが、往復で読み切ってしまいました。

4~6月期のGDP統計2次QEが公表されたりしていますが、まだ詳細は見ていません。日を改めて取り上げたいと思います。

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2018年9月 8日 (土)

8月米国雇用統計の雇用者増は再び加速しFEDは金利引上げを継続するのか?

日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+201千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を上回った一方で、失業率は前月と同じ3.9%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

Jobs report: Employers added 201,000 jobs in August
Hiring rebounded in August as employers added 201,000 jobs and the labor market continued to defy worker shortages and U.S. trade battles. Yearly wage growth hit a nine-year high.
The unemployment rate was unchanged at 3.9 percent, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 195,000 payroll gains.
On the downside, employment increases for June and July were revised down by a total 50,000. June's gain was lowered from 248,000 to 208,000 and July's from 157,000 to 147,000. Still, monthly gains for the year are averaging a robust 207,000.
Hiring can be volatile in August as teachers and other employees return to work after summer lulls. That makes it more challenging for Labor to adjust the employment totals to account for seasonal variations. In recent years, Labor has revised up its initial estimates for August, often significantly. Goldman Sachs reckons the measurement glitch reduced last month's job count by at least 40,000.
Other economists, though, have expected payroll growth to slow as employers increasingly struggle to find available workers now that the jobless rate has dipped below 4%. So far this year, the labor market has shrugged off the worker shortages, turning out an average of more than 200,000 job gains a month, up from 182,000 in 2017. That may be due to a pool of discouraged and other workers who had been on the sidelines, but some experts believe that supply will soon run thin.
Trade tensions also could have dented business confidence and dampened hiring last month, Goldman Sachs says. In early July, the Trump administration slapped tariffs on $34 billion in Chinese imports and announced a proposed list of tariffs on another $200 billion in Chinese goods.
Average hourly earnings rose 10 cents to $27.16. And so wages were up 2.9 percent from a year earlier, up from 2.7% in July and the biggest annual jump since 2009. The large increase could indicate that wage growth is finally picking up more rapidly amid an intense competition for workers.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国の雇用が堅調です。先月7月こそ非農業部門雇用者の伸びが+200千人を下回って+147千人にとどまりましたが、その前の6月の+208千人と同様、8月も+201千人を記録し、米国連邦準備制度理事会(FED)が一定の目安と見ているといわれる+200千人増の水準を回復しましたし、失業率も4%を下回って7~8月は+3.9%を続けています。この雇用統計の数字を見る限り、FEDが利上げを継続するのに何の障害もなさそうで、現に、先月のジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演 Monetary Policy in a Changing Economy では "As the most recent FOMC statement indicates, if the strong growth in income and jobs continues, further gradual increases in the target range for the federal funds rate will likely be appropriate." と利上げ継続が表明されています。ただ、「内憂外患」と申しましょうかで、国内的にはトランプ大統領が利上げに猛反対しています。8月統計では製造業雇用が久し振りに前月から減少しましたので、これも政権の利上げ反対姿勢を強める可能性があります。加えて、典型的にはトルコとアルゼンティンなんですが、通貨が大きく減価しています。このため、他の新興国や途上国などでも米国の利上げ幅を超える利上げを迫られる場合があり、世界的な金融市場の不安定な動きにつながりかねません。このあたりのバランスをどう考えるのか、利上げの継続かあるいは一時停止か、米国の金融政策当局の判断が注目されます。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、8月は前年同月比で+2.9%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですから、利上げで対応すべきという意見が出るのは当然かもしれません。

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2018年9月 7日 (金)

