2012年5月 4日 (金)

ゴールデンウィークに聞いた音楽 (その2)

奥田弦「奥田弦」

ゴールデンウィークのヒマ潰しとして手元に用意した2枚目のアルバムは、上の通り、奥田弦の「奥田弦」です。昨年12月のリリースです。今さらながら、昨年2011年は小学生やお子さまが活躍した年でした。流行に疎い私のような中年のオッサンでも知っているのは芦田愛菜と鈴木福なんですが、私の馴染み深いジャズピアノの世界でも同様の動きがあり、レコーディング当時9歳だった奥田弦が出したアルバムが注目されました。昨日取り上げた上原ひろみと矢野顕子のアルバムは軽く流したんですが、今日のこのアルバムについては曲名を明らかにしておきたいと思います。すなわち、下の通りです。

  1. Maple Leaf Rag
  2. Twinkle Twinkle Little Star
  3. Brahms Symphony No.1 c mol op.68
  4. Take the 'A' Train
  5. It's Show Time!
  6. Tiger Rag
  7. 雄大な自然
  8. Caravan
  9. 午後の時間
  10. Danza Ritual del Fuego
  11. 情熱大陸
  12. Hymn to Freedom

この年齢のピアニストですから、注目されるのは2曲目の「キラキラ星変奏曲」なのかもしれませんが、1曲目と6曲目に配したラグタイムの曲も、4曲目と8曲目のエリントンのジャズ曲も、なかなか見事に弾きこなしています。加えて、5曲目、7曲目、9曲目にはオリジナル曲も取り上げられています。もっとも、最後のオスカー・ピーターソンの曲は、後付けながら、マルコム・ドッズの "When every heart joins every heart" で始まる歌詞が分からないと苦しい気もしますが、全般的にメジャーレーベルからCDデビューを飾るに相応しい腕前であると認められます。もちろん、腕前以外にもいろいろと有利な条件は備えているわけで、例えば、山中千尋がメジャーデビューする前の澤野工房から出していたCDなどと比べて、特に水準が高いかと問われれば、やや苦しい答になりそうな気もします。いずれにせよ、17歳でチック・コリアと共演した上原ひろみ、13歳でハンク・ジョーンズの絶賛を受けた松永貴志など、我が国ジャズピアニストの早熟ぶりは驚きの連続でしたが、ここに極まった感があります。
下の動画はポニーキャニオンがアップしている奥田弦が弾く「タイガー・ラグ」です。アルバムでは6曲目に収録されています。

昨日の荒れたお天気とは打って変わって今日はいいお天気ですので、昼前から少し近場に出かけたいと考えています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年5月 3日 (木)

ゴールデンウィークに聞いた音楽 (その1)

上原ひろみ: Get Together - Live in Tokyo

ゴールデンウィーク後半が今日から始まりましたが、東京ではあいにくの悪天候で、今日は室内競技を目指します。ということで、1枚目の音楽CDを取り上げます。上の画像の通り、矢野顕子と上原ひろみのデュエットになる Get Together - Live in Tokyo を聞きました。下のビデオを見れば、上原ひろみのピアノが右側に位置しています。なお、チック・コリアと共演したアルバム Duet でも上原ひろみが右だったように記憶しています。当然ながら、歌っているのは矢野顕子です。
当然というか、私のようなジャズファンの耳にはピアノの差は歴然です。下のビデオでも歌っている時の矢野顕子はあんまりピアノを弾いていないように見受けられます。でも、それでオッケーだったりします。私なんぞの偏った目から見れば、真打の落語家が浪曲をやっているような印象で、矢野顕子の歌がメロディーラインから外れない以上、上原ひろみの即興演奏の才能の無駄遣いだという気もしなくもないんですが、これも経験のひとつで幅広く人脈を形成して、さまざまな音楽を演奏しておくことも、上原ひろみの今後の音楽生活には有益なのかもしれません。
下のビデオはアルバムから「ラーメンたべたい」です。

なお、ゴールデンウィークで聞こうと思っ手元に用意したCDは2枚あり、2枚目もピアノなんですが、これについては日を改めて紹介します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年3月26日 (月)

