2017年12月12日 (火)

11月の企業物価(PPI)上昇率はさらにプラス幅を拡大!

本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を拡大して+3.5%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の企業物価指数、前年比3.5%上昇、9年ぶり伸び率
日銀が12日に発表した11月の企業物価指数(2015年=100)は99.8で前年同月比3.5%上昇した。上昇は11カ月連続。上昇率は市場予想の中央値である3.3%を上回った。消費増税の影響を除くと08年10月(4.5%)以来、約9年ぶりの大きさとなった。
前月比では0.4%上昇した。品目別では、ガソリンや軽油といった石油・石炭製品が指数の上昇にもっとも寄与した。世界的な景気拡大や産油国による減産を背景にした国際原油相場の上昇が押し上げた。
農林水産物も上昇した。黒潮が大きく南に離れる「大蛇行」の発生による不漁で、シラス干しの価格が大幅に上昇。鍋用需要の高まりで牛肉や鶏卵も値上がりした。原油相場の強含みで化学製品も上昇した。
円ベースの輸出物価は前月比で0.2%上昇、前年同月比では6.8%上昇したが、上昇率は10月(それぞれ1.7%、9.7%)を下回った。中国の景気改善などを背景にした国際相場の上昇を受け、鉄くずや銅地金など金属・同製品が上昇した。普通乗用車など輸送用機器は下落した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは387品目、下落は248品目となった。下落品目と上昇品目の差は139品目で、10月(確報値)の125品目から拡大した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.3%の上昇が予想されており、実績値の+3.5%の上昇はレンジの上限となりますので、国際商品市況における石油価格次第とはいえ、かなり高めの上昇率だった気がします。国内企業物価(PPI)の前年同月比上昇率をもう少し詳しく見ると、中国をはじめとする新興国の景気拡大に伴うとみられるエネルギーなどの上昇率が高い印象で、例えば、石油・石炭製品が+19.0%の上昇、非鉄金属が+17.2%の上昇、電力・都市ガス・水道が+10.2%の上昇、さらに、ウェイトは小さいながら、スクラップ類は+34.4%の上昇などを記録しています。ただ、輸入物価の中の原油について最近時点での前年同月比上昇率を見ると、9月+24.8%、10月+36.7%、直近の11月+19.8%などとなっており、もちろん、国際商品市況の動向次第ながら、あるいは、為替相場と合わせ技で考えた円建ての原油価格はそろそろピークアウトする可能性もあります。ただ、需要段階別の下のパネルのグラフでは、見た目は判然としないんですが、素原材料と中間財については前年同月比の上昇率が10月をピークに11月にはわずかにプラス幅を縮小している一方で、最終財については11月も依然としてまだ上昇幅が拡大しており、川上の石油価格がピークアウトした後でも川下の最終財に向けた価格上昇の波及は進むのかもしれません。

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2017年12月11日 (月)

法人企業景気予測調査に見る企業マインドはさらに改善を示す!

本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は7~9月期の+5.1の後、10~12月期にはを+6.2記録し、先行きについては、来年2018年1~3月期は+5.2に、また、4~6月期は+0.5と、それぞれプラスを維持すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感2期連続プラス 10-12月
財務省と内閣府が11日発表した10~12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)はプラス6.2だった。国内外における景気回復を背景に、2四半期続けてプラスとなった。財務省は企業の景況感について「緩やかな回復基調が続いている」とし、前回調査から判断を据え置いた。
指数は自社の景況が前期に比べ「上昇」したとの回答割合から「下降」の割合を引いた値。調査基準日は11月15日で、資本金1千万円以上の企業1万2948社から回答を得た。
製造業はプラス9.7だった。原材料高を理由に国内向け商品の販売価格を引き上げた食料品製造業の景況感が改善した。新型車が好調な自動車・同付属品、車やスマートフォン向けの半導体部品の需要増が続く情報通信機械器具も堅調だった。
非製造業はプラス4.5だった。原油価格の上昇を受け販売価格が上昇した商社などの景況感が改善した。
中堅企業はプラス5.3、中小企業はマイナス2.3で、ともに前回調査よりも指数は上昇した。中小企業の製造業はプラス2.0と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった2014年1~3月期以来の高水準だった。
大企業による景況感の18年1~3月期の見通しは5.2、18年4~6月期は0.5とプラスを維持するものの、慎重に見る向きが多い。一方で19年3月期の設備投資見通しについて、増加すると答えた企業の割合は21.4%と、12年10~12月期に調査を開始して以来過去最高となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業活動については、ハードデータの売上げや利益といった企業収益の部分が昨年年央から後半くらいに底を打ち、マインドのソフトデータについても昨年2016年10~12月期くらいから改善を示して来ていると受け止めています。そして、足元の今年2017年10~12月期について少し詳しく景況判断指数(BSI)を見ると、かなり広範な企業にマインド改善の動きが広がっているように見受けられます。すなわち、製造業・非製造業の極めて粗いながらも業種別と、大企業・中堅企業・中小企業の規模別の2☓3の6つのセルで考えて、非製造業中堅企業でわずかに7☓9月期から悪化を示したほかは、すべて改善を示しています。その非製造業中堅企業についても10~12月期のBSIの水準は+3.0とプラス圏内ですし、先ほどのセルの中でまだ水面下のマイナスは非製造業中小企業の▲3.2だけとなっています。景況感以外のBSIについては、引き続き、雇用に関する従業員数判断BSIで人手不足が明らかとなっています。すなわち、今年2017年12月末時点で、大企業が過剰に対する不足超19.5、同じく、中堅企業32.6、中小企業29.5となっていて、採用しやすい大企業よりも中堅・中小企業で人手不足感が広がっているように見受けられます。最後に、私が注目している設備投資計画は、2017年度で前年度比+3.4%増と、前回調査の+3.9%増から下方修正されましたが、引用した記事にもある通り、少なくとも大企業レベルでは来年度2018年度の設備投資を増加させると回答した企業は21.4%ととても高い比率に上っています。人手不足にも対応して、設備投資も増加する方向にあるようです。

