2022年12月 2日 (金)

11月の米国雇用統計から米国経済のオーバーヒートをどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業部門雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の11月統計では+263千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.7%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事をやや長めに8パラ引用すると以下の通りです。

November jobs report: Unemployment rate held steady at 3.7% with 263,000 jobs added
U.S. employers added 263,000 jobs in November as hiring remained sturdy despite rising interest rates, high inflation and mounting recession worries.
The unemployment rate held steady at 3.7%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg estimate that 200,000 jobs were added last month.
Job growth generally has moderated from a pace of about 450,000 for most of the year to under 300,000 in recent months. High inflation and aggressive interest rate hikes by the Federal Reserve have hobbled rate-sensitive sectors such as housing and technology.
Tech giants Meta, Twitter, Amazon, DoorDash and Lyft, among many others, have announced a total of more than 142,000 layoffs this year.
Stock futures dropped immediately following the report. Futures for the Dow Jones Industrial Average were down over 1%.
Overall, initial jobless claims, a reliable gauge of job cuts, rose modestly in November but remain historically low, averaging 221,000 a week, Goldman Sachs says. Pandemic-induced labor shortages have made companies reluctant to chop workers on concerns they won't be able to replace them when the economy bounces back.
Still, a labor market that was blistering earlier this year is losing some steam. Most economists are forecasting a recession next year as the Fed continues to hike rates, leading some companies to leave positions vacant when employees leave and freeze hiring. There were 10.3 million job openings in October, down from 10.7 million the previous month.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加がまだ+200千人をかなり超えているわけですし、失業率も3%台半ばですので、人手不足は落ち着きつつあるものの、労働市場の過熱感はまだ残っていると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が極めて急速な利上げを実行していますので、ひとまず、景気には急ブレーキがかかりつつあり、このままリセッションまで突き進むことを危惧する見方も少なくないようです。ただし、引用した記事の3パラ目にあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+200千人程度の雇用増との見通しだったので、実績はやや上振れた印象です。
私がいつも大学の授業で強調しているように、市場経済では価格をシグナルとする資源配分が効率的であるわけですから、インフレで価格シグナルに撹乱が生じるのは効率性を大きく阻害します。ですから、インフレを抑制すべく、極端にいえば、景気を犠牲にして景気後退を招くことをいとわず物価の安定を目指すべき、という経済政策運営上のコンセンサスがあります。ですから、私は、コトここに至っては、米国や英国をはじめとする他の先進諸国のうち、インフレ抑制=物価安定のために景気後退を覚悟の上で金融引締めを継続する国は決して少なくないと考えています。
他方で、日本経済は米国よりも中国経済の影響の方が強くなっていることから、米国のリセッションからデカップリングされる可能性はまだ残されていると期待しています。期待していますが、中国はゼロ・コロナ政策ですので、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大次第、という面はあります。

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続いて、上のグラフは米国の時間当たり賃金と消費者物価の上昇率をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。コロナによる景気後退期に少しイレギュラーな動きを示していますが、米国では消費者物価上昇率は+10%近くの2ケタに迫り、賃金上昇率も軽く+5%を越えているのが見て取れます。ただ、足元では物価上昇も賃金上昇も高止まりしているとはいえ落ち着きを取り戻しており、12月13-14日の連邦公開市場委員会(FOMC)ではこれまでの75ベーシスではなく、50ベーシスの利上げにとどまる、との見方も出ています。ただ、強調しておきたいのは、賃金がほとんど上がらず、消費者物価上昇率も+3%台で推移している日本とは違うんです。ですから、米国をはじめとする諸外国が利上げをしたからといって、我が国でも利上げすべき、という議論はまったく成立しません。その利上げが円安防止を目的としたものであるなら、なおさら私は賛成できません。

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2022年12月 1日 (木)