三浦文彰「プロコフィエフ: ヴァイオリンソナタ第1番、第2番」を聞く

三浦文彰「プロコフィエフ: ヴァイオリンソナタ第1番、第2番」

昨年2011年12月11日付けの記事でピアニストの金子三勇士のデビューCD「Miyuji プレイズ・リスト」を取り上げましたが、今夜のエントリーではヴァイオリニストの三浦文彰にスポットを当てたいと思います。広く知られている通り、2009年のハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールにおいて、わずか16歳の史上最年少で優勝し、国際的にも大きな話題になった若き音楽家のデビューCDは、タイトルから明らかなように、プロコフィエフを取り上げています。昨年2011年5月にリリースされています。ピアノはリトアニア出身のイタマール・ゴラン。ジャズファンの私は詳しくないんですが、著名なソリストとの共演もいくつかあるそうです。CDのライナー・ノーツは池田卓夫さんと伊熊よし子さんが書いています。
演奏は何とも言えず、男性的というか太いです。日本人離れした太くて朗々と鳴るヴァイオリンを感じたプロコフィエフの1番に続き、2番では若々しい繊細な柔軟性も見せます。もっとも、ピアノとのかけ合いのパートは評価が分かれるところです。ヴァイオリン・ソナタなのにピアノが前面に押し出ている部分も少なくありません。もちろん、ヴァイオリンとピアノのほぼ対等な絶妙のコラボを感じさせるところもありますが、何と言っても三浦文彰のヴァイオリン・ソナタのCDなんですから、がむしゃらなくらいに自分を押し出してもよかった気もしないでもありません。全体として、ハイティーンの男性のデビューCDとしては、いい出来の演奏を受け止めています。ピアニストの金子三勇士とともに先が楽しみです。我が国のレベルではなく、世界の音楽界を背負って立つ存在になれそうな逸材です。
最後に、YouTubeのサイトにアップされていた三浦文彰の動画です。2009年ハノーファー国際ヴァイオリン・コンクール入賞者ガラコンサートにおけるチャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲第3楽章の演奏とのことです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年3月 4日 (日)

ハクエイ・キム Break the Ice を聞く

キム・ハクエイ Break the Ice

ハクエイ・キムの Break the Ice を聞きました。このアルバムはいくつかのバージョンが出ているんですが、私が聞いたのは上のジャケットの通常版です。DVD付きの限定版はアルバム・ジャケットがもう少し正面を向いていたりします。限定版ではなく、通常版ですから、ボーナス・トラックがケチられていたりして、My Foolish Heart は入っていません。すなわち、収録されている曲目は以下の通りです。

  1. Give Us the Sun [Improvisation]
  2. The Icebreaker 1
  3. Winter Festival
  4. Autumn Leaves
  5. Under the Bridge
  6. Mike Nock
  7. Alfie
  8. The Icebreaker 2
  9. Tokyo Traffic
  10. Lost in Newtown
  11. Don't Cry for Me Argentina
  12. The Ice Broken
  13. When You Wish Upon a Star

まず、このアルバムはソロ・ピアノです。私のこのブログでも、それなりに注目していて、ピアノ・トリオで Trisonique を結成し、同名のアルバムを出して、その他の Take Five を収録しているピアノ・トリオのアルバムと併せて、昨年9月4日付けのエントリーで取り上げています。しかし、このアルバムはソロで、このアルバムの後もソロ・コンサートの模様をDVDで出したりしています。残念ながら、私はDVDは見ていません。
傾聴すべきは、アルバムの最初からキース・ジャレットばりのソロ・ピアノで、かなり自由にインプロビゼーションを展開していることです。特に、The Icebreaker の1と2は特徴的です。4曲目と5曲目になって、すべてがキース・ジャレット調ではないと気づかされます。キムはかなり透明な音を出すピアニストなので、ソロは適しているような気もしました。ジャケットがそうだからというわけでもないんでしょうが、リリカルな曲も少なくないものの、全体として、かなり「男っぽい」アルバムに仕上がっています。オススメです。

名前から明らかなように、韓国人の父と日韓ハーフの母を持つピアニストと聞き及んでいます。まったく私は同意しませんが、ブームに乗じて「韓流ジャズの貴公子」なんてうたい文句を見かけました。私はキムのピアノから「韓流」という言葉はまったく思い付きもしません。日本で生まれ育った最近のピアニストとしては、上原ひろみや山中千尋とともに、世界に通用する実力を備えたピアニストです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年2月12日 (日)