今週金曜日の12月15日には企業マインドに関する重要な指標である日銀短観12月調査の結果が明らかにされます。ほとんどのシンクタンクから日銀短観予想が明らかにされています。現在取りまとめ中で、極めて大雑把に、景況感はわずかながらも改善を示し、設備投資計画は12月調査においては統計のクセとして、というか、その範囲くらいで上方修正される結果が多くなっているような印象です。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2017年12月 9日 (土)

米国雇用統計は堅調な雇用の伸びを示し来週の利上げは確定か?

本日、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+228千人増と、市場の事前コンセンサスだった+200千人弱くらいの増加という予想を超えて、先々月の雇用統計に大きな影響を与えたハリケーンの影響からも完全に脱して正常化を示しています。他方、失業率は前月と同じ4.1%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、長くなるのを覚悟の上で、Los Angeles Times のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

Beating expectations, U.S employers add 228,000 jobs; unemployment rate stays 4.1%
In the latest indication that the U.S. economy remains on solid footing, employers in the U.S. added a robust 228,000 new jobs last month and the nation's unemployment rate held steady at a 17-year low of 4.1%.
The Labor Department's report Friday cements expectations that the Federal Reserve will nudge up interest rates next week, and could set the stage for a quickening of rate hikes next year, especially if the Republican tax cuts take effect and add fuel to short-term economic activity.
Average wage gains picked up slightly in November from the prior month, but nonetheless remained at a mediocre 2.5% annual rate of increase seen in recent years — despite hopes that the tightening labor market would generate faster pay increases.
Job growth in November exceeded forecasts from many analysts who were looking for an increase averaging about 195,000. Manufacturing had another strong month of hiring, as did business and professional services. The construction industry and healthcare services also had a good month. Retailers added a middling amount of jobs.
Last month's payroll gains followed an increase of 244,000 jobs in October. Both months' numbers were likely inflated somewhat, making up for job growth that had plunged in September because of the hurricanes in Texas and Florida.
With the November statistics, monthly job growth has averaged 170,000 the last three months and 174,000 for all of this year. That is down from the 187,000 average gains per month in 2016, but still a healthy rate of growth that, if it continues, will likely pull more people into the labor force and push down the jobless rate.

長くなりましたが、金融政策動向も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国の非農業部門雇用者数は、9月のハリケーンの影響で少し撹乱されましたが、先月の統計でジャンプし、今月の統計ではほぼほぼ正常化したんではないかと見られています。繰り返しになりますが、市場の事前コンセンサスでは+195千人増くらいを予想していたようなんですが、これを上回った雇用の堅調さが示されています。従って、来週12~13日に開催される米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)では利上げが実施されることがほぼ確実となりました。9月のFOMCでは2018年中も3回の利上げが示唆されていましたが、引用した記事にもある通り、議会で共和党が進めている法人減税がさらなる景気拡大効果を発揮するようであれば、利上げのペースが速まる可能性もあります。ただ、来年2月に退任するイエレン議長の後任のパウエル新議長は、物価動向次第では利上げペースを緩やかにすることも視野に入れているといわれており、いろいろな条件次第で米国の利上げペースは左右されそうです。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じつつも、もう一段の加速が見られないと考えられてきて、引用した記事でも "mediocre" と表現されているところですが、それでも、11月は前年同月比で+2.5%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、物価上昇を上回る賃金上昇が続いているわけですから、生産性の向上で賃金上昇を吸収して物価にそのまま波及させるには至っていないとはいえ、金融政策の発動が必要とされる場面なのかもしれません。

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2017年12月 8日 (金)