法人企業統計に見る企業活動は活発ながら消費者態度指数に見る消費者マインドは低下を続ける

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+8.3%増の350兆3671億円、経常利益も+18.3%増の19兆8098億円、売上高・経常利益とも製造業では2ケタ増、非製造業でも+5%超の伸びとなっています。そして、設備投資は+9.8%増の12兆17億円を記録しています。季節調整済みの系列で見ても、売上高、経常利益、設備投資とも軒並み前期比プラスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+8.0%増となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、経常益18.3%増 7-9月で過去最高
財務省が1日発表した7~9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比18.3%増の19兆8098億円だった。前年を7期連続で上回り、7~9月期としては利益額が過去最高を更新した。資源高などの影響が事業の重荷になっているが、部品など供給制約の緩和や新型コロナウイルス禍からの社会活動の回復が企業業績の改善を後押しした。
財務省は「緩やかに持ち直している景気の状況を反映した」と説明した。経常利益の金額はすべての四半期で過去15番目だった。
業種別の経常利益を見ると、製造業は35.4%増で全体の伸びをけん引した。中国・上海市の都市封鎖(ロックダウン)が6月に解除されたこともあって部品不足の状況が緩和され、自動車関連などで増産が進み、輸送用機械部門の経常利益は2.7倍になった。電気機械も73.4%増えた。円安で輸出関連の押し上げ効果もあった。
非製造業は前年同期比5.6%増だった。サービス業で59.8%増、運輸・郵便業では8.4倍に伸びた。コロナ禍からの社会活動の正常化で、前年に比べて人流が極端に増えたことが影響したもようだ。
設備投資は9.8%伸びた。企業は部品不足などで先送りにしていた投資を再開しており、2桁増に迫った。2018年4~6月期の12.8%以来、4年余りぶりの高い増加率だった。
製造業は8.2%増だった。情報通信機械が27.2%、化学が16.3%投資額を増やした。自動車関連などで半導体の需要が増え、半導体製造装置などへの投資額が増えた。非製造業は10.7%増。都市開発などにかかる設備投資をした不動産業で77.1%増加した。
売上高は8.3%増の350兆3671億円だった。業種別では製造業が12.1%増。石油・石炭は原油価格の高騰などで65.8%増えた。非製造業は6.7%増で、電気料金の高騰を背景に電気業の伸びが目立った。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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ということで、法人企業統計の結果について、今年2022年に入って1~3月期から物価上昇と円安が大きく進んだにもかかわらず、引用した記事にもあるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限がなく、半導体などの供給制約も緩和され、円安は製造業などにはむしろ追い風で影響したことなどから、企業業績が好調であることを示していると私は受け止めています。前年同期比で見る限り、売上高については2021年4~6月期から5期連続の増収であり、営業利益・経常利益とも2021年1~3月期から6期連続の増益となっています。ただし、季節調整済みの系列で見ると、やや企業活動の景色が違って見えます。すなわち、売上高は製造業が円安の影響もあって前期比+3.0%増の増収を記録したのに対して、非製造業では▲0.1%とわずかながら減収となりました。同様に、経常利益についても、製造業が前期比+6.9%と好調を維持しているのに対して、非製造業では▲13.3%と大きく落ち込みました。このあたりの産業別の跛行性については、おそらく、円安に起因すると私は考えていますが、キチンと把握しておく必要があります。同時に、上のグラフを見ても理解できるように、売上高はリーマン・ショック直前のサブプライム・バブル期のピークには達していませんが、経常利益はとっくに過去最高益を突破しています。企業サイドからすればカッコ付きで「体質強化」をいえるのかもしれませんが、従業員や消費者のサイドから考えれば、企業利益ばかりが溜め込まれるのがどこまで現在の日本経済に好ましいのかどうか、もちろん、日本経済がかつての高度成長期のように拡大基調であればまだしも、トリックルダウンはほぼほぼ完全に否定され、ほとんどGDPも成長せず賃金も上がらない中で、企業部門ばかりが利益を積み上げるのがいいのかどうか、疑問とする意見もありそうな気がします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、人件費が長らく停滞する中で、経常利益は過去最高水準をすでに超えています。ですから、この利益剰余金にも本格的に課税する必要性が高まっていると考えるべきです。先月11月22日に「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書が明らかにされています。軍事費=防衛費をGDP比2%まで引き上げるよう提言するとともに、その財源については「防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである。」(p.18)としつつも、同時に、「成長と分配の好循環の実現に向け、多くの企業が国内投資や賃上げに取り組んでいるなか、こうした企業の努力に水を差すことのないよう、議論を深めていくべきである。」と、ここまで賃金上昇が見られない雇用者ではなく、大幅に利益を溜め込んでいる企業には防衛費負担を配慮するムチャな内容となっています。よくよく考えるべきポイントではないでしょうか?