パット・メセニー What's It All About を聞く

善良なる一般市民にはまったくどうでもいいことなんですが、今日、近くの図書館からの帰り道でイアホンが壊れました。何をどうしたわけでもないんですが、左が聞こえなくなりました。ひょっとしたら、イアホンではなくてウォークマンが壊れたのではないかと心配して、別のイヤホンで聞いてみるとちゃんと聞こえたので、大きく安心しました。修理するようなものでもないので新しいのと取り替えました。ということで、今日は音楽の話題です。

Pat Metheny: What's It All About

パット・メセニーの What's It All About を聞きました。アコースティック・ギターによるソロ・アルバムです。パット・メセニーの場合、ソロ・アルバムとはいわゆるグループでなくトリオの演奏なども指すケースがありますが、このアルバムはホントの一般的な意味でのソロであり、前作の Orchestrion とも違って、パット・メセニーのギター演奏だけのアルバムです。その意味で、One Quiet Night と同じなんですが、大きな違いは選曲にあって、すべてカバーでありオリジナルは含まれていません。ということで、曲目は以下の通りです。

  1. The Sound of Silence
  2. Cherish
  3. Alfie
  4. Pipeline
  5. Garota de Ipanema
  6. Rainy Days and Mondays
  7. That's the Way I've Always Heard It Should Be
  8. Slow Hot Wind
  9. Betcha by Golly, Wow
  10. And I Love Her
  11. 'Round Midnight
  12. This Nearly Was Mine

サイモン&ガーファンクルの名曲に始まって、カーペンターズやバートバカラック、ヘンリー・マンシーニにカーリー・サイモン、ビートルズからセロニアス・モンクの作曲になるジャズの名曲まで、日本でも耳にしたことのあるポピュラー・ソングやジャズの名曲のオンパレードという気もします。しかし、パット・メセニー流の解釈が施されていたりして、聞き慣れた曲がとても新鮮に感じられるものも少なくありません。リスナーの受け取り方にもよりますが、単にリラックスして聞くだけでなく、緊張感を持った聞き方も出来ます。超一流のミュージシャンにかかれば、この選曲でもいろんな聞き方の出来るアルバムに仕上がるということを実感しました。なお、ライナー・ノーツは我が国を代表するジャズ・ギタリストの渡辺香津美さんが書いています。最後に、このアルバムからネットにアップされている動画のうち、5曲目の「イパネマの娘」は以下の通りです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月22日 (日)

チック・コリアのソロ・ピアノを聞いてオリジナルとスタンダードの違いについて考える

Chick Corea Solo Piano Originals & Standards

冷たい雨の日に家で音楽を聞いています。もっぱらジャズ・ピアノです。
今現在で私がもっとも評価するジャズ・ピアニストはチック・コリアとキース・ジャレットなんですが、前者のチック・コリアの2枚のソロ・ピアノのCDがあります。いずれも2000年に出されたんだと思います。Part One が Originals で Part Two が Standards と題されています。収録曲は以下の通りです。

  • Part One Originals
    1. Brasilia
    2. Yellow Nimbus
    3. Prelude #4, opus 11
    4. Prelude #2, opus 11
    5. Children's Song #6
    6. Children's Song #10
    7. Armando's Rhumba
    8. April Snow
    9. The Chase
    10. The Falcon
    11. Swedish Landscape
    12. Spain
    13. Children's Song #12
  • Part Two Standards
    1. Monk's Dream
    2. But Beautiful
    3. Blue Monk
    4. Ask Me Now
    5. Thinking of You
    6. Yesterdays
    7. Dusk in Sandi
    8. It Could Happen to You
    9. 'Round Midnight
    10. So in Love
    11. How Deep Is the Ocean
    12. Oblivion
    13. Brazil

どう考えても、慎み深くもチック・コリアがオリジナルの12曲目に入れている「スペイン」なんぞは、確かにチック・コリアの作曲になる作品ですが、すでにスタンダードになっているような気がしました。例えば、平原綾香さんの My Classics 2 には8曲目に「アランフエス協奏曲」から「スペイン」へのメドレーがあり、「スペイン」には歌詞をつけずに、見事なスキャットを披露しています。この曲なんかは「クラシック」というにはまだ時間が経っていないような気もしますが、十分に「スタンダード」なんではないかと思ってしまいました。
どうでもいいことですが、外国語のカタカナ表記で私の気にしている点をジャズに関連して2点だけ取り上げると、先にも書きましたが、私は「アランフエス協奏曲」と表記し、「エ」を小さな字にしないのが正しいと考えています。スペイン語では "Concierto de Aranjuez" ですから、分かる人には分かると思います。また、英語の "report" を私は日本語で「リポート」と表記するんですが、多数派は「レポート」ではないかと考えています。これは明らかに、ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターの双頭コンボであった "Weather Report" を日本語で「ウェザー・リポート」と広く表記することの影響だと思います。このジャズ・グループを日本語で「ウェザー・レポート」と表記しているのは、少なくとも私は見かけたことがありません。