堅調な成長を示す2次QEとついでながらの景気ウォッチャーと毎月勤労統計と経常収支!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.5%を記録しました。1次QEから設備投資を中心に上方修正されたことから、潜在成長率をかなり超えた高成長といえます。ただ、4~6月期と違って内需の寄与よりも外需の寄与が大きい成長となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率2.5%増に上方修正 7-9月改定値、設備投資・在庫が寄与
内閣府が8日発表した2017年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.5%増と、速報値(前期比0.3%増、年率1.4%増)から上方修正した。設備投資の上振れや原材料在庫の増加が寄与した。QUICKが4日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.4%増、年率1.5%増)を上回った。
実質成長率は7四半期連続の増加。内閣府は「景気の緩やかな拡張が続いている」(経済社会総合研究所)と指摘した。
設備投資は前期比1.1%増と、速報値の0.2%増を大幅に上回った。1日発表の法人企業統計で、宿泊などサービス業に加え金融機関などで投資が伸び、改定値の上方修正に貢献した。民間在庫の寄与度は0.4%と、速報値(0.2%)を上回った。石油化学関連の原材料や鋼材といった資材在庫の積み増しが目立ったようだ。
このほかの内需項目は、個人消費が速報値と同じ前期比0.5%減、住宅投資が1.0%減(同0.9%減)、公共投資が2.4%減(同2.5%減)だった。
輸出は前期比1.5%増と速報値と同じで、輸出から輸入を差し引いた外需の実質GDP改定値への寄与度もプラス0.5ポイントと速報値から変わらなかった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増(速報値は0.6%増)、年率で3.2%増(2.5%増)となった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは速報値と同じ前年同期比プラス0.1だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/7-92016/10-122017/1-32017/4-62017/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.2+0.3+0.4+0.7+0.3+0.6
民間消費+0.4+0.1+0.4+0.9▲0.5▲0.5
民間住宅+3.0+0.2+0.9+1.3▲0.9▲1.0
民間設備▲0.2+1.5+0.2+1.2+0.2+1.1
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.0)(+0.2)(+0.4)
公的需要+0.4▲0.7+0.2+1.1▲0.6▲0.5
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.0)(+0.3)(+1.0)(▲0.2)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.3)(+0.3)(+0.1)(▲0.2)(+0.5)(+0.5)
輸出+2.1+3.0+1.9▲0.1+1.5+1.5
輸入+0.1+1.3+1.3+1.5▲1.6▲1.6
国内総所得 (GDI)+0.5+0.0+0.2▲0.1+0.4+0.7
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.1+0.2+0.9+0.6+0.8
名目GDP▲0.1+0.5+0.1+0.8+0.6+0.8
雇用者報酬+1.1▲0.3+0.2+1.0+0.5+0.7
GDPデフレータ▲0.1▲0.1▲0.9▲0.4+0.1+0.1
内需デフレータ▲0.8▲0.4▲0.0+0.3+0.5+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率が7四半期連続でプラスを示し、黒い外需(純輸出)と灰色の在庫が大きなプラスの寄与を、赤い消費がマイナスを、それぞれ示しているのが見て取れます。

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ということで、引用した記事にもありますし、一昨日の1次QE予想でも取り上げましたが、7~9月期2次QEでは1次QEから小幅上昇改定が予想されていたところ、統計が公表されてみると、かなり大幅な上方改定となりました。季節調整済みの前期比で見て、設備投資が1次QEの+0.2%増から2次QEでは+1.1%増に大きく上方改定されましたので、設備投資の寄与だけで+0.2%の成長率押し上げがなされたことになります。加えて、在庫の寄与がやはり1次QEから2次QEに向けて+0.2%の上方改定でしたので、国内需要の寄与度が1次QEの▲0.2%から2次QEでは+0.1%に+0.3%ポイントのスイングを見せました。他方、外需項目の輸出と輸入は伸び率も寄与度も1次QEから2次QEへの変更はほとんどありませんでした。基本的には、1次QEから景気判断として変更すべきポイントはないと私は受け止めており、引き続き、少し目先の先行きも含めて、日本経済は緩やかな回復ないし拡大を続けているものと考えるべきです。ただ、上方修正の大きな需要項目である設備投資と在庫をもう少し詳しく見ると、形態別固定資本形成のうち、特に季節調整済みの系列の前期比で見て伸びが大きかったのは、建物・構築物と輸送機械を除くその他の機械設備等が+1.1%、さらに、知的財産生産物が+0.8%となっています。新たに設備投資に加えられるようになったR&D やソフトウェアなど知的財産生産物への投資が増加しているのが見て取れます。さらに、在庫がプラスに上振れしたのは、評価の難しいところかもしれません。単純には、前向きの営業姿勢であり、売上げの増加に対応した在庫増だと見なすことも出来ますが、意図せざる在庫増の可能性も否定できません。ただ、GDPへの寄与度+0.4%を示した在庫変動を詳細に見ると、原材料在庫が+0.2%、仕掛品在庫が+0.0%、製品在庫と流通品在庫がともに+0.1%となっていて、消費の減退に対応した売れ残りではなさそうな気もします。
なお、1次QE公表の際にも同じことを書いたように記憶していますが、現在のアベノミクスを批判しようという意図があれば、4~6月期の消費をはじめとする内需主導成長が7~9月期には続かずに外需主導になった、と批判すればいいわけですし、逆に、アベノミクスを擁護しようとすれば、4~6月期と7~9月期をならして見れば順調な成長経路に乗っている、ということになるんではないかという気がします。ですから、何とでも評価できそうです。しかし、特にボリュームの観点から注目すべき消費についてもう少し詳しく見ると、1人当たりの統計で見て賃金上昇が見られないものの、正規雇用をはじめとして量的な雇用の増加があることから、マイクロな個人単位の賃上げなくてもマクロな雇用者所得の増加は観察されており、決して消費者マインドは悪くないことも考え合わせると、天候要因ほかの特殊要因がなくなれば消費は回復するものと考えています。何度か繰り返しましたが、消費が停滞しているのは所得が伸びていないのが原因であり、年金制度などの将来不安ではないと私は考えています。ただし、消費を財別にさらに詳細に見ると、耐久財消費が7~9月期には前期比でマイナスに転じていて、消費増税やエコカー減税、家電エコポイントなどで攪乱された耐久消費財の買い替えサイクルの復活が早くも終了した可能性を示唆する見方も出ています。今後の動向が気がかりです。