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法人企業統計から目を転じると、本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲1.3ポイント低下し28.6を記録しています。指数を構成する4指標すべてが低下を示しています。すなわち、「雇用環境」が▲1.9ポイント低下し32.4、「収入の増え方」が▲1.1ポイント低下し34.2、「耐久消費財の買い時判断」も▲1.1ポイント低下し21.4、「暮らし向き」が▲0.8ポイント低下し26.5となっています。「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」については、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断について、先月10月統計で「弱含んでいる」から「弱い動きが見られる」と下方修正した後、今月11月統計でも「弱まっている」と連続で下方修正しています。従来、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と私は分析していたのですが、さすがに、この9~11月統計から消費者マインドは物価上昇と一定の連動性を高めつつある、と考え始めています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

なお、本日の法人企業統計を受けて、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に上方修正されるであろうと考えていますが、マイナス成長であることに変わりなく、大きな修正ではなかろうと予想しています。この2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2022年11月30日 (水)

2か月連続の減産となった10月の鉱工業生産指数(IIP)の先行きやいかに?

本日、経済産業省から10月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。ヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲2.6%の減産でした。9月統計に続いて、2か月連続の減産です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、10月2.6%低下 2カ月連続マイナス
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は95.9となり、前月から2.6%下がった。低下は2カ月連続。中国・上海市でのロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されて以降、部品などの供給制約の緩和で回復基調にあった反動が続く。
経産省は基調判断を「生産は緩やかな持ち直しの動き」から「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に引き下げた。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲1.7%の減産という予想でしたが、実績の▲2.6%減はやや下振れた印象ですが、予想レンジの範囲内という意味では、サプライズではありませんでした。ただし、引用した記事にもある通り、2か月連続の減産ですので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」から「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と、半ノッチ下方修正しています。中国の上海における6月からのロックダウン解除をはじめとする海外要因から、7~9月期は季節調整済みの系列の前期比で見て+5.8%の増産でしたので、9~10月の減産は反動の面もあるともいえます。もっとも、欧米先進国ではインフレ対応のために急激な金融引締を進めており、海外景気は大きく減速していますので、この要因の方が大きいと私は考えています。例えば、、経済産業省の解説サイトでは「これまでの上昇の反動」に加えて「海外需要の減少等」と減産の要因を分析しています。他方で、製造工業生産予測指数を見ると、足元の11月+3.3%、12月+2.4%と、それぞれ増産の動きが予想されています。産業別に10月統計を少し詳しく見ると、生産増の寄与がもっとも大きかった産業は自動車工業であり、前月比5.6%の増産により鉱工業生産全体への寄与度は+0.74%に達しています。続いて、汎用・業務用機械工業の前月比+6.1%増、寄与度+0.47%、電気・情報通信機械工業の前月比+2.0%増、寄与度+0.16%となります。減産寄与が大きいのは生産用機械工業の前月比▲5.4%減、寄与度▲0.54%、電子部品・デバイス工業の前月比▲4.1%減、寄与度▲0.25%、化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)の前月比▲4.9%減、寄与度▲0.20%となっています。
鉱工業生産の先行きに関しては、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、欧米先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、景気後退まで考えられると私は見ています。この金融引締めに加えて、ウクライナ危機も相まって外需の動向が懸念されます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大も冬を迎えて第8波に入ったとする向きもあり、政府の「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の経済効果の大きさは直接のGDP押上げ効果が4.6%と試算されていますが、物価高騰の抑制が主眼だけに何とも評価が難しく、いずれにせよ、生産の先行きは不透明といわざるを得ません。

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2022年11月29日 (火)

8か月連続のプラスが続く商業販売統計と堅調な雇用統計をどう考えるか?

本日、経済産業省から商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月統計です。商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+4.3%増の13兆820億円でした。季節調整済み指数では前月から+0.2%増を記録しています。また、雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.6%を記録し、有効求人倍率は前月を+0.01ポイント上回って1.35倍に達しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

10月の小売販売額4.3%増 8カ月連続プラス
経済産業省が29日発表した10月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比4.3%増の13兆820億円だった。8カ月連続で前年同月を上回った。外出機会の増加による売り上げの伸びや商品価格の引き上げが寄与した。
業態別でみると、スーパーは前年同月比2.8%増の1兆2599億円だった。2カ月連続で増加した。前年同月より土日祝日が1日多く、衣料品や行楽用品に改善の動きがみられた。飲食料品は値上げが販売金額を押し上げた。
百貨店は10.7%増の4721億円だった。気温の低下でコートなどが売れた。コンビニエンスストアは6.5%増の1兆577億円。2021年10月の増税の反動で、たばこの売り上げが伸びた。家電大型専門店は0.1%増の3516億円、ドラッグストアは6.0%増の6445億円、ホームセンターは1.9%増の2850億円だった。
小売業販売額の季節調整済みの指数は106.8で、前月比で0.2%の上昇だった。経産省は基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
10月の求人倍率1.35倍、10カ月連続上昇 失業率は2.6%
厚生労働省が29日に発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.35倍で、前月に比べて0.01ポイント上昇した。10カ月連続で前月を上回った。持ち直しが続くものの、新型コロナウイルス禍前の水準には届いていない。総務省が同日発表した完全失業率は2.6%で、前月から横ばいだった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。倍率が高いほど職を得やすい状況となる。コロナ禍前の2020年1月は1.49倍だった。20年9月に1.04倍まで落ち込み、その後は上昇傾向にある。
景気の先行指標となる新規求人数は92万4946人で前月比1.4%増加し、新規求人倍率は2.33倍と前月比0.06ポイント上昇した。業種別では、政府の観光喚起策「全国旅行支援」や水際対策の緩和で観光需要の持ち直しを見込んだ宿泊や飲食サービスの伸びが大きかった。
完全失業率は20年8月から21年1月にかけて3%台に達することが多かったが、その後は2%台で推移している。10月の就業者数は6755万人で前年同月に比べて50万人増えた。3カ月連続の増加となった。正規の職員・従業員は3614万人と17万人増え、5カ月ぶりに増加。非正規は2116万人で34万人増えた。