後の方は話が逸れてしまいましたが、一応、「音楽鑑賞の日記」に分類しておきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月 9日 (月)

ブロンディの "Heart of Glass" を聞く

Blondie Parallel Lines

正月に家でゴロゴロしていると、ついついテレビを見る時間が長くなります。お笑い番組などを適当に流しているうち、トヨタのアクアのコマーシャルが目につくようになりました。コマーシャル・ソングは明らかにブロンディなんですが、曲名が思い出せませんでした。ようやく、この3連休になって、"Heart of Glass" だったと思い出しました。アルバム Parallel Lines に収録されていた記憶があります。ジャケットは上の画像の通りです。残念ながら、Parallel Lines のCDは借りられませんでしたが、近くの図書館で The Best of Blondie を借りて聞き直しました。ブロンディーの曲の中で、おそらく、最も流行ったのは "Call Me" だと思うんですが、"Heart of Glass" もそこそこ流行った記憶があります。シングル・カットされたんではないでしょうか。いずれにせよ、ブロンディーが流行ったのは30年くらい昔なんではないかと思います。
下の動画は YouTube のサイトから引用しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月11日 (日)

金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」を聞く

金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」

金子三勇士「Miyuji プレイズ・リスト」を聞きました。これだけで、金子三勇士というピアニストがリストの作品を集めたアルバムだということが明確に理解できると思います。まず、若きピアニスト金子三勇士のプロファイルをオフィシャルウェブサイトから抜粋すると以下の通りです。

Miyuji
1989年9月22日生まれ。
6歳でハンガリーのピアノ教育第一人者Cs.Nagy Tamasne教授に師事する事になり、単身ハンガリー留学。祖父母の家からバルトーク音楽小学校に通う。1997年と2000年に全国ピアノ連弾コンクールで優勝し、2001年には全国学生ピアノコンクールで優勝。
2001年(11歳)飛び級で国立リスト音楽院大学ピアノ科に入学し、Eckhardt Gabor教授、Kevehazi Gyongyi教授、Wagner Rita教授に師事。
2006年(16歳)、ピアノ科全課程修了とともに日本に帰国。東京音楽大学付属高等学校2年に編入し、現在東京音楽大学ピアノ演奏家コース・エクセレンス4年在籍。三浦捷子氏、迫昭嘉氏、清水和音氏に師事。2009年シャネル・ピグマリオン・デイズ参加アーティスト。2010年よりジャパンアーツ所属アーティスト。同年10月にリリースされたデビューアルバム「Miyuji プレイズ・リスト」はレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。2011年第12回ホテルオークラ音楽賞受賞。スタインウェイ・アーティスト。

昨日は、ジャズ・ミュージシャンのエピソードを集めた『バット・ビューティフル』の読書感想文を取り上げましたが、今日はクラシック・ピアノの若き俊英にスポットを当てます。引用したプロファイルにある通り、16歳でリスト音楽院大学ピアノ科を卒業し、帰国した金子三勇士のデビュー・アルバムです。昨年10月の発売ですが、私はもっぱらジャズでしたので、少し前に知り図書館で予約しておいたのを聞きました。私が知る限り、都内では新宿区立図書館しかこのアルバムを所蔵していませんが、現時点では私が借りていますので貸出し中となっていると思います。
彗星のごとく現れた超大型新人ピアニストと私は認識しています。でも、「三勇士」と書いて Miyujiと読ませるんですから、音楽一家に生まれ育ったんだろうと想像されます。なお、公式プロファイルにはありませんが、ハンガリー人の母と日本人の父との間に生まれたとも聞きます。アルバムの曲の構成は以下の通りです。いうまでもありませんが、すべてリストの作曲になり、演奏はジャズでいえばソロ・ピアノです。