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最後に、GDP統計以外の政府経済指標に目を転ずると、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が、さらに、財務省から10月の経常収支が、本日、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りであり、上のパネルから順に、景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DI、毎月勤労統計の賃金のうち季節調整していない原系列の前年同月比上昇率と季節調整済みの系列、最後は経常収支の棒グラフとその内訳の積上げ棒グラフです。各統計のヘッドラインだけ簡単に取りまとめると、景気ウォッチャーの11月の現状判断DIは、季節調整済みの系列で見て前月差+2.9ポイント上昇の55.1とさらに上昇を続けています。毎月勤労統計の実質賃金指数のうち現金給与総額は、季節調整していない原系列で見て前年同月比で+0.2%の増加を示しています。経常収支は季節調整していない原系列の統計で2兆1764億円の黒字を計上し、黒字は40か月連続を記録しています。

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2017年12月 7日 (木)

景気動向指数に見る現在の景気拡大はいざなぎ景気を越えて戦後最長に迫るか?

本日、内閣府から10月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比▲0.4ポイント下降して106.1を、CI一致指数は+0.3ポイント上昇して116.5を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数0.3ポイント改善 10月も「改善」
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(2010年=100、CI)によると、景気の現状を示す一致指数は前月より0.3ポイント上がり、116.5となった。2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数からみた基調判断は「改善を示している」として据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出し、月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
一致指数を構成する指標で、前月と比較できる7つの指標のうち、4つが改善した。有効求人倍率の改善が全体を大きく押し上げたほか、卸売業の商業販売額も堅調だった。生産は自動車部品や半導体が増えた。
数カ月先の情勢を示す先行指数は0.4ポイント低下の106.1となった。低下は2カ月連続。最終需要財在庫率指数など企業の在庫を示す指標が悪化した。台風の影響で客足が悪く、消費者態度指数も悪化した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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CI一致指数に対する寄与度で大きかった項目をあげると、プラス寄与では有効求人倍率(除学卒)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)が上げられており、逆にマイナス寄与では商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数となっています。CI先行指数のマイナス寄与では鉱工業用生産財在庫率指数と最終需要財在庫率指数の絶対とが大きくなっています。CI先行指数こそ下降しましたが、3か月後方移動平均は5か月連続の上昇を示していますし、CI一致地数・先行指数とも7か月後方移動平均は、何と、ともに15か月連続で上昇しています。少なくとも、10月より前に景気の山があったとは考えられませんから、現在の景気拡大は59か月に及ぶことになり、高度成長期のいざなぎ景気を超えたことは明らかであろうと私は受け止めています。なお、いざなぎ景気は1965年11月から1970年7月まで57か月間続いています。また、戦後最長の景気拡大期間は米国のサブプライム・バブルに対応した期間であり、2002年1月を景気の底とし、2002年2月から2008年2月の山まで73か月間続いており、単純に計算すれば、さ来年2019年1月まで現在の景気拡大が続けば74か月に達するので、これを抜くこととなります。「来年の話をすると、鬼が笑う」とはよくいったもので、やや気の早いお話かもしれません。

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2017年12月 6日 (水)

明後日公表予定の7-9月期GDP統計2次QEの予想やいかに?