「拡大」の基調判断続く景気動向指数と賃金上昇が見られ始めた毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差▲1.1ポイント下降して103.5を、CI一致指数も▲0.6ポイント下降して116.3を、それぞれ記録しています。また、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.5%増の37万6338円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、3カ月連続低下 自動車出荷など悪化
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.6ポイント低下の116.3だった。低下は3カ月連続。市場予想の中央値は0.7ポイント低下だった。自動車関連の出荷が悪化した。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち6系列が指数を押し下げた。耐久消費財出荷指数が乗用車と二輪車の悪化を受けて低下した。鉱工業用生産財出荷指数も、北米向けの鉄鋼輸出が減少した影響でマイナスに寄与した。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。同表現は22カ月連続。
数カ月後の景気を示す先行指数は1.1ポイント低下の103.5と2カ月連続で低下した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.2ポイント低下の117.7だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
7月の名目賃金、1.5%増 増加は12カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、7月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の37万6338円だった。増加は12カ月連続。基本給の伸びが続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.0%増の24万5010円だった。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は2.4%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.4%増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は1.7%増の1130円。パートタイム労働者比率は0.15ポイント低い30.53%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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引用した開示にもある通り、CI先行指数が2か月連続で、CI一致指数に至っては3か月連続で前月から下降を示しているんですが、統計作成官庁である内閣府では基調判断は「改善」で据え置いており、22か月連続の「改善」となっています。CI一致指数のうち、プラス寄与は商業販売額(卸売業)(前年同月比)くらいのもので、マイナス寄与は絶対値の大きい順に、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、有効求人倍率(除学卒)などが上げられています。基調判断が「改善」から「足踏み」に変化する際は、3か月後方移動平均がマイナスに転じ、さらに、マイナス幅が1標準偏差以上、という定義なんですが、3か月後方移動平均を見ると、4~6月は3か月連続でプラスを示したんですが、7月はマイナスに転じ▲0.40を記録しています。でも、まだ標準偏差の幅には達していない、ということなのだと私は理解しています。景気拡大は5年半を越えましたので、当然ながら、景気局面としては成熟化の段階に達している気がします。CI一致指数はかなりの程度に鉱工業生産指数(IIP)と相関が高いと私は考えているんですが、最近の生産の動向から考えて、ある意味で、当然の結果かもしれません。また、CI先行指数についても、プラス寄与は新設住宅床面積くらいで、その他は軒並みマイナス寄与を示しています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は低下を示していますが、賃金はそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きに見えます。さすがに、人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、賃金上昇の圧力はそれなりに大きいと私は受け止めています。

最後に、8月の米国雇用統計が公表されていますが、今夜のうちに取りまとめて明日早くにアップしたいと思います。

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2018年9月 6日 (木)

来週公表の4-6月期2次QEの成長率は大幅な上方改定か?

今週月曜日9月3日の法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の9月10日に今年2018年4~6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の7~9月期から、この先の2018年の景気動向を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に先行き経済を取り上げているのはみずほ総研だけで、伊藤忠経済研は少し違う角度から注目していました。みずほ総研は超長めに、伊藤忠経済研も少し長めに、それぞれ引用してあります。なにせ、2次QEですから法人企業統計のオマケの扱いの場合もあったりします。なお、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.5%
(+1.9%)
n.a.
日本総研+0.5%
(+2.1%)
4~6月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+2.1%(前期比+0.5%)と1次QE(前期比年率+1.9%、前期比+0.5%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.7%
(+2.9%)
4-6月期GDP二次速報(9月10日公表予定)では、実質GDP 成長率が前期比年率+2.9%(一次速報: +1.9%)と、一次速報から大幅に上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.7%
(+2.6%)
足元の経済指標をみると、7月の輸出・鉱工業生産は弱含んでいる。自動車輸出の落ち込みが北九州や中国・四国地方の税関で目立っていること、鉄鋼業の減産幅が東日本大震災以来の大きさとなったことなどから、西日本豪雨や台風の影響も大きかったとみられる。7月の水準が低いため、7~9月期の鉱工業生産は減産となる可能性が出てきたが、在庫調整圧力が一方的に高まっている状況ではなく、回復基調が途切れたとみるのは早計だろう。なお、猛暑については、7月のコンビニ・家電販売の押し上げには寄与した一方、外出の手控えを招いた面もあり、消費全体への影響は限定的だったようだ。
当面のリスクとしては、貿易摩擦の行方に最も注意が必要だ。不確実性の高まりが企業の投資計画を阻害することが懸念されるほか、米国が自動車・部品への追加関税を強行した場合、インパクトは各段に大きくなる。日本から米国へ輸出されている車・部品に単純計算で1兆円以上の負担となる上、現地生産車であっても、部品の内製化率は6割程度にとどまると試算され、関税賦課による部品コストの上昇が避けられない。自動車メーカーの負担増を通じ、日本国内の投資や雇用にも悪影響が生じることになろう。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.5%)
9/10公表予定の18年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率1.9%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研 +0.6%
(+2.4%)
2018年4-6月期実質GDP(2次速報)を前期比年率+2.4%(前期比+0.6%)と予想する。設備投資の上方修正を主因として、GDP成長率は1次速報の前期比年率+1.9%から上方修正されるだろう。
伊藤忠経済研+0.6%
(+2.5%)
労働分配率の低下は、人件費の増加が業績改善に追い付いていないだけであり、最近のタイトな労働需給を踏まえると、今後は冬のボーナス増加などの形で人件費が増加、労働分配率が上昇するとみて良いだろう。そうなれば、企業業績の改善が家計所得を押し上げ、個人消費の拡大がさらなる業績改善に結び付く自律的な景気拡大の動きが一段と強まることになる。
米中貿易摩擦や新興国通貨の混乱、Brexitなど、海外には不確実性を高める要因が多数あるが、国内経済は自律的な景気拡大に向けた足場固めが進んでいるようである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.8%
(+3.0%)
2018年4~6月期の実質GDP成長率(2 次速報値)は、前期比+0.8%(年率換算+3.0%)と1次速報値の同+0.5%(同+1.9%)から上方修正される見込みである。景気が順調に回復していることが改めて示されことになりそうだ。
三菱総研+0.8%
(+3.2%)
2018年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.8%(年率+3.2%)と、1次速報値(同+0.5%(年率+1.9%))から上方修正を予測します。