  1. Piano Sonata in B minor
  2. Hungarian Rhapsody No.2 in C-sharp minor
  3. Vallee d'Obermann
  4. La Campanella
  5. Liebestraum No.3 in A-flat major

最初のピアノ・ソナタ ロ短調が時間に換算して全体の半分を占めます。この曲が古今東西のピアノ曲の最高峰のひとつであることは衆目の一致するところです。今年2011年はリスト生誕200年でもあり、歯に衣を着せぬ物言いで有名な清水和音さんなども、本来はショパンの弾き手と思っていたんですが、今年発売のアルバムでロ短調ソナタを取り上げていると記憶しています。どうでもいいことですが、昨年2010年はショパン生誕200年だった気がします。
リストを弾く金子三勇士の演奏は、ある意味で、とても個性的です。ジャズ・ピアノの場合、当然ながら、アドリブのパートで個性が出ます。例えば、チック・コリアと上原ひろみによる「デュエット」では右に上原、左にコリアと、私のようなシロートでも聞き分けることが出来ます。しかし、楽譜の通りに弾くクラシックの世界では、特に、ヴァイオリンなどと違ってピアノは音で区別できませんから、個性を出すのは難しいと私は考えていましたが、この私の常識は覆されました。多くのクラシック・ピアノを聞いて来たと自慢できるわけではありませんが、少ない経験ながらも、独特のタッチやトーンを感じることが出来ます。何よりも、伸びやかでみずみずしく、若いピアニストの演奏であると実感できます。しかし、決して荒削りではなく繊細ですらあります。スタンウェイのひとつの特徴といってしまえばそれまでかもしれませんが、ハンガリアンの血のなせるワザとか、そういったものとは何の関係もなく、世界最高峰とは決していえないものの、非常にレベルの高い演奏に接することが出来ます。

ピアノの金子三勇士のほか、ヴァイオリンの三浦文彰も今年「プロコフィエフ ヴァイオリンソナタ第1番、第2番」でCDデビューしています。小林愛美は少し違う気がしないでもないんですが、金子・三浦の2人はいずれも注目すべき日本人若手演奏家であると私は受け止めています。将来が楽しみです。彼らのデビューCDを聞いたことを後の世代に自慢できるように、世界最高峰を目指して欲しいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月27日 (日)

80歳になったソニー・ロリンズのテナーはやっぱり力強く男性的か?

ソニー・ロリンズ「ロード・ショウズ」Vol.1, Vol.2

テナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズが新しいアルバムをリリースしました。「ロード・ショウズ vol.2」です。2年前の vol.1 とともに聞いてみました。まず、曲の構成は以下の通りです。

  • Road Shows, vol.1
    1. Best Wishes
    2. More Than You Know
    3. Blossom
    4. Easy Living
    5. Tenor Madness
    6. Nice Lady
    7. Some Enchanted Evening
  • Road Shows, vol.2
    1. They Say It's Wonderful
    2. In a Sentimental Mood
    3. Sonnymoon for Two
    4. I Can't Get Started
    5. Raincheck
    6. St. Thomas