やや長くなったものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、小売業販売額は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による行動制限のない状態が続いており、外出する機会にも恵まれて堅調に推移しました。上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整していない原系列の前年同月比で見た増加率も、季節調整済み系列の前月比も、どちらも伸びを示しています。そして、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、10月までのトレンドで、この3か月後方移動平均の前月比が+1.0%増となり、基調判断を「持ち直している」で据え置いています。ここ3か月、すなわち、8~10月では前年同月比で+4%を超える増加率となっており、消費者物価指数(CPI)の上昇率がまだ、というか、何というか、+4%には達していませんから、小売業販売額と消費者物価指数のカバレッジが異なるとはいえ、消費は実質で増加していると考えてよさそうです。産業別では、特に、自動車小売業が前年同月比で+10.6%増となっています。前四半期の7~9月期に供給制約を脱して生産が回復したことが大きな要因であろうと私は受け止めています。また、医薬品・化粧品小売業も+10.5%と大きく伸びています。他方、先月の9月統計まで大きな増加を示していた燃料小売業が10月統計では+1.9%増にとどまっていて、やや不思議な気がします。価格はこれ以上に上昇していますから、おそらく、数量ベースでは減少という結果なのだろうと私は考えています。ということで、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。第2に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。ですから、足元での物価上昇の影響、さらに、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。特に、前者のインフレの影響については、10月の消費者物価指数(CPI)のヘッドライン前年同月比上昇率は+3.7%に達しており、名目の小売業販売額の+4.5%増は物価上昇を上回っているとはいえ、実質の小売業販売額はやや過大評価されている可能性は十分あると考えるべきです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は商業販売統計のグラフと同じで景気後退期を示しています。そして、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月からやや低下して2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前月からやや改善の1.35倍と見込まれていました。実績では、失業率は市場の事前コンセンサスから下振れし、有効求人倍率は市場予想と一致しました。総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。ですので、休業者も10月統計では前年同月から+8万人増と、増加したものの微増にとどまりました。季節調整していない原系列の統計ながら、実数として7~8月ともに250万人を超えていた休業者が、9月には194万人、10月には174万人にまで減少していることも事実です。そういった中で、雇用の先行指標である新規求人を産業別に、パートタイムを含めて新規学卒者を除くベースの前年同月比伸び率で見ると、宿泊業・飲食サービス業(+29.3%増)、卸売業・小売業(+11.7%増)、生活関連サービス業・娯楽業(+10.1%増)が2ケタ増と伸びが大きく、明らかに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のダメージの大きかった産業で新規求人が回復しているのが確認できます。入国規制が緩和されたインバウンドの回復も一因だろうと考えられます。

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2022年11月28日 (月)

インテージによる店頭販売価格の値上げに関する調査結果やいかに?

本日11月28日、ネット調査大手のインテージから全国約6,000店舗より収集している全国小売店パネル調査(SRI+)のデータを基に、食品・日用雑貨など主な消費財を対象として店頭販売価格の値上げについて調査した結果が明らかにされています。まず、インテージのサイトから調査結果のポイントを4点引用すると以下の通りです。

[ポイント]
  • 大幅値上げの食用油のほか、マヨネーズ(126%)、マーガリン(117%)などの調味料も値上がり幅拡大
  • 主食のスパゲッティや小麦粉が約2割増、加工食品・嗜好品なども約1~2割の値上がり
  • 値上がり実感は食料品8割、飲料5割、飲食店4割と6月時点よりも強まる
  • 食費の節約では、「ポイントカード・クーポンの活用」が3割を超え人気、菓子や外食を減らすも2割