ということで、取り上げたすべてのシンクタンクで2次QEは1次QEからの上方改定を予測しています。そして、1次QEがそもそも年率+1.9%成長でしたので、+2%を超える成長率予想となっています。下の三菱系2機関は+3%成長すら視野に入れているようです。需要項目別にはテーブルを示していませんが、主要な変更点は設備投資であり、法人企業統計に従って上方改定される、ということになりそうです。個人消費と外需については大きな変更はなく、在庫については増加を予想するシンクタンクもありますが、私自身は変更なしないし下方修正を見込んでいます。ということで、外需寄与度が1次QEから大きな変更なくマイナスのままで、消費がプラスのままでこれも大きな変更なく、設備投資が上方改定されますから、パッと見では内需主導の高成長、ということになりそうです。先行きについては、伊藤忠経済研のように企業収益から雇用者所得が増加し、さらに消費の拡大につながる、という楽観論もありますが、みずほ総研のように海外経済の貿易摩擦にリスクを見出すシンクタンクもあります。わたしも、先行きリスクは下振れの方が強いんではないかと考えています。ですから、どこまで、4~6月期の内需主導の高成長を評価するかは、先行きリスクとの兼ね合いもあるんではないかと思わないでもありません。
下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2018年9月 5日 (水)

ブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果の研究成果やいかに?

8月20日の週に、全米経済研究所 (NBER) からブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果研究のワーキングペーパー "Does Machine Translation Affect International Trade? Evidence from a Large Digital Platform" が明らかにされています。引用文献を詳細に記すと以下の通りです。

人工知能のうち、機械翻訳 (Machine Translation) によって、どれだけの経済効果があったか、について定量的な分析結果を示しています。どのような分析をしたかというと、eBay に導入された eMT (eBay Machine Translation) がどれだけ米国の輸出を増加させたかについて差の差 (DiD) 分析を実施し、ラテンアメリカへの米国の輸出を17.5%増加させた、と結論しています。以下で簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、機械翻訳が導入された前後のラテンアメリカとその他地域への eBay を通じた米国からの輸出の推移です。直観的なグラフの印象として、機械翻訳導入前には大きな差はなかった一方で、機械翻訳を導入してから、その他地域向けに比較してラテンアメリカ向けの eBay を通じた輸出が順調に増加しているのが見て取れます。このラテンアメリカ向け輸出の増加が機械翻訳の効果であった可能性がうかがえます。

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同時に、これも状況証拠なんですが、上のグラフは輸出品目のタイトルの文字数による増加割合をみています。機械翻訳の効果がより大きいのは、短いタイトルではなく長いタイトルの可能性があるわけで、そのことがグラフから実感できるのではないかと思います。私自身は南米はチリで外交官をした経験がありますので、スペイン語をそれなりに理解し、英語とスペイン語の両方でよく似た単語の場合とまったく異なる場合を知っていますが、当然ながら、短いタイトルだと英語のままで理解できても長いタイトルの輸出品だと、もっとしっかりと確認する必要があるわけで、機械翻訳の効果がより大きくなるとの仮説はもっともだと受け止めています。

もちろん、学術論文ですから、グラフのシェイプだけで判断しているわけではなく、繰り返しになりますが、差の差 (DiD) 分析により定量的な把握を試みています。詳細には、冒頭に引用先のリンクを置いておきましたので、ご興味ある向きは論文を読んでみるのも一案かもしれません。

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2018年9月 3日 (月)

史上最強の収益力で内部留保が積み上がる法人企業統計調査!