先週金曜日の法人企業統計などで、ほぼ必要な統計が出そろい、明後日の12月8日に7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけだったものの、第一生命経済研でも先行きについては軽く取り上げられていました。しかしながら、何分、2次QEですので、2~3ページのアッサリしたリポートも多く、法人企業統計のついでに2次QEがくっついているのもあります。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.3%
(+1.4%)
n.a.
日本総研+0.4%
(+1.5%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、公共投資、設備投資は大きく変わらないものの、在庫変動が小幅上方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+1.5%(前期比+0.4%)と1次QE(前期比年率+1.4%、前期比+0.3%)から小幅上方修正される見込み。
大和総研+0.4%
(+1.6%)
7-9月期GDP二次速報(12月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年+1.6%(一次速報: 同+1.4%)と、一次速報から上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.5%
(+1.9%)
10~12月期以降を展望すると、海外経済の回復を背景に輸出の増勢が続くとともに、内需も再び増加基調に復することで、日本経済は緩やかな回復基調を維持するとみている。項目別にみると、輸出は、データセンター向け半導体需要の堅調さに加えて、新型iPhone向けの部品供給が押し上げ要因となるだろう。また、米国のハリケーン被害からの復興需要が、自動車輸出などの上振れにつながる可能性もある。設備投資は、五輪関係や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることから、回復基調に復するだろう。個人消費については、株高などを背景に消費者マインドが改善していること、生鮮食品の価格が10月に入ってから落ち着いてきたことなどがプラスに働くだろう。天候要因による振れを伴いつつも、個人消費は緩やかに増加するとみられる。
海外のリスク要因に目を向けると、中国では、金融市場・住宅市場引締め策の影響などを巡って依然不確実性が高く、景気の下振れリスクとして引き続き注意が必要だ。また、北朝鮮を巡る地政学リスクは長期化が見込まれるため、今後の米朝間の動きには目を配る必要があろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.5%)
12/8公表予定の17年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.5%)となり、1次速報の前期比0.3%(前期比年率1.4%)から若干上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
一応上方修正ではあるが、修正幅は僅かなものにとどまるとみられ、1次速報から景気認識の修正を迫るような内容にはならないだろう。個人消費が落ち込む一方、外需が成長率を押し上げて潜在成長率を上回る成長を確保という構図にも変化はない。基本的には、4-6月期の「個人消費が大きく増加、輸出が足踏み」という動きの反動が出たものと思われ、4-6月期と7-9月期は均してみた方が良い。基調としてみれば景気は着実な回復傾向にあると判断できる。
先行きについても、世界経済の回復を背景に輸出の増加傾向が続くことに加え、企業収益の増加を受けて設備投資も増加が期待できる。景気を取り巻く環境は良好であり、景気は今後も着実な改善を続ける可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.3%)
12月8日に内閣府から公表される2017年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.3%(年率換算+1.3%)と1次速報値の同+0.3%(同+1.4%)からわずかに下方修正される見込みである。
三菱総研+0.3%
(+1.1%)
2017年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.3%(年率+1.1%)と、1次速報値(同+0.3%(年率+1.4%))から小幅下方修正を予測する。

ということで、三菱系のシンクタンク2社を例外として、取り上げたすべての機関が2次QEでは1次QEから上方修正されると予想しています。ただ、下方修正の三菱系シンクタンク2社も含めて、2次QEですので修正幅は極めて小幅です。大雑把に+1%台半ばから後半の成長率であり、前期比年率で見て、取り上げた機関のレンジでは最低でも三菱総研の+1.1%であり、+2%近い成長率予想を示す機関もあります。ですから、少なくとも、我が国の潜在成長率は超えたまずまずの高成長と私は受け止めています。しかも、サンプルは少ないものの、足元の10~12月期以降も順調な我が国経済の回復・拡大を見込んでいます。世界経済の回復・拡大とともに輸出が増加を続けるでしょうし、耐久消費財買い替えサイクルの正常化から消費も緩やかに増加する気配を見せ始めていますし、さすがにそろそろ人手不足や企業収益を背景に設備投資も増加の勢いを増すんではないかと期待していますから、我が国の景気を取り巻く環境は引き続き改善を示していると考えるべきです。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年12月 5日 (火)

SMBCコンサルティングによる今年2017年ヒット商品番付やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の11月30日にSMBCコンサルティングから今年2017年ヒット商品番付が明らかにされています。

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上の番付画像は、SMBCコンサルティングのサイトから引用しています。
東西の横綱はSNSからのヒット商品であり、大関もゲーム機とスマホですから、まあ、それなりにハイテク製品といえます。小結もそうです。でも、さすがに前頭に入るとローテク製品も少なくなく、我が職場で一時的に流行ったハンドスピナーなどもそうかもしれません。青色食品の中に、スペインから輸入されている青ワインgikも含まれるような気がするんですが、なぜかスペイン語なのに「ジク」と読ませています。スペイン語であれば「ヒク」ではないかと思いますが、いずれにせよ、私はそれほどお酒はたしなまないですし、かなりお高いワインなので手が出ずにいます。私が飲むのは主として外交官として滞在したチリのワインです。私が駐在していたころから日本への輸出が始まったと記憶しています。そのころは高級品も試飲させていただきましたが、今飲むのはボトル1本で数百円ほどのワインが中心です。

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2017年12月 4日 (月)

消費者態度指数に見る消費者マインドは11月統計でさらに改善を示す!