物価上昇、特に、エネルギーと食品価格の値上がりは国民生活を直撃しており、とても注目されているところです。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、インテージのサイトから スーパーマーケットとドラッグストアでの食品と日用品の平均価格 のテーブルを引用すると上の通りです。2020年費で+10%以上値上がりした品目を赤いフォントで示してあります。食品ではキャノーラ油やサラダ油といった食用油のほか、マヨネーズ、レギュラーコーヒーなどが+20%を超えて
大幅に値上がりしています。また、日用品ではアルミホイルの値上がりが目立っています。私の直感ながら、例えば、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーの値上がり幅の違いなどを見るにつけ、加工度が高いほど生産過程でのコストアップの吸収が可能であるため、値上がりが抑えられている可能性があるような気もします。逆に、食料安平やアルミホイルは素材に近くて加工度がそれほど高くないため、コストアップを吸収できない可能性があるのではないか、と思ってしましまいます。でも、違っているかもしれません。すなわち、競争条件の違いとか、輸入比率の差とか、いろいろな要因があるのだろうとは想像します。

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続いて、インテージのサイトか値上がりを感じているもの のグラフを引用すると上の通りです。やっぱり、生活実感としても食料品とエネルギーが値上がりしていことは明らかです。私の実感としては、最近、ワインの値上げが大きくなっている気がします。また、テーブルは引用しませんが、食費節約の取組みとしては、「ポイントカードなどを活用」(41%)、「クーポンを活用」(34%)、「チラシなどを参考に特売品を購入」(33%)といったところが上げられています。食料品ですから「買わない」というわけにもいかないんだろうと思います。また、なぜか、インテージの調査ではエネルギー値上げに対する取組みがないのですが、やや気にかかるところです。今週の The Economist の特集はエネルギーの供給不安や価格高騰に対する Frozen out ということで、欧州が凍りついたイメージが表紙になっています。一般に、日本は欧州ほど高緯度ではないという見方はありえますが、これから本格化する冬の時期には日本でも暖房需要のためにエネルギーは必要不可欠です。移動に用いる自動車のためのガソリン需要だけではなく、暖房のためのエネルギー節約はどこまで可能なのか、私はとても不安です。

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2022年11月25日 (金)

20か月連続の上昇を続ける10月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.8%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.5%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、20カ月連続上昇 10月1.8%
日銀が25日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.4と、前年同月比1.8%上昇した。20カ月連続のプラスで、指数は2001年3月以来の高水準。上昇幅は前月から0.3ポイント縮小した。運輸・郵便で昨年の燃料費上昇の反動が出た。リース・レンタルや保険は上昇した。
宿泊サービスは10月に始まった政府の観光促進策「全国旅行支援」による割引がマイナスに効いた。出張などビジネス向けの宿泊も対象になったことが影響した。日銀は宿泊サービスの価格について「割引の影響を除けば、支援策を背景にした稼働率の高まりもあり堅調に推移していると考えられる」としている。
調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは93品目、下落したのは18品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年3月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+0.7%の上昇となった後、2021年4月には+1.1%に上昇率が高まり、本日公表された今年2022年9月統計まで、19か月連続の前年同期比プラス、18か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、6月統計以降では4か月連続で+2%以上となっています。上昇率がグングン加速するというわけではありませんが、高止まりしている印象です。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因も無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく10月統計のヘッドライン上昇率+1.8%への寄与度で見ると、土木建築サービスや宿泊サービスや機械修理などの諸サービスが+0.57%、石油価格の影響が強い外航貨物輸送や国際航空貨物輸送や内航貨物輸送などの運輸・郵便が+0.59%、リース・レンタルが+0.39%、テレビ広告やインターネット広告や新聞広告など景気に敏感な広告が+0.14%、損害保険や金融手数料などの金融・保険が+0.13%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+3.0%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。ただし、運輸・郵便の9月の上昇率は+4.2%でしたから、やや上昇率は縮小を示しています。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+5.2%、広告の+2.9%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。

最後に、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)東京都区部11月中旬速報値が公表されています。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率で見て、9月の+2.8%から、10月には+3.4%と+3%台に達した後、11月も+3.6%とさらにインフレが高進しています。ヘッドライン上昇率では+3.8%に達しています。+6.1%の上昇だった外食のヘッドライン上昇率への寄与度が+0.32%、上昇率+6.4%だった調理食品の寄与度も+0.22%など、電気代や都市ガス代などのエネルギーの上昇率+24.4%、寄与度+1.23%とともに、食料の価格上昇がじわじわと広がっている印象です。