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は7四半期連続の増収で前年同期比5.1%増の344兆6149億円、経常利益も8四半期連続の増益で+17.9%増の26兆4011億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+19.8%増、非製造業が+9.2%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+12.8%増の10兆6613億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比+6.9%増となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4~6月期の経常利益、過去最高 製造業がけん引、法人企業統計
財務省が3日発表した2018年4~6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比12.8%増の10兆6613億円だった。増加は7四半期連続。製造業で生産能力投資が活発だった。全産業ベースの経常利益は前年同期比17.9%増の26兆4011億円だった。増益は8四半期連続で、調査が始まった1954年4~6月期以来、過去最高となった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で6.9%増と4四半期連続で増加した。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、製造業は19.8%増加した。半導体や半導体製造装置向け部品の生産能力投資が増えた。非製造業は9.2%増加した。運輸業で駅周辺の再開発が活発だった。
「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額の内訳は製造業が季節調整済み前期比11.0%増、非製造業が4.7%増だった。
経常利益の内訳は製造業が27.5%増だった。自動車向け半導体製品の販売が堅調。非製造業は純粋持ち株会社の受取配当金が増加し12.4%増だった。情報通信業ではクラウド関連サービスが好調だった。
売上高は5.1%増の344兆6149億円と7四半期連続で増収となった。製造業は6.7%増だった。自動車や産業用機械向け電子部品、輸出用半導体製造装置、建設機械が伸びた。非製造業は4.5%増。資源価格の上昇で販売価格が上がった。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計した。今回の18年4~6月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される。
同時に発表した2017年度の法人企業統計によると、3月末時点の金融業と保険業を除く全産業の「内部留保」にあたる利益剰余金は、前年比9.9%増の446兆4844億円だった。調査開始以来、過去最高を更新した。
金融業と保険業を除く全産業の売上高は前年比6.1%増の1544兆1428億円、経常利益は11.4%増の83兆5543億円だった。経常利益は8年連続の増益で過去最高となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代後半の消費税率引上げ直前の駆け込み需要の見られた1997年1~3月期のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整済みの系列で見て、1~3月期の国内経済停滞の後、4~6月期は踊り場を脱しつつあり、季節調整済みの前期比で見て、売上高の伸びは+1.8%と低い伸び率となった一方で、経常利益は前期比+16.9%増を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については一昨年2016年年央くらいを底に明らかに上向きに転じ、昨年2017年は年間を通じてこの流れが継続していることが確認できたと思います。また、設備投資についても徐々に伸びが本格化して来た印象です。これも季節調整済みの系列で見て、人手不足を反映して全産業ベースの設備投資は4~6月期に+6.9%増と伸びを高めました。業種別は季節調整していない原系列統計の前年同月比しか明らかにされていませんが、引用した記事にもある通り、製造業では、半導体や半導体製造装置向け部品の生産能力投資が増えた生産用機械が+64.9%増、また、非製造業でも、運輸業で駅周辺の再開発が活発だったことなどから運輸業、郵便業で+44.6%増を記録しています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週月曜日の9月10日に内閣府から公表される予定となっています。1次QEでは季節調整済みの系列の前期比+0.5%、前期比年率1.9%の成長率が、私の直感的な印象ながら、設備投資を中心に2次QEで上方修正される、しかも、かなり大幅な上方修正の可能性が高いと受け止めています。

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2018年8月31日 (金)