本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.4ポイント上昇し44.9を記録しています。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直している」で据え置いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の消費者心理、0.4ポイント改善 内閣府調査
内閣府が4日発表した11月の消費動向調査によると、消費者の心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は44.9となり、前月を0.4ポイント上回った。3カ月連続で改善しており、東京五輪開催が決まった2013年9月以来、4年2カ月ぶりの高さだ。株高による資産増や雇用環境の改善を好感した消費者が多く、心理の改善につながった。
消費者態度指数は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について、今後半年間に良くなるかどうかを聞いて算出する。調査基準日は11月15日だった。内閣府は基調判断を「持ち直している」として、前月から据え置いた。
11月は指数を構成する4項目全てが上昇した。目立ったのは雇用と収入に関する項目で「収入の増え方」が0.5ポイント上昇して43.0だったほか、「雇用環境」が0.6ポイント上昇し49.3だった。意識調査と同時に調べている「資産価値」は46.8と前月から1.4ポイント上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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最新月11月の動向を前月差でみると、「雇用環境」が+0.6ポイント上昇し49.3、「収入の増え方」が+0.5ポイント上昇し43.0、「耐久消費財の買い時判断」が+0.4ポイント上昇し44.0、「暮らし向き」が+0.2ポイント上昇し43.2となっています。雇用と収入が平均以上に改善した一方で、ここは理解に苦しむところなんですが、暮らし向きが平均より改善幅が小さくなっています。ひとつのあり得る解釈としては、仕事や収入はよくなっているものの、物価が上昇して暮しは厳しい、というものですが、現状の消費者物価では、特に生鮮食品を含めたヘッドライン物価の上昇率はそれほど高くなく、統計と実感の差がどこからか出ているようで、やや不思議な気がします。
基調判断は「持ち直し」で据え置かれていますが、私自身は、現状の堅調な消費者マインドは半分くらいは株高で支えられていると考えています。ですから、株価が不安定、というか、もしもサステイナブルでなければ、ひょっとしたら、いくぶんなりとも消費者マインドも影響を受ける可能性があるものと覚悟しておく必要あるかもしれません。でも、このマインドをもって、年末ボーナスがそれなりに出れば、年末商戦はそれなりの売行きになるものと期待しています。

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2017年12月 1日 (金)

高い収益力示す法人企業統計と人手不足強まる雇用統計とプラス幅を拡大する消費者物価(CPI)上昇率!