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2022年11月24日 (木)

リクルートによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

来週火曜日11月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。参照しているリポートは以下の通りです。計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、以下の出典に直接当たって引用するようお願いします。

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まず、いつものグラフは上の通りです。アルバイト・パートの時給の方は、前年同月比で見て、今年2022年8月+2.3%増、9月+2.8%増の後、10月も+3.0%増と順調に伸びています。足元で伸びを高めているとはいうものの、2020年1~4月のコロナ直前ないし初期には+3%を超える伸びを示したこともありましたので、もう一弾の伸びを期待してしまいます。でも、時給の水準を見れば、昨年2021年年央からコンスタントに1,100円を上回る水準が続いており、かなり堅調な動きを示しています。10月には最低賃金が時給当たりで約30円ほど上昇しましたので、その影響も出た可能性はあります。他方、派遣スタッフの方は今年2022年8月+3.4%増、9月+1.4%増の後、10月も+1.6%増と、着実な伸びを示しています。
まず、三大都市圏全体のアルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は、繰り返しになりますが、10月には前年同月より3.0%、+34円増加の1,151円を記録しています。職種別では、「フード系」(+52円、+5.3%)、「専門職系」(+64円、+5.0%)、「製造・物流・清掃系」(+38円、+3.4%)、「販売・サービス系」(+19円、+1.7%)、「事務系」(+20円、+1.6%)、「営業系」(+10円、+0.8%)、とすべて職種で増加を示しています。なお、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏でプラスとなっています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、10月には前年同月より+1.6%、+25円増加の1,604円になりました。職種別では、「クリエイティブ系」(+63円、+3.5%)、「製造・物流・清掃系」(+45円、+3.5%)、「医療介護・教育系」(+18円、+1.3%)、「営業・販売・サービス系」(+14円、+1.0%)、「IT・技術系」(+12円、+0.6%)、「オフィスワーク系」(+9円、+0.6%)、とすべてプラスとなっています。派遣スタッフの6つのカテゴリを詳しく見ると、「IT・技術系」の時給だけが2,000円を超えていて、段違いに高くなっていて、全体と比べて伸びが小さくなっています。なお、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏でプラスとなっています。

基本的に、アルバイト・パートも派遣スタッフもお給料は堅調であり、足元では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向が不透明で、第8波に入ったともいわれていますが、全国旅行支援も10月20日には東京都でも始まって全国すべての都道府県で実施されており、同時に、インバウンド観光客の制約も大きく緩和されています。非正規雇用の比率の高い業種をはじめとして、最近までの順調な景気回復に伴う人手不足の広がりを感じさせる内容となっています。ただ、日本以外の多くの先進国ではインフレ率の高まりに対応して金利引上げなどの引締め政策に転じていることから、世界経済が景気後退の瀬戸際にあることは確実であり、雇用の先行きについては不透明であり、まだ下振れ懸念が払拭されていないと考えるべきです。

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2022年11月23日 (水)

「OECD経済見通し」やいかに?

日本時間の昨日、経済協力開発機構(OECD)から「OECD経済見通し」OECD Economic Outlook, November 2022 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。副題は Confronting the Crisis とされてます。まあ、そうなんでしょう。
国際機関のリポートに着目するのは、この私のブログのひとつの特徴となっています。いくつか、プレスリリース資料から図表を引用しつつ、見通しを中心に簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはプレスリリース資料から Global growth is projected to slow を引用しています。世界の経済成長見通しとその地域別寄与度です。見れば明らかな通り、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの後、2021年はリバウンドによる+6%近い高成長を記録し、2022年も+3.1%成長でしたが、来年2023年にはインフレ高進により成長率が+2.2%にさらに鈍化すると見込まれています。そして、さ来年2024年の成長率も+2.7%と小幅にしかリバウンドしないと予想されています。地域別寄与度については、2021年から2022年、さらに、2023年と、アジアの成長寄与度はそれほど変化していないのですが、特に、来年2023年には欧州や北米の世界経済の成長率への寄与がかなり小さくなると見込まれています。これは、高緯度地域における暖房需要も含めたエネルギー支出が大きいという要因に基づいています。