3か月連続で減産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と人手不足続く雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産を示し、失業率は前月から▲0.1%ポイント上昇したものの、依然として2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月からさらに0.01ポイント上昇して1.63倍と、これまた、高い倍率を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の鉱工業生産、3カ月連続低下 4年ぶり
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて0.1%低下し、102.4だった。低下は3カ月連続。生産指数の3カ月連続低下は14年6~8月以来およそ4年ぶり。自動車や鉄鋼の生産が落ち込んだのが影響した。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.3%上昇)を下回った。経産省がまとめた7月の先行き試算値(2.7%上昇)も大きく下回った。
経産省は7月の生産の基調判断を「緩やかな持ち直し」から「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に下方修正した。
生産指数は15業種のうち8業種が前月から低下した。輸送機械工業は4.2%減だった。欧米向け自動車輸出が低迷したうえ、7月の西日本豪雨の影響で自動車部品などの生産が落ち込んだ。
「はん用・生産用・業務用機械工業」は2.1%減だった。半導体製造装置などの生産は増えたものの、建設用機械の落ち込みを補えなかった。建設用機械は西日本豪雨の影響で、部品供給が滞ったという。
鉄鋼業は5.0%減となった。米国による追加関税の影響で、鉄鋼輸出が落ち込んでいるため。米国向けの出荷割合が高い普通鉄鋼帯や鋼半製品などの生産が減った。
半面、上昇は7業種だった。化学工業が5.9%増、半導体部品など「電子部品・デバイス工業」は1.8%増だった。ノートパソコンなど情報通信機械工業は7.6%増えた。
出荷指数は前月比1.9%低下し99.9と、18年1月以来の低水準だった。普通自動車などの出荷の落ち込みが響いた。在庫指数は0.2%低下の111.2、在庫率指数は0.4%上昇の117.0だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた8月の製造工業生産予測指数は前月比5.6%の上昇となった。ただ、経産省がまとめた上方修正バイアスを除いた先行きの試算値は1.2%の上昇にとどまる。
9月の予測指数は0.5%上昇だった。
7月の求人倍率1.63倍に上昇、失業率は0.1ポイント悪化
厚生労働省が31日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.63倍で、前月から0.01ポイント上昇した。正社員の求人が引き続き増えているためで、44年ぶりの高水準が続く。また、総務省が発表した7月の完全失業率は2.5%で、0.1ポイントの悪化。良い条件を求めて転職する人が増えた結果で、雇用情勢は改善の傾向を維持している。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に、企業から何件の求人があるかを示す。有効求人倍率が1.6倍に達したのは3カ月連続だ。7月は非正規の求人が減ったため全体の求人数は減少した。一方で求職者数も減ったことから求人倍率は上昇した。厚労省は「求人数の減少は一時的」とみている。
求人倍率が高くなるほど、求職者は仕事を見つけやすく、企業は採用が難しくなる。新規求人は建設業や医療・福祉、製造業などで増えた。
企業は人手不足から待遇の良い正社員の求人を増やしている。7月の正社員有効求人倍率は1.13倍で、過去最高だった6月に並んだ。
失業率の悪化は2カ月連続。新たな求職者(季節調整値)が3万人増えた影響が大きい。総務省は「人手不足を背景に、今まで働いていなかった人が求職するようになった」と分析している。
完全失業者数は172万人。前年同月に比べ19万人減った。

いくつかの統計を並べましたので、とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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当然に7月の生産は増産が予想されていて、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、わずかとはいえ前月比で+0.3%の増産が見込まれていました。しかし、予測レンジの下限は▲0.6%でしたので、プラスとマイナスの違いでやや大きく見えなくもないんですが、横ばい圏内という見方も出来そうな気がします。そして、7月減産の大きな要因のひとつとして西日本豪雨の影響が上げられています。部品供給の停滞としては、自動車と建設機械が上げられています。そして、7月生産が減産に終わったものですから、8月に大きな増産が見込まれています。すなわち、製造工業生産予測指数は8月の増産を前月比+5.6%と見込み、上方修正バイアスを除いた試算値でも+1.2%と予想しています。この+1.2%の数字については、は3か月連続で前月比減産、実績を上げれば、5月▲0.2%、6月▲1.8%に次いで直近統計の7月▲0.1%ですから、簡単な累計では3か月で▲2%を超えており、増産幅としてはやや小さく感じられなくもありません。しかも、今日で終わる8月についても、災害の発生としてはともかく、異常気象という点では大きな違いはなく、一部の地域で最高気温が40℃を超えたこともありましたし、何といっても、台風発生数は9コ、そのうち日本列島に接近した台風は7コに上りました。農産物価格だけでなく、工業製品の生産や出荷にも天候が影響し始めたのかもしれません。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。失業率がやや上昇したものの、2%台半ばくらいまで上下する可能性は十分あると私は考えており、統計的にも、自己都合による離職が増えた影響が大きく、引用した記事にもある通り、「良い条件を求めて転職する人が増えた」ことが失業率上昇の一因である可能性が高いと受け止めています。また、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も1.13倍と1倍を超えて推移し、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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