本日、財務省から今年2017年7~9月期の法人企業統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、それぞれ公表されています。雇用統計と消費者物価は10月の統計です。まず、法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は4期連続の増収で前年同期比+4.8%増の338兆6999億円、経常利益も5期連続の増益で+5.5%増の17兆8928億円、設備投資は製造業で+1.4%増、非製造業で+5.9%増となり、非製造業が牽引する形で、全産業では+4.2%増の10兆7920億円を記録しています。また、雇用統計では失業率が2.8%といずれも前月と同じ水準を示す一方で、有効求人倍率は1.55倍とさらに上昇し、生鮮食品を除く総合で定義されるコア消費者物価(コアCPI)の前年同月比上昇率は+0.8%と上昇幅を拡大して10か月連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月設備投資4.2%増、宿泊など非製造業で伸び
財務省が1日発表した2017年7~9月期の法人企業統計によると、全産業(資本金1千万円以上、金融機関を除く)の設備投資は前年同期比で4.2%増となった。4四半期連続で前年を上回った。非製造業でサービス業などの投資が増えたほか、製造業でも生産能力を引き上げる動きが相次いだ。売上高や経常利益も前年同期をそれぞれ上回った。
設備投資は非製造業で5.9%増となった。訪日客の需要を見込み、宿泊業でホテルや娯楽施設への投資が増えた。製造業も1.4%増。スマートフォン関連などで生産能力を引き上げる動きが出て電気機械の投資が増え、2四半期ぶりに増加に転じた。
経常利益は5.5%増の17兆8928億円だった。製造業が44%増と大きく伸びた。自動車など輸送用機械が押し上げた。非製造業は9.5%の減少と、5四半期ぶりに前年を下回った。サービス業で、受取利息などが大幅に増えた前年の反動が出た。
売上高は4.8%増の338兆6999億円。製造業は3.9%増、非製造業は5.2%増とともに上向きだった。企業の増産投資を背景に、製造業では生産用機械が好調だった。非製造業では卸売業・小売業が上昇に寄与した。
今回の法人企業統計の結果を反映し、内閣府は8日に7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値を公表する。
11月15日公表の速報段階では、季節調整済みの実質GDPが前期比年率換算で1.4%増だった。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「法人企業統計の設備投資が予想よりも強い結果で、GDPは上方修正される可能性が出てきた」と予測する。
求人43年9カ月ぶり高水準、10月1.55倍
人手不足が一段と強まっている。厚生労働省が1日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.55倍で、9月より0.03ポイント上がった。高度経済成長期の1974年1月以来、43年9カ月ぶりの水準となった。景気回復に人口減少が重なり、働く意思があれば職に就ける完全雇用の状態だ。消費の回復ペースは緩やかで、消費者物価指数は前年同月比0.8%上昇だった。
有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は1.03倍だった。前月より0.01ポイント上昇し、統計をとり始めた2004年以降の最高を更新した。
新規求人数は前年同月比7.1%増。業種別にみると、スマートフォン(スマホ)関連が好調な製造業が最も増え、12.8%増だった。慢性的な働き手不足に直面する医療・福祉(7.9%)や情報通信業(9.3%)も伸びが大きかった。
企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は14.7%だった。インターネットで企業の採用サイトに直接求職するといった場合を含まないが、「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。
総務省が同日発表した10月の完全失業率は、9月と同じ2.8%。求人があっても職種や勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%割れは「完全雇用」状態にあるといえる。
失業のリスクは低くなっているものの、消費の回復力は弱い。総務省が同日発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出は28万2872円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月と同じだった。
教育費や携帯電話の通信料は増えたが、台風の影響で国内外のパック旅行費など教養娯楽が7%落ち込んだ。所得は緩やかに改善しているが、将来不安などによる節約志向も根強く残っている。
物価上昇も勢いを欠いている。10月の消費者物価指数(CPI)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.8%上昇したが、主因のエネルギーを除くと、伸び率は0.2%にとどまった。
10月の全国消費者物価、0.8%上昇 エネルギー関連が押し上げ
総務省が1日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.6と、前年同月比0.8%上昇した。プラスは10カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.8%上昇だった。9月は0.7%上昇だった。電気代やガス代、石油製品などエネルギー関連が指数を押し上げた。
生鮮食品を除く総合では全体の56.2%にあたる294品目が上昇し、171品目が下落した。横ばいは58品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合では101.0と前月比0.2%上昇した。安売り規制の影響でビールなど酒類が上昇した。医療費の自己負担額引き上げで、診療代も上昇した。
生鮮食品を含む総合は100.6と0.2%上昇した。9月(0.7%上昇)に比べて伸び率が縮小した。レタスなど一部の生鮮野菜が昨年に急騰した反動で下落したことが響いた。
併せて発表した東京都区部の11月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が100.3と前年同月比0.6%上昇した。上昇は5カ月連続。電気代などエネルギー関連が押し上げた。生鮮食品を含む総合は100.6と0.3%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、いくつもの統計を一挙に並べると、とても長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整していない原系列の統計ながら、7~9月期の売上高経常利益率は製造業が7.0%、非製造業が3.6%を記録しています。国内経済も着実に回復・拡大を示しているものの、円安に加えて世界経済が国内経済を上回る拡大を見せていることから、製造業が非製造業よりも高い収益力を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については昨年2016年年央くらいを底に、昨年2016年後半から明らかに上向きに転じ、今年2017年4~6月期から7~9月期の年央くらいもこの流れが継続していることが確認できたと思います。ただ、設備投資については、まだ伸びが本格化していない印象です。季節調整済みの系列で見て、全産業ベースの設備投資は7~9月期に前期比で+1.0%増でしたが、製造業で+0.5%増、非製造業で+1.3%増を示しており、利益率が高い製造業の方で投資の伸び率が低いのは、人手不足の影響が非製造業においてより大きい点に加え、海外へ投資が漏出している可能性が示唆されていると私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。また、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、さらなる法人税引き下げなどによる企業活動活性化がどこまで必要なのかは疑問ですし、企業が国内での設備投資や賃上げに慎重姿勢を示しているのであれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。失業率も有効求人倍率も前月と同じながら、かなりタイトな労働需給を示しています。加えて、グラフは示しませんが、正社員の有効求人倍率も前月からさらに上昇して1.03倍と高い水準にあります。ただし、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。要するに、まだ遊休労働力のスラックがあるということで、グラフは示しませんが、性別年齢別に考えると、高齢男性と中年女性が労働供給の中心となっています。もっとも、定量的な評価は困難ながら、そのスラックもそろそろ底をつく時期が迫っているんではないかと思います。特に、採用しやすい大企業に比べて、中小企業では人手不足がいっそう深刻化する可能性もあります。さらに、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規職員が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用水準ではないかと私は考えています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。ということで、単純に見ると、コアCPI上昇率は6月+0.4%から7月+0.5%、8~9月+0.7%、10月+0.8%と徐々に上昇幅の拡大を続けており、加えて、全国の先行指標となる東京都区部でもコアCPI上昇率が全国から4か月遅れて今年2017年5月にプラスに転じ+0.1%を記録した後、10~11月の+0.6%まで順調にプラス幅を拡大しています。しかし、先行きの消費者物価(CPI)上昇率を考える場合、要因として2点考慮する必要があり、ひとつは国内の需給ギャップと賃金動向です。現時点で、これらはともに、物価を上昇させる方向にあると考えるべきです。文句なしです。ただし、もうひとつは国際商品市況における石油価格です。これは、新興国経済が中国を含めてかなり堅調に回復を示している一方で、相場が下げに向かうとの見方もまだ根強く残っています。上の消費者物価のグラフにおいて、私の計算に従えば、寄与度分解した積上げ棒グラフの黄色のエネルギーの寄与度は、コアCPI+0.8%のうちの+0.62%に達しています。この部分が縮小に向かえば、コアCPI上昇率のプラス幅も風前の灯と化す可能性もあります。相場だけに私には何とも先行きは判りかねますが、今後の動向が注目されます。