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続いて、上のテーブル2枚はプレスリリース資料から G20とNon-G20のそれぞれの Real GDP growth projections と Inflation projections を結合して引用しています。成長率見通しの上方改定と下方改定は前回2022年6月の「経済見通し」からの乖離であり、±0.3%ポイントを超える修正がある国です。世界経済の成長率見通しは2022年の+3.1%から来年2023年には+2.2%に大きく減速すると見込んでいます。もちろん、インフレ抑制のための金融引締めによる成長失速です。ただ、日本では他の欧米先進国と比較してインフレの影響が小さくなっています。まあ、長年続いたデフレのひとつの効果なのかもしれません。期待インフレ率が極めて低い水準でアンカーされている、ということなのだろうと思います。加えて、欧州などと比べれば、それほどの高緯度に位置しているわけではなく、エネルギー支出がそれほどかさまない、という点も成長率がそれほど大きく鈍化しない要因のひとつと考えるべきです。

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続いて、上のグラフはプレスリリース資料から The world is coping with a large energy price shock を引用しています。GDPのうちエネルギーの最終消費に費やされる比率を50年ほどのスパンでプロットしています。最近時点では、GDPのうちの18%ほどをエネルギー支出に充てなければならず、逆にいえば、エネルギーへの支出がかさんで、ほかに振り向ける支出が相対的に減少していることになります。特に、このエネルギー支出の増加は高緯度の欧州諸国で厳しい負担増となっています。

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最後に、上の画像はプレスリリース資料から Summing up を引用しています。政策指針として、読めばその通りなのですが、(1) 金融政策は、インフレ抑制のために引き続き引締めを継続し、(2) 財政政策は、サステイナビリティに配慮して、優先順位を絞った支援を行い、さらに、(3) 安全保障に配慮したエネルギー政策、(4) 構造政策としては、①国際貿易の開放性の維持、②女性の労働参加の促進、③COVID-19パンデミックからの回復のためのスキルの再構築、などを重視しています。

繰り返しになりますが、期待インフレ率が極めて低い水準でアンカーされ、また、高緯度の欧州諸国と違ってエネルギー支出の増加が大きな負担にもならない、という要因から日本の成長率は、ほかの先進各国ほどは大きく下方修正されていません。しかし、日本の成長率は先進国の中ではまだまだ低くなっています。もう少し長い目で見て、この成長率をどのように引き上げるかが大きな政策目標となります。ヒントは、最後に引用した画像の貿易の開放性の維持、女性の労働参加の促進、雇用者のスキルの再構築、ということで、ほかの先進各国と大きくは違わない、と私は考えています。

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2022年11月22日 (火)

東京商工リサーチ「想定為替レート」調査の結果やいかに?

一時は1ドル150円を超えるような水準まで進んだ円安が、ようやく11月に入って一段落していますが、東京商工リサーチから2023年3月期下半期の「想定為替レート」調査の結果が明らかにされています。調査対象は上場メーカーですので、輸出や工場などの海外進出をしている企業が多いと考えられます。図表を引用しつつ、簡単に調査結果を見ておきたいと思います。

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まず、東京商工リサーチのサイトから 対ドル想定為替レートの推移 のグラフを引用すると上の通りです。東京商工リサーチが調査を開始したのは2011年3月期なのですが、昨年2021年までの10年間では以降では、2016年3月期初の想定レート1ドル115.8円がもっとも円安な水準でした。しかし、今年に入って、2023年3月期の期初には1ドル119.1円と、この最安値を上回る円安水準の結果となり、さらに、今回調査による2022年3月期下半期には平均1ドル135.3円で、2023年3月期の期初からさらに+16.2円の円安設定だった、との結果が示されています。

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次に、東京商工リサーチのサイトから 対ドル想定為替レート分布 のグラフを引用すると上の通りです。2022年3月期下半期の想定レートは、1ドル135円が28社(26.4%)ともっとも多く、次いで、1ドル140円が27社(25.4%)、1ドル130円が13社(12.2%)となっています。レンジ別では、1ドル130円台が最も多く58社(54.7%)、140円台以上が38社(35.8%)、同120円台以下が10社(9.4%)との結果です。

ものすごく単純化していえば、製造業=メーカーは輸出や海外工場の売上は円安が進めば収益を拡大させる効果を持ちます。もちろん、原材料や燃料の輸入価格は円安により上昇しますが、それ以上に円安メリットが大きいと考えるべきです。ですから、保守的な為替レート想定を前提にすれば、実勢レートよりもやや円高の水準で想定するケースが少なくありません。他方で、非製造業では製造業と違って、原材料や燃料の輸入コストの上昇の方が大きく、円安は収益圧迫要因となります。ですから、実勢レートよりも円安の想定を持って事業計画を立てるケースがよく見られます。本日取り上げた東京商工リサーチの調査結果は、メーカー=製造業だけを調査対象としていますので、ひょっとしたら、円高バイアスがある可能性があります。でも、いずれにせよ、最近にない円安の想定であることは確かだろうと思います。

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2022年11月21日 (月)

今年の年末ボーナスの予想やいかに?