vol.1 も vol.2 もいずれもすべてライブ録音された音源です。vol.1 が古いところでは1980年代の2曲を含むのに対して、vol.2 はすべてが2010年のライブですから、その意味で、注目するジャズ・ファンも多かったんではないかと考えられます。もちろん、私もそのうちの1人です。ちなみに、vol.2 の1曲目は札幌でのライブ、最後の6曲目は東京で録音されています。2-5曲目はニューヨークにおけるロリンズ自身の「生誕80周年記念ライブ」でのパフォーマンスです。
いうまでもありませんが、ロリンズはコルトレーンと並ぶモダン・ジャズのテナーサックスの巨人の1人であり、力強い男性的なサウンドを売り物にしています。私の受止め方だけなんですが、コルトレーンが緊張感を高めるテナーサックスなのに対して、ロリンズはリラックスできるサウンドな気がします。同じことを別の表現をするならば、コルトレーンはストレス・レベルを上げ、ロリンズは下げるということも出来るかもしれません。もっとも、私は基本的に適度に緊張感を高めるために音楽を聴くことは嫌いではなく、決して、音楽はリラックスするだけが目的ではないと考えています。非常に極端な例では戦意高揚のための軍歌の効用について、マンガ「ケロロ軍曹」のギロロ伍長が発言していたことを思い出します。もちろん、私は戦意高揚やその先にある戦争を称揚するつもりはありませんし、軍歌とモダン・ジャズの名曲・名演奏を同一視するのはとんでもないことだと考えていますので、念のため。
前置きが長くなりましたが、このアルバムの vol.1 も決して悪い出来ではないと思っていましたが、続けて聞くと、やっぱり vol.2 がすぐれています。もちろん、ロリンズの全盛期は50年ほど前の1960年前後でしょうし、このアルバムが「サキソフォン・コロッサス」よりもいい出来であるなどと、血迷ったことはいうつもりはありませんが、ロリンズらしい朗々となるテナーサックス、小粋なアドリブ、くつろいだ雰囲気の聴衆と、なかなかの出来上がりとなっています。まあ、80歳にしては十分な肺活量でよく息が続きますし、フィンガリングもまだまだ健在でよく指が動きますす。さすがに、新しい音楽を切り開く境地にいるとはとても思えませんが、それでも、「昔の名前で出ています」だけではありません。今世紀に入ってからのテナーサックス奏者では、私は圧倒的にエリック・アレクサンダーを評価していて、やや懐古趣味的なアンディ・スニッツァーやグラント・ステュワート、あるいは、ハリー・アレンなんかも決して嫌いではないんですが、1950-60年代の圧倒的なロリンズの存在感には及ばないのは当然です。スポーツのように勝負が決まるわけではないので、ロリンズを引退に追い込むというのは表現が違う気もしますが、いつまでもロリンズを聞いているのではなく、バリバリの若いテナーサックス奏者が出て来て欲しい気もしないでもありません。

最後に、下の動画は昨年2010年の North Sea Jazz Festival で St. Thomas を演奏するソニー・ロリンズです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年11月13日 (日)

山中千尋 Reminiscence を聞く

山中千尋 Reminiscence

山中千尋の Reminiscence を聞きました。8月に発売されています。このアルバムは3つほどバリエーションがあって、ジャケットが上の画像ではなくてワインレッドのドレスを着たバージョンのアルバムは音質のいいSACD-SHMだったり、DVDつきだったりして、我が家にあるのは上のジャケットのCDで何の変哲もないフツーのオーディオCDなんだと思います。もっとも、ご本人のホームページのディスコグラフィーのサイトにあるジャケット写真は上のと同じです。曲のラインナップは以下の通りです。

  1. Rain, Rain and Rain
  2. Soul Serchin'
  3. (They Long to Be) Close to You
  4. Dead Meat
  5. Ele e Ela
  6. This Masquerade
  7. She Did It Again
  8. You've Got a Friend/Central Park West
  9. La Samba des Prophetes
  10. Can't Take My Eyes Off of You

八木節が入っていないのはさて置くとしても、ポピュラー・ソングのオンパレードではないか、と思うんですが、いかがでしょうか。1曲目は彼女のオリジナルです。2曲目はホレス・シルバー作曲とあるんですが、私は不勉強にして知りませんでした。ただし、さすがというか、アドリブ・パートは水際立っています。私の知る限り、秋吉敏子というビッグ・ネームを別にして、最近の我が国の女性ジャズ・ピアニストのうち、総合点でピカイチは上原ひろみなんですが、アドリブの冴えは山中千尋に年齢分だけの長があるように受け止めています。なお、私は上原・山中の両ピアニストのライブは聞いたことがないんですが、CDはすべて聞いたと考えています。ただし、選曲や作曲も含めた総合点で山中千尋を評価すると、アテリエール・サワノの最後の Madrigal と Verve からメジャー・デビューした Outside by the Swing の2枚がもっとも出来がよかった気がします。2004-05年ころです。私は Reminiscence が出る前は、この2枚をウォークマンに入れていました。
ドラムスに Bernard "Pretty" Purdie が2曲だけ入っていて、他の曲と違和感ないのはいいんですが、少しベースとドラムスがピアノに比べて弱いと感じる人もいるかもしれません。逆に、それだけピアノに勢いがあるという見方が出来ることも事実です。ベースはほとんどソロを取っていません。いわゆるポピュラー・ソングで耳当たりのいい知ったメロディーが流れるのはいいですし、繰返しになりますが、アドリブはピカイチです。でも、何となく物足りないと感じるのは私だけではないと思います。

ついつい、3月にリリースされた上原ひろみのVoice と比べてしまいます。山中千尋も次はギンギンのアルバムを出して欲しいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)