最後に、法人企業統計に戻ると、引用した記事にもある通り、この統計公表をもって、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計2次QEが公表される予定となっています。シンクタンクなどの2次QE予想は日を改めて取りまとめる予定ですが、直観的には設備投資が上方修正される分、2次QEでは成長率が上振れするんだろうという気はします。

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2017年11月30日 (木)

鉱工業生産指数(IIP)は堅調な伸びを続ける!

本日、経済産業省から10月の鉱工業生産指数 (IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月比+0.5%の小幅な増産を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産、前月比0.5%上昇 基調判断は「持ち直し」で据え置き
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は103.0と、前月に比べ0.5%上昇した。上昇は2カ月ぶり。設備投資に向けられる資本財や、原材料として投入される生産財が全体をけん引しプラスとなったが、QUICKがまとめた民間予測の中央値(前月比2.0%上昇)は下回った。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いた。
全15業種のうち8業種で前月を上回った。最も上昇に寄与したのは電気機械工業(2.5%上昇)。半導体・IC測定器や開閉制御装置に加え、冬に向けてエアコンの生産も伸びた。輸送機械工業は0.7%上昇した。駆動伝導・操縦装置部品や船用ディーゼル機関などがけん引した。汎用・生産用・業務用機械工業(0.7%上昇)ではフラットパネル・ディスプレー製造装置などが好調だった。
一方、低下したのは6業種だった。最も低下に寄与したのは化学工業で2.9%低下だった。合成洗剤や合成ゴムなどの品目が落ち込んだ。石油・石炭製品工業(6.4%低下)も低下に寄与した。電子部品・デバイス工業(0.6%低下)は液晶素子や半導体集積回路などスマホやタブレット端末に使われる電子部品の生産が伸び悩んだ。窯業・土石製品工業は前月比横ばいだった。
出荷指数は0.5%低下の98.8だった。2017年5月(98.2)以来の低水準。在庫指数は3.1%上昇の110.6と6カ月ぶりにプラスとなった。在庫率指数も3.5%上昇の114.2だった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査では、11月が2.8%上昇、12月は3.5%上昇となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、前回の鉱工業生産統計の公表時において、製造工業生産予測調査では10月は前月比で+4.7%との結果が出ており、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも中央値で+2.0%、レンジでも1.1~3.4%の増産が見込まれていたんですが、結果的に、+0.5%増のやや物足りない統計に終わりました。特に、生産は増加したものの、出荷が前月比で▲0.5%の減少を記録しており、差引きで在庫が積み上がっている、もしくは、積み増されている状況です。やや下振れした印象があったので、例の自動車の最終検査における無資格検査問題で10月下旬から一部メーカーが出荷を停止し、それに合わせて生産も減産に入った影響が頭に浮かんだんですが、大きな影響はなかったと受け止められています。例えば、産業別に詳しく見ると、輸送機械の10月の生産は前月比で+0.7%の増産、出荷は+1.0%増となっています。ただし、さらに詳細には、乗用車の生産・出荷が増加したというよりは、駆動伝導・操縦装置部品などの伸びのようですから、無資格検査問題がなければ生産も出荷もさらにプラス幅が大きかった可能性も否定できないものの、少なくとも、この無資格検査問題による生産・出荷への影響は決して長期に及ぶことはないと考えられます。ですから、それほど信頼性は高くない統計とはいえ、製造工業生産予測調査では11月+2.8%、12月+3.5%のそれぞれ増産を見込んでおり、うち、輸送機械は11月+2.1%、12月+3.4%のそれぞれ増産となっていて、いわゆる「挽回生産」の動きは見られません。
先行きについては、世界経済の回復に伴う輸出の増加や国内でも耐久消費財の買い替えサイクルの復活などから、引き続き、緩やかな増産が見込まれますが、来月12月にも米国連邦準備制度理事会(FED)が連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切る可能性が高く、海外経済の先行きはFEDの出口戦略に従ってリスクがないとはいえないものの、現時点で利用可能な情報を総合すれば、米国の利上げはかなり緩やかなペースで実施されると考えられ、大きな混乱は生じないものと想定してよさそうに私は考えています。少なくとも、米国経済への大きな下押し圧力になる可能性は小さい一方で、新興国や途上国における資金フローにどのような影響を及ぼすかは、やや見通しがたい要素を含んでいるような気がしてなりません。

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