今月11月に入って、例年のシンクタンク4社から今年2022年年末ボーナスの予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほリサーチ&テクノロジーズのみ国家公務員+地方公務員であり、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員ベースの予想、と明記してあります。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.8万円
(+1.8%)
63.9万円
(▲2.0%)
賞与の企業間格差が鮮明に。海外展開している大企業では円安の進行により為替差益が発生する一方、中小企業では円安・資源高による原材料コスト増が収益を圧迫。既に今夏の賞与も事業所規模100人以上の企業では前年から増加する一方、100人未満はほぼ横ばいにとどまる状況。7~9月期以降も円安・資源高が中小企業の業績を下押ししているとみられ、今冬の賞与では企業規模間の格差がさらに広がる可能性。
みずほリサーチ&テクノロジーズ38.6万円
(+1.2%)
74.1万円
(+1.1%)
物価高は消費回復の重石になる。原材料価格の高騰等を背景に、値上げの動きは当面続く見込みである。みずほリサーチ&テクノロジーズでは、10~12月期の消費者物価(生鮮食品を除く)を前年比+3.4%、2023年1~3月期を同+2.4%と予想しており、冬のボーナスが増えても、物価高の影響で家計の実質的な所得は前年対比で減少する計算になる。2022年10~12月期、2023年1~3月期の個人消費はサービス消費を中心に回復が見込まれるものの、物価高が下押し要因となり緩慢な伸びにとどまるだろう。
第一生命経済研n.a.
(+2.6%)
n.a.物価上昇も懸念材料だ。足元で物価上昇は加速しており、22年10-12月期の消費者物価指数の上昇率は前年比で+3%台半ば~後半に達する見込みである。今冬のボーナスが比較的高い伸びになるとみられることは好材料ではあるが、それでも賃金の増加ペースが物価上昇に追い付かない状況には変わりがない。今冬のボーナス増加が個人消費の活性化に繋がる可能性は低いだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング39.0万円
(+2.5%)
65.1万円
(▲0.1%)
コロナ禍での業績悪化で支給を取りやめていた事業所での支給が続々と再開され、支給労働者割合は83.4%(前年差+0.9%ポイント)と上昇しよう。同割合はコロナ前の2019年の水準には届かないものの、雇用者数の増加が続く中で、ボーナスを支給する事業所で働く労働者の数は4,291万人(前年比+1.5%)まで増加し、コロナ前を上回る見込みである。

テーブルから明らかな通り、今年の冬のボーナスはそこそこ上がる期待が持てます。ただし、注意すべき点が2点あります。第1に、ボーナスの増加が物価上昇に追いつかなおそれです。日本総研以外のみずほリサーチ&テクノロジーズ、第一生命経済研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティングにヘッドラインで引用しておきました。おそらく、ボーナス増は物価上昇で相殺され、というか、物価上昇がボーナス増を上回って、実質所得の増加はほぼほぼ見込めません。ただ、名目の貨幣賃金が増加しますので、一定の消費促進効果はあるものと私は期待しています。第2に、日本総研のリポートで強調されているところで、ボーナスの企業間格差が大きくなる可能性にも注意すべきです。上のテーブルで取り上げた4シンクタンクのうち、日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2機関のリポートでは民間企業を製造業と非製造業に分けて示しています。日本総研では製造業が+6.3%増の53.4万円に対して、非製造業が+0.9%増の36.2万円、また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでも製造業が+5.5%増の53.0万円に対して、非製造業が+1.9%増の36.4万円、と、伸び率でも額でも製造業と非製造業の格差が大きくなっている点が明らかにされています。海外展開が進んでいる大企業では、特に製造業では円安の進行によって為替差益が享受できる一方で、中小企業では円安は資源高とともにコスト増をもたらして収益を圧迫する要因となると考えられます。日本ではもともと企業の規模による格差が大きく、大企業は中小企業と比較して給与水準が高い上に、財務体質などの経営の安定性もあり、学生諸君はこぞって大企業への就職を希望するのですが、今年の円安や資源高はこの企業規模による格差を拡大している可能性が大きく、特に、年末ボーナスにはその影響が現れている、と私は考えています。最後に、地域限定ながら、浜銀総研から「2022年冬の神奈川県民ボーナスの見通し」が明らかにされています。民間企業は+1.4%増、公務員は+7.6%増と予想しています。
最後の最後に、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから引用しています。

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